ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~   作:人民の敵

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 今回はようやくランが登場です!!
では、13話、どうぞ!!


《第13話》姉妹の再会

2023年10月20日AM11:00第20層迷宮区

sideout

 

「はあ、はあ…」

 紺野藍子/ランは迷宮区を走っていた。()()()の命を守るために。

 

「大丈夫?ルクスちゃん」

 

 ルクスと呼ばれた少女はこくんと頷いた。彼女は殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の補給要員だった。ついさっき、脱走するまでは。

 

「は、はい!でも…すいません。何の関係もないランさんまで巻き込んでしまって」

 

 ルクスは走りながらやや遠慮がちにそう言った。

 

 ランがクエストでこの20層の迷宮区に入ると、何かから逃げている少女と出会った。異変を察したランが事情を尋ねると、その少女は自分がラフコフに脅されて補給をさせられていたこと、そして今日脱走しようとしたところをラフコフのメンバーに見つかり今追われていることを話した。その少女—ルクスの話を聞き、ランは逃走を手助けすることにした。曲がりなりにも攻略組の端くれで、細剣使い(フェンサー)としての実力もついてきたランなら、たとえルクスを追ってきたラフコフメンバーと干戟(かんか)を交えることになっても、彼女を逃がしながら自分も撤退することができるだろう。そう考えていた。

 

 しかし—

 

「はぁ。もう30分近く走っているのにまだ15人も…」

 

 人数が多過ぎる。とてもでは無いがラン1人の手に負える人数ではない。いや、ラン1人だけなら細い通路に誘導しながら1人ずつ相手にすれば助かる可能性は高い。しかし、ルクスを守りながらとなれば話は別だ。

 

「だ、ダメなんですか!?私たちもう…」

 

 ルクスが切り詰めた声で言う。その声には震えがある。

 

「大丈夫よ。私を信用して」

 

 ランはルクスを落ち着かせるように言った。しかし、このままだと危ない。攻略組の対犯罪者(オレンジ)特殊部隊、《攻略組対犯罪者特殊討伐部隊(UCSF)》の部隊に連絡して助けを求めるという方法はある。しかし、今連絡しても救援の部隊が駆け付けるのにはどんなに短く見積もっても1時間はかかる。それまで無事である可能性はほぼ無い。すぐ近くにUCSFの部隊がいれば話は別だが、そんな幸運は恐らくない。つまり、ランたちが生還できる可能性はほぼゼロ。

 

「あっ!!」

 

 その声にランが振り返ると、ルクスが倒れていた。慌てて彼女のもとに行くと、足にレッグホールドトラップ、つまりトラバサミに挟まれていた。ランはすぐにトラップを解除した。

 

「大丈夫!?ダメージは!?」

 

 ランは立ち上がったルクスに訊いていると、気付いた。ラフコフメンバー15人がこちらを見てニタリと笑っていることに。

 

「嘘…」

 

 そこでランはさっきのトラップの意味を知った。あれはラフコフが仕掛けた侵入防止、

そして()()()()のためのトラップ。つまり、奴らはルクスの脱走を察知していた。

 

「もう逃げられないぜ?」

 

 リーダー格らしき1人が言う。はっと後ろを向くと、そこにはレッグホールドトラップがびっしりと設置されていた。

 

「くっ…」

 

 ランが細剣を抜くと、ラフコフメンバーの1人がリーダーに言った。

 

「どうしますリーダー?こいつら、どう料理します?」

 

「ッ…!!」

 

 ランはもう勝てる可能性なんて考えず、メンバーに飛び掛かろうとした。

 

「お?剣舞姫様はやる気のようだぞ?なら…受けて立つしかないよなぁ?」

 

 リーダーの言葉を合図に、メンバーは三々五々に自分の得物を抜く。彼らの武装はまちまちだし、統率にも欠ける。しかし、彼らの目にはある共通の特徴があった。

 

 人から何かを奪うことを快感と捉える凶悪な光。

 

 その光を携えた犯罪者(オレンジ)プレイヤーはランに一斉に斬りかかろうとした。

 その刹那。

 

タタンッ!!

 

 凄まじい音と共に、後方のレッグホールドトラップが1つ残らず吹き飛ばされた。途端、その場にある臭いが充満した。

 

「んなっ…」

 

 リーダーを含めたラフコフメンバーが唖然とする中、ランの後ろから1人のプレイヤーが歩いてきた。その姿を見てラフコフメンバーの1人が震えた声で言う。

 

「し、《神銃》……?」

 

 ランが後ろを振り向くと、全身をエメラルドグリーン色の装備で統一し、銃をラフコフメンバーに向けながらこちらに来ている少年がいた。ユニークスキル《狙撃》を操るSAO唯一の狙撃手(スナイパー)、レイ。攻略組四大ギルドの1つ《レインボー・スピリッツ》通称RSPのリーダーにしてUCSFの初代総司令官。またの名を《神銃》。

 

「てことは…《絶剣》もここにいるのか!?」

 

