今回の話の後半にはホモ要素があります。
お気をつけ下さい。
m(__)m
SEALsの破壊工作やトマホークを使用した改オハイオ級のミサイル攻撃によって守りの要であった魔力障壁を失い、丸裸の状態に陥った帝都は今現在テール海やレイテ湾の沖合いに展開した遠征艦隊の空母群、更には占領した土地に建設された飛行場の数々から飛来する無数の航空機の猛爆に晒され紅蓮の炎に焼かれている最中であった。
また帝国の航空戦力(飛行型魔導兵器や竜騎士)が早々に壊滅した事で、制空権の確保が出来たパラベラム軍の航空機は爆撃を行う高度を低高度に設定し、我が物顔で帝都上空を飛び交いながら悠々と大小様々な各種爆弾を投下、物量に物を言わせた絨毯爆撃などによって軍事施設や市街地を問答無用で爆砕し、戦いに備える兵士や逃げ惑う人々など軍民お構い無しに殺傷していた。
「……ふぅ」
自国の兵士の被害を減らすためにとは言え、敵国の民間人まで殺さないといけないのは心が痛むな。
無人偵察機のMQ-1Cグレイイーグルから送られて来る映像――いたる所で白い閃光が走り爆炎が空を焦がし幾筋もの黒煙や砂埃が立ち上る帝都の惨状。
その光景を帝都から70キロの位置に建設された司令部の地下にある作戦指令室の大型ディスプレイで眺めながらカズヤは小さくため息を吐いた。
しかし……攻撃を限定していては前線の兵士達が割を食うからな……。
致し方ないか。
カズヤは今更ながらに民間人の殺傷を許可する判断を下した事に迷いを抱いていたが、最後には自国の兵士の為と割り切り、為すがままに蹂躙される帝都、引いてはそこにいるであろう帝国の人々を眺めていた。
「マスター、これより準備砲撃を開始します」
「分かった」
黒い軍装に身を包み背後に控えていた千代田の言葉にカズヤが頷きを返した直後、前線司令部でもある陸上戦艦のラーテが28cm2連装砲の砲火を開く。
それを皮切りに80cm列車砲のドーラやグスタフ、同口径の大砲を備えたP1500モンスターが砲撃を開始。
一際大きい飛翔音を響かせた後、帝都の街中に隕石が落下したような巨大なクレーターを穿つ
更には帝都周辺に配置された砲兵部隊やレイテ湾に展開中の艦艇群から、述べ10万門に及ぶ火砲の準備砲撃が始まった。
「これで3時間後には帝都へ進軍が開始される訳だが……何も千歳が前線指揮を執らなくてもいいじゃないか」
東京23区と同規模の広さがある帝都を灰塵に帰す勢いで叩き込まれる砲弾の嵐。
時間の経過と共に栄華を誇った都が、ただの瓦礫の山と化していく光景を視界の端に捉えつつカズヤは目の前にあるディスプレイに映る千歳に話し掛けた。
『我が儘を言って申し訳ありません。しかしながら……私にはご主人様の御身に傷を付けた原因であるゴミ共を縊り殺す使命がありますから。それに私事ながらこの傷の借りをヤツに返したいのです』
ラーテの前線司令部で戦況の推移を逐一監視しつつ、前線指揮を執っている千歳はカズヤの問い掛けに対し、右目の眼帯を手を押さえながら壮絶な気迫が込められた笑みでもって答える。
「だが、そうは言っても――」
『恐れながら。私から言わせて頂きますと、後方とは言え戦域に近い司令部にいらっしゃるカズヤ様も人の事は言えないと思われます。いや……そもそも何故、総統と副総統が揃いも揃って本土の総司令部に居てくださらないのですか!!』
報復の炎を滾らせる千歳にカズヤが更に言葉を掛けようとした時、ディスプレイに新たなウィンドウが開きパラベラム本土の総司令部にいる伊吹が怒りの声を上げた。
「『……』」
伊吹の最もな言葉にカズヤと千歳は揃って顔をあらぬ方向に向け、沈黙を貫く。
『百歩譲って副総統は致し方ないとしても……カズヤ様、貴方は本土にいらっしゃるべきですよね?』
「いや、それは……万が一通信網が役に立たなくなってしまった時に即座に指示が出せるようだな」
