ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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アレキサンドラという余計な供を1人引き連れ、妖精の里からパラベラム本土へと帰還したカズヤを待ち受けていたのは、千歳とカレンの2大巨頭による熱烈なお出迎えであった。

 

千歳はカズヤが再び敵の襲撃を受けた事に激怒し、全ての予定を繰り上げ直ちに帝都を火の海にして敵を皆殺しにするべしと気勢を上げ、手が付けられず。

 

カレンはカレンでカズヤが新たな女を引き連れ帰って来た事に激怒、更にはフィーネの妊娠が発覚した事で妻の中では適齢期の自分と幼いイリスだけが子供を授かっていない事に焦りを覚えた事もあって修羅と化していた。

 

そんな怒れる2大巨頭を相手にカズヤは獅子奮迅の働きを見せ、千歳に対しては残り1週間程度の準備期間を無理やり繰り上げ帝都攻略戦を開始しても混乱を招くだけで意味は無いと必死の説得を行い、カレンに対しては体まで使った説得(ご機嫌取り)を行い一先ずの決着を見ていた。

 

最も、カズヤは説得の代償として千歳からは護衛部隊の増員や警備態勢の強化を承諾させられ、カレンからは共にいる時間を大幅に増やす事を確約されられていたりする。

 

「それじゃあ、とりあえずアレキサンドラは武装メイドの一員ということで。次に……現在の戦況と帝都攻略戦の準備はどうなっている?」

 

かつては魔物の巣窟であった帰らずの森を切り開き、建設された旧前哨基地――現在のダブリング基地の地下指令部の一室でカズヤは今現在行われているアサルトアーマーの最終評価試験の中継映像を眺めつつ、両脇に侍る千歳と千代田に帝国との戦争にまつわる報告を求めた。

 

「ハッ、まず戦況についてですが先週までに帝国の全領土の80パーセントにあたる土地を占領いたしました。これは地球における中国全土と同じ広さになります。また、帝都や辺境に展開している部隊を除いたほぼ全ての敵軍を撃破、残るは極めて小規模なゲリラ勢力のみとなっています」

 

「次に帝都攻略戦についてですが、帝都外縁から30キロの位置に部隊を集結させ、敵の補給路を遮断すると共に帝都の完全包囲を完了させています。また帝都に面しているレイテ湾も遠征艦隊による海上封鎖を実施。後は作戦の開始待ちです。マスター」

 

……旧日本海軍の将兵に因縁のある湾の名前が、敵の首都に面する湾と同じ名前とは。

 

史実じゃレイテ湾に突入出来なかった艦艇の艦長達がこぞって上陸支援の任を求めて来る訳だ。

 

そんな余計な事を考えながら、カズヤは千歳と千代田に質問を続けた。

 

「ふむ……今の帝都内部の状況は分かるか?」

 

「様子なら衛星写真等で伺えますが、状況となりますと……残念ながら不明です。帝都に潜入させていたスパイや諜報機関を全て引き上げさせてしまった事に加えて、我が軍が帝都の包囲を終えると同時に敵が帝都全体を完全に魔力障壁で覆ってしまいましたので」

 

「……そうか」

 

敵の情報が得られなくなっている事に対し不安な様子を見せるカズヤに、千代田が補足の説明を入れる。

 

「しかしながらマスター。最後に入手した情報から推測致しますと、帝都内部の状況はレニングラード包囲戦の様相かと。何せ元々の住人200万人に加えて近隣の村や街から徴兵した50万人もの人員が約2ヶ月もの間、パン1つの補給も無く帝都に立て込もっていますから。加えて包囲完了前に我々が扇動して起こした暴動やクーデターの影響で帝都の治安は最悪。さぞ愉快な事になっていると思われます」

 

「まぁ、今までの準備期間は元々敵の補給路を遮断して兵糧攻めをするための期間でもあった訳だからな。少しぐらいは弱っていてもらわんと困る。……巻き込む形になった住人には悪いがな」

 

敵国の人間とは言え、多くの一般市民を戦いに巻き込んでしまった事に対してカズヤは顔をしかめる。

 

「この程度……兵だろうと市民だろうと“帝国”の奴らにはまだまだもっと地獄を見せてやらねば」

 

「何か言ったか、千歳?」

 

「いえ、何も」

 

その一方で更なる戦禍を敵にもたらすべく、憎悪に燃え並々ならぬ復讐心を滾らせる人物も居たが。

 

「……最も敵が弱っていなかったとしても問題は無いがな。何せ帝都攻略戦に参加する部隊はそれぞれ15個歩兵師団、10個機甲師団を基幹とした3個軍。今作戦に参加予定の総兵力で言えば300万人を越えるしな」

 

「はい、真正面から押し潰す事も十分に可能です」

 

千歳の不穏過ぎる言葉にカズヤは冷や汗を浮かばせつつ、話の流れを変えた。

 

カズヤが言ったように、パラベラム軍は地上最大の作戦と称されるノルマンディー上陸作戦を上回る戦力を帝都に投入し一気呵成にケリを付ける腹積もりであった。

 

「それに図らずも能力値が向上したお陰で予備兵力の拡充も出来た」

 

能力のメニュー画面を開き変動していた能力値や新たな力の一端を確かめながら、カズヤはそう呟く。

 

 

 

[兵器の召喚]

2016年までに計画・開発・製造されたことのある兵器が召喚可能となっています。

 

[召喚可能量及び部隊編成]

現在のレベルは78です。

 

歩兵

・130万人

 

火砲

・13万

 

車両

・13万

 

航空機

・10万

 

艦艇

・8万

 

※火砲・車両・航空機・艦艇などを運用するために必要な人員はこれらの兵器を召喚する際に一緒に召喚されます。

 

※後方支援の人員(工兵・整備兵・通信兵・補給兵・衛生兵等)は歩兵に含まれておらず別途召喚可能となっており現在召喚できる後方支援の人員は『総軍』規模までとなっています。

 

※歩兵が運用できる範囲の重火器・小火器の召喚の制限はありません。

 

[ヘルプ]

・[能力の注意事項]

メニュー画面を使わずとも声や思考で召喚は可能です。

 

1度召喚した軍需品・資源・施設は消すことが出来ますが、人(兵士)は消すことが出来ません。

(死亡した兵士の死体も消すことは不可能。また死亡した兵士と同じ人物を再度召喚することは出来ません)

 

『戦闘中』における武器兵器の召喚が可能になりました。

 

後方支援要員の積極的な自衛戦闘が可能になりました。

 

 

 

仮面の男のように、戦闘中にも武器兵器の召喚が出来るようになったのはかなりの強みだな。

 

戦闘中に弾切れや武器の故障の心配をしなくて済むし。

 

……だが、この分だと余程の事が無い限り俺が戦いの場に出る機会はもう無いだろうな。

 

此度の一件を受け妻達が結託し以前にも増して自分を危険から――戦いから遠ざけようとしている事を知っていたカズヤは自分の新たな力の見せ所を失った事に極々僅かな落胆を感じていたのだった。

 


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