Clossing Desires   作:ラディ

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遅くなったくせに滅茶苦茶短いですゴメンナサイ(土下座)


戦闘訓練

 校舎東のグラウンドに面した第三研究棟には、地上フロアと地下フロアがある。

 地上フロアは、先程まで俺たちがいた講義室や様々な文献等が収められている資料室といった、学問関係の設備が中心である。

 対して地下フロアは、各種器具が完備されたトレーニングルームと仮想戦闘が可能な訓練室、そして任務遂行時に指示を出す指令室を備えた、まさに”特科”のための空間となっている。

「さあ、準備はよろしいかしら?」

「勿論。いつでも始められるよ」

 全面が白い超硬度金属で作られた訓練室の中央で向かい合うのは、ジグとリース。

 人を超えた覚醒者(アウェイカー)の肉体は訓練で怪我をするほどヤワではないが、それでも形願武装(ディザイアームズ)の攻撃を受ければ流石にダメージを負う。

 にも関わらず二人は制服のままで、笑みすら浮かべている。

 互いに傷つかない自信と相手への信頼を伺わせる二人の様子を、訓練室の入り口上方に張り出したガラス張りのモニタールームから眺めていた俺は、自分が無意識に抱いていた羨望を追い出すようにかぶりを振る。

(二人とも俺を仲間だと思ってくれている。それは間違いない。()()()()()()()()()せいで、俺が勝手に引け目を感じているだけだ)

「ようし、それじゃあ始めていいよ。何かあったら呼ぶから、存分にやってねー!」

 沈みかけた思考を引き戻したのは、隣のミリス先生の声。

 ゴーサインが出たことで、ジグとリースは十メートルほどの距離をとって改めて対峙する。

 溢れんばかりの気迫は戦士のそれと比べても遜色ない。離れて見ているこちらでさえ総毛立つほど濃密な闘気が、空間に満ちていく。

 一呼吸おいて、少年と少女は同時に叫んだ。それぞれの得物の名、自らの形ある願いを。

「ーーー行くよ、”無慈悲なる檻(カウントレス)”!」

「ーーー来なさい、”炎獄淑女(バーニン・ミストレス)”!」

 次の瞬間にはもう、リースが一挙手一投足の間合いに持ち込んでいた。

「せいッ!」

 裂帛の気合と共に右拳を突き出すが、あらかじめ攻撃の軌道を読んでいたジグは外側に回り込むようにして回避。

 同時に背後に大きく跳躍しながら、()()()()()()()()を構える。

「今度は僕の番だ」

 魔力で生成した矢を番えて限界まで引き絞ると、およそ二秒の溜めを作り、再び距離を詰めようとしていたリースに向けて射ち放った。

十七矢(セブンティーン)穿ノ型(ハイヴ)!」

 放たれた矢は一直線に飛翔し、そして音もなく()()した。

「甘いですわね」

「分かってるさ」

 自身に迫る都合十七の矢を目にしてもリースは動じず、直撃弾だけを()()()()()()()()()()で的確に払いのけ、残りは無視して踏み込むーーーそのタイミングを狙って、真上に跳んだジグが空中から新たな矢を射かける。

「近づかせないよ!三十二矢(サーティツー)封ノ型(ジェイル)!」

 動きを止めんと降り注ぐ矢の雨は、けれど一本たりとも届くことはなかった。

 リースの籠手が赤熱し、そこから噴き出した()に絡めとられてその悉くが相殺されたからだ。

「やるね!」

「ーーーはぁぁぁぁッ!!」

 直後、煙を突き破り炎を纏って突貫する金色の輝き。

 対する射手は冷静に照準し、手元が霞むほど高速の連射。

 正中線ではなく手足を狙った四発に、一瞥もくれず両腕を覆う火炎を操ってこれを叩き落とす。

 二人の距離が五メートルを切ろうかというその刹那、

四十七矢(フォーティセブン)穿ノ(ハイ)ーーー」

「遅いですわ!」

大きく踏み込み瞬間的に加速したリースの左拳が、射撃姿勢に入っていたジグを殴り飛ばした。

「ぐっ…!」

 壁に背中を打ちつけて苦悶の声を吐くが、さらにそこへ追撃の火球が束になって襲い掛かる。

 普通なら避けられたものではない。しかし流石と言うべきか、追撃を見るや否や壁を蹴って跳び上がり、リースの頭上を越えて背後をとった。

 再び連射。

「な…ッ…!」

 一瞬の動揺を衝き、防御すら許さず背中に命中する。

 そのままジグが速やかに距離をとると、今度はリースも深追いはしなかった。

「いやはや、二人ともやるねえ。これは予想つかないや」

「案外また引き分けになりそうですね」

 先生と言葉を交わしながらも、俺は内心で舌を巻いていた。

(……どちらも以前より格段に良い動きだ)

 こう見ているとどうしても、自分だけが取り残されているように感じてしまう。

 実力という意味で()()()()形願武装(ディザイアームズ)抜きでの純粋な戦闘技能ならば、二人に劣ることはないと自負している。

 問題はもっと別のところにある。

 恐らくは、覚醒者(アウェイカー)にとって最も重要な、心の問題だ。

「くっ…!いつの間にここまで制御を上達させたんだい…!」

「成長しているのは貴方だけではなくってよ?」

 中々珍しいジグの焦った声。

 見れば、真正面から接近戦を仕掛けるのは難しいと判断したのか、リースが籠手から火球や炎の渦を撃ち出してジグの射撃を牽制していた。

 確かに最近まで彼女は能力制御が苦手で、防御に用いるならともかく今のような遠隔攻撃ができるほど熟達してはいなかった。

 俺は再び劣等感に苛まれ、目の前で行われている戦いから目を背けたい一心で先生に声をかけた。

「……まだ続きそうだし、先に調整をしておきます」

「おっけー。定期検査も異常なかったから、持ち出してもらって大丈夫だよ」

「了解です」

 適当に返事をし、背後の検査台に置かれた一振りの剣に手を伸ばした。

「……いつまでこれを使うことになるやら」

幸か不幸か、観戦に夢中になっていた先生に、ましてやガラスの向こうの二人に、その独り言は届かなかった。

 

 




戦闘描写の練習として書いてみましたが、如何だったでしょうか。

より明快な展開にするべく、現在プロット改稿の真っ最中です……しばらくはもうひとつの作品の方がメインになるかと思いますが、こちらも気長に待ってもらえれば幸いです。
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