ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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無数の魔物の出現により、混迷を極める帝都で一際激戦を繰り広げるパラベラム軍の部隊がいた。

 

「彼女達は……本当に人間か……?」

 

その激戦を繰り広げる部隊――特別編成の一個混成連隊を率いるスタニスラフ・ポプラフスキー大佐は武装を撤廃する代わりに指揮通信能力が強化されたBMP-3の車内で畏怖の言葉を漏らした。

 

「連隊規模の戦力が前進に手間取る戦況で……たった9人……それも女だけで先行するなんて」

 

カズヤの命を受け孤立した第21騎兵大隊の救援へと向かう事になったセリシア達を援護すべく第55山岳師団から引き抜かれ編成されたポプラフスキー大佐以下の混成連隊は当のセリシア達から進軍が遅すぎると告げられ置き去りにされてしまったため、現在帝都の街中を混成連隊単独で進軍しつつ敵中突破を試みている最中であった。

 

『HQよりシーカーリーダーへ。2時方向、距離3000より連隊規模の敵集団が接近中、注意せよ』

 

「ッ、了解した。シーカーリーダーよりヴァンピール隊へ。2時方向より接近中の敵集団を撃退しろ」

 

セリシア達の常識外れの行動に呆然としていたポプラフスキー大佐はHQからの通信でハッと我に返ると無線機のマイクを掴み揮下の部隊に命令を下した。

 

『ヴァンピール01、了解!!』

 

混成連隊の主力である一個戦車中隊――ヴァンピール隊のT-80UM-1がポプラフスキー大佐の命令を遂行するために散開し停車、対戦車ミサイル回避装置であるシュトーラ2やアリーナ等を搭載した半球状の一体鋳造式の砲塔を旋回させる。

 

そして、路肩に積み重なる瓦礫の山の向こうからやって来る魔物の大群を51口径125mm滑腔砲で睨みつつ照準を定める。

 

直後、T-80UM-1が一斉に発砲。

 

接近中の魔物の中でも特に大型で甲殻類のカニを連想させる魔物を対戦車榴弾や主砲発射型対戦車ミサイルの9K119Mレフレークスで狙い撃ち、無力化していく。

 

また2輌のT-80UM-1につき1輌の割合で中隊に配備されている装甲戦闘車両――BMP-Tが30mm連装機関砲の猛烈な砲火でオークの大群を凪ぎ払い、9M120アターカ対戦車ミサイル連装発射機で遠方に見えるゴーレムの一群を粉微塵に爆砕する。

 

更には副武装のPKT 7.62mm機関銃や2機のAGS-17/30 30mm自動擲弾発射機が火を吹き、圧倒的な火力で敵戦力の大多数を占めるゴブリンやコボルトの前進を阻む。

 

『ヴァンピール01よりシーカーリーダーへ。敵残存兵力低下、このまま殲滅――緊急報告!!後方より敵増援が出現!!ダメだ、数が多すぎ――クソッ!!敵が迎撃ラインを突破!!注意されたし!!』

 

ヴァンピール隊が一個戦車中隊+αの火力で向かってくる連隊規模の魔物達を一方的に撃ち据え、敵の殲滅を完了させようとしていた時、魔物の増援が至近に出現。

 

それによってヴァンピール隊の対処能力を完全に上回った魔物達は、最終的に中隊規模の戦力を保ったままヴァンピール隊を群れの波で飲み込みつつ、混成連隊の本隊に肉薄する事となった。

 

「シーカーリーダー了解。そちらは取り付いた敵の排除を優先せよ」

 

『了解!!』

 

「シーカーリーダーより各隊に告ぐ。ヴァンピール隊の迎撃を突破した魔物共がやって来る。停車し防御態勢を整えろ。接敵した後は各個に応戦、敵を殲滅せよ」

 

『『『『了解』』』』

 

ポプラフスキー大佐の命令によって混成連隊が足を止め、防御態勢を整えながら魔物の来襲に備える。

 

「敵来襲!!」

 

「よぉし、撃ちまくれ!!」

 

間を置かず来襲した魔物達をいの一番に出迎えたのは混成連隊の中核をなす機械化装甲部隊――ブロンズ隊に所属する自走式高射機関砲のZSU-23-4シルカであった。

 

空の脅威に対応するべく随伴していたシルカは主武装のAZP-85 23mm4連装機関砲の水平射撃で濃密な弾幕を張り、不運にも射線上に存在した魔物を挽き肉に変えていく。

 

またイスラエルがアラブ諸国から鹵獲したT-54やT-55を改修して開発したアチザリットを更に改修し開発されたナグマホン歩兵戦闘車が浸透してきた魔物を相手に奮戦を見せる。

