雷を纏う壮牛アルデバランの背に腰掛けて、まさに伝説にあるクレタの女王エウロペの如く戦場に降臨した律。その神々しくも美麗なる威容にシンフォギア装者二名は圧倒されていたようだったが、しかし先に我に返ったのはやはりと言うべきか、何度もこの力を目の当たりにしている翼の方であった。
「そこを退いてください、律さん」
「それは出来ませんよ、翼ちゃん」
牛の背中から翼を見る律は困ったように笑うと、ちらりと庇うように背中の方に居る響へと視線を送った。
「私が退いたら、あなた響ちゃんに斬り掛かるでしょう?」
翼は答えない。その無言を肯定と捉えたのか、律は言葉を続ける。
「あなたの気持ちも理解出来ますから、多少の事は私や弦十郎君も目を瞑りますしフォローもしますが……これはちと、やり過ぎに思えますので」
律の言葉はいつも通りの丁寧さを保っているが、しかし身に纏う空気が先程ノイズを前にした翼と同様、テコでも動かないと雄弁に語っている。
「流石に理不尽でしょう、こんなのは……せめて理由を話しても良いのでは?」
外見から受ける物静かで理知的な印象に違わず理路整然と言葉を並べる律に、翼も僅かばかり頭を冷やしたようだ。彼女の視線が律とアルデバラン越しに響へと移る。
「ガングニールは奏の物……律さん、あなたも知っているでしょう? 奏は、決して適合者としての素養に恵まれていた訳ではなかった。そのシンフォギアはそんな彼女が血反吐にまみれ、命を削る痛みと苦しみを超えて、漸く纏うに至ったもの。奏はその削った命の分だけ、多くの命を救ってきた」
律は首肯する。得心が行った。翼が何故に響を受け入れられないのか。この話の肝は、やはりそこにあった。
「そのガングニールを、ただ偶然に手に入れただけの響ちゃんが纏う事が許せない……と?」
「それだけではありません」
翼の目が厳しく、そして鋭くなった。
奏はあんなに強くて優しくて、自分の全てを投げ打つ覚悟で戦っていた。対して、響はどうだ。
「……何の覚悟も無く、遊び半分で戦場に立つ……!! そんなその子が、奏の何を受け継いでいると言うのですか!!」
溜息を吐く律。確かに翼の気持ちも分かるが……
「覚悟、ですか……しかし一朝一夕で心を決めろと言う方がムチャでしょう。それに……」
律は、ちょっとだけ意地悪な表情になった。
「あなただって『天羽々斬』を初めて起動させた時には、似たようなものだったではないですか。”わたしもいずれはじんるいしゅごのつるぎとして、りつさんのようなりっぱなさきもりになってみせます”って。目をきらきらさせて……ちょうど、今の響ちゃんのように……」
くすくす笑いつつ声真似する大先輩に、翼は胸中のデリケートな部分をくすぐられたらしい。彼女の美貌が、かあっと紅くなった。
と、少しばかりおどけて見せた律であったが、すぐにスイッチを切り替えるように真顔へと戻った。
「でもまぁ、理解と納得、理性と感情が別物である事は私も知っています」
言いつつ律は、牛の背中からふわりと羽根のような動きで地へと降り立った。何をするつもりなのかと彼女の意図を図りかねた響は動きを止めたままだったが、一方で翼の方はこれから彼女が何をしようとしているのか分かっているらしい。あからさまに体に力が入るのが分かった。
律は首に手をやる。チャリッという音を立てて、彼女は自慢の首飾りを外していた。
「ラエラプス……暫く預かっていてくださいね」
そっと愛犬の首に完全聖遺物を掛けてやると、立ち上がって翼に向き直る。
「どうしても胸のモヤモヤが晴れないと言うのなら……私にぶつけて気を済ませなさい。あなたがどれほど腕を上げたのか……試してあげます」
