ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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15.5前編

元は辺境に住まう少数民族だけに細々と語り継がれていた土着宗教であったが、エルザス魔法帝国を建国した初代皇帝がその少数民族の出身でなおかつ熱心な信徒であったが故に国教として定められ、お陰で帝国の繁栄と共に勢力を拡大し最盛期には帝国国民の大多数を信者として抱える一大宗教組織にまでのしあがったローウェン教教会。

 

国教に定められた当初は真面目に布教活動を行い救いを求める者達にローウェン教の教えを説いて信徒を増やす事だけに力を注いでいたのだが、布教の一環として各地に教会を建立して信徒を守るためと言い国軍以外の独自の私設部隊(後の7聖女や教会騎士団)を組織し、積極的に信徒達からお布施を集め始めた頃から教会の活動の目的が徐々に信者への奉仕から自分達のための営利へと変わり始め、そして長い時を経た今では教会内部は完全に腐敗。

 

聖職者の立場にあるにも関わらず女を囲いお布施で私腹を肥やす者、教会騎士団の武力を背景に横暴な振る舞いをする者等で溢れかえっており、自己犠牲や博愛の精神を誇りにして清廉さに満ちていたかつての教会とは似ても似つかぬ悪態なモノに変わり果てていた。

 

そんな状態であったからこそ、今現在彼らの身に降りかかっている惨劇はもしかしたら教会の現状を嘆いたローウェンがもたらした試練だったのかもしれない。

 

最も、その試練は些か教会にとって厳しすぎたようであるが。

 

「――さて、それでは皆参りましょうか」

 

地球の西ヨーロッパでよく見られる様式に酷似した建て方で宮殿の敷地内に建てられ、帝国においては文化的にも歴史的にも特に重要で貴重な建物――ローウェン教教会の総本山である大聖堂。

 

その立派な門前をアデルや7聖女、武装した自らの信徒達を引き連れながら一仕事終えた顔で飄々と進むセリシアであったが、彼女の行く手には阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

 

「あらら、可哀想に……」

 

地獄絵図を前にして口をへの字に曲げ苦笑するアデルがセリシアの後に続きながらそう呟く。

 

レンガ造りの荘厳な大聖堂の門はセリシアが魔法で起こした爆発によって吹き飛ばされ、また門の前で隊列を組みセリシア達を待ち構えていた教会騎士団や門の内側で雑多な武器を持ち少しでも抵抗しようとしていた聖務者、信徒達が爆発に巻き込まれて死傷し、あちらこちらに倒れ伏していた。

 

「なぁ、こいつらは捕まえなくてよかったのか?」

 

目を覆いたくなる様な凄惨な光景を気にする様子もなく瓦礫と肉片を踏みしめながらズンズンと進んでいくセリシアにアデルが問うた。

 

「えぇ、ここにいる教会騎士団の者達は所詮居残り組、捨て手駒にする程の価値もありません。それにこの状況で反意を見せる信徒達は捕まえたとしても調――ゴホン。改宗に時間がかかるでしょうから今の私達が手間隙を掛けて無力化し、わざわざ捕まえる必要は無いです。それに信徒の数だけならもう十分に確保していますしね」

 

「それもそうだな。でも運よく生き残った奴もいるみたいだがそいつらはどうする?」

 

「放置で構わないでしょう。平時ならいざ知らず今は戦時。それにお心優しいカズヤ様のお慈悲(降伏勧告)を無下にしてあまつさえ刃向かうような輩にかける慈悲などありません」

 

アデルと言葉を交わしている最中に行く手を遮るように助けを求めて伸ばされた瀕死の騎士の手を蹴り飛ばしたセリシアは有言実行で瀕死の騎士を置き去りにする。

 

「確かに。それじゃあ……さっさと俺達は俺達の用事を片付けてカズヤの元に帰ろうか」

 

「フフフッ、そうですね。手早く片付ければご褒美が頂けるかもしれませんし」

 

鼓舞するようなアデルの言葉に笑みを返す一方、内心で険しい表情を浮かべているセリシアは改めて気を引き締めると、ローウェン教との因縁を断ち切るべく大聖堂の中へと入って行った。

 

「第1班は宿舎を第2班は食堂を制圧なさい。第3班、第4は私達と共に先へ行きますよ」

 

「「「「ハッ!!」」」」

 

「……もう少し何かしらの抵抗があるかと思ったのですが」

 

「拍子抜けだな。しっかし分かってはいたが教会も落ちる所まで落ちてる感じだな、全く」

 

連れて来ていた長門教の武装信徒を先行させ時折現れる教会騎士団の残党の他、恥も外見もなく自分だけはなんとか助かろうと逃げ出す司祭や修道士を悉く抹殺し、教義で自害が禁じられているがために死ぬことが出来ず、ただ恐怖に震えていた修道女達を拘束し大聖堂から連れ出させたりと、予想に反して順調に進む大聖堂の制圧作業にセリシアとアデルは顔を見合せながら大聖堂の更に奥へと進む。