 

従来型の戦闘室上にドッグハウスと呼ばれる巨大な箱形の戦闘室に2挺から4挺のFN MAG機関銃を搭載しているナグマホンは機関銃の掃射で魔物達をバタバタと薙ぎ倒し、歩兵達が乗る輸送車輌群の元へ一匹足りとも通す事なく敵の突撃を撃ち砕いた。

 

「……なんとかなったか」

 

『ヴァンピール01からシーカーリーダーへ。取り付いた敵は全て排除した。これよりそちらへ合流する』

 

「シーカーリーダー了解。そちらが合流次第、進軍を再開する」

 

敵の掃討を終えたポプラフスキー大佐が安堵の息を漏らしていると、対戦車ミサイル回避装置であるアリーナの即応投射体を投射し取り付いた魔物を爆殺したヴァンピール隊が煤にまみれながら混成連隊の元へと戻って来る。

 

「よし、進軍を再開する。全隊――」

 

『こちらHQ、更に連隊規模の敵集団が接近中。11時の方向、距離2500。注意せよ』

 

ヴァンピール中隊の合流を確認し、ポプラフスキー大佐が改めて進軍を再開しようとした時、再度HQからの通信が入った。

 

「なに!?また連隊規模だと!?このままでは第21騎兵大隊と合流する前に弾薬が尽きてしまうぞ!!――シーカーリーダよりHQ、航空支援を要請する!!A-10の機銃掃射で敵を凪ぎ払ってくれ!!」

 

『HQ、了解。しかしながら現在そちらを支援可能なA-10部隊は存在していない。代わりの部隊を送る。暫し待て』

 

「……了解した」

 

HQの返答に不安を抱きながらもポプラフスキー大佐が航空支援を待っていると、それはやって来た。

 

「っ、おぉ!!A-10よりもいい機体がやって来たじゃないか!!」

 

ハッチから顔を出し喜色満面を浮かべるポプラフスキー大佐の視線の先には近接支援用の亜音速航空機――東側のA-10と目されるSu-25、その近代化改修型であるSu-25SM3が空を舞っていた。

 

『こちらは第107飛行隊。ただいまより近接航空支援の任につく。付近の部隊は注意せよ』

 

オープンチャンネルで注意勧告を発した第107飛行隊はエンジン音を響かせながら低空へと舞い降りてくると、翼下のハードポイントに吊り下げた8基のB-8M1ポッドからS-8ロケット弾を敵集団にばらまき始める。

 

「いいぞ!!もっとやれ!!」

 

「敵をぶっ飛ばせー!!」

 

ロケット弾が着弾する度にズタボロになって空へ吹き上げられる魔物の姿を見て混成連隊の兵士達が歓声を上げた。

 

そんな地上の喜ぶ声に応えるように第107飛行隊は反復してロケット弾の斉射を行い、そしてロケット弾の残弾が無くなると今度は大幅に弾数を増やしたGSh-30-2 30mm2砲身機関砲で執拗なまでの機銃掃射を繰り返し行い、混成連隊に近付く敵集団を壊滅状態に追い込んでいった。

 

「よし、今のうちに先へ進むぞ!!全隊、前へ!!」

 

胸のすく光景を横目に混成連隊は前進を再開。

 

先行したセリシア達にいち早く追い付き第21騎兵大隊を救うべく、戦場を再び駆け始めたのであった。

 

「何だこれは……」

 

だがしかし、進軍を再開してからさほど時間をおかずしてポプラフスキー大佐達は驚きの光景を目の当たりにし、思わず足を止める事となった。

 

「……ここで一体何があったんだ?」

 

辺りを満たすムワッとした鉄の匂いに赤ペンキをぶちまけたような一面の血。

 

加えて無惨に切り刻まれ、はらわたや脳漿を撒き散らした状態で地面に伏せる魔物達の死骸の山々。

 

そして、多くの帝国軍兵士の死体と廃人のように空を見詰める20人程の市民達。

 

それがポプラフスキー大佐達の足を止める原因となった光景であった。

 

『こちらHQ、貴隊が展開中の場所に存在した師団規模の敵勢力は先行したセリシア様達の手によって既に掃討済みだ。その場にいる市民を確保した後、速やかに前進を再開せよ』

 

「シーカーリーダー了解。……師団規模の敵を殺し尽くした?ますます人間かどうか怪しくなったな……」

 

HQの催促の言葉に含まれていた情報を耳にして、より驚きながらポプラフスキー大佐はセリシア達への畏怖を強めるのであった。

 

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