「ユウキならここからすぐのところにいるし、この迷宮区の入り口にUCSFの部隊を待機させてるから、すぐにでも呼んでやるよ。捕まるのが嫌ならここから立ち去ることだな」

 

 レイが言う。その言葉、いや《UCSF》の単語を聞いたリーダーが顔面蒼白になる。そして、ランは《ユウキ》という言葉が耳に引っかかった。今でもどこにいるか分かないランの妹の名前は木綿季(ゆうき)、アバターネームも《ユウキ》にすると妹は言っていた。

 

「て、撤退だ!さっさと逃げるぞ!!」

 

 そのリーダーの言葉を聞き、メンバーは慌てて来た方向に立ち去った。

 

 

sideback

sideレイ

 

 

「はぁ…」

 

 俺はため息をついた。それからUCSFの部隊を率いて入り口に待機してるスメラギに通信アイテムで連絡し、主街区に先に戻って帰還するように指示すると、すぐそばでハイドしているユウキを呼んだ。

 

「ユウキ、もういいぞ」

 

「ほーい。疲れた。ハイドするのって疲れるんだ…」

 

 ユウキは途中で言葉を切ると、目をぱちぱちさせてついさっきラフコフに追われていた黒髪の女性を見る。その目線に気付いたその女性もユウキの方を見、そして驚いたように声を上げた。

 

「木綿季……?」

 

「お姉…ちゃん……?」

 

 俺は思い出した。ユウキは確か、前に姉がいることを話していた。そして、その姉がSAOにログインしているかもしれないということも。

 

「ほんとに木綿季なのね…?」

 

「うん…お姉ちゃん、SAO(この世界)にログインしていたんだね……」

 

 感動的な姉妹の再会を邪魔する訳にもいかないので、もう1人の少女に話を聞くためにその少女のもとに行く。やや緑がかった白色の髪に緑基調の装備。装備品のランクから察するに、中層プレイヤーのようだ。

 

「あ、あの君…」

 

「あ、は、はい!」

 

その少女は俺が声を掛けると、やや警戒したような目をして答えた。多分、俺の容姿というより武器、最近《狙撃》の熟練度上昇で装備できるようになった機関銃、第40層のボスのラストアタックボーナス(LAB)、《Crisis-MINIMI13》を見たからだろう。自衛隊で制式採用されているこの機関銃は突撃銃を遥かに上回る連射性能を誇り、見た目もいかにもな銃なので、十分な威圧感がある。

 

「えっと、俺の名前はレイっていうんだ。ラフコフに追われていた経緯を話してくれるかな?」

 

 俺が自己紹介すると、少女の顔が見開かれた。

 

「レイさんって、UCSFのユニークスキル使いのあの…?」

 

「あ、ああ。そうだけど…」

 

 俺がやや戸惑いながらそう答えると、少女の顔がぱあっと明るくなった。

 

「す、スッゴイ!!私、ルクスって言います!レイさんの大ファンなんです!!!」

 

「え、あ、そ、そうですか…」

 

 などとやり取りしていると、ユウキと黒髪の女性が戻ってきた。

 

「レイ、待たせてゴメン。えっと…」

 

「さっきは助けて頂き、有り難うございました。私、ユウキの姉のランと言います」

 

「えっと、俺はユウキとコンビを組んでいるレイです。ランさんは攻略組の…?」

 

 俺はランに訊いた。武装は華奢な細剣、その輝きからみて相当な高ランク品だと判断し、恐らく彼女は攻略組のレベルだろうと察した。ボス攻略では会ったことはないが、そもそもボス攻略は49人という人数的制限があるため、攻略組の中でも特にハイレベルなプレイヤーしか参加せず、また死者が出ない限り入れ替わることも殆どない。俺やユウキを含めたRSPのメンバーやKoBのヒースクリフやアスナ、キリトなどはある意味攻略組の中でも特殊な存在なのだ。しかし、ボス攻略には参加しなくても偵察戦や迷宮区のマッピングで攻略に貢献している者は数百人単位で存在する。多分、ランもその数百人の内の1人なのだろう。

 

「ええ、主に偵察戦を担当して、ボス攻略に参加した事はありませんが…」

 

「そうだったんですか……。えっと、追われていた経緯を話していただきませんか?」

 

「えっと、かいつまんで話すと……」

 

 ラン曰く、クエストでこの迷宮区に入るとルクスというもう1人の少女に出会い、そのルクスがラフコフのいわゆる補給要員として強制的に脅されて協力させられてることを知り、その逃亡を幇助したランとルクスがラフコフに追い詰められていたところに俺が来たと言う訳だ。

 

「えっと、ルクスさんはいわゆるラフコフの脱退者としてUCSFで色々話を聞かせてもらうことになるけど、ランさんはどうしますか?」

 

 俺が訊くと、ランは頷いた。

 

「私も一緒に行きます」

 

「分かりました、では、行きましょう」

 

 

――――――――――

 

 

2023年10月20日PM1:00第37層UCSF本部

 

 俺はUCSF本部の司令室にユウキと一緒にいた。階下にある小会議室ではUCSFのメンバーによるルクスとランの事情聴取が行われている。

 

