ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~ 作:人民の敵
では、どうぞ!
2024年2月17日AM8:00第35層《ルーザスベルク》
sideシリカ
此処、私の部屋じゃない。
それが私が起きて第一に考えた事だった。
「シリカちゃん、おはよう」
その声に慌てて横を見ると、ユウキさんがにこにこしながら床を指で示していた。
「おはようございます、ユウキさん」
と言いながら床を見ると、レイさんが寝袋に
sideout
sideレイ
「レイ、朝だよー」
「…おはよう。ユウキ、シリカ」
俺はユウキの声で目を覚ました。そしてすぐに寝袋から出て、片付ける。
「ごめんなさい、此処で寝てしまって」
「気にしなくていいさ。それより、朝飯を食べに行こう」
「はい」
「うん」
俺達は20分ほどで朝飯を食べると、すぐに宿を出て転移門に向かった。
「さて、行くか」
「そうだね」
「はい。お願いします。あっ、私、第47層の主街区の名前知らないや…」
シリカがそう言ったのを聞いて、ユウキが言った。
「大丈夫だよ、ボク達が言うから。ねっ」
俺は頷き、ユウキと同時に言った。
「「転移、フローリア!!」」
第47層主街区《フローリア》
「綺麗…」
転移すると、風景を見たシリカが呟いた。
「此の層は通称《フラワーガーデン》と呼ばれている。街だけじゃなくフィールド全体が花だらけだからそう呼ばれているんだ。さすがに迷宮区はちょっと違うけどな。時間があれば北にある《巨大花の森》に行けるが、今回は時間がないから省略するな」
俺がそう説明していると、シリカは周りの花々に目をやっていた。
「じゃあ、出発するぞ」
「了解!!」
「はい」
そうして、俺達3人はフィールドに向け歩き始めた。
「さて、これから探索を始めるが、君のレベルと装備から考慮しても、此処のモンスターは労せずに倒せると思う。でもフィールドでは不測の事態が起こる危険性は常に存在する。だから、俺やユウキが逃げろという指示を出したら何処でもいいから圏内の街に転移してくれ」
俺はポーチから取り出した転移結晶をシリカに握らせながら言った。
「で、でも…」
「俺達は大丈夫だ。そうだよな、ユウキ?」
「うん」
ユウキはいつも通りだな。
「そういう事だ。分かってくれたな?」
「分かりました」
「じゃあ、行こう」
第47層《思い出の丘》に繋がる経路
「ぎゃああああああああ!?な、なにこれー?気持ちワルー!!こっ来ないでー!!レイさん、何とかしてくださーい!!」
「…了解」
俺は片手直剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》を放ってモンスターをポリゴンの欠片にする。
「言っとくけど、こんなのでびびっていたら先がツラいぞ。幾つも花が付いた奴とか食虫植物みたいなのとかぬるぬるした触手が大量に生えた奴とかイソギンチャクみたいなのとかその他諸々」
俺がそうからかうと、シリカは顔を青くして叫んだ。
「キエー!!」
「からかいすぎだよ、レイ」
ユウキが苦笑いしながら言った。ただし、目は笑っていないが。
「わわわわっーーー!!!」
「今度はどうした…」
俺はシリカの方を見て絶句した。そこでは、シリカが食虫植物みたいなモンスターに宙づりにされていた。
「レイ?それ以上見たら…分かっているよね?」
ユウキが剣を俺に向けながら言う。マジで怖いんですが…。
「シリカちゃん、レイには絶対見せはしないから両手使ってもいいよ」
「は、はい」
