贋作でなく   作:なし崩し

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 本日23時と23時30分の二回更新。
 こちらは23時30分の更新となります。
 


後日談

 

 あの終局特異点から幾ばくかの時が過ぎた。

 まぁ実際のところ数か月もたっていないのだけれども。

 ドクターを失って兄はゲーティアを倒した。

 私たちは確かに世界を救った。

 そんな私たちを待っていたのは、元に戻った世界からの煩わしい干渉だった。やれ協定に違反しているだ、テロリストを匿っているだ言いたい放題である。

 何もできなかった彼らに文句を言われる筋合いはない。

 ドクターは、震える足を精一杯前に伸ばして、私たちを救ってくれたのだ。その想いが汚されていくようで、私たちの旅路は間違っていると否定されるようで腹が立った。

 まぁ結局、ジャンヌにネロ、ドレイクにモードレッド、ナイチンゲールにベディヴィエール、英雄王ギルガメッシュが主立って私たちの旅の確実性を保証してくれたおかげで魔術協会も国連もそそくさと逃げ去っていったが。

 ギルガメッシュが姿を現した時には私も驚いた。というかまだ残ってくれていたのかと。同時に彼のカリスマにやられて何名か陥落。どうやら賢王モードであったらしい。

 おまけに此方にはロードエルメロイⅡ世もおり、彼が前に出たとたん魔術協会の彼の弟子たちがカルデアの擁護に回ってくれた。

 おかげで気味の悪い魔術師は軒並み撤退していった。

 それでも残った者たちも、メディアなどキャスター勢との差を見せつけられて自信とプライドを木っ端みじんに砕かれて真っ白になって姿を消した。

 

 色々ないざこざもあったが、今はだいぶ落ち着いている。

 英霊に囲まれたマスターをどうこうするのは不可能だと理解したらしい。今もアサシン先生たちが目を光らせており、怪しい行動をとった相手は一夜にして暴かれさらされる。

 後は拷問大好きなサーヴァントたちが対象を囲み圧力をかける。

 結果、素直にゲロリ問題解決となる。

 

 ちなみに我が兄はマシュといちゃいちゃしておる。

 どうやら最後の特異点をへて仲を深めたらしい、羨ましいことである。まぁ私もオルタとの仲を深めたけどね! 約束もしてるからね!

 

 ……後になって、あれ、次とかなくねと思ったのは内緒である。

 いや、あるし。きっと致命的までともいかずほんのちょっと、そう、召喚システムが誤作動して召喚されちゃうとかあるかもしれないし……信じれば救われるのだ、きっと。

 

「あーあ、オルタに会いたいなぁ。ねー、ジャンヌ」

 

「そうですね、可能であればもう一度会いたいものです……。それでですねマスター。あの、毎度毎度黒いペンを持って私の背後に立つのはやめませんか?」

 

「ごめん、禁断症状なんだ」

 

「……いや、だからといって塗られては困るのですが!」

 

 ぷんすかと怒るジャンヌ。

 最近はよくジャンヌと話すようになった。

 いや、以前から話はしていたけど、こう、何というのだろうか、遠慮が無くなったとでもいうのか。オルタに対しての並々ならぬ想いを語ったら、何時の間にかこのように。

 

『オルタはかっこいいよね、憧れる。頼れる姉って感じで。それでいて実はちょっと抜けてるところがあるのがもう、ね? そして偶に見せてくれる優しさが染み渡る……』

 

『あぁ、やはりマスター、貴方は私の立ち位置を揺るがすのですね……。まぁあの時分かっていた事ですが! ぐぬぬ、このままだと本当にまずいのでは? もう一人の私から高評価ですし、何気にマスターに対して甘いですし!』

 

 なんて。

 大丈夫、オルタなら二人とも受け入れてくれるさ。

 まぁ一人だけって言われたら全力で蹴落とすがな!