完全な丸腰となり手招きして挑発する律に、響は「ちょっ、律さん!! 危ないですよ!!」と慌てたように駆け寄ってきて、対照的に翼は警戒したように身構える。今の彼女にとって、抜いてしまった刃を笑って納めるという選択肢は考えられなかった。だがそれをどこに振り下ろすべきか、迷うのはそこだ。
だがその時だ。律の肩越しに、響の姿が目に入った。彼女が纏うシンフォギアも。
それを見た時に奔る怒りと苛立ち……それに、もう一つの感情。先程はノイズとの戦闘中であったから抑えたが、今の翼は、その激情に身を委ねてしまった。
「う、ぁ、ぁあああああああっ!!」
嗚咽のような、絶叫。叫びながら翼は跳躍し、そしてアームドギアの剣が彼女の背丈よりもずっと大きく、巨人の得物に見えるような大剣へと変形する。そのまま柄尻を蹴り出す勢いで相手へと突入し、貫く一撃。それこそが翼の必殺技の一つである『天ノ逆鱗』。その一撃はまさに怒りに触れた咎人へと下される天の怒り。雷の如く律と、その後ろに庇われている響へと落ちていく。
「律さ……」
曲がりなりにもシンフォギアを纏う自分に対して律は生身。せめて我が身を盾とすべく前に出るが、律は細腕からは信じられないような凄い力で響の首根っこを引っ掴むと放り投げるように自分の背後へやって、降ってくる巨大な切っ先へと右手をかざす。それを見た響は思わず息を呑んだ。まさか片手で、あんな巨大な剣を受け止めるつもりなのだろうか。
響には、いや殆どの者にとってそれはとんでもない愚挙にしか見えないだろう。何十トンもありそうな大剣はその自重と落下の勢い、それに翼の蹴りによる加速によって恐ろしいパワーを宿しており、律の小柄な体など一瞬にして押し潰してしまいそうだ。
だが不思議な事に、翼の顔に油断は無い。相手はノイズでも、同じシンフォギアを纏う者ですらないと言うのにだ。その違和感の意味を、響はすぐに思い知る事になった。
律の小さな掌とアームドギアの刃が触れ合い……しかし落ちてきたその刃は生身の手を貫く事は無く、それどころか翼とアームドギアの方が弾かれて空中に舞った。
「……っく!!」
とは言え流石に歴戦の防人。強化された身体能力を活かして何度も宙返りすると空中で体勢を整えて、見事な着地を決める。ついでにくるくると回って落ちてきていたアームドギアの剣(既に元の太刀ぐらいの大きさに戻っている)を、上をちらりとも見ずにキャッチした。
対する律は全くの無傷。着衣にすら、僅かなダメージも刻まれてはいなかった。
「え? え? え? 律さん!?」
信じられないものを見た響が尻餅付いたまま、目をぱちくりさせて頓狂な声を上げる。一方で翼は油断無く律を見据えていた。
「『天ノ逆鱗』をまともに受けて微動だにしないばかりか、その威力を増幅して私に打ち返すとは……!!」
そう律へと言う声には、畏敬の念すらもが籠もっているようだった。
「確かに鋭くなりました……が。私の合気を破れないようではまだまだですね……」
何でもないかのように律は言う。近代兵器を凌駕するシンフォギアの大技を受け止めるどころかそれ以上の威力で跳ね返すのも凄まじいが、今の彼女は『エウロペの首飾り』をラエラプスへと預けている。真に恐るべきはそんなムチャを生身の肉体一つでやってみせた点であろう。
「いきなりあんな大技ぶっ放して……少しはスッキリしましたか?」
ラエラプスから受け取った首飾りを付け直しながら、微笑と共に律が言う。
「私は……!!」
むきになった翼が声を上げるが、律に制された。
「私の合気道やあなたの剣術、弦十郎君の拳法に限らず、あらゆる武術の基本にして奥義は心技体の合一。あんなロクに狙いも付けない只の力任せの一撃……あなたの頭に血が上っている事など、見れば分かりますよ……以後……大技を使う時はキチンと相手を見てする事ですね。”ぼやけた視界”では当たるものも当たりませんよ?」
