ようこそ実力至上主義の短編集へ   作:夜斗

1 / 1
ネタバレだらけなので、アニメしか見ていない人は注意。
原作6巻までのネタバレがあります。

続きを書くかは未定。需要があれば、又は作者が描きたくなったら2話目を投稿します。


女王、軽井沢恵

 今日は11月20日、オレの誕生日から丁度1ヶ月がたった。

 予想はしていたがオレの誕生日を祝ってくれる人はあれから現れなかった。

 唯一祝ってくれた稀有な人は軽井沢だ。

 

 今年も誰にも祝ってもらえる事は無いだろうと思っていたから、軽井沢からメッセージが来た時は驚いた。

 まあ祝ってもらえたとは言っても、軽井沢からはメッセージで誕生日ケーキのスタンプが送られて来ただけなのだが。

 普通の人は、これだけ?とか思うかもしれないが、オレは今まで誰にも、親にすら祝ってもらえた事が無いから、嬉しくないと言えば嘘になる。

 

 もしかしたら、オレが小さい頃に親に祝ってもらえた事があるという可能性もあるが『あの男』がオレの事を祝うという事が全く想像が着かないから、祝ってもらえたことは無いだろう。

 ……これ以上、オレの悲しい誕生日の事を思い出していても、胸が苦しくなるだけだからもうここで終わりだ。

 

 

 話を変える。

 

 

 今日は休日だ。これまで色々な事が合って、休日も用事だらけでゆっくり休める暇が無かったが、今日は久しぶりの自由な1日だ。

 まあ自由な日と言っても趣味なんてもののないオレは1日中部屋でゴロゴロするだけだけど。

 それでもリラックスは出来るから充分だ。

 

 この自由な時間を壊してくれる人が現れない事を祈ろう。

 

 と思っていた側から携帯が鳴った。

 電話だ。相手の名前を確認したら軽井沢からだった。

 電話をしてくるなんて珍しいなと思いながら、電話に出ようとしたが、通話ボタンを押す寸前で手を止めた。

 

 

 今ここで電話に出るのは構わないが、もしかしたら面倒臭い事に巻き込まれるかもしれない。せっかくの自由な時間なのに、わざわざ自分から自由を壊す可能性を増やす必要は無い、ここは無視するか。

 

 

 と思っていたら、電話は切れた。

 後から何であの時出なかったの、と言われるかもしれない、いや絶対言われる。

 が、その時は必殺『悪い、寝てた』を使えばいいだろう。

 嘘、と言われるだろうが、その証明は出来ない。

 まあ仮に嘘がバレたところでオレの性格は知ってるだろうし、呆れられるだけだろう。

 

 とか思っていたらまた電話がかかってきた。

 相手を確認するまでもない、軽井沢だろう。まあ一応確認するかと思い確認したら、やはり軽井沢だった。

 少し待っていたら、電話が鳴りやんだ。

 2回もそれも短時間にかけてくるなんて、やはり急ぎの用事でもあるのだろう。

 電話に出なくて正解だったなと思っていたら、メッセージが来たことを知らせる通知がきた。

 パスワードを入力して携帯のロックを解除し、通知の所を見ると、軽井沢からのメッセージ。それも一言。

 

 

 出ろ

 

 

 いや、チョット軽井沢さん、簡潔過ぎませんか。

 主語が無いですよ。

 まあ、この場合は(電話に)出ろと言う当たり前の事なんだろうけど。

 ここまで来るとどっちが先に折れるか勝負だ。

 とオレの中の謎の対抗心がムクムクと膨れ上がってきた。

 

 普通に考えて、無視するだけでいいオレと電話をかけまくる軽井沢なら、どっちに軍配が上がるかは言うまでもないだろう。

 それより通知がうるさいな。

 電源でも切っとくかと思ったその瞬間。

 

 手が滑った。

 

 滑ってしまったのだ。

 

 オレは自分のリアルラックの低さを恨んだ。

 手が滑って携帯を落としてしまう、と言うのはたまにあるからいいのだが、手が滑るとき、通知を押してしまった。

 そのせいで軽井沢とのトーク画面を開いてしまった。

 これで相手に既読したのが伝わってしまった。

 軽井沢はずっとトーク画面とにらめっこでもしていたのだろう。即座にメッセージがきた。

 

 

 さっさと出ろ

 

 

