ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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千歳が買ってきた奴隷――メイド達の自己紹介を聞き終えたカズヤは千歳を伴い屋敷の中を見て回っていた。

 

「――そして、こちらがご主人様の私室になります」

 

「ふむ……ちょうどいいし少し休むか」

 

……っていうかベッド、デカっ。

 

屋敷の中をすべて見終わり最後に自分の部屋に案内されたカズヤは寝室で横になってくつろいでいた。

 

「……そう言えば空爆でどれだけレベルは上がったんだろう?」

 

先の空爆が終わってからレベルの確認をしていなかったことを思い出したカズヤはメニュー画面を開いてみた。

 

[兵器の召喚]

魔物を大量に倒したためレベルが55まで上昇し一部の制限が解除されました。

 

それに伴い2013年までに開発された兵器も新たに使用できるようになりました。

 

[召喚可能量及び部隊編成]

 

歩兵

・2万人(一個師団)

 

火砲

・1500

 

車両

・2500

 

航空機

・1200

 

艦艇

・500

 

※火砲・車両・航空機・艦艇などを運用するために必要な人員はこれらの兵器を召喚する際に一緒に召喚されます。

 

※後方支援の人員(工兵・整備兵・通信兵・補給兵・衛生兵)は歩兵に含まれておらず別途召喚可能となっており現在召喚できる後方支援の人員は軍団規模までとなっています。

 

※歩兵が2〜3人で運用できる範囲の重火器・小火器の召喚の制限はありません。

 

 

 

「これはまたチートが加速したな……」

 

空爆で数万匹にも及ぶ魔物を殺したお陰でレベルが上がり能力の弱点であった制限が解除され、また兵器不足の問題も若干解消された事にカズヤは喜んだ。

 

これだけ召喚できる軍の規模が増して兵器の種類が広がっているとなると1回基地に戻って部隊の再編成や武器兵器の更新をしないといけないな。

 

そう考えたカズヤは千歳を伴い誰にも気付かれぬよう王都を出発。

 

王都から数十キロ離れた人気のない草原でUH-60ブラックホークを召喚し乗り込むと一路、前哨基地へと急いだ。

 

数時間後、前哨基地に無事到着したカズヤは早速召喚を開始し部隊の再編成や武器兵器の更新に駆けずり回る。

 

「えぇと、まず旧式のこれは要らなくなったから消して代わりに最新式のこれを召喚っと、で次に――」

 

 

その甲斐あってか約24時間で本拠地や前哨基地にいる全部隊の再編成と武器兵器の更新が完了。

 

そうしてすべての更新作業が終わると部隊規模が大きくなったためカズヤは総隊長から総司令と呼ばれ方が変わり千歳も中佐から大佐へと昇進することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

すべての作業を終えたカズヤはヘトヘトになりながらも、すぐ王都へ戻った。

 

「……ふぅ。やっと終わった。屋敷に帰って寝よう。千歳、帰るぞ」

 

「ハッ」

 

更新作業の疲労を癒すため屋敷で千歳と共に十分な睡眠を取ったカズヤが目を醒ますと親衛隊の兵士から妙な報告を受ける事になった。

 

「……屋敷の裏手にある倉に隠し扉があっただと?」

 

「はい、総司令達が居ない間にメイド達と共に屋敷をくまなく掃除して整理整頓していた時に見つけました」

 

「中は確かめたか?」

 

「いえ、まだです。まずは総司令にご報告をと思いまして」

 

「そうか……。じゃあ確かめるか。手空きの兵士を集めろ。あぁ、一応完全武装でな」

 

「ハッ、了解しました」

 

カズヤに返事を返すと報告を持ってきた兵士は部屋から出ていった。

 

しかし、隠し扉かぁ……なにがあるんだか。

 

カズヤが隠し扉についてあれこれと考えを巡らせている時だった。

 

「ご主人様」

 

「ん?なんだ千歳」

 

「……これは憶測なのですが、その隠し扉の先は地下牢があるかもしれません」

 

兵士の報告を聞いている間ずっと考え込んでいた千歳が、なにか思い当たる節があったのか口を開く。

 

「なぜ、地下牢だと?」

 

「いえ、屋敷を購入する際に以前住んでいたのが奴隷商だったというのを聞きましたので、もしかしたら……そうかと」

 

「……あり得ない話ではないな」

 

以前住んでいた商人って奴隷商だったのか。

 

じゃあ千歳の考えが合っているかもな。

 

カズヤがそんなことを考えながら集まった兵士と共に隠し扉をくぐると千歳の考えが正しかったことが分かった。

 

