ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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領土の3分1(帝都及び三海周辺)が荒れ地と砂漠が広がる不毛の大地で昼は灼熱、夜は極寒という厳しい気候のエルザス魔法帝国。

 

しかし、その領土内を流れる大河ナウル川とそのナウル川の豊かな水が流れ込む、串に刺さった3つの団子のような形をしている三海(ゼウロ海、キロウス海、テール海)という巨大な内海の恩恵を受けることで、また魔法に頼ることで帝国は不毛の大地で暮らしながらも領土を拡大し繁栄することが出来た。

 

しかし、そんな帝国の繁栄を支える生命線とも言える三海に今まさに暗雲が立ち込め始めたのである。

 

「……どうするのだ。敵の大艦隊がフィリル海峡を越えたのが3日前。このまま何も手を打たずにいれば敵はクナイ海峡を越えてキロウス海に入ってしまう」

 

三海の内、唯一外洋と繋がる海峡をもつゼウロ海の防衛を担当する帝国海軍第3本部の建物がある港街アーネストでは青い顔をした大勢の貴族(提督)が集まり、今後の対応を話し合っていた。

 

「しかし……そうは言ってもこの広大なゼウロ海の中から敵を探し出して攻撃を仕掛けるのは至難の技ですぞ」

 

「あぁ、その通りだな。……今のところクナイ海峡周辺とここの軍港に艦隊を集結させて敵の襲来に備えているが……勝てるかどうか」

 

「頼みの綱は新型の装甲艦と水陸両用、飛行型の魔導兵器のみ」

 

「もし、ここで万が一にも我々が負ければ……」

 

「待っているのは……粛清……か……」

 

ゼウロ海で敵艦隊を撃滅せよと帝都もとい皇帝からの直々の命令を受けている帝国の貴族達はどうすればパラベラムの大艦隊を倒すことが出来るのかと頭を悩ませていた。

 

「のう、テール海に面する帝都の防衛の任に就いている我が国最大にして最強の艦隊――無敵艦隊は応援に来てくれんのか?」

 

「それは無理というものですな、貴方も知らない訳ではないでしょう?無敵艦隊は皇帝陛下の直属艦隊。……もしも無敵艦隊がゼウロ海に来てくれるとすれば、それは我々が既に死んだ後の話でしょう」

 

「「「「「…………」」」」」

 

手持ちの戦力だけではパラベラムの大艦隊に絶対に勝てないと分かっている貴族達は分かりきっている認識を新たにし、顰めっ面で黙り込む。

 

「しかしなぁ……いくらこちらの敵艦隊が囮だとはいえ、もう少し戦力を廻して貰えんものか」

 

「それは……無理でしょうな。陸路から進軍してくる敵の大部隊――本命を何より先に潰さねばなりませんし、また幸いな事に三海の周辺一帯は被害を受けておりませんが、他の場所では敵の奇襲により受けた被害が深刻なものになっていると聞き及んでおります。ですからこれ以上、増援要請を行えば我々が臆病風に吹かれたのではないかと帝都の宮廷貴族共が勘繰り痛くも無い腹を探られます。そうなれば色々と面倒な事に……」

 

「あぁ……確かに帝都に巣食うタヌキ共の介入は避けたいところだな」

 

ヴァーミリオン作戦開始から早1週間。

 

本来であれば今は無きカナリア王国及び妖魔連合国に対し再度の侵攻を開始しているはずだった帝国だが、パラベラムの奇襲攻撃で受けた被害によって侵攻など到底出来る状況では無く、また被害の復興作業を後回しにして先に攻め寄せるパラベラム軍を叩こうと各地で強引な徴兵を行い戦力をかき集めていた。

 

しかし、帝国がかき集めている戦力の矛先は副都市グローリアと帝都攻略を目論む遠征艦隊ではなく陸路を順調に進み、幾つもの都市を占領していっている地上侵攻部隊に向けられていた。

そう帝国はパラベラムの目論み通りにまんまと囮部隊に食い付いているのである。

 

「――……なんだ、この音は?」

 

対応策を協議する会議が一向に進まず、ただ時間だけが無情にも流れていくという無為な時間を貴族達が過ごしていた時だった。

 

ゼウロ海が一望出来る見晴らしの良い丘の上に煉瓦や白い石材で作られた帝国海軍第3本部へ向かって甲高い耳障りな音を発している物体が海面スレスレを這うように飛行しながら近付く。

 

「うん?うるさいのう。なんの音じゃ?」

 

「耳障りな……」

 

どんどん大きくなる耳障りな音に第3本部の会議室に詰めていた貴族達が皆、一様に眉を顰めざわつきだす。

 

「……外か」

 