そう言うと律はさっと翼へと背中を見せる。この彼女の優しさを察して、言葉に詰まった翼は胸中で礼を述べた。律が今自分を見ないようにしたのは、見ないフリをする為だ。いつの間にか、頬を伝っていた涙を。誰にも気付かれないようにそれを拭うとシンフォギアを解除して制服姿に戻り、ふらりと立ち上がる。そこに、
「翼さん!!」
こちらも制服姿に戻った響が駆け寄ってきた。
「私、自分が全然ダメダメなのは分かってます。だからこれから一生懸命頑張って……」
ここまでは今の翼にとっては自身の感情が整理出来ていない事も手伝い、耳に聞こえてはいるが頭に入っていない雑音でしかなく、一方で律としては正直空気が読めているとは言い難いが、しかし響のその気持ちは好ましいものであるが故に微笑みを向けて……だが、次の言葉で。
「奏さんの代わりになってみせます!!」
笑顔が強張った。その言葉にぴくりと反応した翼が思わず響に詰め寄ろうとして、だがそれより早く響いた乾いた音に反応して彼女は動きを止めた。
律が、響の頬を張った音だった。
普段の律を良く知る響は痛みよりも、彼女が人を叩くという行為の方に驚いたようだった。今の律の顔からは、いつもの優しい笑みが消えている。
「ごめんなさいね、響ちゃん……でも、私も今の言葉だけは許せないんです」
これが立花響が二課への協力を決めてからの初陣、その顛末であった。
結局、それからもノイズとの戦いは幾度かあったのだが……
「一月経っても、噛み合わんか……」
モニターに表示される響と翼の記録映像、二人の戦い振りを見た弦十郎が溜息混じりに呟いた。
華麗に、舞うように、一切の無駄を省き美しさすら感じさせる翼の戦い振りに対して、響の動きは一目で戦い慣れしていないと分かるほどにぎこちなく、翼が十のノイズを蹴散らす間にやっとこさ一体を仕留めるか仕留めないかという有様である。
二人のこの差は、やはり鍛錬と場数の違いであろう。
幼い頃から戦士として肉体や技術だけではなく、その精神をも鍛え上げられてきた翼に対して、響は一月前まで只の学生でしかなかった。心も体も、この短期間で翼と同じ領域にまで引き上げろと言う方が無理なのだ。その証拠に、彼女は未だアームドギアの発現にすら至っていない。
これだけ二人の能力に隔たりがあってはチームワークが噛み合わないのも必然である。
……という、表面的な理由だけが二人の連携が上手く行かない理由でない事には、弦十郎も思い至っていた。
「……私のせいでしょうか……」
声に申し訳無さを滲ませて、律が進み出る。
翼と響が顔を合わせるのは学園や戦場だけではない。二課では定期的にミーティングがあり当然の事ながら二人も同席するのだが、両者の間に見えない壁が存在するのは誰もが感じている事だった。
元々、翼は響に対して隔意を持っていたし、それが一月前の響の失言で一気に表面化・決定的なものに。更に律のビンタで響自身も過剰に意識するようになってしまって、後はどうにも悪循環の様相を呈していた。
律としては以前からこの事には思い至っていたので折を見て何とか二人を和解、それが無理ならまず一度腹を割って話をさせられればと気を配っていたが、しかしこの気遣いが効果を発揮しているとは正直言い難かった。響とはあの初陣の夜の後、ほんの数日で元通りの二人の距離感に戻れたのだが、問題は翼だ。
響と打ち解けられないのはこの際仕方無いとしても、十年以上も親交のある律がその響とも親しく、また自分と響の間で板挟みのようになっているのを聡い彼女は察しているらしく、だがだからと言って響を認める事も出来ず……そのせいだろうか、響との険悪さだけでなく律との間にもどうにも複雑な空気が漂っているような状態になってしまっていた。