『指示云々ならば、副総統がラーテの前線司令部にいて下さっているのですから問題ないはずですよね?』
「……あ、そうだ!!セリシア、お前から見て今の戦況はどうだ?」
『カズヤ様!!話を逸らさないで下さい!!』
やぶ蛇を突っついてしまった自身の言葉を誤魔化すためにカズヤは伊吹の追撃をスルーしつつ新たな通信回線を開く。
そして最前線に展開している地上部隊と共に居るセリシアに声を掛ける事で話のすり替えを図った。
『フフッ、ゴホン。今のところ順調に進んでいるように見受けられますが、あまりに……不気味な程に手応えが無いように感じられます。やはり何かしら良からぬ事を企んでいるもの考えるのが妥当かと』
カズヤと伊吹のやり取りに思わず苦笑したセリシアは真面目な表情を取り繕いながらカズヤの質問に答えた。
「そうか」
まぁ、それもそうだよな。
この程度でケリが付くなら苦労はしないし。
今まさに地獄の釜の底のような状態に陥っている帝都の様子をちらりと横目で伺いつつ。
また、止まらない伊吹のお小言を聞き流しながらカズヤはこの先に待ち受けているであろう戦いに言い知れぬ不安を抱いていた。
「全地上部隊、これより作戦行動に移ります」
爆撃の豪雨に続いて砲撃の嵐が帝都を散々に撃ち据え瓦礫の山を拵えた後、いよいよパラベラム軍の地上戦力が動き出した。
「レイテ湾より海兵隊3個連隊及び陸軍2個連隊が上陸を開始」
まず最初に動き出したのはレイテ湾に展開中の強襲揚陸艦や輸送艦に乗艦していた海兵隊と陸軍の計5個連隊であった。
強襲揚陸艦のウェルドッグから勢いよく海上へ躍り出たEFV遠征戦闘車――史実では高性能ながら1輌18億という高価格が響き採用されなかった水陸両用強襲装甲戦闘車両は浮力を得ると履帯を車体内部へと格納し動力をウォータージェット2基に切り替え毎分95万リットルの水を噴射しつつ前進。
35トンの車体を24ノットで走らせ海上を突っ切ると、格納していた履帯を再び展開し帝都へと上陸を果たす。
それに続いて、海上事前集積船隊の所属であるワトソン級車両貨物輸送艦からサイドポート・ランプを通り重量物運搬船改造のMLP(機動揚陸プラットフォーム)に移動した海兵隊のM1エイブラムス――エイブラムスシリーズの最新型であるM1A2 SEPV3やM2A3ブラッドレー歩兵戦闘車等の機甲戦力がLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇で次々と帝都に押し寄せる。
また150トンものペイロードと破格の重武装を備え、エアクッション揚陸艦艇というカテゴリーの中では世界最大のポモルニク型エアクッション揚陸艦が陸軍の精鋭部隊を乗せ63ノットという高速力でレイテ湾内を疾駆した後、140mm22連装ロケット弾発射機で上陸ポイントへの制圧射撃を行いながら上陸を敢行した。
「ユタ、オマハ、ゴールド、ソード、ジュノー。全上陸ポイントにて上陸に成功」
「敵による反撃は認められず」
「上陸第一波、損害ありません」
「現在、橋頭堡を確保中」
オペレーター達の口から発せられた幸先の良い報告に作戦指令室の中が、にわかに沸き上がる。
「さて。レイテ湾からの上陸部隊は上手くいったが……内陸方面の部隊はどうかな?」
一先ず出足が挫かれなかった事に安堵しつつも、カズヤは新たなディスプレイに視線を移す。
そこには地上部隊の本隊――内陸方面に展開していた部隊が帝都へ向かって移動している姿と、その前方で帝都への侵攻を阻もうとリスポーン兵器で不死身化(仮)した帝国兵約10万が徹底抗戦の構えを取っている様子が映っていた。
「準備砲撃で多少なりとも叩いたのにやっぱり人的被害は0か……面倒な。それにしても……対戦車壕にパックフロントを意識したタボール(車陣)の配置。これも奴の入れ知恵かな?」
