ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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バインダーグでの戦闘の後、本部からの指示で国境を流れるイル川を越えアルバム公国の領内に入った第1外人部隊は実戦経験を積ませるために増援として送られて来た第2外人部隊(アメリカ軍装備でM24チャーフィー軽戦車・M4中戦車シャーマン・M26パーシング・M36ジャクソン・カリオペ・M40自走砲・M19対空自走砲等を擁する)や第3外人部隊(日本軍装備が主体となっているものの他国製の装備も多数混ざっている。九七式中戦車チハ・三式中戦車チヌ・M26パーシング・シャーマン ファイアフライ・カリオペ・M40自走砲・M19対空自走砲)、第4外人部隊(ソ連軍装備でBT-7・T-34・IS-3・BM-13カチューシャ・ISU-152・ZSU-37)、その他多数の部隊と共にアルバム公国を占領するため、展開していたエルザス魔法帝国軍やバインダーグから逃げた帝国の敗残兵を駆逐しつつ前進。

 

帝国軍によって無惨にも蹂躙され荒廃した村や街を見て心を痛めながらも、それを力に変えて戦いを続けていた。

 

そして2週間たった現在、第1外人部隊は退路を絶たれアルバム公国の首都カーディガンに立て籠った帝国軍部隊約2万を他の部隊と共に包囲し今まさに攻め込もうとしていた。

 

「それと翼人族……いえ、ハーピィーの報告によりますと――」

 

……似てるからなハーピィーと翼人族は。まぁ、ハーピィーは手や足が鳥のようになっていて、翼人族は背中から翼が生えているのが特徴だな。ややこしい分類だから間違えてもしょうがないか。

 

臨時の指揮所となった天幕の中で他の部隊の指揮官らと共に作戦会議を開いていた第1外人部隊の指揮官バール中佐は飛行可能な妖魔達による偵察の結果を持ってきた兵士に内心で突っ込みを入れていた。

 

「会議中失礼します」

 

そんな時、バール中佐の部下であるロンメル少佐が慌ただしく天幕の中に入ってきた。

 

「……奴らバカか?」

 

バール中佐は呆れ果てた顔で報告を持ってきたロンメル少佐に向かって思わずそう告げた。

 

「……はぁ、恐らくバカなのでしょう」

 

ロンメル少佐はバール中佐の言葉に律儀に答えると天幕の中からカーディガンに立て籠る帝国軍に哀れむような視線を送った。

 

2人が呆れ果てている理由はカーディガンに立て籠る帝国軍部隊から一方的に通達された要求にあった。

 

『ただちに包囲を解き我々の退路を用意せよ、要求が受け入れられなければカーディガンの住人及びアルバム公国の王族は皆殺しにする。返答は明日の明朝まで待つ』

 

奴ら俺達を正義の味方か何かと勘違いしてるのか?

 

言っちゃ悪いが、住人や王族が殺されようが俺達にはなんの関係もないぞ?

 

まぁ……助けてやれるなら助けてやりたいが……生かすも殺すも本部の、閣下の判断次第だしなぁ。

 

バール中佐はそう考え、奇遇にも同じようなことを考えている他の部隊の指揮官らと一緒に無線を通じて本部に指示を求めている通信兵を見詰める。

 

「――ハッ、了解であります。…バール中佐、本部より命令です。『目標に変更なし、バール中佐が指揮を取り可及的速やかにカーディガンに立て籠る帝国軍を殲滅せよ。なお、人質については出来うる限り救出すべし』とのことです。また閣下から戦果を上げた部隊には臨時休暇やその他諸々の褒美を出すと」

 

「うげっ、俺が指揮を取るのかよ……」

 

通信兵の報告と基本的に面倒くさがりやのバール中佐が指揮官に選ばれた事に対して愚痴を呟いた直後。

 

「「「「「「っしゃあああぁぁぁーーー!!」」」」」」

 

バール中佐を除いた指揮官達の歓喜の雄叫びが上がった。

 

「休みだーー!!」

 

「褒美だーー!!」

 

「「「「「「やるぞ、テメェら!!」」」」」」

 

