ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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建国から今日まで多くの国々を滅ぼし、血と屍を積み上げる事で繁栄を謳歌していた帝国。

 

そしてその繁栄の象徴として長きに渡り君臨してきた宮殿の主殿は怒濤の勢いで攻め上がるパラベラム軍の手によって遂に落城の時を迎えようとしていた。

 

「敵守備隊の降伏を確認。宮殿要塞エリアの完全制圧完了」

 

「A00からG00までの突入部隊、順次主殿へ突入します」

 

「セリシア隊、大聖堂内部にて聖母と交戦を開始した模様」

 

「……」

 

最前線の帝都から離れた後方の安全な基地。

 

その地下にある作戦指令室の一室では千代田を2人側に侍らせながら、矢継ぎ早に口を動かすオペレーター達の報告に耳を傾けるカズヤが帝国の終わる様を静かに眺めていた。

 

「先行する突入部隊より主殿内部の映像来ます」

 

主殿の固く閉ざされた扉や窓、更には出入口ではないはずの壁をブリーチングで吹き飛ばし、強引な手法でド派手に突入するパラベラム軍。

 

『う、うわあああー!!』

 

『キャー!!』

 

『敵が入って来たぞー!!』

 

『誰か早くあの成り上がり者を連れてこい!!』

 

それを見て悲鳴をあげながら逃げ惑うメイドや下級貴族達の姿が突入した兵士達のヘルメットカメラからライブ映像として作戦指令室のモニターに流れる。

 

と同時にヘルメットカメラのマイクが現場の緊迫した音声を拾い、モニターのスピーカーを通して作戦指令室の中を満たす。

 

『ガムロ!!』

 

『アイディア!!早く行け!!』

 

『うわああぁぁん!!お母様ー!!』

 

『天地万物を統べる神よ。あぁ、どうか、どうか、罪深き我らを救いたまえ……』

 

夫らしき名前を叫ぶ女に早く逃げろと怒鳴る男の声、母とはぐれ泣きじゃくる子供の声、加えて部屋の隅に踞り神の名を口にして老人が叶わぬ祈りを捧げる声。

 

『帝国軍近衛隊及び民間人に告ぐ。直ちに武器を捨て降伏し、我々の指示に従え』

 

そんな雑居な声の数々を打ち消すようにパラベラム軍兵士による降伏勧告が拡声器を通して通達される。

 

しかし、そう簡単に帝国軍や主殿に立てこもる民間人が言うことを聞くはずもなく。

 

『主は我らと共にあり!!突撃ー!!』

 

『『『『うおおぉぉー!!』』』』

 

『降伏勧告の拒絶を確認。各員全兵器使用自由!!敵を掃討せよ!!』

 

『『『『了解』』』』

 

蛮勇を胸に抱いて抵抗する主殿の守備隊が粛々と歩を進めるパラベラム軍に蹴散らされ、銃弾を受けた者達の呻き声や絶叫、断末魔が加わり完成したカオスな戦場音楽が作戦指令室の中を満たした。

 

命じた張本人が言うのも何だが……やはり見慣れていても弱者が蹂躙される様は悲惨の一言に尽きるな。

 

一方的な戦いが繰り広げられる戦場の鮮明な映像や音声を目の当たりにしつつ、カズヤは思考の片隅でそんな事を考えながら自分達の身にこの様な惨事が降りかからぬよう、そして自身の亡き後に皆が困らぬよう改めて軍備増強の決意を秘かに心へ刻んでいた。

 

「デルタフォース、ヘリボーン降下始め。――……デルタフォース、西塔及び東塔の屋上を確保しました。これより下層の捜索に入ります」

 

「ネイビーシールズより入電。諜報員の報告にあった南水門より主殿の地下へ繋がる秘密通路への侵入に成功。現在の所、敵影なしとの事」

 

「SASが後宮へ侵入。皇后及び側室、女官の拘束を開始します」

 

「突入部隊の本隊、主殿内部へ入ります」

 

チェックメイトと同意義である報告を受け、カズヤはメインモニターに視線を移す。

 

そこには全身を覆う漆黒の対弾対爆対魔装甲スーツの上に24時間の連続運用を可能とするゴツゴツとした強化外骨格を装備した親衛隊の隊員がコストを度外視して配備された特殊なヘルメット――4400万円もするF-35専用のヘルメットを流用した高性能なモノををかぶり、またガスマスクを付け、第二次世界大戦中にドイツ第三帝国が開発したMG42を元に再設計したラインメタルMG3汎用機関銃を構えて某○狼に登場する特○隊のような出で立ちで主殿の内部を進軍していた。

 

……民間人が尋常じゃないぐらい怯えているな。まぁ、この世界の人達から見たら化物と一緒か。

 

敵の恐怖心を煽り士気を低下させるという最もらしい理由の裏で、ただ単にロマンという要素を重視して採用した親衛隊の機械化歩兵の姿にやり過ぎだったかと悩みカズヤは表情を少し崩した。

 

その直後であった。

 

「――マスター!!大変です!!姉様が敵に捕まりました!!」

 

側に控えていた千代田が突如声をあげ、信じられない事を口にした。

 

「何だと!?」

 

「千歳副総統との通信途絶!!」

 

「護衛部隊も応答しません!!」

 

また、千代田の言葉が正しい事を証明するかのように次々とオペレーター達が千歳や護衛部隊との連絡が取れなくなった事を報告してくる。

 

「そんなバカな……」

 

予想もしていなかった報告にカズヤの顔からは一気に血の気が引いたのであった。


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