 と、メッセージが来るなり、電話が鳴った。

 はあ、流石に無視するのはもう無理だな。

 オレは観念して電話に出た。

 

 

『よろこべ軽井沢、勝負はお前の勝ちだ』

 

 

 オレが(一方的に)仕掛けた勝負は軽井沢に軍配が上がった。

 まあ、だからと言ってなんだという話だが。

 

 

『はぁ?なにいきなり訳の分からないことを』

 

『いや、何でもない。こっちの話だ』

 

 

 本当になんでも無い。

 唯しょうもないことを考えていただけだ。

 

 

『頭大丈夫?ていうか、1回目に電話した時に出ろよ』

 

 

 頭を心配されてしまった。

 ちょっと違うかもしれないが。

 それより、ここだ。必殺

 

 

『悪い、寝てた』

 

 

 決まった。

 これは完璧に決まったぞ。

 

 

『は?なにそんなバレバレな嘘をいってんの?どうせ無視してたんでしょ。あんたの部屋の電気ついてたし、物音してた』

 

 

 決まらなかった。

 当たり前だよな。

 ……と言うか。

 

 

『おい。何でそんな事知ってる』

 

 

 まさか、見てたのか?

 玄関開けたら目の前に居たりして……。

 それはないか。

 

 

『う・そ。だけど、あんたの反応からしてやっぱり無視してたんだ』

 

 

 一本取られた。

 後、改めて思うが、最初の頃から随分と変わったな、軽井沢。

 ……いや、この性格が元々の軽井沢の性格だったのか?

 

 

『はいはい、そうです。嘘です。降参です。降参します』

 

 

 そう思いながら、ちょっと巫山戯てみた。

 偶に巫山戯て見たくなったらする時がある。

 それが今だったと言うわけだ。

 そしたら軽井沢は容赦なく言った。

 

 

『なにそれ気持ち悪いんだけど』

 

『やめろ、その言葉は地味に傷つくから』

 

 

 いや、マジで。

 

 キモッと気持ち悪い、どっちの方が傷つくかは人それぞれだと思うが、オレは後者の方が傷つく。

 

 

『あんたも傷つく事あるんだ』

 

『おい、オレの事なんだと思ってる』

 

 

 これでも普通の人間だぞ。

 これでもと自分で言うあたり、ちょっとアレな気もするが。

 

 

『変態鬼畜クソ野郎』

 

『おい、それは言い過ぎだろ』

 

『あの時の事は一生忘れないから』

 

『あの事を言われると否定は出来ないな。けど、それは協力者を得る為にやっただけで、何時もあんな感じの事を考えてるという訳じゃないぞ』

 

 

 何時も考えていると思われていたならそれは心外だな。

 

 この世は『勝つ』ことが全てだ。過程は関係ない。

 

 どんな犠牲を払おうと構わない。最後にオレが『勝って』さえいればそれでいい。

 

 その為の手段としてやっただけに過ぎない。

 

 オレが勝つ為に、協力者が必要だった。

 

 だから、やった。

 

 それ以上でもそれ以下でもない。

 

 

『それはどうだか。男子っていっつも頭の中でエッチな事考えてるんでしょ?、どうせあんたも同じで考えてるんでしょ?あの後、もしそのまま……とか。あぁ、やだやだ。やっぱりあんたも男の子だね。底が知れたって感じ?』

 

『飛躍し過ぎた。と言うか、似たような会話を前にしただろ。普通の男なら考えてるかもしれないが、少なくとも今のオレにはそんな感情はないって』

 

 

 そう、今はな……。とか意味深な事を考えてみたが、オレがそういう感情を持つ事が全く想像つかなかった。

 

 

『ふーん、そういう事にしておいて上げる』

 

 

 いや、だから……

 

 

『しておいて上げる、とかじゃなくてそうなんだって。それよりこれを言うために電話をして来たのか?それならもう切っていいか?せっかくの自由な1日だから、ゆっくりしたいんだが』

 

 

 そうだ。この話の為だけに電話をしてきたなら、もう切りたい。

 

 

『そんなわけない!あんたのせいで話が脱線しちゃったじゃない』

 

 

 いや、オレのせいだけじゃない気もしないでもないが、わざわざ自分から面倒な事を引き起こす原因を作らなくてもいいだろう。

 

 

『じゃあ、早くしろ。オレは休みたいんだ』

 

 

 久しぶりに1日中自由なんだ。休ませてくれ。

 

 

『あーあ。そんな態度でいいんだ。せっかくあたしが誕生日を祝ってあげようと思ってたのに』

 

『誕生日……だと?』

 

 

 あのスタンプで終わりじゃ無かったのか?