 

「さて、ここからが本番です。どうあがいても一筋縄では倒せない相手ですからくれぐれも油断せぬように」

 

「あぁ」

 

「「「「「「「ハッ」」」」」」」

 

目立った問題もなく目的の場所へと辿り着いたセリシアはアデルと7聖女に改めて声を掛ける。

 

「第3班と第4班はここで手筈通りに動くように。……また万が一にも我々が敗北した場合は――分かっていますね?」

 

「承知しております」

 

「突入班全員でセリシア様に頂いたこちらの殉教薬を使用し魔力暴走を意図的に発生させ、我々もろとも大聖堂と敵を消し去ります」

 

セリシアの問い掛けに対し、暗く据わった目に狂信の炎を灯らせている信徒達が末恐ろしい事を当然とばかりに淡々と口にする。

 

「よろしい。では行きます」

 

背後に控えていた信徒達と万が一状況を想定した行動予定を確認するとセリシアは深く深呼吸をし眼前の扉を力強く押し開く。

 

ギギギギッと蝶番が軋む音を立てて開かれた扉の先は大聖堂の大部分を占める巨大な礼拝堂であった。

 

天井一面にはローウェン教の聖書に記載されている文言が絵画として描かれ、その天井を支える柱には黄金を使った緻密な装飾が施されていた。

 

そしてステンドグラスを通してキラキラと礼拝堂を照らす日光や燭台に灯された温かな火の光りが厳粛なムードを醸し出し、見るもの全てを圧倒する。

 

しかし、そんなムードに惑わされる事無く礼拝堂に立ち入ったセリシアやアデル、7聖女は整然と並べられた長椅子の間にある中央通路の向こうに目的の人物を見つけるとその人物を注意深く睨み付ける。

 

そんな彼女達の視線の先には聖餐台の上に置かれた神ローウェンの石像に深々と祈りを捧げている人物の後ろ姿があった。

 

「祈る事に夢中で俺達に気付いていない?今なら殺れるか……――オオォォッツ!!」

 

「待っ――もう!!アデルは言ったそばから!!」

 

無防備に背中を晒し、こちらに気付いた様子もないターゲットの姿を好機と見たアデルがセリシアの制止を振り切り、真っ直ぐ伸びる中央通路を音もなく駆け抜け、そして最後に跳躍。

 

両手で握り締めた聖剣を振りかざしターゲットを一刀両断に切り伏せようと奇襲を仕掛ける。

 

しかし、ターゲットにアデルの聖剣が届くより先に幾何学的な魔方陣が浮かぶ六角形の魔力障壁がターゲットの背後に展開され、アデルの斬撃を空中で防ぐ。

 

「防がれたか!?だが俺の聖剣ならば!!――ッ!?」

 

聖剣と魔力障壁がぶつかり空中で一瞬静止するアデルであったが、聖剣の能力を発動させ展開中の魔力障壁の魔力を吸収。

 

魔力障壁を無効化し、ニヤリと笑って攻撃を続行。ターゲットへ再び斬りかかるアデルであったが、予想外の事態がアデルを襲う。

 

「マズッ!?」

 

何十枚もの魔力障壁が瞬時に展開されアデルの行く手を遮り、更にはその魔力障壁が撃ち出された様にアデルに迫る。

 

咄嗟に体を丸め防御態勢を取ったお陰でダメージを最小限に留める事が出来たアデルであったが、魔力障壁と衝突した際の勢いはどうにもならずゴルフボールの様に勢いよく吹き飛ばされてしまった。

 

「イタタ……危ない危ない。まともに食らっていたら死んでたぞ」

 

「アデル!!無事ですか!?」

 

「あぁ、何とか」

 

弾き飛ばされ激しく壁に激突したアデルが口から流れ出た少量の血手でグイッと拭いながら立ち上がるとセリシアがすぐに声を掛ける。

 

ちなみにこの一連の光景をカズヤが見ていたとしたら、奴は第10徒か!?と叫んでいた事は間違いないであろう。

 

「勇者アデル。この神聖なる神の家で、それも主の御前において剣を抜くのはあまりにもおふざけが過ぎていますよ。しかし、主はきっとそんな貴女さえも寛大なお心でお許しになる事でしょう。主への感謝と祈りを忘れぬように――さて、それはそうとよくぞ帰ってきてくれましたね、私の子供達。ずっと心配していたのですよ」

 

見えていないはずのアデルの斬撃を魔力障壁の多重防御で防ぎ、更には魔力障壁でのカウンター攻撃でアデルを殺そうとしたにも関わらず人畜無害な笑みを浮かべて自分や7聖女の帰還を喜ぶ人物をセリシアは睨み付ける。

 

「聖母マリアンヌ・ベルファスト……」

 

そしてローウェン教の修道服に身を包み、皺くちゃの穏和な顔を優しげに緩ませている老婆の名をなんとも言いがたい感情を含ませて呟いた。

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