訓練に次ぐ訓練でほとんど休みがなく、ようやく休暇を許されたと思ったら急遽、アルバム公国での実戦に投入された第2、第3、第4外人部隊を始め任務続きで疲れていた他の部隊の指揮官らが気合いを入れて天幕を飛び出して行ってしまう。

 

……ニンジンを目の前にぶら下げられた馬か、お前らは。

 

一瞬で人が消えガラガラになった天幕の中を見渡しバール中佐は1人肩を落としていた。

 

 

「――という訳だ。分かったか?さて、作戦説明に移るが……作戦は簡単だ。お前らが闇に紛れてカーディガンに突入し敵を殲滅。後詰めとして機甲大隊が後に続くが支援砲撃は人質に当たる可能性があるからやらないぞ。まぁ、敵は剣や槍を持った歩兵が主体だしお前達なら支援砲撃が無くとも大丈夫だろう」

 

カーディガンに突っ込み敵を殲滅しろ。そんな単純明快すぎて作戦と呼べないような作戦を他の部隊に伝達したバール中佐は指揮下の歩兵部隊――旧ドイツ軍の冬季装備を纏っている妖魔達を召集し事のあらましと作戦概要を語っていた。

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「どうした、お前ら?」

 

バール中佐が無言で黙り込む部下達を訝しげに問い質した瞬間。

 

「「「「「「やっっったっっぁぁぁーーー!!」」」」」」

 

ここでもまた歓喜の声が爆発した。

 

まだ戦果を上げた訳でも無いのにこの喜び様……戦果を上げ損ねたらショック死しそうな勢いだな。

 

よほど休暇が貰える事が嬉しいのか、ハイテンションで跳ね回る部下達をバール中佐は温かな目で眺めていた。

 

……というかコイツらほとんど○後の○隊だな。

 

マジもんの吸血鬼が半分以上だし。

 

元は奴隷の妖魔や獣人で編成されていた第1外人部隊の歩兵部隊だったが、カズヤの悪ノリにより、その半数ほどが吸血鬼で固められ、残りの半数は獣人の狼人族や虎人族に変えられていた。

 

「あー。おい、はしゃぐのは戦果を上げてからにしろよ」

 

「「「「「「ハッ!!」」」」」」

 

「作戦開始は本日の深夜……お前らの時間だ。せいぜい頑張れ」

 

浮かれている部下に声を掛けたバール中佐は最後にニヤリと笑ってその場を後にした。

 

 

「各部隊、配置完了いつでもいけます」

 

身の凍えるような寒さと漆黒の闇が辺りを包み嵐の前のような不気味な静けさが漂う。

 

「作戦開始まで、残り100秒」

 

指揮所ではバール中佐以下の指揮官達が神妙な顔付きで作戦開始時刻をただ待っていた。

 

「敵軍に動きあり。これは……バレてますね。奴らこちらの動きに感付いたようです」

 

所定の配置に就いた第1外人部隊の歩兵部隊ではカーディガンの城門付近の城壁に蠢く複数の影を認めた兵士が隊長へそう進言した。

 

「奇襲が強襲に変わっただけだ気にするな。それより作戦開始までの残り時間は?」

 

「60秒です。隊長」

 

カーディガンを監視していた部下の知らせを切って捨て、身体中に生えているモサモサの体毛を逆立たせながら狼人族の隊長はもう待てないとばかりに副官に問い掛けた。

 

「……そうか」

 

刻一刻と作戦開始の時間が近付くにつれて兵士達の殺気が漲る。

 

「……時間です」

 

寒さを忘れるほどに集中力を高めた兵士達は時計の針が午前零時を指し示した瞬間、漲らせていた殺気を爆発させる。

 

そして各部隊が一斉にカーディガンに向け突撃を開始した。

 

「野郎共、行くぞおおぉぉーー!!」

 

「「「「オオオォォォーー!!」」」」

 

こうして士気が異様に高い人外達による蹂躙戦が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

『『『『オオオォォォーー!!』』』』

 

「敵軍が動き始めました!!」

 

「よし、大砲用――ぎゃあ!?」

 

「ど、どうした!?――ギャ!!」

 

周辺から同時に上がった喚声に迎撃態勢を取ろうとした帝国軍兵士の体から突如、血飛沫が吹き上がる。

 

「空だ!!空に敵がいるぞ!!」

 

