ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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後半部分はいらなかったかも……(;´д`)


17

「だから私はお兄さんと結婚するの!!」

 

「イリス……」

 

会談が行われていた部屋とは別室でイリスが癇癪を起こしたようにイザベラ女王に言った。

 

「でもイリス……貴女はいつ魔力が暴走するか分からないのよ?万が一魔力の暴走が起きてナガト総統にもしものことがあったらどうするの?」

 

最悪の事態に備え魔法使いが魔法障壁を張っている後ろでイザベラ女王が困った顔で言った。

 

「大丈夫です!!魔力の制御は出来るようになってきましたから!!」

 

イリスは誇らしげに胸を張ってそう言った。

 

「まぁ、本当に!?」

 

驚きを露にしたイザベラ女王はイリスの後ろに立つフィリスとベレッタに確認するような視線を送る。

 

 

「はっ、はい。確かに姫様は魔力を制御できるようになって来ています」

 

「……本当なのね。でもイリス。どうやって魔力を制御できるようになったの?」

 

「お兄さんと結婚するために頑張ったんです!!」

 

イザベラ女王がどのようにして魔力を制御できるようになったのかと聞くとイリスは無邪気な笑みを浮かべて言い放った。

 

「そ、そう……」

 

困りましたね。カレンにはもう言ってしまったし2人も国の重要人物を嫁がせる訳には……いえ、いっそのこと2人とも娶ってもらいましょうか。

 

イザベラ女王はイリスとカレンの2人を嫁がせた場合のメリットやデメリットを頭の中で考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「向こうも大変だな」

 

会談の翌日。カナリア王国の王城の一室でカズヤは呑気にそんなことを言っていた。

 

まぁこっちはこっちで大変なんだがな……。

 

中断された会談の後に改めてやって来たイザベラ女王から同盟関係をより強固な物にするためにイリスとカレンのどちらか、もしくは両方との結婚の話が持ち上がってからと言うもの千歳副総統の機嫌は今までにないほど悪かった。

 

しかも間の悪いことにカズヤが王城にいる間になんとかお近づきになろうとする利に目ざとい貴族や豪商達が娘や孫娘をカズヤの側室にしようと動きその娘達も積極的にカズヤにアプローチをかけていたためそれも千歳副総統の機嫌を悪くする一因になっていた。

 

そんな機嫌の悪い千歳副総統はさておき今日はこのあとカナリア王国の隣国、妖魔連合国の要人がこの部屋に来ることになっており夜にはパラベラムとカナリア王国の同盟締結の記念パーティが予定されている。

 

「総統、お越しになりました」

 

「分かった。入ってもらえ」

 

出入口を固めていた部下が妖魔連合国の要人が来たことをカズヤに知らせた。そしてカズヤが中に通すように言うと扉が開かれた。

 

「失礼します」

 

恐る恐ると言った感じで部屋の中に入ってきたのは毛むくじゃらで小学生低学年レベルの背丈しかないが、それでも立派な成人であるドワーフの男だった。

 

「どうぞ」

 

カズヤがドワーフの男に座るように促すとドワーフの男は席に着き自己紹介を始める。

 

「お初にお目にかかります。ナガト総統閣下。千歳副総統閣下。私はグレゴ・オリヴァー侯爵と申します」

 

そう名乗ったオリヴァー侯爵は悲痛な面持ちで何かに急かされるように話を始めた。

 

「さっそくでもう訳ないのですが、ナガト総統閣下は我が国にも帝国軍が侵攻している事はご存知でしょうか?」

 

「あぁ、一応知っているが……」

 

「そうですか。それで……本題なのですが、なにとぞ我が国とも同盟を結んで頂きたいのです」

 

「つまり早い話が援軍を送って欲しいと?」

 

「……はい。その通りです。というのも帝国軍が開発した新兵器によって我が妖魔軍は甚大な被害を受け帝国軍の領土内への侵攻を許してしまい。もはや閣下のお力をお借りするしか帝国軍を追い返す方法がなく……」

 

「……その新兵器っていうのはなんなんだ?」

 

カズヤが話に食い付いたのを好機と見たオリヴァー侯爵はカズヤの興味を引くべく次々と重要な情報を開示した。

 

「はい。その新兵器は2つあります。1つは魔導兵器。もう1つは自動人形(オートマタ)と呼ばれています。帝国には何人かの渡り人がいるようでして、そのうちの1人が対妖魔族・獣人族用に製造したという話です」

 

おいおいちょっと待て!!帝国には何人も渡り人がいるのか!?