「お前のせいではないさ。時間が掛かるんだ、こういう事はな」
これは弦十郎の意見である。
確かに今日まで続く軋轢は響の失言が原因だが、そもそも翼が半ば八つ当たり気味に辛く当たったのがその発言を引き出す一因ではなかったかと問われれば、一概に否定する事は出来ない。とは言えそれは翼にとってガングニールの装者、奏がどれほど大切で重い存在であるかは弦十郎や律だけではなく、二課の全員が知っている。だから多少の行き過ぎは大目に見ていたのだが……
「……最初から、響ちゃんは奏ちゃんとは違うと、はっきり言っておくべきだったでしょうか……」
「それは何処まで行っても結果論よ。最初にそう言って、それで結果が変わらなかったとしたら、あなたはきっとこう言っているわよ。『もう少し翼ちゃんに気を遣ってあげるべきだったでしょうか』ってね」
と、了子。これも正論と言えば正論である。色々と考えてみても、結果とは往々にして思いも寄らぬものになる。どうすべきだったか、何が正しかったのかなんて結局終わってみなければ分からない。まして響も翼も、所詮は十代の少女でしかない。自分達大人と同じ物の見方、考え方をしろと言ってもそれはまだ無理なのだ。
場にしばらくの沈黙が落ちて、やがて弦十郎が「ふう」と天井を仰いで大きく息を吐いた。
「どうにも、話が行き詰まってきたな……ここの所根を詰め過ぎたし……」
彼はそう言うと「何かあったらすぐに知らせてくれ」と朔也とあおいに引き継ぎの指示を出した。確かに、ここ最近は(特に司令である彼は)本部に詰めっぱなしだった。何か一息入れてリフレッシュし、気分を変えた方が良い考えが浮かぶかも知れない。
「律」
「はい?」
「今夜は、付き合えよ」
そうして二人で夜の町に繰り出した弦十郎と律であったが、間の悪い事にこういう時に限って行きつけの店は閉まっているもの。がっくりと肩を落として次点の店に向かおうとしたその道すがら、珍しい物が目に入ってきた。
屋台だ。橋の下に、ぽつんと店を出している。いやそれ自体はどこにでもある夜の町の光景でしかないが、目を引くのがその屋台の暖簾に書かれた文字である。「おでん」ではなく「焼き鳥」でもなく、「山羊屋」と黒地に白文字でデカデカと書かれていた。
焼き鳥の屋台は良くあるが、山羊料理を出す屋台とは珍しい。そんな好奇心も手伝って、「ここにしてみましょう」と二人は暖簾をめくった。
「ああ、いらっしゃい」
二人を迎えたのは年の頃は四十手前といった所だろうか、屋台の大将というイメージのテンプレートのような、だが精悍な男だった。Tシャツの上に特注と分かるハッピを着ていて、頭には鉢巻、生やした無精ヒゲは不潔よりもワイルドというイメージが先行する。服の上からでも良く分かる鍛えられた体つきで、目付きはサングラスを掛けていて分からないが額から左半面を真っ直ぐに走る刀創は否応にも目に付く……が、彼が纏う快活な雰囲気も手伝って近寄りがたいという印象を、二人の客は抱かなかった。
「お客さん、何にしやすか?」
そんな、これで髪を結って刀でも持っていたらまるで侍のように見える店主は客二人にお冷やとおしぼりを出すと、気さくな口調で注文を聞いてくる。
「私も山羊料理は食べた事が無いので……」
「大将、お任せで適当に頼む」
と、弦十郎。やはり牛や豚と違って今一つメジャーでない山羊という素材を使っている関係上、こうした客は慣れっこであるのか店主は快く頷くと、弦十郎には純米大吟醸を、律には10年物のワインを注いだ。出された酒を味わいつつ二人が待っていると、やがて料理が出て来る。
「これは……」