 スタンプだけでも十分オレは嬉しかったのだが。

 メッセージを消すのを躊躇するぐらい。

 だけど、最終的には消すことになったけど。

 

 

『そう、誕生日。あの時は色々忙しかったし、あんたの誕生日を知った時にはもう過ぎてたし、プレゼントもなにも用意出来なかったからね。一応スタンプを送っといたけど、流石にそれは可愛そうじゃない?とか思ったわけよ。だから祝ってあげる』

 

『あ、あぁ。それは有難いけど……』

 

 

 有難いが……

 

 

『けど、何?』

 

『いや、何でもない』

 

 

 誕生日をしっかりと祝ってもらえる程、軽井沢と仲良くなったのか……?とは思ったが、別に言うほどでも無いだろう。

 もし言ったとして、そんな訳無い。

 と言われたら唯の恥ずかしいやつだ。

 今は誕生日を祝ってくれる。

 そう思ってるだけでいい。

 

 

『気になるけどまあいい。じゃあ、今日1日あたしに付き合ってもらうから。これは決定事項ね』

 

『おい、ちょっと待て』

 

 

 今日1日だと?せっかくの休みが無くなる。

 そう思ったが、軽井沢は客観的に見れば可愛い部類に入る。

 そんな人から祝ってもらえるのは嬉しい。

 

 が、そう言う問題じゃ無い。

 

 オレは目立ちたく無い。

 カーストトップの軽井沢と2人でいたと言う噂が立つのはまずい。

 

 前までは、悲しい事にオレは影が薄いから、せいぜい遊びに来たグループの一つにしか思われないと思っていたが、今はダメだ。体育祭の時に少しやり過ぎた気がしないでも無いからな。

 

 あそこでオレがあの生徒会長(いや、今は元生徒会長か)と一騎打ちして、ほぼ互角だった人と思われている筈だ。

 だから、もし2人でいた所を見られたら、あの生徒会長と一騎打ちした人が、女の子と一緒にいたね、と認識されるだろう。

 それだけならまだしも、軽井沢はDクラスのカーストトップだ。他のクラスにも知れ渡っていると思う。

 

 其処から導き出される答えは、Dクラスのカーストトップな、女の子が、生徒会長と一騎打ちした人と2人きりで居た。って事だ。そう思われる事はまずい。噂になるだけでも、これからオレが動く時に支障が出る可能性がある。

 その可能性を無くすためには、ここは断らないといけないんだが……。

 

 

『待たない。じゃあ今は9時だから、1時間後の10時に部屋に迎えに行くから待ってて』

 

 

 軽井沢はそんな事知ったこっちゃ無いと言わんばかりに、さっさと時間まで決めてしまった。

 

 

『いや、待て。急にそんな事言われても、こっちには用事が』『無いでしょ。さっきそんな感じの事言ったよね』

 

『そうだな……』

 

 

 馬鹿か少し前のオレ。

 時間を巻き戻して無かったことにしたい。

 そんな無駄な事を考えているうちに、軽井沢は話の締めに入った。

 

 

『それなら問題ないね。じゃあね、清隆。楽しみにしてなさい』

 

 

 軽井沢はそう言って、電話を切ってしまった。

 

 

 まずいな……。

 まあ、軽井沢が自分からやりたい事をオレに言うようになったのはいい事だと思うが。

 軽井沢は今日1日と言った。

 1日中オレの部屋にいるわけでも無いだろう。

 それに、部屋に迎えに行くと言った。

 迎えに行く、と言うことは何処かに出かけるのだろう。何処に行くんだ?

 

 クラスメイトにバレたらやばい。

 が、それ以上にバレたらやばいのは櫛田と龍園だ。

 この2人には絶対にバレたら終わりだ。

 後は個人的なので佐藤にバレたらちょっと面倒臭い事になりそうだな。

 けど、今更考えたところでもうどうしようもない。

 

 ……これ以上、考えていても仕方が無いな。着替えるか。

 

 とか、考えているうちに刻々と時間は過ぎていった……。




改行し過ぎじゃね?とか思ったので直しました。
見やすい改行がまだ、よく分かってないので、また編集するかもしれないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。