俺が後ろを向いていると、ソードスキルの音が聞こえ、そしてほどなくモンスターがポリゴンの欠片となって破砕する音が聞こえた。その音を聞いた後、恐る恐るユウキに訊く。
「あの~、もう前向いても……」
「いいよ」
「分かった」
そして俺は前を向いた。そして気付いた。ユウキの後ろに件の食虫植物型モンスターが
スタンバイしているのに。
「ユウキ、後ろ」
俺がそう言うと、ユウキが振り向き、一瞬凍り付く。そして、食虫植物型モンスターは攻撃態勢を取る。
「ったく…」
俺はユウキが宙づりにされる前に腰から小型の
「サンキュ、レイ。後は任せて!」
と言いながらユウキは片手直剣ソードスキル二連撃技《バーチカル・アーク》を放ち、食虫植物のHPを吹き飛ばした。
そしてその後5・6回の戦闘をこなし、俺達は《思い出の丘》に辿り着いた。
「あれが思い出の丘だ。この橋を渡ればプネウマの花が咲くという場所に着く。ただし、ここからは出てくるモンスターの質と量がこれまでとは桁違いになるから、より気を引き締めてくれ」
「了解ー」
「分かりました」
その後、10回程モンスターと
「ここに…」
シリカは頂上にある白色の大岩に駆け寄る。しかし、その岩のてっぺんを見たシリカが泣きそうな声で言った。
「ない…ないよ!!レイさん、ユウキさん!」
言われ、俺は岩を凝視する。そして、そこに白い花が咲き始めるのを見、俺はシリカに言った。
「いや、そこをよく見て。白い花が咲き始めた。それがプネウマの花だよ」
もう一度岩を見たシリカは、花を見つけると、丁寧な動作でそれを取った。
「これで…ピナは生き返るんですね?」
俺は頷いた。
「ああ。でも、ここにはモンスターが
「はい」
幸いにも、帰り道ではモンスターとのエンカウントはそこまで無かった。問題は恐らく俺達を襲撃するであろう
「チッ…」
思わず舌打ちしてしまう。案の定プレイヤーが検出された。人数は12名。
「そこで待ち伏せている奴、出て来いよ」
「やっぱ、来たね」
ユウキも状況を理解したようだ。
「昨日の打ち合わせ通り、護衛頼んだ」
「了解」
そうこう言ってると、橋の向こうからプレイヤーが現れた。真っ赤な髪、赤い唇、真っ黒なレザーアーマーに、十字槍を持っている。
「ロ、ロザリアさん…?どうしてここに…」
十字槍を持ったプレイヤー、俺達が昨日言葉を交わし、また今回の
「アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、剣士サン?あまり強そうには見えなかったケド、侮っていたかしら?」
「そりゃどうも、でも俺は剣士じゃないんでね」
俺が皮肉たっぷりに返すと、ロザリアはすこし怪訝そうな顔をしたが、すぐに今度はシリカに視線を移した。
「その様子だと、首尾よくプネウマの花をゲット出来たみたいね。おめでと、シリカちゃん。じゃ、それをアタシに渡してちょうだい」
「な、何を……」
俺は状況が分からず立ち尽くすシリカの前に立ち、言った。
「そうは問屋が卸さないな、ロザリアさん。いや、
ロザリアの眉がピクリと動き、笑みが消えた。
「で、でも、ロザリアさんはグリーン…」
「オレンジギルドといっても全員がオレンジな訳じゃない。偵察役が情報を収集し、誘導役のグリーンが適当なパーティーを見繕い、ポイントまで誘導する。恐らく、昨日俺達の会話を盗聴してたのも奴の仲間だ」
そう俺が言うと、シリカは目を鋭くして言う。
「じゃあ、今まで一緒のパーティーにいたのは…」
「そうよォ、あのパーティーの戦力を評価するのと同時に、冒険で金が溜まるのを待っていたの。ホントなら今日でも
ロザリアの問いに俺は首を振って応えた。
「いいや、違うね」
「ボク達はあなた達を探していたんだ」