そして窓際に座っていた貴族が日差しを遮っていたカーテンを捲り、音の原因を確かめようと外を覗いた瞬間。

 

「――ッッ!!」

 

外を覗いた貴族の視界一杯に細長い円筒状の物体が映り込む。

 

そして亜音速の速さで窓を突き破り外を覗いた貴族の頭をグチャっと潰し帝国海軍第3本部の会議室に突入した巡航ミサイル――BGM-109トマホークは会議室内で炸裂し室内に詰めていた貴族を全員爆殺。

 

また続く第2、第3撃のトマホークにより第3本部の建物は完全に崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

近代化改装により搭載された装甲ボックスランチャーからトマホークを発射した航空戦艦『伊勢』のCICでは兵士達の声が飛び交っていた。

 

「トマホーク、目標に命中。目標の破壊を確認!!」

 

「諸元入力終了、次弾の発射準備完了しました」

 

「……ふむ、敵の反撃の兆候は無しか。うん、トマホークの次弾発射は中止。残りの攻撃目標は航空隊の練習台とする。艦載機の発艦を急がせろ」

 

「「「了解!!」」」

 

無数の輸送船を擁する本隊の露払いを命ぜられた第1独立遊撃艦隊の司令官、佐藤進少将は実戦経験の無い艦載機パイロット達に少しでも実戦経験を積ませるために急遽、子爆弾搭載型のトマホークによるアーネストの軍港への攻撃を止め艦載機による空爆に切り替えた。

 

これで敵の指揮系統が少しでも混乱してくれれば儲けものだな。

遥か後方を航行する本隊の露払いついでに敵海軍の指揮系統を混乱させようと第3本部に奇襲攻撃を仕掛けた第1独立遊撃艦隊の佐藤少将であったが、先のトマホークによる攻撃でゼウロ海の防衛を担当する貴族のほとんどを殺すという大戦果を上げているとは夢にも思っていなかった。

 

「出撃命令が出たぞ!!急げ、準備が終わった機体から順次発艦させるんだ!!」

 

「了解です!!」

 

「電磁式カタパルト用意!!」

 

『伊勢』と『日向』の船体後部にある飛行甲板には次々とウェポンベイや左右3ヵ所ずつある翼下パイロン(一番外側のパイロンは空対空ミサイル専用のためAIM-9Xサイドワインダーを搭載。尚、胴体下部のパイロンには機外搭載オプションの1つであるステルス性を備えたGAU-22/A 25mm機関砲ポッドを搭載)にMk82、Mk83、Mk84(通常爆弾)、CBU-103、CBU-105クラスター爆弾等を積み込み爆装したSTOVLタイプ(短距離離陸・垂直着陸)のF-35BライトニングIIが、自分の役割を示す色の服を着たデッキクルー(甲板員)通称『レインボーギャング』の手によって格納庫から飛行甲板に引き出されると、すぐさま電磁式カタパルトによって空に打ち出されていく。

 

「……ついでに砲撃訓練もするか」

 

空に舞い上がり、艦隊上空で編隊を組み50キロ先にあるアーネストに向かって飛び去っていくF-35Bを眺めながら佐藤少将がポツリと呟く。

 

そうして艦隊司令の佐藤少将の発案により『伊勢』と『日向』から発艦したF-35B、30機からなる攻撃隊を見送った第1独立遊撃艦隊は艦隊速度を上げ、進路を一路アーネストに向けた。

 

「しかし、ようやくコイツも航空戦艦として活躍出来るようになったな」

 

「えぇ、確かに。史実ではなんの活躍もないままコイツは生涯を終えてしまいましたからね」

 

アーネストに向けて航行中の『伊勢』の艦橋内で佐藤少将は傍らに立つ参謀と言葉を交わしていた。

 

白波をたてて進む第1独立遊撃艦隊の艦隊編成は航空戦艦の『伊勢』を旗艦とし姉妹艦の『日向』、青葉型重巡洋艦の『青葉』『衣笠』、長良型軽巡洋艦『五十鈴』、こんごう型護衛艦(イージスシステムを搭載したミサイル護衛艦)の『こんごう』『きりしま』更に駆逐艦5隻と補給艦3隻の計15隻となっている。

 

「司令!!アーネストに向け偵察に飛ばしたイーグル・アイが軍港から出港する数百隻の軍艦を捉えました!!」

 

「そうか。……ちょっと待て、数百隻だと?」

 

部下の報告を耳にして反射的に小さく頷いた佐藤少将だったが、報告内容を理解すると思わず部下の方に振り返った。

 

「こちらを」

 

「ほぅ」

 

攻撃隊を送り出してから単陣形を組みアーネストに向かって22ノットの速さで進んでいた第1独立遊撃艦隊の元に偵察の為、先行していたイーグル・アイが送って来た驚くべき映像を見て佐藤少将は感嘆の声をあげる。