「なあ、ユウキ?」

 

「ん、何?レイ」

 

「ホントだったんだな。お姉さんがSAO(ここ)にいるって」

 

 俺が言うと、ユウキは頷いた。

 

「うん、ボクもびっくりしたよ。もうすぐSAOが始まって1年が経つし、こんなに経ってまだいないならもうお姉ちゃんがここにいるとは思ってなかったけど…よくよく考えたらアズサだってレイと再会したのは3ヶ月前だったね」

 

「確かにな。どう思った?」

 

 俺が訊くと、ユウキは首を傾げた。

 

「どう思ったって?」

 

「お姉さんがここにいて、だ」

 

「うん…会えて嬉しいけど、お姉ちゃんまでこのデスゲームに来ちゃったんだって考えると少し悲しいかな」

 

ユウキは少し考える素振りをしてからそう答えた。

 

「ああ…俺もアズサと会った時そう感じたな…」

 

ガチャッ

 

 ドアの開くその音に反応して俺がドアの方を向くと、UCSF副司令のアスナが立っていた。彼女は38層のギルド本部で会議中だったが、俺が無理を言って来て貰った。

 

「アスナ、すまない、会議中に呼び出したりして」

 

「構わないわ、ヒースクリフ団長も許可しているし。ていうか、本部を新築したのね。てっきり私はレインボー・スピリッツの本部を流用するものだと思っていたけど」

 

 俺が軽く謝罪すると、アスナは涼しい顔でそう返した。

 

「ああ、それも考えたがそうすると俺がUCSFを私物化しようとしてると思われるだろ?だからRSP(うち)のメンバーとキリト達とでここを共同購入した。扱い的にはRSPの支部となってるが」

 

 俺は苦笑しながらそう言った。

 

「そうだったのね。で、要件って?」

 

「ああ…」

 

 俺がアスナに事の顚末(てんまつ)を話そうとすると—

 

コンコンッ

 

「はい、どうぞ」

 

 ノックがあった。俺が応えると、ドアがもう一度開く。

 

「総司令、それに副司令、事情聴取が終わりました」

 

 ノックの主、聖竜連合のクルスがそう俺に伝えた。彼はUCSF設立以降、ギルドよりもUCSFの任務を優先している。それが個人の意思なのかギルドからの指示なのかは不明だが、非常に役に立っている。

 

「了解」

 

「彼女たちはどうしますか?」

 

「一旦RSPで保護する。ギルド本部まで送り届けてやれ」

 

 俺がそう指示するとクルスは「了解しました」と部屋を出て行った。それを見届けた後、アスナの方に向き直る。

 

「事情聴取ってどういうこと?ラフコフのメンバーを捕らえたの?」

 

 至極最もな質問をするアスナに俺は微笑しつつ答えた。

 

「半分当たりで、半分外れ。正確に言うと、脱出したラフコフのメンバーと彼女の逃走を幇助した攻略組のプレイヤーを救出してUCSFで保護した。んで、その攻略組プレイヤーが聞いてびっくり、なんとユウキのお姉さんだったというわけだ」

 

「ユウキのお姉さん!?ホントなの、ユウキ?」

 

 目を見開いて訊くアスナに、ユウキは頷いた。

 

「うん、びっくりした。もういないと思っていたからね」

 

「そうなの…で、その脱走したラフコフのメンバーだけど、《彼女》ってことは女性なの?」

 

 アスナが訊く。

 

「ああ、なんでも脅迫されて無理やり協力させられていたらしい」

 

「ふうん。で、保護するって言ってたけどどうするの?メンバーに加えるの?」

 

「それなんだよな。ランさん…ユウキのお姉さんは攻略組プレイヤーだから入れるのに問題ないんだけど、その元ラフコフの少女はレベル的に中層プレイヤーなんだよな。もし入っても攻略には参加させられないと思うんだ」

 

 俺が言うと今まで黙っていたユウキが口を開いた。

 

「うーん、ボクは2人とも入って欲しいと思うんだ。お姉ちゃんは戦闘に参加してもらえるし、ルクスは色々戦闘以外のことで頑張ってもらえると思うし、ね」

 

「確かに…でもそれはあとで本人の意思を確かめてから決めるよ。少なくとも1ヶ月はラフコフの報復を防ぐためにギルドで保護する」

 

「そう…ていうかそろそろ帰ってもいいかしら?例会の途中で抜けたから少しでも早く戻りたいんだけど…」

 

 アスナがそう言い募る。

 

「おいおい、まだ20分しかいないじゃねえか…副司令だという自覚をもう少し…」

 

「あるわよ!!ギルドが優先なの、私的には!!」

 

 副司令殿はそう言ってそそくさと退出してしまった。

 

「はぁ…気が強いなあ」

 

「確かにね」

 

 司令室には、俺とユウキの苦笑が残っていた。




 はい、ちなみにUCSFにはRSP全メンバーが入っていますよ。更新遅れてすいません。次回は多分少し遅くなります。気長にお待ち頂けると幸いです。次回もお楽しみに!!
 感想、評価もお待ちしています!!
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