「なんだ、この腐臭は……」

 

「これは……凄まじいですね」

 

隠し扉の先には千歳の予想通り地下牢があったのだが地下牢の中は何かが腐ったような、鼻が曲がってしまいそうな匂いが充満していて酷い有り様だった。

 

そのためカズヤは急遽、対NBC兵器装備の00式個人用防護装備を召喚し装備すると部下達と共に改めて地下牢の探索を始めた。

 

「慎重に行くぞ」

 

「了解」

 

真っ直ぐ奥に続いている石畳の廊下を挟むように左右にある地下牢をM4A1カービンに付けたフラッシュライトで照らしながらカズヤ達は慎重に進む。

 

そうして地下牢を進んで行くと千歳が何かを見つけた。

 

「ご主人様……これを」

 

千歳が照らした先には腐蝕し虫が沸いている死体が横たわっていた。

 

匂いの元はこれか……。

 

「……ここから運び出して供養してやってくれ」

 

「了解です」

 

部下が遺体を外に運び出している間にカズヤ達は更に奥へ進んだ。

 

「ここで、行き止まりか……」

 

地下牢の一番奥には今までで一番大きい牢屋があり、そこには先程と同じように複数の遺体が転がっていた。

 

カズヤは牢の錠前をM4A1カービンで撃ち、破壊すると鉄格子の扉を開け中を調べ始める。

 

「……酷いな」

 

「……はい」

 

牢屋の中に横たわる遺体には妖魔族や獣人族と分かる身体的特徴を持つ遺体が多く、しかも体には拷問でも受けたような傷が大量に見られた。

 

「なぜ、こんなことを……」

 

「……この世界では奴隷――特に妖魔族や獣人族なのですが、奴隷は物品。つまり物扱いを受けていますから大方、奴隷をいたぶって遊んでいたのでしょう」

 

カズヤが欠損が激しい遺体を前に眉をひそめ小さく呟くと千歳がカズヤの呟きに答える。

 

クソ、胸くそ悪い話だ。

 

あまりの惨状を前にカズヤはただただやるせなさを感じていた。

 

「まだこんなに小さい子どもまで」

 

カズヤが周りの遺体に比べ、比較的傷が少ない様に見えた姉妹らしき2人の少女の頬に手を添えた時だった。

 

「……っ」

 

なっ!?

 

「……っ」

 

まさか……生きてる?

 

カズヤが慌てて2人の少女の瞼を抉じ開けライトを目に当てると2人の目が微かに動いた。

 

「ご主人様?どうかされましたか?」

 

いきなりしゃがみこんで遺体の瞼を開きライトを当て始めたカズヤの行動に疑問を抱いた千歳がカズヤに問い掛ける。

 

「……生きてる」

 

「はい?」

 

「生きてるぞ!?この2人!!」

 

「まさか!?」

 

カズヤと千歳が驚いて声をあげた時だった。

 

「せ、生存者あり!!」

 

「嘘だろ!?こっちも生きてるぞ!!担架急げ!!」

 

周りからも時を同じくして兵士達の驚きの声が上がった。

 

「衛生兵と軍医を呼べ!!それとここにある遺体の生死確認急げ!!」

 

「「「「りょ、了解!!」」」」

 

カズヤの命令と共に兵士達が慌ただしく動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

思いもよらぬ出来事に見舞われたカズヤは、またヘトヘトに疲れ果てていた。

 

「疲れた……」

 

「お疲れ様でしたご主人様」

 

最終的には地下牢から助け出された奴隷達は妖魔族が5人、獣人族が2人の計7人に及び、助け出された奴隷は全て女性で内訳は妖魔族がヴァンパイアの姉妹とオーガ、ラミア、ダークエルフ。獣人族が狐耳と犬?狼? 耳の2人であった。

 

本来であれば彼女達はどんな処置を施しても、もう助からない状態だったのだが、カズヤが持つ完全治癒能力によりなんとか九死に一生を得る事が出来ていた。

 

「彼女達の容態は安定しています。ですから後は……彼女達次第です」

 

「あぁ、そうだな。しかし俺の完全治癒能力じゃあ栄養失調は治せなかったみたいだから早めに前哨基地か本拠地の病院に搬送しといてくれ」

 

「分かりました。そのように手配いたします」

 

「悪いが頼んだ。能力を使い過ぎたのか、とても眠いちょっと寝てくる」

 

カズヤはそう千歳に告げるとふらふらと自室に戻って行った。

 


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