 

オリヴァー侯爵の話を聞いてカズヤは帝国に複数の渡り人がいることを初めて知った。

 

黙って話を聞きながら考えを巡らせるカズヤを前にオリヴァー侯爵は話を続ける。

 

「それに加え今魔王様は勇者を名乗る渡り人と戦った際に傷を負ってしまわれているため兵士達の士気も下がっていく一方で……」

 

って魔王!? ……あぁ、そういうことか“妖魔”達の王様だから魔王か……

 

「私がこうして話している間にも帝国は我々の同胞を虐殺しています!!どうか!!どうか閣下のお力添えをっ!!」

 

座っていた椅子から立ち目の前で土下座をするオリヴァー侯爵に戸惑いながらカズヤが答える。

 

「……帝国軍を妖魔連合国の領内から殲滅するのに限ってなら軍は送ってもいいが」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「あぁ、だが本格的な派兵となると部隊の編成、移動を含めると1〜2ヵ月はかかるぞ?」

 

「構いません。援軍を送っていただけるだけで我々は助かります」

 

「そうか……。それと敵の詳しい情報がほしいから本隊より先にいくつか部隊を送るが、いいか?そちらに不利益になるようなことはさせないから」

 

トリッパーが作った魔導兵器と自動人形のことは気になるからな。あわよくば鹵獲しておきたい。

 

「それは構いませんが……」

 

オリヴァー侯爵は口澱んだあとカズヤの顔色を伺うように言う。

 

「あの……それで閣下。我々は対価に何を払えばよろしいですか?」

 

……対価ねぇ。対価って言ったって欲しい物なんてなにもないしな。どうしようか……。

 

「うーん。燃える水とかないよなぁ」

 

カズヤが思い付きでポロリと言葉を溢すとオリヴァー侯爵から予想外の返事が帰ってきた。

 

「燃える水?……でしたらありますが?」

 

「……あるのか?」

 

「はい。妖魔連合国の領内に何ヵ所か燃える水が大量に湧き出す場所があります。……黒い水ですよね?」

 

カズヤと千歳副総統は思わず顔を見合わせた。

 

「あぁ、確かに俺が言っているのは黒くて燃える水のことだが」

 

言ってみるもんだな……これで能力が使えない時でも燃料の心配をしなくてもよくなりそうだ。まぁ備蓄は腐るほどしてあるが……

 

カズヤは棚からぼた餅のように突然手に入ることになった油田に頬を緩めた。

 

「現物を確認してからになるがそれを対価に貰おう」

 

「そのような物でよろしいのですか?」

 

どんな対価を要求されるかと戦々恐々としていたオリヴァー侯爵はあまり利用価値がなく周辺住民が時折使うことぐらいしかない黒い水を対価として要求され肩透かしを食らったような顔で言った。

 

こうして本決まりではないが妖魔連合国とも同盟が結ばれることが決まった。そして妖魔連合国との同盟の内容などはこれから詳細に決めることになった。

 

オリヴァー侯爵がホッとした顔で部屋から出ていったあとカズヤは関係各署に命令を出し派兵の準備を進め複数の特殊部隊に緊急出撃命令を出し自分は千歳副総統と共に夜に予定されているパラベラムとカナリア王国の同盟締結を祝うパーティーの準備に取りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

月明かりが暗闇をぼんやりと照らすなか王都の城では魔法具による灯りが煌々と焚かれひかりを放つ中、パラベラムとカナリア王国の同盟締結を祝って盛大なパーティが開かれている。

 

……こういう場はこれからも参加しないといけないんだろうけどめんどくさいな。

 

まさに貴族というような服を着てワイングラスを片手にこちらをチラチラと伺う男性貴族やきらびやかに着飾り露出の多いドレスを着た年若い美少女や妙齢の美女達の色香に満ちた誘うような視線を一身に浴びてカズヤはそんな風に思う。

 

今は千歳が周りに人を寄せ付けないようにしてくれてるがそれもいつまで持つことやら。

 

カズヤの隣にはあわよくばお近づきになろうと近付いてくる貴族を牽制するように殺気混じりのオーラを撒き散らす千歳がいた。だが、ずっとカズヤの側にピッタリとくっつき片時も離れない千歳の存在にもいい加減焦れてきたのかカズヤに声をかけようとする貴族が目立ち始めた。

 

そんな時、人混みをすり抜け千歳副総統の思わず後ずさるような威圧的な視線を物ともせずカレンがカズヤの元にやって来た。

 

