ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~ 作:人民の敵
では、どうぞ。
2023年8月25日第38層《血盟騎士団》本部
sideレイ
俺はギルド《血盟騎士団》の本部で再びヒースクリフと顔を合わせていた。ただし、今回は攻略組最大のギルド、旧《ドラゴンナイツ・ブリゲード》通称DKBが発展改組してできた《聖竜連合》通称DDAのリーダー・リンド、それに《聖竜連合》に次ぐ規模を持つ攻略ギルド《天穹師団》通称DoDのリーダー・グヴァイスの2人も交えた会談で、攻略組の中には今日の会談を第2次世界大戦後に資本主義と社会主義の協調の為にスイスでアメリカ・旧ソ連・イギリス・フランスの四大国が会談した《四巨頭会談》になぞらえて《攻略組四巨頭会談》などと呼んでいる者もいるらしい。
「ではレイ君、ディスペア君の捕縛には失敗したという事かね?」
ヒースクリフは俺を見据え、真剣な声色で言った。今日の議題も
「ええ、奴は自身の周りにラフコフのメンバーを配備していました。恐らく……」
そこで俺は言葉を切り、息を整えると続けた。
「
「それは本当なのかね?」
グヴァイスが尋ねて来る。彼が率いるギルド《
「恐らく、という可能性を外れないですが。多分、こちらの情報が洩れているのでしょう。…ヒースクリフ団長、心当たりは?」
「ふむ、ギルドの例会でアスナ君を筆頭にする数人の幹部には伝えたが、それ以外のメンバーに知らせてはいない。それに、幹部にも箝口令を出したが誰かが情報を洩らしたというのは可能性としては有り得る。しかし、こんな短期間に内通者が複数も出るだろうか?」
ヒースクリフの言葉は妥当だ。しかし、事実の前にはそんな希望的観測は音もなく崩れ去る。
「残念ですが…」
「待ってくれ、その言葉からすると我々のギルドにも内通者がいるかもしれないという事になる」
と口を挟んだのは聖竜連合のリンドだ。彼はこの四人の中でも最も長くゲーム攻略の指揮を執っており、その経験から来る信頼は血盟騎士団やレインボー・スピリッツ、天穹師団が台頭し、聖竜連合の独占的地位が喪失してからも健在だ。
「もちろん、僕もそんなことは信じたくはないですよ。しかし、ディスペアがラフコフと通じていることが事実となった以上、そのことから目を背けてはいけない。そして、少しでも早くラフコフの行動を阻止しなければいけない」
「そんなことは重々承知している。しかし、どうするのかね?我々には情報が少な過ぎる。彼らの根拠地、メンバーの数、その実力……まだ未知のことの方が遥かに多い。そんな状況で彼らを止めるのは至難の業だ」
グヴァイスが言う。確かに彼の言っているのは正論だ。
「まず、この四ギルドから人員を出し合い合同の捜索隊を組織し、ディスペアの行方を捜す、それが先決でしょう」
「しかし、ディスペアは二つ名を持つほどの凄腕だ。生半可な戦力じゃ、忽ち返り討ちに遭うぞ」
今度はリンドが言う。どうやら《聖竜連合》と《天穹師団》はこの問題にあまり関わりたくないようだ。それもそのはず、
「なら生半可な戦力でなければ良いでしょう。ならばきちんとした部隊を作ればいいだけです。そうですね……大体各ギルドから7人ずつ位人員を出してもらい、そこにソロのプレイヤーを何人か加えれば十分でしょう」
「ふむ、レイ君の言っていることは最もだ、我々KoBはそれだけの人員を出す余裕もある。提案をしたという事はレイ君のRSPも大丈夫そうだ。しかし、DDAとDoDのお二方はどうなのかな?」
ヒースクリフが俺の意見を擁護する。ヒースクリフに訊かれたリンドとグヴァイスはしばし黙考していたが、口を開いた。
「DDAは人員的には余裕があるが…部隊に参加するメンバーの安全を保障してくれるなら人員を出そう」
