ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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※この話は第2章12話の続きになります。


セリシアがヤンデレ化した時の描写は無いのかと、何度か感想を頂きましたので書いてみました。

なお、このお話はしばらくしたら本編に捩じ込みます
(´∀`)


番外編? セリシアが(ヤンデレに)目覚めた時

舩坂軍曹の怪我を完全治癒能力で治したカズヤが救護所の天幕を後にし、千歳大佐達が待つ天幕へ帰ろうとした時だった。

 

「どうか!!どうか慈悲を!!このお方をお救い下さい!!お願い致します!!」

 

女性の救いを求める悲痛な叫びがカズヤの耳に入った。

 

何かあったのかな?

 

悲痛な叫びに引き寄せられるようにカズヤの足は自然と行き先を変更する。

 

「なぁ、何があったんだ?」

 

声に釣られ野戦病院に辿り着いたカズヤは立ち尽くす兵士に背後から声を掛けた。

 

「ん?いや、この瀕死の……女?原型が分からんから何とも言えんが……まだ息があるこの女を助けて欲しいと捕虜達に頼まれてここまで運んで来たはいいが、やっぱり軍医にも無理だと匙を投げられてな……まぁ、見てみろよ。見ればこれは無理だって分かるはず――って、総司令!?貴方が何故ここにッ!!」

 

ようやく自分が喋っている相手の事を認識し慌てる兵士を他所にカズヤは悲嘆に暮れる修道女達の元に赴く。

 

「うわっ、こりゃ酷い」

 

戦場から逃げる手段を持たず、結果として捕虜となった多くの修道女達が取り囲む中心にある黒焦げのナニかを覗き込んだカズヤはそう声を漏らした。

 

「総司令!!ここは敵方の負傷兵や捕虜が居るんです!!危険ですからお帰り下さい!!って、総司令!?」

 

制止する兵士の声を聞き流しつつカズヤは両手両足が根元から消失し全身が黒焦げになっている肉塊へ近付く。

 

「貴方は……」

 

「ちょっと場所を開けてくれ。悪いようにはしないから」

 

肉塊を取り囲む修道女達に場所を開けてもらったカズヤは改めて肉塊を見詰めた。

 

両手両足が吹き飛んで、しかも全身をこんがりローストされているにも関わらず心臓が微かに動いているのか……よくもまぁ、これで生きてるな。

 

「お願いです。セリシア様を……」

 

「ん、やれるだけやってみるか」

 

死体同然の捕虜など放っておいても良かったが生来の気質に加えて、完全に理解しているとは言えない完全治癒能力の限界を確認したいという思惑があったため、カズヤは目の前に転がる肉塊を救う事にした。

 

「ふっ……グッ…っ……」

 

クソ、瀕死の状態なだけはあるな……かなりの魔力を持っていかれるぞ。

 

手を翳し能力を発動したカズヤは全身を襲う疲労感と戦いながら魔力を更に込める。

 

すると再生が始まっていた肉塊から手足がにょきにょきと伸び、人の形を形成。

 

更に全身の皮膚が肌色に戻り潤いや張り、加えて毛髪や体毛を取り戻した。

 

「奇…跡?」

 

「すげぇ……」

 

「……疲れた」

 

驚嘆する修道女や兵士の漏らした声をBGMに能力の発動を終えたカズヤが尻餅をつきつつ視線を黒焦げだった肉塊へと向けると、そこには見目麗しい美少女が横たわっていた。

 

「セリシア様!!」

 

「ふぅ、助かって良かったな。――おい、こら。お前は見すぎだ」

 

「も、申し訳ありません!!」

 

生命の危機を脱し以前の姿を取り戻した美少女に群がる修道女達に声を掛けながら、カズヤは美少女の裸体を食い入るように見ていた兵士の頭に手刀を落とす。

 

「……ん……」

 

「あぁ、セリシア様!!」

 

「良かった。良かったです!!」

 

「おっ、目が覚めたか。とりあえずこれでも羽織っておいてくれ」

 

完全治癒能力により死の淵から現世へ舞い戻った美少女にカズヤは上着を手渡す。

 

「私は……業火に焼かれて…死んだ……はずじゃ……何故生きて……いえ、それよりあの光りは……」

 

寝惚け眼でカズヤから上着を受け取った美少女は自身の体を確かめるようにペタペタとまさぐる。

 

「大丈夫です。セリシア様。ローウェン様のご加護が貴女様をお救いになられたのです」

 

「さぁ、セリシア様。神に感謝の祈りを捧げましょう」

 

「……」

 

……助けたの、俺なんだけどなぁ。

 

ま、宗教狂いには何を言っても無駄か。

 

カズヤの存在や働きなど無かったように話を進める修道女達。

 

その恩知らずと言うべき者達に呆れたカズヤが背を向け、歩き出した時だった。

 

「感謝の祈り?アハッ、アハハハハハハハハッ!!」

 

何かがツボに嵌まったのか、美少女が嘲るような高笑いを上げた。

 

「セ、セリシア……様?」

 

美少女の様子がおかしい事に気が付いた修道女達がざわめき、その内の1人が伺うような戸惑った声を漏らす。

 

「あの狂おしい苦しみと絶望に満ちた暗闇の中、いくら祈りろうとも救いも答えも何ももたらしてくれず、あまつさえ私を見捨てた者に感謝を捧げろと?」

 

美少女は吐き捨てるようにそう言ってから、笑い声に驚き思わず立ち止まっていたカズヤに熱い視線を注ぐ。

 

「あぁ、やはり……はっきりと感じます」

 

まるでカズヤの背後から後光が差しているかのように目を細めながら、幸悦とした表情を浮かべる美少女。

 

その薄く細められた瞼の間から覗く瞳には情愛や崇拝の念を狂気でコーティングして作られた恐ろし気な感情が宿っていた。

 

「神を前にして未だ神に気付けぬ貴女達は紛い物の愚神に仕えていなさい。私は……私の体が、心が、魂が!!真に仕え奉じる存在と教えてくれるこのお方にッ!!」

 

側に転がっていた大きな杖を支えに立ち上がった美少女は覚束ない足取りでヨロヨロと歩くと、最後には棒立ちしていたカズヤの胸に飛び込む。

 

「私の全てを捧げ、付いて行きます!!」

 

「……」

 

何が……どうなっているんだ?

 

思わず抱き止めてしまった美少女の告白のような宣誓にカズヤはただただ呆然としていた。

 

「あの……貴方様のお名前を御拝聴致したく」

 

「え、あ、俺の名前は長門和也だが……」

 

「ナガト……カズヤ様。我が名はセリシア・フィットロークと申します。これより貴方様を崇め称える信徒として、何卒よろしく……お願い……致しま…す」

 

「し、信徒?って、おい?……気を失ったのか」

 

言いたい事だけ言って腕の中で無垢な笑みを浮かべながら気持ち良さそうに気を失ってしまった美少女――セリシアを抱えながらどうしたものかとカズヤは途方に暮れていた。


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