ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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偵察任務についていた第12分隊を率いる分隊長バルザ・エリック軍曹はカズヤとの通信を終え、通信兵に無線機を返すと周りに待機している兵士達に命令を伝えた。

 

「たった今、総隊長から直接命令が下された。現在監視、追尾中の男は現時点を持って敵と判断、始末せよとのことだ。また増援として司令部から完全武装の一個小隊がこちらに向かっている。その小隊が合流し攻撃位置についたら作戦を開始する」

 

エリック軍曹が部下の兵士達に命令を伝えるとその内の1人が手を挙げた。

 

「分隊長、作戦はどのようなやり方で殺るのですか?」

 

「まぁ待てそれを今から伝える。……だがな、この任務は隊長から直々に通達された任務だ。間違っても失敗する訳にはいかない。それにあの男は何らかの能力を持っている。だから念には念をいれて二段階の作戦とする」

 

エリック軍曹はそこで一度言葉を切ると部下達を見渡してから口を開く。

 

「まず、こちらの分隊と増援の小隊にいる狙撃兵で長距離からの狙撃による先制攻撃を仕掛ける。この攻撃で仕留められればいいが失敗した場合、狙撃兵は牽制射撃を行い目標を足止めに専念。その間に目標との距離を詰め我々と小隊の全火力を集中し目標を抹殺する。……だがそれも失敗した場合は我々の兵器では対処出来ないと判断し司令部に支援砲撃を要請、支援砲撃の着弾に紛れ撤収だ」

 

「「「「……」」」」

 

「他に何か質問のある奴はいるか?いないなら動くぞ。通信兵、増援の小隊――第1小隊にも作戦を伝えておけ。それと俺達は臨時に第2小隊と呼称する」

 

エリック軍曹はそう言い終えると目標を追跡している部下と合流するべく移動を開始した。

 

「目標は?」

 

「あちらにいます」

 

「あれか……」

 

『こちら第1小隊、攻撃位置についた』

 

エリック軍曹が部下と合流し目標の男に気付かれないよう移動していると増援の第1小隊から準備よし、の報告が入った。

 

「それでは作戦を開始する。まず第2小隊の狙撃兵が撃つ、それに合わせて第1小隊も狙撃を開始せよ。失敗した場合は作戦どうりに動け」

 

エリック軍曹が周りに潜む部下や離れた位置にいる第1小隊に無線で指示を出していると隣にいた狙撃兵が軽口を叩ながらカチャリと音をたて九九式狙撃銃のボルトを引いて初弾を装填する。

 

「大丈夫ですよ、軍曹。何も心配する事はありません。この距離で俺の腕と九九式狙撃銃なら外しませんから」

 

「よし、そこまで自信があるなら必ず仕留めろよ」

 

スコープを覗いて狙いを定めている狙撃兵に言うと、その狙撃兵はニヤリと獰猛な笑みを浮かべ「了解!!」と小声でしかし気合いの入った返事を返した。

 

返事から1分後、エリック軍曹の隣にいた狙撃兵の九九式狙撃銃が火を噴いたことを皮切りに彼らにとって初めての戦闘が始まった。

 

「初弾、右肩に命中!!しかし次弾以降、全て防がれました!!第一段階の作戦は失敗!!」

 

狙撃兵の相棒である観測手がそう叫ぶとそれを聞いた兵士達が一斉に距離を詰めるため潜んでいた草むらや窪みから抜け出し全力で走り出す。

 

「行けーーー!!」

 

「突撃ィィーー!!」

 

「「「「オオオオォォォォーーー!!」」」」

 

走り出した兵士達の背後からは狙撃兵の悪態が聞こえていた。

 

「チクショウ!!あの野郎弾が当たる直前に弾丸に気付いて致命傷を防いだぞ!!しかも残った左手で弾をはじきやがった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

狙撃兵達が目標の男を足止めしている間にエリック軍曹達――第2小隊は男から200メートル程まで近付くと地面に伏せ射撃を開始。

 

StG44・MG42の発砲音が辺りを満たし、男に対し銃弾の雨を浴びせかける。

 

だが男は巧みな体捌と木を盾代わりにすることで銃弾を避けると近くにあった窪地に飛び込んだ。

 

「撃って、撃って、撃ちまくれ!!」

 

「敵に頭を上げさせるな!!」

 

男が飛び込んだ窪地の周りは次々に銃弾が着弾し木片や土が激しく弾け跳ぶ。

 

特に第1小隊が持ってきたブローニングM1919A2重機関銃(輸送を目的とし各部のパーツなどを軽量化したタイプ)が激しく地面を叩き、また九七式自動砲、シモノフPTRS1941の20mm弾や14.5mm弾が土をごっそりと抉り取り男に頭をあげさせる隙を与えなかった。

 

「クソ!!お前らもトリップしてきたやつらか!!何処にいる!!」

 

反撃つもりなのか男が銃火の隙をつき時折、手だけを突き出し杖のような物を振って火の玉や目に見えない風の斬撃を繰り出していたが、いきなりの襲撃で慌てているのかほとんどが見当違いの場所に命中していた。

 

「チクショウ!!あいつは魔法使いかなにかかよ!?怖えぇ!!」

 

臆病風に吹かれた部下の声を聞きながらエリック軍曹は弾の切れたStG44から空のマガジンを引っこ抜く。

 

そして追加のマガジンを叩きこみながら考えていた。

 

クソ、やはり奴はなにかの能力を持っているな。このままじゃあ埒があかん!!

