ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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フィリス達と別れテントに戻ったカズヤは千歳を呼び、さっきの話について話し合うことにした。

 

「恐らくというか俺達が渡り人なんだろうが、その事をフィリス達に教えるべきか?」

 

「今はやめておいたほうがよろしいかと。現有戦力で国家間の揉め事に介入すれば対処が困難です」

 

「そうだな、……イリス姫殿下には悪いがこのことは黙っておくか。それと千歳、魔物の異常繁殖やその他の必要になりそうな情報を近衛騎士団の連中から集めておいてくれ」

 

「承知しました」

 

それにしても生け贄ねぇ……なんとも言えんな。イリスは可哀想だが国を救うためには仕方ないのか?

 

カズヤがそんなことを考えながら話を終え、千歳を見ると何故か不機嫌な顔になっている。

 

「どうした千歳?」

 

「……」

 

「?」

 

「……ご主人様。イリス姫殿下との密会の間ずっと警護に就いていた私にご褒美があってもいいと思います」

 

「なにを――おわっ!?」

 

は?と思う間もなくカズヤは千歳に強引に寝床に引きずり込まれ朝まで運動に励むことになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

翌朝……。

 

「なぁ、千歳。昨日は何であんなに不機嫌だったんだ?」

 

「……実は――」

 

お互いに裸のままカズヤが昨夜のことを千歳に聞いてみると、カズヤがイリスの後を追いかけて行った直後から千歳以下5名でカズヤとイリスに気が付かれぬよう辺りに潜んで警護をしておりその際イリスがカズヤに抱き付いて甘えていたのを見たため千歳は不機嫌だった……らしい。

 

道理で俺が野営地に戻った時、近衛騎士団しか慌てていなかったのか……。

 

カズヤは昨夜の様子を思いだし1人納得していた。

 

「ご主人様?」

 

「なんだ?」

 

「これだけは覚えておいて下さいね。我々はご主人様がどれだけ女を囲おうと構いません。ですが……我々のこともしっかりと可愛がって下さいね」

 

いや、囲う気はないんだが……

 

「あぁ、もちろんだ……」

 

女性を囲う気は無かったカズヤだったが、千歳があまりにも真剣な顔で言ったのでしっかりと頷く。

 

「―――でないと、わ――相――殺―し―――ます。」

 

最後に千歳が何かを小さく呟いていたがその言葉はカズヤの耳には届かなかった。

 

 

「……あれ?」

 

身支度を終えたカズヤが外に出ると早朝にも関わらずイリスが天幕の前でカズヤのことを待っていた。

 

驚いたカズヤが慌てて辺りを見渡すと少し離れた所にメイドが控えているのが視界に入る。

 

「おはようございます。お兄さん」

 

「おはよう――……ございます。イリス姫殿下。昨夜は知らぬとはいえ失礼致しました。数々のご無礼、平にご容赦いただきたく」

 

昨夜はイリスの素性を知らなかったため気安く喋りかけたが、今はフィリスから説明を受けイリスの素性を知っているのでカズヤは片膝を地面につき丁寧な言葉を意識しつつ謝罪を込めて頭を下げた。

 

しかしそんなカズヤの態度が気に入らなかったのかイリスは顔をしかめる。

 

「……お兄さん、そんな他人行儀な呼び方はやめて下さい。私のことは昨夜のようにイリスと呼び捨てで呼んで下さい」

 

「いえ……。そういう訳には……」

 

「それと……わ、私の恥ずかしい姿を見たのですから責任はとって下さいね!?」

 

「え!?あ、あの、イリス姫殿下?そのことなんですが……」

 

「お兄さん、ですからそんな他人行儀な呼び方はやめて下さい」

 

「いえ、あのイリス姫殿下?私は一介の冒険者ですのでそういう訳には……」

 

「お兄さん?私の話を聞いていますか?私のことは昨夜のように呼び捨てでお願いしますと言っているんです」

 

「ですから、イリス姫――」

 

「イリスですよね?」

 

「あの――」

 

「イリスですよね?」

 

「で、ですから――」

 

「イ・リ・ス!!ですよね?」

 

「…………イリス」

 

「はい、なんですか?」

 

カズヤがイリスの圧力に屈した瞬間であった。

 

その後カズヤの必死の交渉により、周りに人がいない時か、いたとしても信用できる人の前だけという条件でイリスを呼び捨てで呼ぶこと、また砕けた喋り方で会話するという案に落ち着いた。

 

「で、さっきの責任とかいう――」

 

「とってくれますよね?」

「……」

 

「私、いい返事が貰えないと、うっかり昨夜のことをフィリス達に言ってしまうかもしれません」

 

さ、さっきからなんなんだこの威圧感は!!黒いオーラが噴き出しているぞ!!目の前いるのは本当にイリスなのか?初めて会った時といろいろと違い過ぎるだろ!!