「あらあら人気者は大変ね。カズヤ」

 

「注目されるのは苦手なんだが……。それよりそのドレスよく似合ってるぞ」

 

「そう?ありがとう」

 

挨拶を交わしカズヤにドレス姿を褒めて貰ったカレンは嬉しそうに微笑んだ。

 

「……どうしたの? ……もしかしてカズヤ、貴方パーティーに慣れていないの?」

 

居心地悪そうにそわそわとしているカズヤの様子を見てカレンが訝しげに問い掛ける。

 

「……分かるか?」

 

「えぇ。でもパーティーぐらい貴方のいた世界でもあったでしょ?」

 

「あぁ、パーティー自体はあったが参加するのは初めてだ。」

 

「どういうこと?1国の主なら何かしらのパーティーぐらい1度は参加するでしょうに」

 

「そう言えば言ってなかったな、俺がパラベラムの総統の座に就いたのは、ほんの数ヵ月前だ。俺が総統の座に就いてからもいろいろと忙しくてパーティーなんか開いている暇が無くてな。更に言えば俺はこの世界でいう平民出身だったからこんな貴族が参加するようなパーティーには出たことがないんだ」

 

「嘘……じゃないようね」

 

「嘘を言ってどうする。全部本当だ」

 

「……そう言えば貴方、陛下と謁見室でお会いした時おかしなぐらい緊張していたけどそういう理由だったのね?」

 

 

カレンが以前のカズヤの様子を思いだし1人納得したように頷いていると、突然会場の中が騒がしくなりカズヤ達を取り囲むように立っていた人の壁が割れイリスがカズヤに向かって歩いて来た。

 

先日のカズヤを迎えたような公式な式典のような場ですら滅多に現れないはずのイリスが現れたことで小さな騒ぎが起こっていたのだが、それにもましてこんな娯楽混じりのパーティ会場にイリスが来るとは考えていなかった貴族達はいろめきたつ。

 

そしてパーティ会場のあちらこちらから汚物を見るような視線とイリスを侮蔑する声が囁かれた。

「(あれ見てよ。あの目、気持ち悪いわ)」

 

「(しっ!!聞こえたらどうするの!?あれでも一応この国の王女よ!?)」

 

「(あんな穢れたオッドアイの娘が王女なんて世も末ね)」

 

「(衛兵は何をやっとるんだ。この場で魔力の暴走が起きたらどうするつもりだ!!)」

 

 

「(やはり気味が悪いですな。あの目は)」

 

「(全くです。これではせっかくのパーティーが台無しになってしまいします。早く出ていけばいいのですが)」

 

そんな侮蔑の視線と言葉を浴びたせいかイリスはドレスをギュッと握り締め俯きカズヤの元まで歩いて来る。

 

このパーティーの為に着てきたであろう可愛いらしいドレスは嗚咽を堪えるために小刻みに揺れ動き、薄く化粧を施した顔にうっすらと涙を滲ませながらカズヤの顔を見上げ無理やり作った痛々しい笑みを浮かべながら鼻声でイリスは言った。

 

「おっ、お兄さんに……グスッ、ドレス姿を見て欲しかったッんですけど、グズッ、わ、私は、私が……いると、ダ、ダ……メみたいですから、ズズッ、か、か、帰ります……ねっ?」

 

カズヤに自分のドレス姿を見てもらおうと負の感情をぶつけられながら健気にもここまでやって来たイリスを前にしてカズヤの体は自然と動いた。

 

カズヤは背の低いイリスと目線を合わせる為に屈み、やさしく頭を撫でつつ出来る限り心を込めて言った。

 

「すごく可愛いぞ。イリス」

 

「……ッ!!……ッ!!グスッ、ほ、本当に?」

 

「あぁ、本当にお嫁さんにしたいぐらいだ」

 

「〜〜〜ッ!!〜〜〜ッ!!」

 

カズヤの言葉を聞いてイリスはボタボタと瞳から涙を流しカズヤに抱きつくと軍服に口を強く押し付け嬉しさのあまり次から次へと溢れだす嗚咽を必死で堪えていた。

 

カズヤはそんなイリスを優しく抱き抱えカレンに一言断りを入れると、いつの間にか側にいたフィリスとベレッタに案内されてパーティ会場を後にした。

 

このパーティの主役であるカズヤが“イリス”を抱き抱え去っていく光景をパーティ会場に残された貴族達は呆けた顔で見送っていた。

 