 それはたぶん向こうも同じ。

 最近はだいぶ本音が出てくるようになっていた。

 特にオルタにかかわる話だと。

 

「ま、ジャンヌを黒く染めたところでオルタにはならないし、諦めるかぁ」

 

「その結論に至るまで時間がかかりすぎのような……いえ、最早もう一人の私に関して語るときのマスターに、常識は求めないことにします」

 

 それがいいね。

 はぁ、取りあえずは部屋の整理を進めますか。

 この一年、大分ものを乱雑に放置していたから片付けがいがあるというもの。取りあえず資料系は収納デスクと共にしまいこみ、カルデアの制服はいつも通りクローゼット。

 残るものはまぁ、何と言うか、見事にバラバラである。

 ドライヤーだったり櫛、何故かある大量のホッカイロ、音楽プレイヤーに化粧品などなど。

 うーむ、乱雑にダンボールに突っ込んでしまいたい、という思いを押し殺しながらきちんと陳列させるものは並べ、必要のないものは収納スペースに。

 ジャンヌにとっては物珍しいものもあり、興味深そうに眺めていた。

 

 そんな時の事である。

 

 聞き覚えのある、嫌な音が鳴り響いた。

 

「…………警報、だねぇ」

 

「…………警報、ですね」

 

「あれかなぁ、罰、当たったかなぁ……」

 

「何を考えていたのか知りませんが、予想通りであるならば、罰が当たるのは私もですね。いや、まさかそんな訳はないでしょうけど……ないですよね?」

 

 神のみぞ知る。

 結局誤報とかではなく、ダヴィンチちゃんからの連絡を受けて管制室へ。

 結論から言って、特異点である。

 説明を受けてレイシフトに向けて装備を整えようと自室に向かう。

 どうしてこう、落ち着いたと思ったらこうなるのか。

 

「なんの呪いかな、これは!? そもそも新宿とか、オルタいるわけないじゃん!」

 

「落ち着いてくださいマスター! 私もちょっと否定できないところまできてるかなとは思いますけど!!」

 

「きー! 今は召喚サークル取り押さえられて使えないし! 残ってくれてるサーヴァントいるから対応はできるけども!! この憤り、どうしてくれる! ちょっと世界、簡単に滅ぼされかけ過ぎじゃない!?」

 

 ばたばたと準備して管制室。

 そこでは兄とマシュもいて、マシュは心配そうに私たちを見ていた。

 共に行けないことを、誰よりも分かっていたから。まぁ大事な彼女さんは彼氏さんに任せるとして、ダヴィンチちゃんから改めて説明を受ける。

 その危険性も。

 ただそれでもやらなくてはいけない。

 これまで力を貸してくれた人々の想いを無駄にはしない。

 もう一度、世界を救ってやるのだ。

 

 こうして、結局、私は戦場に足を踏み出すのである。

 何とも難儀なぁと呟きながらコフィンに搭乗し、兄と共にレイシフトを行うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして気づけば空の上。サーヴァントはいない。

 本当にどうなってやがる、私たちの運命。

 

 

 

 





 さて、これにて本当に終局特異点、というか大雑把に第一部、完!

 ここまで来るのにおよそ三か月、思ったよりかかったなぁ。
 まぁ本来は第一特異点で終わってる話でしたからね!
 ここまで多くの誤字報告ありがとうございました。
 感謝の念に堪えませぬ……。

 取りあえず、新宿に関してはまだ保留で。
 前話だったりでフラグは全開だから、始めようと思えば始められる状態ではありますが。
 まぁ新宿の内容がちょっとあやふやなのと、そもそも今年、そして来年の二月中旬までは個人的に時間がないため読専に徹している可能性が大です。
 他の小説に関しても同様になります(-_-;)

 ちょっとずつでも書き溜めして、できるようなら投稿していくかもしれません。
 あまり期待せずにお待ちください。

 感想は時間があるときに、可能であれば返していきたいと思います。
 
 それでは皆様、早いとは思いますが良いお年を。

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