「DoDも基本的にはDDAと同じだ。メンバーの安全が保障されるのなら人員を出す」
「安全とは生還という解釈でよろしいですか?さすがに
俺が確認するように言うと、DoDとDDAの2人は頷いた。
「それで構わない」
リンドがそういうと、ヒースクリフは俺に質問してきた。
「捜索日時はどうするのかね、レイ君」
「そうですね、各ギルドの人選などもあるでしょうし…1週間後の9月1日の10時に最前線のフロアに集合にします。それで問題ないですよね?」
「方法は?」
グヴァイスが尋ねてくる。
「情報屋と攻略組の諜報班の情報でいくつかのポイントを絞り込んでその1つ1つを虱潰しにあたっていきます」
「さっきのレイさんの言葉からすると捜索部隊は約35人ほどとなるが、相手がそれ以上の戦力を持っている場合は」
「それは有り得ないでしょう。いくらラフコフの実力が未知数だとしても攻略組を越えるメンバーを何十人規模で有している可能性は非常に少ないし、仮にそうだとしても連中がその全部を対攻略組に充てることはないでしょうし、ね」
俺がそう言うと、ヒースクリフは頷いていた。何故かこの人物は俺の意見に対して大抵肯定的な反応を見せる。ボス攻略会議の場では自分のギルドの副団長であるアスナの意見より俺のそれを支持することさえある。その理由は、
「…ラフィン・コフィンの問題はこの場にいる四ギルドだけではなく、攻略組全体の問題だ。我々はこの問題を率先して解決に取り組む責任があると私は思う。だからこそ、今はディスペア君の行方を捜すことが先決である。レイ君の意見は確かに危険を伴うものであるとは思うが、しかし避けては通れない道だ。この四ギルドが協力してこの問題を少しでも光を持つ方向に持っていこう」
そのヒースクリフの言葉にリンドとグヴァイスが頷く。
「もちろんだ。我々DDAも犯罪者、いや殺人者は許さない。お互い相容れない部分はあるが、この問題に関しては全面的に協力しよう」
「DoDもこの問題は場合によっては相当な危険になる可能性を孕んでいると思う。我々もこの問題を解決するためにはあらゆる努力をすると誓おう」
そう言うとRSPリーダーの俺、KoB団長のヒースクリフ、DDAリーダーのリンド、DoD団長のグヴァイスの4人は手を重ね、ラフコフに対してのあらゆる努力を誓った。
そして、盟約書にサインし、攻略組の対ラフコフ・犯罪者ギルドの組織である《
「では、よろしく頼んだよ、レイ君」
というヒースクリフの声を聞きながら、俺、リンド、グヴァイスの3人は部屋から退出した。
(この会談でKoB、DDA、DoDの思惑が大方分かった)
最初にこの問題に気付いたヒースクリフのKoBとメンバーから裏切り者が出た俺達RSPは対ラフコフ強硬派、後から問題のことを知らされたDDAとDoDは対ラフコフ消極派だ。いかにこの問題が重大だとしても、これが元となって攻略組が二分されたりするのは防がないといけない。その為にはまず1週間後のディスペアの捜索を死者ゼロで終わらせなければいけない。もし1人でも部隊から死者が出ればDDAとDoDはもう対ラフコフの作戦で動かない。そうなれば実質対応するのがKoBとRSP、それと僅かなソロプレイヤーのみになり、そんな状況でラフコフの暗躍を防ぐのは不可能だ。
「はぁ……」
俺は1週間後の捜索作戦のことを思い、人知れずため息をついた。
はい!今回は四大攻略ギルドの会談ということですが、結成から1ヶ月でトップギルドにまで押し上げるとは……レイの政治力とメンバーの実力、恐るべし。
次回はディスペアの捜索作戦を書こうと思います。次回もお楽しみに!!
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