「山羊刺し……つまりは刺身ですわ。さ、どうぞどうぞ」
勧められるままに二人は皿に載った肉を口に運び、そして表情をほころばせる。
「ほう……こいつはイケるな」
「独特の臭みがありますが、美味しいですね」
「コイツは夕方まで生きていたから鮮度抜群、栄養満点ですぜ。しっかり味わってやって下せぇ。もし臭いが気になるなら、付け合わせのヨモギやショウガを合わせてどうぞ」
と、店主。これは良い店に当たったと弦十郎と律は頷き合って、次には山羊鍋を注文した。
そんな風に飲み食いして、一時間ほども経ったろうか。今日は客が少ないようで、未だカウンターに座っているのは弦十郎と律の二人だけだ。そうして新しく注がれたワインをビールのように呑んでしまうと、律は「ふう」と息を吐いた。
「お客さん、ワインの喉越しを楽しむなんて、何か悩みでもあるんですかい? そっちのダンナも、随分ペースが早いみたいですが」
洗ったコップを拭きながら、店主が尋ねてくる。弦十郎も律も酒の十斗や二十斗で酔うほどヤワではないが、しかし今回は少しばかり疲れが出ていたのかも知れない。
「ん、ああ……少しな」
ぽつりと、口を滑らせてしまう。
「ちょっと……私の可愛い子達の関係が、上手く行っていないのですよ」
無論、いくら酒が入っているとは言え秘密組織たる二課の守秘義務は忘れない。ぼかした言い方になる。
「へぇ……人間関係の悩みですか。お二人は学校の先生か何かで? じゃあ、悩みの原因は生徒さん?」
「まぁ……そんな所だな」
あまり詳しく語って突っ込まれても困るので、弦十郎がそういう風に言葉を濁した。それを受けて店主は顎に手をやって髭を撫でつつ、考えるような仕草をしながら苦笑いを見せる。
「いやぁ、分かりますぜ。年頃の子ってぇのは、難しいモンですからねぇ」
「……大将さん、あなたのお子さんの話ですか?」
「ん……一口で言うのは難しいですが……まぁ、昔からの知り合いってトコでねぇ。向こうっ気の強えェ可愛い子なんですが、俺はあんまり傍に居てやれねぇから信頼出来るヤツに任せているンですが……どうにもここ最近、上手く行かなくて」
笑いつつ店主はこちらも微妙に言葉を濁す。まぁ、出会ってまだ一時間しか経っていないし、ぼかしているのはお互い様だ。弦十郎と律のどちらも不快に思った様子は見せない。
「でもまぁ、俺はこう思う事にしてるんですよ」
口髭を弄っている右手から、キリキリという機械的な音が鳴った。
「うん?」
「世の中の物事の大体は……最悪にさえならなければ、何とかなるってさ」
店主のその言葉に、酔った勢いもあったかも知れないが二人は「成る程」と頷く。そういう考え方は思い付かなかった。翼と響、あの二人にとっての最悪とは……先月のあの戦場で二人が戦い合って、どちらかあるいは双方が動けなくなる……最悪の中の最悪としては死亡するケースだ。それを避けられたのは良かったという考えもある。
今はあまり良い空気とは言えないが……だがそれは二人だけではなく、周りの者もフォローして解決する問題であろう。
二課本部で難しい顔を突き合わせているだけではこんな考えには至れなかったろう。それだけでも、外へ出て気分を変えた甲斐はあった。それに、運もあった。こんな店に入れたのだから。
「美味かったよ、大将。おあいそしてくれ」
「また来させてもらいますよ。次は、私に奢らせて下さいね」
「しめて1万円きっかりになります。今後ともご贔屓に」
気持ちの良い笑顔で手を振る店主に見送られて、二人は家路に就いた。どちらも明日は、翼と響への接し方をもう少しは変えられるだろうと良い気分で。
だがこの翌日。”最悪の事態”は現実に起こる事になる。
山羊を連れて、『鎧』を纏った少女の訪れによって。