暗闇に閉ざされ月明かりだけが唯一の光源となっている真っ黒な空に彼らはいた。

 

「おい、あんまり弾を使うなよ?これからまだまだ必要になるんだ」

 

「「「了解!!」」」

 

先行し敵の指揮官達がいるはずのカーディガン城を制圧するよう命じられた飛行歩兵部隊の吸血鬼達――アルベルト・ゲオルク中尉率いる中隊は重い装備品のせいでいつもより激しく翼を羽ばたかせながら行き掛けの駄賃とばかりに地上にいる敵兵に向けて弾丸の雨を降らせ空爆を開始した。

 

「な、何をしている!!奴らを撃て!!」

 

「無理です!!射程外です!!」

 

アウトレンジからの攻撃に対して帝国軍は応戦も出来ず逃げ惑う。

 

「おい、門に穴を開けておいてやれ」

 

「了解!!」

 

後続の地上部隊がやり易いようにと第1外人部隊所属の飛行歩兵部隊の隊長、ゲオルク中尉は部下に城門の破壊を命じる。

「ヘヘッ、ぶっ飛べ」

 

城門の破壊を命じられた兵士は空中で止まり振り返ると担いでいたフリーガーファウストを発射。

 

同時発射された9発のロケット弾が城門に殺到する。

 

本来は携帯用対空ロケット砲ではあるが改造され広域制圧用対地ロケット砲に生まれ変わっていたフリーガーファウストにより城門はもちろん、付近にいた敵兵も甚大な被害を受けた。

 

「よし、急ぐぞ!!」

 

城門の破壊を見届けた飛行ゲオルク隊は自分達の役目を果たすべくカーディガン城に向かって飛び去った。

 

「なんて奴等だ、クソッ!!負傷者を下げろ!!それと――」

 

「あっ!!て、敵地上部隊接近!!」

 

「チィ、弓兵!!敵が射程に入り次第、撃ちまくれ!!」

 

ゲオルク隊による奇襲攻撃を受け混乱しているものの比較的、被害を受けずにいた城壁の上に潜む帝国軍兵士達は接近してくる歩兵部隊に気が付き弓に矢をつがえた。

 

「第1小隊は俺に続け!!第2、第3小隊は左右に展開!!」

 

「「了解!!」」

 

それを目視で確認した歩兵部隊の隊長は凄まじい速さで駆けながら部下達に散開を命じる。

 

「来るぞ!!」

 

隊長の怒鳴り声と同時に敵が放った矢が大地を駆ける歩兵部隊に襲い掛かった。

 

しかし身体能力や動体視力、反射神経が並外れている狼人族や虎人族の兵士達に焦りで狙いが甘くなった矢が当たるはずもなくその全てが虚しく地面に突き刺さる。

 

「第2、第3小隊!!牽制射!!」

 

再装填を急ぐ弓兵に続き、数の少ない銃兵や砲兵が先込め式のマスケット銃及び大砲の発射態勢を取ったのを見て隊長が声を張り上げる。

 

命令を受けた第2、第3小隊の兵士達は走るのを止め手に持っているMP40やヘーネルStG44、担いでいるグロスフスMG42機関銃を敵に向け乱射。

 

数発に1発の割合で含まれている曳光弾が闇を切り裂き城壁に集中する。

 

「引っ込んだぞ!!今だ、やれ!!」

 

集中砲火を浴び、運悪く銃弾が命中した5〜6人の敵兵が城壁の上から転げ落ちる。

 

そして飛んで来る銃弾に恐れをなした敵兵達が身を屈めたのを確認すると隊長は、1度は破られたものの魔法を使う事で土の壁を作り出しまた固く閉ざされた城門の破壊を命じた。

 

「「「了解!!」」」

 

隊長の側にいた兵士達が城門に向けパンツァーファウストを発射。

 

発射音と共に成形炸薬弾頭がすっ飛んで行き城門に命中、城門に穴を開けた。

 

「ま、また破られた!!」

 

「不味い!!城門から侵入されるぞ!!」

 

「早く魔法で壁を作れ!!」

 

「駄目だ!!もう間に合わない!!来るぞ!!穴の前に密集陣形を敷け!!敵をこれ以上中に入れるな!!」

 

