α月7日
私は死の淵から救い上げられ生まれ変わりました。
他ならぬナガトカズヤ様の手によって。
あぁ、今日は何て素晴らしい日なのでしょうか。
しかし……日記を書いているこの瞬間も、この身に宿ったカズヤ様の温かな魔力が私の身体をどうしようもなく火照らせるのです。
けれど捕虜の身では、あの方に身体を捧げる事が出来ません。
眠れぬ日々が続きそうです。
α月9日
もう我慢出来ない。
一刻も早くカズヤ様のお側に侍るために、協力者やシンパを作る事にしました。
α月10日
とりあえず10人程、カズヤ様の部下の方々を私が作ったナガト教に引き込みました。
カズヤ様に対する忠誠心が高かったため引き込みは簡単でした。
α月11日
昨日とは違い、今日は捕虜の中でシンパを作りました。
皆、じっくりと言葉を交わせばカズヤ様の素晴らしさ、偉大さを理解してくれました。
やはり、カズヤ様は素晴らしいお方なのです。
しかし、中にはカズヤ様の素晴らしさを言葉では理解出来ない愚物も居たので苦労しました。
最も、少々教育を施せば何ら問題はありませんでしたが。
けれど……話が終わった後、皆一様に瞳から光が消えるのは何故でしょうか?
α月17日
今日はなんと!!カズヤ様がわざわざ私に会いに来てくれたのです!!
何でも魔力を多く持っている人物を探していたとか。
この時ほど、自身の魔力の多さに感謝した事はありません。
そして様々な実験に協力する引き換えとして、カズヤ様の部下の身分を手に入れました。
一部の捕虜達からは裏切り者と罵声を浴びせられましたが、私がカズヤ様のお側に一歩近付いた事がよほど羨ましく悔しかったのでしょうね。
負け犬の遠吠えがこんなにも爽快だったとは。
β月3日
私の協力的な姿勢が評価され、カズヤ様のお国――軍事国家パラベラムで私が責任者を務める研究所が作られました。
これでより一層、カズヤ様に尽くす事が出来ます。
頑張らねばなりません。
β月5日
与えられた研究所で製造した特別なポーションをカズヤ様が乗られるヘリという乗り物に仕込んでおきました。
嫌な予感がしたので万が一に備えて。
私の取り越し苦労で何事も無ければよいのですが。
β月11日
捕虜収容施設として作られた監獄島に収容された捕虜の半数をシンパにする事が出来ました。
皆、現世の重圧から解放されたような晴れやかな笑顔を浮かべています。
やはり正しい道を指し示す事は万人の救済に繋がるのですね。
もう半数のナガト教を信奉していない者達は恐怖に満ちた顔で日々を過ごしています。
早く救済してあげねば。
そうそう、1つ気になる事が……監獄島を訪れたパラベラム軍の軍医の方が「ここは解離性障害患者の巣窟だ」と青い顔をして小声で呟いていたのです。
解離性障害とは何なのでしょうか?
β月15日
これまでも我慢してきましたが……いよいよ、我慢の限界です。
下着がべちゃべちゃで歩きにくい。
β月21日
理性が……保てない。
カズヤ様の事しか考えられない。
体が熱い。
β月22日
カズヤ、様、へや、き
おにく、うま
β月23日
……昨日の記憶が全く無い。
というか何故、隣にやつれた顔をしたカズヤ様が裸で寝ているのでしょうか?
……日記はここで途切れている。