そしてこの場で初めてカズヤとイリスの親密さを知った大多数の貴族達は自分達のイリスに対する先程の態度がカズヤの心象を悪くしたのでは?と思い慌てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

泣きつかれて寝てしまったイリスを部屋に送り届け、あとをフィリスとベレッタに任せたカズヤは嫌嫌ながらももう一度パーティ会場に戻ることにした。

 

「あら?……もう戻って来ないかと思っていたのだけど」

 

「パーティの主役が消える訳にもいかないだろ」

 

会場に戻るとカレンがカズヤのこと出迎えた。

 

「そうかしら?別に貴方がこのパーティーを放り出しても誰も文句は言えないと思うけれどね。……ここだと話を続けるには周りが邪魔だわ。テラスにいきましょ」

 

カレンに誘われるままカズヤは小さなテラスに出た。テラスの唯一の出入口には千歳副総統が立ってくれたため話を盗み聞かれる心配がなくなり2人は安心して喋ることが出来た。

 

「さっきは大変だったわね」

 

「まぁ……な」

 

「それで王女様の様子は?」

 

「泣きつかれて寝ちゃったよ」

 

「そう……」

 

夜空に輝く月を見上げながらカズヤがカレンに言った

 

「なぁカレン?」

 

「なに?」

 

「カレンもイリスの目は気持ち悪いと思うか?」

 

「私はなんとも思わないわよ。この国ではオッドアイは穢れの象徴と言われているけれど、王女様と比べることすらおこがましいぐらい穢れている下衆な奴等なんてごまんといるもの」

 

「そうか」

 

その後、2人がいるテラスはしばらくの間沈黙に包まれた。

 

 

「そうそう、カズヤ。貴方妖魔連合国にも軍を派遣するそうね?」

 

 

長い沈黙を破りふと、思い出したようにカレンが言った。

 

 

「ずいぶんとよく聞こえる耳をお持ちで……」

 

「あら、これぐらい普通よ?」

 

カズヤが呆れたようにそう言うとカレンは苦笑しながら答えた。

 

「……聞いた話だと妖魔連合国もずいぶんとまずい状況らしい。なんでも魔導兵器と自動人形とか言う新兵器が大量に投入されたせいで妖魔軍は負け戦続きなんだそうだ。今パラベラムでも情報を集めているが新兵器のことで分かったのは姿形だけだな」

 

 

カズヤはそう言ってRQ-1プレデターが撮影してきた航空写真をカレンに手渡した。

 

「……カズヤにはずっと驚かされてばかりね」

 

 

精巧に描かれたまるで絵のような航空写真をパラパラと捲りながらカレンは言った。

 

 

カレンが見ている航空写真に写っているのは全長が6〜7メートルほどで頭と体が一体化した卵のような胴体に太く短い手足を付けたずんぐりむっくりな姿の魔導兵器とマネキンによく似た姿形で顔には大きなモノアイが1つ付いているのが特徴的な自動人形だった。

 

「……まるで神の作りし兵器ね」

 

 

「神の作りし兵器?なんだそりゃ」

 

 

カレンがボソリと呟いた言葉にカズヤが反応した。

 

「神の作りし兵器っていうのはローウェン教の神話に出てくる兵器のことよ。なんでもローウェン教の神が人間以外の妖魔族や獣人族を滅ぼすために信徒に与えた兵器らしいわ。一時期敵をよく知るためにローウェン教のことを調べていたことがあったのだけれど、その時に読んだ書物にこの魔導兵器と自動人形に似ている記述があったの」

 

 

「神話……ねぇ。ちなみにどんな記述だったんだ?」

 

 

「えぇっと。何度殺しても甦る『不死の軍団』たった1体で一夜にして1国を滅ぼした『機械仕掛けの鉄の巨人』よ。――他にもいろいろあったわよ?ひとたび歩けば山を崩し谷を埋める『巨大な竜』天より舞い降りし『神聖なる業火の光柱』とか。他にもあるらしいのだけれど他は失伝したみたいで書かれていなかったわ。あぁ、あと聖地が信徒を天――神の元へ運ぶために空に浮かぶなんて眉唾物の記述もあったわね」

 

 

「そんな話があるのか……。」

 

 

「えぇ。でも所詮神話の話よ。この新兵器とは関係ないと思うわよ」

 

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 

そんな風に2人の密談はその後しばらくの間続いた。

 




次回、戦闘にてあの男が登場。


こうご期待(笑)

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