城門を破壊したことで更に勢いを増した敵部隊を見て城外での迎撃を諦めた帝国の兵士達は城門に開いてしまった穴の前に槍兵を並べなんとか敵の侵入を阻もうとする。

 

また城壁の上にいる弓兵や銃兵も城外に背を向けて城門に対し弓や銃の照準を定め入って来る敵に一斉射を浴びせるべく準備を整えた。

 

「……来ない?――ギャ!!」

 

しかし城門からは誰も入って来なかった。

 

何故なら……。

 

「な、な、何だ!?何処か――ギャア!!」

 

「行け行け行けェェーー!!皆殺しだァァ!!」

 

城門の破壊はただの囮で、そびえ立つ城壁に突き刺した鉄杭を足場にして外人部隊の歩兵達は高い城壁を越えていたからだ。

 

人間には真似できない予想外の侵入の仕方に虚を突かれ帝国軍の兵士達はただ蹂躙されていく。

 

「クタバレ!!豚共!!」

 

「「「ウギャアアアァァァーーー!!」」」

 

銃火がそこかしこで迸り、バタバタと帝国軍兵士達を凪ぎ払う。

 

「フレル、ダヤ、テイリ……っ!?く、来るなぁぁーー!!」

 

「雑魚が遅いんだよ!!」

 

剣や槍を持たぬ魔法使い達も魔法で敵を倒そうと奮戦するもののほとんどの場合、呪文の詠唱中に接近され首を跳ね飛ばされるか、銃弾によって蜂の巣にされた。

 

「魔導兵器出現!!」

 

歩兵部隊が敵の雑兵を相手に無双していると家屋の間からボロボロの魔導兵器が姿を現した。

 

「ッ、第1小隊、始末しろ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

隊長が敵の腸を抉り、返り血を浴びながら叫ぶと第1小隊の面々はターゲットを雑兵から魔導兵器へと変更した。

 

「遅い!!」

 

「ハッハー!!そんなの当たるかよ!!」

 

魔導兵器の持つ魔砲から放たれた魔力弾の至近弾を浴び土埃にまみれつつも、第1小隊の兵士達は右へ左へと走り回りながら魔導兵器に群がる。

 

「なっ、ど、何処に!?」

 

魔導兵器のパイロットが今さっきまで射線の向こうにいたはずの敵の姿が消えた事に狼狽える。

 

「設置完了!!」

 

「こっちもだ、とっとと逃げるぞ」

 

魔導兵器のパイロットの視界から消え失せた第1小隊の兵士達は魔導兵器の肩の上にいた。

 

そして悠々と魔導兵器に吸着地雷を設置すると点火紐を抜き脱兎の如く魔導兵器から距離を取った。

 

「そこか!!」

 

魔導兵器のパイロットが退避する第1小隊の兵士に向け魔砲を構えた瞬間、設置されていた吸着地雷が起爆。

 

第1小隊の兵士達が調子に乗って10個ほど吸着地雷を張り付けていたため魔導兵器は大爆発を起こし木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「城門の確保完了!!」

 

「っ、敵増援来ます!!」

 

魔導兵器を倒し周囲の敵を全滅させ一息つけるかと皆が思った時、ワラワラと湧いて来た敵兵を見て周辺警戒にあたっていた兵士が叫ぶ。

 

「よし、第3小隊はこの場に残り後詰めの機甲大隊と合流し敵の掃討に当たれ!!第1、第2小隊は敵中を突破し先行しカーディガン城に乗り込んだ味方と合流する!!休暇と褒美の為だ、死なないように気張れよ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

自分達の倍ではきかない数の敵を前にしても臆することもなく第1外人部隊の歩兵達は、銃火を瞬かせながらまた戦火の中へ喜んで飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

『こちらクリフ隊!!カーディガン城への一番乗りは頂いた!!ハハッ、敵がウヨウヨ居やがる!!食い放題だ!!』

 

「チィ、少し遅かったか……」

 

『クソッ!!だが2番手は頂き!!グラース隊、カーディガン城内にて交戦開始!!………………………………敵を殲滅!!カーディガンの住人とおぼしき民間人を多数保護!!』

 

