ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~   作:人民の敵

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1日に二話投稿!!


《第22話》捜査・Ⅲ

第50層「アルゲード」主街区

 

 俺が連絡してからきっかり1時間後に本当に“その男”が現れたのには実のところ少々驚いた。 即応可能なのがいいからこっちとしてはありがたいけど。

 男の姿を見た途端、第50層「アルゲード」転移門に居たプレイヤーたちが激しくざわめいた。

 暗赤色のローブの背にホワイトブロンドの長髪を束ねて流し、腰にも一切の武器を持たない男。

 最強ギルド《血盟騎士団》のリーダーにしてアインクラッド最強の剣士、《ヒースクリフ》は俺達を見つけこちらに近づいてきた。

 

 

第50層 NPCレストラン

 

ここの店の中には客が一人もいない。 まさに無人のNPCレストランだった。

 とりあえず、安っぽい木で、できていた椅子に5人は腰をかける。

《アルゲードそば》を5つ注文し、本題に移る。

 

俺は、圏内殺人事件のことを詳細にヒースクリフに説明した。

ヒースクリフは表情一つ変えずに俺の話を聞いていた。

 

「今、話したことが事件の詳細だ。 団長はどう見られますか?」

 

「まずは、キリト君とレイ君の考えを聞こうじゃないか。 この事件、2人はどう見ているのかな?」

 

「キリト、パス」

 

 説明するのは面倒なのでキリトに振る。

 

「俺達の考えた可能性は三つだ。 一つ目は、正当な圏内デュエルによるもの。 二つ目は、既知の手段の組み合わせによるシステム上の抜け道。 三つ目は、アンチクリミナルコードを無効化する未知のスキル、あるいはアイテム」

 

「三つ目の考えは除外してもよい」

 

「断言しますね。 ヒースクリフさん」

 

とユウキが言い、

 

「……断言しますね。 団長」

 

とアスナが言った。

 

「だろうな」

 

と俺。

 

「想像したまえ。 もし君らがこのゲームの開発者なら、そのようなスキルや武器を設定

するかね?」

 

「……しないだろうな」

 

とキリト。

 

「何故そう思ったのかな、キリト君」

 

「フェアじゃないからさ。 だが一つだけ、あんたの“ユニークスキル”《神聖剣》とこの2人のユニークスキルを除いてだがな」

 

 ヒースクリフがキリトに向けて微笑した。

 

 まさかとは思うが…キリトの“あのスキル”の事がばれているのか?

 

 それに、“あのスキル”の事は、俺とユウキ、キリトで秘密にしていることだ。

 

 まさかな……

 

「とりあえず、三つ目は除外だな。 残るは、一つ目と二つ目の可能性になるが…。 でも俺達は、一つ目の可能性は無いと考えている……。 そもそも、ウィナー表示が何処にも無かったんだ、教会の内部にも表示が無かった。 それに、あの殺人は誰かが仕組んだようにも見えた。 あの短槍は圏内でのPKに“見せかける“為に、必要だったんじゃないかと、俺達は予想しているんだ。 もし、圏内デュエルだった場合は俺達のどちらかに絶対に鉢合わせるはずだ。 だから一つ目の可能性は無いはずだ」

 

「じゃあ、ボク達に残された可能性は二つ目の《システム上の抜け道》だね」

 

「ああ、そうなるな」

 

「おまち」

 

 NPCレストランの店主は四角いお盆から白いドンブリを5つテーブルに移した。

 

「なんなの、この料理? ラーメンなの?」

 

「ボクも見たことない料理だよ。 でも、ラーメンに似ているよね…」

 

「何だろうな、このちょっとこれじゃない感」

 

 俺、アスナ、ユウキの3人は三様に呟いた。

 

「これは、ラーメンに似た何か」

 

 俺達は『ラーメンに似た何か』を無言ですすり続けた。

もちろんヒースクリフも入っている。

 

「……で、団長どのは、何か閃いたことはあるかい?」

 

 ヒースクリフはスープまで飲み干しドンブリを置いた。

 

「……これはラーメンではない。 断じて違う」

 

「右に同じく」

 

 俺は激しく首肯した。

 

「俺もそう思うよ」

 

「では、この偽ラーメンの味のぶんだけ答えよう。 現時点の材料だけで《何が起きたのか》を断定することはできない。 だが、これだけは言える。いいかね……。 この事件に関して絶対確実と言えるのは、君らがその目で見て、その耳で聞いた、一次情報だけだ」

 

「どういう意味なのヒースクリフさん?」

 

 ユウキは尋ねた。

 

「つまり、こういうことだよ。 アインクラッドに於いて直接見聞きするものはすべて、コードに置換可能なデジタルデータであるということだよ。 そこに、幻覚幻聴は入り込む余地は無い。 逆に言えば、デジタルデータではないあらゆる情報には、常に幻や欺瞞である可能性が内包される。 簡単にいえば、この殺人……、《圏内殺人》を追いかけるならば、目と耳、つまるところの己の脳がダイレクトに受け取ったデータを信じることだ」

 

 確かに。 いまの材料は短槍だけだからな。

 

 ヒースクリフはキリトに「キリト君、ごちそうさま」と伝え店を出て行った。

 

 今、俺達がいる場所はNPCレストランの玄関から少し歩いて見つけたベンチだ。

 

「お前ら、ヒースクリフが話していた言葉の意味、分かったか?」

 

「ボクは全然わからなかった」

 

「俺は大体分かった」

 

「私も。……キリト君、ユウキちゃん、こういう意味だよ。 伝聞でんぶんの二次情報を鵜呑みするなってこと。 この件では言えば、つまり動機面……、ギルド・黄金林檎のレア指輪の話のことだと思うよ」

 

「その通り。 でもそうしたら、ヨルコを疑うことになってしまうよな…。 ヨルコを疑いたくはないが……。 まだ判断材料が必要だな。 あともう一人の“関係者”に話を聞きに行こう。 当分は聞きこみになるけど、大丈夫かユウキ?」

 

「大丈夫だよ。 それに、この事件はボク達で解決しないとね」

 

「三人とも、調査がんばってね」

 

「あれ、アスナは?」

 

 俺は気になって尋ねる。その言い方だとアスナは今後調査しないみたいな意味になる。

 

「私は所用で抜けるわ。それじゃ、頑張ってね」

 

「おう」

 

「任せといて、アスナ」

 

「分かった」

 

 

第50層「アルゲード」転移門前 

 

Side ユウキ アスナ

 

「ねぇ、ユウキちゃん。 さっきの『ラーメンに似た何か』は醤油が足りなかったからあんなに侘しい味になったと思うんだ。 だから時間が空いたときに醤油を一緒に作ってみない?」

 

「いいね。お姉ちゃんも呼んで作らない?」

 

「うん。 いいよ。じゃあ、ユウキちゃんはお姉さんに連絡よろしくね」

 

「うん。 後で姉ちゃんにメッセージ送っとくよ」

 

「よろしくね。 ユウキちゃん」

 

「了解したよ。 アスナ」

 

 

side レイ&ユウキ&キリト

 

「よし、調査再開だ」

 

「了解ー」

 

「了解」

 

 

side out

 

 

俺達の調査はまだ続くのであった。

 




圏内事件は今年中に終わらせたい…………
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