「ハッ、恐らくその通りかと」
前面に対戦車壕を掘り、武装した馬車を盾にして相互支援が前提の簡易陣地を築き、更にそこへ銃兵や砲兵を配置。
明らかに仮面の男が関わっているであろう敵の近代的な布陣にカズヤは眉をひそめる。
「全く、大した障害では無いが……進軍する上では目障りだな」
「はい。強行突破は容易いですが……轢き殺した人間の肉や皮膚が一時的――死体が消えるまでの僅かな間とは言え戦車などの履帯の間に絡まると厄介です」
「だよなぁ……結晶体の位置は特定出来たか?」
「残念ながら、まだ特定には到っておりません」
「そうか……ま、大方地下にでも隠しているんだろう。捕虜にした不死兵に実験やら検証やらを行ったセリシアの報告だと結晶体に本来の肉体を閉じ込めて仮初めの不死を得た奴等は結晶体からあまり離れられないはずだし」
「試しにあの一帯をバンカーバスターで掘り返してみますか?マスター」
「いや、これ以上は弾の無駄だ。予定通り“アレ”で潰そう」
「了解しました」
肉体を封じてある結晶体から一定の距離までしか離れられない、封じた肉体は2度と外に出せないなど幾つかのデメリットはあれど、結晶体を破壊されない限り不死という最大のメリットを得ている敵に対し、パラベラム軍の秘策が行われようとしていた。
「第731航空隊、爆撃を開始」
地上部隊が敵の防衛線から2キロの位置まで接近した時、F-15Eストライクイーグルの4個飛行隊が地上部隊の行く手に存在する帝国軍に対し爆撃を行った。
ただ、その爆撃に使用されたのは通常の航空爆弾ではなく……催淫性非殺傷型化学兵器が充填されたゲイ爆弾であった。
そのため爆弾が炸裂すると爆風や衝撃波ではなくピンク色に着色された怪しげなガスが辺り一帯に立ち込めた。
「ゲホッ、ゲホッ!!何だこりゃ!?」
「魔物のブレスか!?」
「違う!!毒ガスだ!!」
「クソ!!風の魔法で吹き飛ばせ!!」
異常事態に混乱する帝国兵達。
しかし、魔法を使う事で一部の兵士達はガスから身を守る事に成功していた。
「死んで復活してくるというなら、生かさず殺さずで無力化してしまえばいいだけの話。だが無力化にあたって催涙ガスを使用すると、あんな風に対処されてしまうのがオチ。だからこそ、もう一手必要になってくるんだが……」
史実じゃネタ扱いの計画に過ぎなかったが……こっちの世界だと普通に催淫性の化学物質が山ほどあったから、製造は簡単だったな。
何せセリシアに頼んだら1日で作ってくれたし。
カズヤは爆撃を受けた帝国軍兵士達の様子を眺めながら、これから悲惨な目に合う敵兵達に心の中で合掌していた。
「な、何だ?体が熱い!?」
「おい、どうした!?大丈夫か!?」
「体が熱くて…クソッ…頭がぼやけて……あれ?お前、よく見たらいい男だな」
「は?何を言って……」
「へ……エへへッ……」
「……おい、ちょっと待て。そんな目で俺を見るな!!」
「1発ぐらい良いだろう?体が熱くて堪らないんだ!!」
「く、来るな!!」
「駄目だ、もう我慢出来ん!!うぉおおおお!!」
「止めろッ!!正気に戻れ!!ッ、嘘だろ!?鎧を剥ぐな!!うわっ、ズボンは勘弁してくれ!!頼む!!お、おい、本気じゃないだろ?な?や、止めて――アッー!!」
男にのみ反応するように作られたゲイ爆弾が効力を発揮した瞬間、帝国軍の陣地では阿鼻叫喚の光景が広がっていた。
「……映像を切れ、こんなモノを見ている必要は無い。それとあの地獄へ早く制圧部隊を送るんだ。主力が通るのに邪魔だし、放っておいたらガスの効果で3日3晩はあそこで盛り続けるぞ」
「ハッ」
ガスを吸った者はもちろん。吸わなかった者達もゲイ爆弾の副次的被害を受け無力化されていく。
そんな地獄絵図の真っ只中をパラベラム軍の主力が通過し帝都への侵攻を開始。
帝都攻略戦の新たなる幕が開かれる事となった。