「ヤバイな……急ぐぞ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

他の飛行歩兵部隊が戦果を上げた報告を無線で聞き、戦功を上げ損ねては堪らないとばかりにゲオルク隊は飛行速度をあげる。

 

「っ、敵だあああぁぁーー!!」

 

「敵襲!!敵襲!!」

 

「撃て!!奴等を落とせ!!」

 

「この程度で我々を落とせるとでも思っているのか?……まぁいい突入!!」

 

カーディガン城の上空に到着したゲオルク隊は敵のぬるい迎撃網を軽々と掻い潜ると城の窓を突き破り、まだ味方が到達していない城のエリアへの侵入を果たす。

 

「な、何だ貴様!!」

 

ゲオルク隊が突入したそこは礼拝堂のような場所で、この街の住人とおぼしき民衆がぎゅうぎゅうに押し込まれ帝国軍の兵士に武器を向けられていた。

 

そして礼拝堂の神に祈りを捧げる為の神聖な壇上では1人のうら若き乙女がブクブクと肥太った中年の男にドレスを剥ぎ取られ今まさに犯されようとしていた。

 

「……っ……っ……」

 

若く美しいその女性は涙をうっすらと目に浮かべながらも気丈にも声1つもらさず、こんな事では屈しないというような固い意思の籠った目でその腹の肉に埋もれている小さい逸物(ポークッツ)を晒す男をキッ、と睨んでいた。

 

「殺れ!!」

 

突入後、一瞬で状況を悟ったゲオルク隊の吸血鬼達は隊長の意図を正しく読み取り、ズボンを半ばまでずり下げ情けない格好の中年オヤジ以外の帝国軍兵士を瞬殺する。

 

「なっ――グヒャ!?」

 

「糞虫が……」

 

そして中年オヤジはゲオルク中尉の人外の力でサッカーボールのように蹴り飛ばされた。

 

「ガッ、ヒュ……た、たひゅけ……」

 

「おい、糞野郎」

 

何度か地面をバウンドし、ようやく勢いが止まると蹲り口からボタボタと血を流して命乞いをする帝国軍将校の頭を足で踏みつけゲオルク中尉はホルスターから抜いたルガーP08の銃口を額にゴリゴリと押し付けた。

 

「た、たのみゅ、たひゅけ、たしゅけ……て」

 

「お前に良いことを教えてやろう。ウチの捕虜になった奴で戦争犯罪――特に貴様がやろうとしていたことをしたやつ、及びしようとしたやつは……問答無用で拷問刑だ」

 

ゲオルク中尉は額に青筋を浮かべ、悪辣な笑みを敵将校に向けた。

 

「ヒッ!!」

 

「この糞野郎を縛っておけ!!」

 

「「了解」」

 

ゲオルク中尉の命令に手近にいた兵士が答え、将校の両手両足を手荒く縛っていく。

 

それを横目で眺めつつゲオルク中尉は、部下が気を効かせて貸したのであろう戦闘服の上着を羽織っている件の女性に歩み寄った。

 

「私はパラベラム陸軍、第1外人部隊所属のアルベルト・ゲオルク中尉です。貴女のお名前を伺っても?」

 

「……フェルト……カールトン。父は……マーカス・カールトン、アルバム公国の……王です」

 

今ごろになって強姦されそうになった恐怖心が出てきたのかフェルト・カールトンと名乗った美女はガタガタと震えながらもゲオルク中尉の問い掛けにしっかり答えた。

 

アルバム公国の姫様か……当たりだな。

 

「ちょっと失礼します」

 

名前を聞き出したフェルトから距離を取ったゲオルク中尉は無線に向かって喜びに満ちた声で囁く。

 

「こちらゲオルク隊、アルバム公国の姫、フェルト・カールトン及び複数の民間人を保護した。加えて敵軍将校とおぼしき男も捕縛」

 

『CP了解、……戦功一番は貴方の隊で決まりですね』

 

CPの女性オペレーターにそう告げられたゲオルク中尉は民間人を解放している部下や周辺警戒に散っている部下に向かってグッと親指を突き立てた。

 

その後、後続の歩兵部隊や後詰めの機甲大隊がカーディガン内に存在していた帝国軍兵士を一掃または捕縛したことでアルバム公国での戦闘は決着を迎えた。

 


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