 

カズヤが目の前のイリスが放つ黒いオーラに圧倒され恐々としていると考えているとイリスが畳み掛けてきた。

 

「ね、お兄さん。責任……とってくれますよね?」

 

「……」

 

「ね?それに一国の姫の恥ずかしい姿を見てしまったのですから責任は取らないといけませんよね?私が口を滑らしたらどうなるか分かりますよね。(私に人の温もりを与えてしまったのですから……。私が最も欲していた人の温もりを――あの様な甘美な物を与えられた私はもうお兄さんから離れられません)」

 

うーんバラされたら最悪、処刑されるよな……。しょうがない、ここは肯定しておいて後で……逃げるか。

「わ、分かった」

 

「本当ですよね?本当に責任とってくれますよね?」

「あぁ」

 

「嬉しいです。お兄さん」

 

そう言ってイリスはメイドがいるにも関わらずカズヤに飛び付き昨夜のようにカズヤの胸に頬をグリグリと押し付けていた。

 

ま、まぁ、この子も本気で責任を取らせるつもりは無いだろうし、大丈夫だろ。

 

「(もう絶対に離しませんからね。お兄さん)」

 

そんな風に楽観視していたカズヤは後でこのツケを払うハメになる。

 

そんなことがあった後、カズヤ達は野営地を片付けて王都を目指した。

 

だが途中幾つかの街や都市を経由し王都につくまでの間、イリスはなにかとカズヤの側にくっついていて近衛騎士団を困らせていた。

 

な、何故だ!!どうしてこうなった。

 

前哨基地を出発してから10日。明日には王都に着くという時点でカズヤは頭を抱えていた。

 

何故ならイリスの態度が日を増すごとに積極的な物になっているからだ。

 

移動中はいつの間にか馬車から降りてカズヤの乗るジープの隣に乗っていたり、食事の時はちゃっかり膝の上に座ろうとしたり、極めつけに深夜どうやったのかは不明だが皆の目をくぐり抜け天幕の中に忍び込もうとしたり(最後のは一緒に寝ていた千歳が気付いて防いだ)

 

そんなことがあり、明日には王都に着くのでイリスの行為をどう収めようかと悩むカズヤは天幕で千歳達が近衛騎士団の隊員や道中の街や都市から集めたカナリア王国の情勢などをまとめた報告を受けた後で相談をすることにした。

 

「――という訳で今の段階で確認がとれているのは、現在カナリア王国内ではイザベラ女王派とレーベン丞相派で対立しており、国内情勢は不安定です。また国外情勢も隣国のエルザス魔法帝国と戦争中ということもあり極めて不安定であります」

 

「そうか。引き続き情報を収集してくれ」

 

「承知しました」

 

そう言って持っていた報告書を片付けて天幕から出ていこうとする千歳をカズヤは呼び止めた。

 

「あぁ、ちょっと待ってくれ千歳」

 

「はい。なんですかご主人様?」

 

「ちょっと相談があるんだが……。イリスの行動はどうしたらいいと思う?」

 

「それほど心配する必要はないかと恐らく、あの小娘――ゴホン!イリス姫殿下は初めて親しくなったご主人様に優しくされたため、あの様な行動に出ているのだと思います」

 

今千歳、イリスのことを小娘っていったよな。

 

「初めて親しくなった?」

 

「はい、近衛騎士団から集めた情報によりますとイリス姫殿下は忌み子ですので王族とは言え彼女の周りには人が全く近寄らず、また世話役のメイド達もイリス姫殿下とあまり親しくないらしく、例外としては最近新設されたフィリス達の第二騎士団が唯一イリス姫殿下の側にいるだけだということです」

 

「……それでメイドと間違えて気安く接した俺にあんなになついたのか?」

 

「それに関しては不明ですが……。しかし王都の城にイリス姫殿下を送り届けてしまえば後はどうとでも出来ます」

 

「まぁそうだな。あぁ、それとあの作戦は順調に進んでいるか?」

 

「はい、多少被害は発生しましたが作戦は完了しました。こちらが結果が書かれている報告書です」

 

「被害が出たか……。分かった。後で目を通しておく、レベルもどれぐらい上昇したか確認しておかないとな」

 

千歳からカズヤが受け取った報告書の表にはこう書いてあった。

 

『魔物の異常繁殖地への大規模空爆作戦・結果報告書』

 

まぁ、本来なら軍隊の運用に私情を挟むのは良くないが千歳達は俺の私兵だし、それにやっぱりイリスを見殺しには出来ないからな、それにレベルを上げるのにも役に立つからちょうどいいか、そういう事にしておこう。

 

「それじゃあ夕飯を食いに行くか千歳」

 

「はい、お供致します」

 

野営地での最後になる食事をするためカズヤは千歳と共に天幕を後にした。

 


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