ユウキがそう言うと、ロザリアは首を傾げる。
「どういう事かしら?」
「お前は10日前に38層で《シルバーフラグス》ていうギルドを襲撃したな。メンバー4人が殺害され、リーダーだけが脱出に成功した」
「ああ…あの貧乏な連中の事ね」
俺が言うとロザリアは頷いた。
「リーダーだった男はな、毎日最前線のゲートで、仇討をしてくれるプレイヤーを泣きながら探していた。だがな……その男は依頼を受けた俺達に、お前らを殺してくれとは言わなかった。黒鉄宮の
「分からないわよ。何よ、マジになってバカみたい。ここで人を殺しても現実でソイツが死ぬ証拠なんてないし、現実に戻っても罪に問われないわよ。ただ、笑っちゃうわね。戻れるかどうか分からないのに正義だの法律だの。アタシそういう奴が一番嫌い。この世界にそんな妙な理屈を持ち込む奴がね」
俺は思わず苦笑してしまった。
「俺も一番嫌いだよ。“罪に問われないから”っていう理由で人を殺す奴が。現実で殺す勇気がない癖にここで平気で殺人する奴がな。どうせお前らは”現実に戻ったら罪になる”って言われたら出来ないんだろ?でも、誰がお前を裁くのが日本の法律だと言った?」
「アンタが裁くとでも言いたいのかしら?剣士サン?でも、たった3人でどうにかなると思ってんの…?」
その声が合図だったように、橋の向かいから次々とプレイヤーが現れる。その数、11人。
「れっレイさん、ユウキさん!相手が多すぎます…脱出しないと!」
「問題ない。俺達が撤退の指示を出すまでは結晶を握って待機してくれ」
「レイ、ユウキ……?」
ロザリアの一味の1人が数歩後ずさる。
「その服装…サイドアームの盾無しの片手剣…《神銃》?で、その相棒の女性プレイヤー、《絶剣》…?ろ、ロザリアさん、ヤバいよ。こいつら、ユニークスキル使いの攻略組だ!!」
sideシリカ
まさか。《神銃》《絶剣》と言えばこの世界に4人しかいないユニークスキル使いのトッププレイヤーだ。中層プレイヤーでもこの名前は誰でも聞いたことがあるはずだ。そんな攻略組最強と呼ばれる2人と今まで行動を共にしていたとは思わなかった。
sideback
sideレイ
「こ、攻略組がこんな所をウロウロしている訳ないじゃない!どうせ姿を騙ってびびらせようとしてるコスプr」
そのロザリアの言葉が終わらない内に、俺は背中にずっと隠していた短機関銃を装備し、立射の姿勢で構える。ユウキを除いた場の全員が凍り付く。
「こいつは短機関銃だ。この世界では銃を使える奴は《狙撃》スキルを持っている奴しかいない。なら、銃を持っている以上、俺は《本物》だろ?違うか?」
「も、もし本当に《神銃》と《絶剣》だったとしても、この人数で掛かれば2人位余裕よ!!」
その声に勢い付かされた様にオレンジプレイヤーの先頭に立つ大柄な斧使いが叫んだ。
「そ、そうだ!攻略組なら、すげえ金とかアイテムとか持ってんぜ!オイシイ獲物じゃねえか!!」
口々に同様の言葉を喚きながら抜刀する賊たちを俺は冷ややかな目で見てた。
「レイさん、無理だよ、逃げようよ!!」
シリカの泣きそうな声が終わるか終わらないかという時、賊は武器を構え、橋を我先にと駆け―
「オラァァァ!!」
「死ねヤァァァ!!」
俺を半円状に囲むと、剣や槍、斧を一斉に突き出した。9発の斬撃が、俺の体を捉える。
「いやぁぁぁ!!やめて、やめてよ!!レイさんが…死んじゃう!!」
シリカの絶叫を聞き、俺はユウキにアイサインを送る。ユウキが頷く。
「大丈夫、ほら、レイのHPをよく見て」
「あっ、HPバーが全然変わってない」
そのことを訝しく思ったロザリアが配下に檄を飛ばした。
「なにやってんだ!!さっさと殺りな!!」