 

エリック軍曹は早急にケリをつけるために、部下達に補助兵器のパンツァーファウストを使うよう命令を出した。

 

「お前ら!!パンツァーファウストを使うぞ!!準備しろ!!それと通信兵、第1小隊には八九式重擲弾筒を準備しろと伝えろ!!まずは第1小隊の八九式重擲弾筒で攻撃し敵を炙り出し敵が窪地から出てきた所を狙いパンツァーファウストで一斉射撃!!敵を吹き飛ばす!!」

 

エリック軍曹の命令を聞いた第2小隊の兵士達は背中に担いでいたパンツァーファウストを手に取る。

 

一方、無線連絡を受けた第1小隊は八九式重擲弾筒の準備に取りかかった。

 

「くたばれ!!」

 

「さっさと死ねや、魔法野郎!!」

 

準備が整うまでの間、火線が減っている最中に敵がこちらに接近して来ないように第1、第2小隊は必死でStG44やMG42、M1919A2重機関銃、九七式自動砲、シモノフPTRS1941を撃ちまくっていた。

 

そして第1小隊から発射準備完了の知らせが届くとエリック軍曹は万を持して命令を下す。

 

「第1小隊撃ち方始め!!」

 

命令と共に八九式重擲弾筒の発射音のボンッという音が聞こえ数秒後。

 

八九式榴弾が窪地周辺に着弾。これにはたまらず男が窪地から飛び出して来た。

 

その瞬間を見逃さずエリック軍曹は叫んだ。

 

「撃てぇーー!!」

 

エリック軍曹の命令を今か今かと待っていた兵士達は命令に遅れることなくパンツァーファウストを発射。

 

男がいた辺りは砲弾が着弾し爆煙に包まれた。

 

そして煙が晴れ男がいた場所を見るとそこはすっかり更地になってしまっていた。

 

「……」

 

殺ったか?と思ったエリック軍曹は近くにいた部下2名に目標の生死確認に向かわせる。

 

「クソがァァーー!!」

 

2人の兵士が男のいた辺りにおそるおそる近寄って行くと突然、右腕が吹き飛び服は破れて、ぼろ切れのようになり体の至るところから血を流している男が飛び出して来た。

 

「う、うわっ!!」

 

「ぐげっ!?」

 

完全に不意をつかれた2人の兵士。

 

1人は男に蹴り跳ばされ、もう1人は飛んできた兵士とぶつかり倒れてしまう。

 

エリック軍曹達が咄嗟に銃を構えるより速く、男が素早く2人に近付いて止めを刺そうとした時だった。

 

エリック軍曹の後方から九九式狙撃銃の発砲音が聞こえた。

 

直後、男の頭に小さい穴が開いた。

 

更にダメ押しとばかりに九七式自動砲とシモノフPTRS1941の20mm砲弾、14.5x114mm弾が飛来。

 

大口径の弾丸が男の腹や胸に命中すると、男の体が化物に引きちぎられたようにバラバラに吹き飛ぶ。

 

「っ……?」

 

男は何が起きたか分からないのか唖然とした顔のまま上半身だけの状態で吹き飛び1メートル程離れた場所にグチャという音をたてて地面に落ちる。

 

そして、上半身が地面に落ちると同時に下半身も地面に倒れた。

 

「やった……?」

 

それを見届け、エリック軍曹が後ろを振り返ると部下の狙撃兵が拳を空に突き上げ笑みを浮かべていた。

 

アイツ……やるな。

 

それに目をやってから再度、男の生死を確認させ完全に死んでいることがわかるとエリック軍曹は肩の力を抜いた。

 

そしてエリック軍曹は第1小隊の隊員と合流し男の死体を処分すると司令部に目標の殺害完了の報告して帰路についた。

 

「任務完了!!帰還するぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

暫くすると西の方から銃声や爆発音が聞こえてきた。

 

そしてなり続いていた音が聞こえなくなってから少しすると第2小隊長から司令部に報告が入る。

 

『目標の殺害に成功、こちらの被害は負傷者2名。いずれも軽症。死者は0であります。死体は処理しましたので、これより帰還します』

 

「司令部了解、ご苦労だったな帰還せよ」

 

よし、これで1つ不安要素がなくなったな。

 

後は砦の事だな……これは直接俺が確認しに行くか。

 

結果を聞いたカズヤはそう考え、周りにいる部下に命令を出すのだった。

 


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