それを聞いたオレンジ達が再び俺に斬撃の雨を降らせるが、状況は変わらない。
「お、おい、どうなってんだよこいつ…」
賊の1人が異常なものを見るように俺を見、言った。それが呼び水になり、他の8人も
攻撃を中止する。
「
賊たちは茫然としたように口を開けていた。
「そんなの……アリかよ…メチャクチャじゃねえかよ…」
「そうだ、たかが数字が違うだけでここまで違いが出るんだ。それがレベル制MMOの宿命なんだよ」
「チッ」
ロザリアは転移結晶を掲げ、コマンドを唱えようとした。その刹那―
パンッ
俺は短機関銃を一発撃った。
「なっ…」
俺が放った9×19パラベラム弾は、寸分の狂いも無くロザリアの持つ転移結晶に命中し、それを粉砕した。そして、俺は素早くロザリアの目の前に動き、短機関銃をこめかみに押し当てる。
「ひっ…」
「生憎逃がすつもりは毛頭ないんでね」
ロザリアが顔を強張らせる。俺はそのままロザリアを襟首を持って引き摺って行く。
「は、放せよ…どうするつもりだ畜生!!」
俺は答える代わりに腰から回廊結晶を取り出す。
「こいつは依頼主が全財産はたいて買った回廊結晶だ。行き先は黒鉄宮の監獄エリアに設定してある。今からお前ら全員これで
「―もし、嫌だと言ったら?」
「全員射殺する…と言いたいとこだがその時は致し方ない。こいつを使うさ」
「こいつは電磁スタン弾って言ってな、レベル5の麻痺毒に等しいの威力の拘束能力を持つ弾薬だからな、15分は動けないぜ。自分から入るか、投げ込まれるか、自分で選んでくれ」
俺が言うと、全員が項垂れた。それを見て、俺はコマンドを唱えた。
「コリドー・オープン」
俺が回廊を開くと、次々と賊が入っていく。そして、ロザリアだけが残った。
「……やりたきゃ、やってみなよ。グリーンのアタシを傷付けたらあんただって…」
「言っとくが俺は
俺は銃を押し当てたまま、ロザリアを高くぶら下げたままコリドーに近づく。
「ちょっと、やめて…やめて!許してよ…ねえ!!」
その言葉が終わるか終わらないかした時、俺はロザリアをコリドーに放り込んだ。役目を終えた回廊は消え去った。
「すまないな、シリカ。君を囮にする様なマネをして。俺やユウキの事は、どうしても言えなかった」
「いえ…ユウキさんがそばにいてくれたので」
「じゃ、帰ろうか。ボク達が送るよ」
ユウキが言うと、シリカは少し困惑したような顔で言った。
「足が…動かないんです」
俺とユウキは、少し顔を合わせた後、そっとシリカに手を差し出した。
第35層《風見鶏亭》
「レイさん…ユウキさん…行っちゃうんですか…?」
「ああ、5日も前線から離れちまったからな。すぐに戻らないとギルドと隊に迷惑が掛かる」
俺がそう言うと、シリカはどこか寂しそうな声で言った。
「そう…ですよね」
「ごめんね、シリカちゃん」
ユウキが言った。
「所詮レベルなんてただの数字だ。ここでの強さは幻想に過ぎない。そんなものよりももっと大切な物は絶対にあると俺は信じてる。だから、次は
「そうだよ、ボクとも友達になろっ?」
「はいっ!」
「じゃ、ピナを生き返らせてやろう」
シリカは頷いた。
こうして、俺とユウキの竜使いの少女との2日に渡る冒険は幕を下ろした。
いかがだったでしょうか?今更ですが、この16・17話の間、キリトが全く出てきてないです。というか、この小説では、オリ主であるレイがキリトのDEBANを奪う場面が多々存在することになると思います。
さて、次回はほのぼのとした回(になる予定)です。お楽しみに!!
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