 

すごい数じゃないか……これはまた随分と大盤振る舞いだな。

 

小規模な設備でも運用できる高い利便性と長い航続距離を持ち、そして高速移動及び垂直離着陸が可能なティルトローター式の無人航空機(UAV)のイーグル・アイが捉えた映像には確かにアーネストの軍港から次々と出港する軍艦の群れが映っている。

 

しかし、こりゃあ困ったな。

 

イーグル・アイが送ってくるその映像を見ながら佐藤少将は困ったように、しかしどこか嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「敵艦隊、木造帆船の戦列艦以外に蒸気機関で動いていると見られる装甲艦を多数確認!!」

 

「攻撃隊がアーネスト上空に到着。――司令、攻撃隊は搭載している爆弾が対艦用の物ではないため、当初の作戦目標であるアーネストの港湾施設に対して爆撃を開始すると言ってきています」

 

「……分かった。了解した、と返信しておけ」

 

……さてはて、これだけウジャウジャいるとなると我々だけで沈めきれるかな?

 

「ハッ!!」

 

「ふむ。我々は蜂の巣を突っついてしまったようですな。司令、ここは本隊に援軍を要請したほうが」

 

「お待ちください。いくら数が多いといっても敵の船は射程がせいぜい数百メートルしかない大砲を積んだ木造帆船の戦列艦と紙のように薄い装甲を纏った装甲艦のみ、我々だけで十分対処可能でしょう」

 

「その通り。私も砲術参謀の意見と同じです。この絶好の機をみすみす逃す手はありません」

 

顎に手を当てて本隊にいる空母から航空機の応援を送ってもらおうかと悩む佐藤少将に航空参謀が意見具申し、それに砲術参謀、水雷参謀が待ったをかけた。

 

「……そうだな。アウトレンジ攻撃で確実に沈めていけば我々だけでも大丈夫だろう。それにいざとなったら本隊の空母から攻撃隊を送ってもらえばいい」

 

「ふむ、それもそうですな」

 

「「で、ではっ?」」

 

「うむ、相手は少々役不足だが……艦隊決戦だ」

 

「「オォッ!!」」

 

カズヤに召喚されてから今まで活躍の場がなく、燻ぶっていた所に絶好のチャンスを得て砲術参謀と水雷参謀は子供のような笑みを浮かべた。

 

そして佐藤少将のその一言で第1独立遊撃艦隊の方針は決定し、アーネストの軍港を出港した敵艦隊の殲滅に移った。

 

「敵艦隊、進路を西に取りクナイ海峡に向かっている模様」

 

堂々と敵艦隊上空に居座り、偵察を続けるイーグル・アイからは常に敵艦隊の映像が第1独立遊撃艦隊に送られていた。

 

「西か……追撃戦になるな」

 

「えぇ……しかし敵の船は足が――ッ!!……あれも空中船だったのか」

 

イーグル・アイから送られてきた映像を佐藤少将達が眺めていると先程まで海の上を航行していたはずの船が舷側から大きな翼のような物を広げたかと思うと重力に逆らい海面からフワリと浮き上がり空に昇り始めた。

 

海から空に上がったのは敵艦隊の約3分1程度。

 

他の船は空を飛ぶために必要な魔導炉を搭載していないのか必死に波をかき分けて海面を航行している。

 

「攻撃隊より入電。敵空中航行艦に対し攻撃許可を求めています」

 

「攻撃を許可する。ただしサイドワインダーと機関砲を撃ち尽くしたらすぐに戻って来るように伝えろ。場合によっては再出撃してもらわねばならんからな」

 

「ハッ、了解です」

 

爆撃を終えて身軽になっている攻撃隊に攻撃許可が降りたことが伝達されるとすぐにF-35Bの群れが空を飛ぶ敵艦に対し攻撃を仕掛ける。

 

そしてF-35Bによる攻撃が開始されるとイーグル・アイの偵察用カメラに映るのは空に放たれたサイドワインダーが空を飛んでいる装甲艦に突き刺さり、次いでその船体から紅蓮の炎が噴き出す様子や、すれ違い様に機関砲で滅多撃ちにされ船体に無数の穴を穿ち墜ちていく戦列艦の姿だった。

 

「勝負にならんな」

 

「まったくです。こちらが弱い者苛めをしているようにしか見えません」

 

海の上だけを行動可能な普通の船と比べ、海と空の2つを行動範囲にしている海空両用艦は空に上がる事で海の上を航行している時の約2倍の速さで移動が可能であったが、今まさに攻撃を仕掛けているF-35Bにしてみればたった2倍程度のスピードでは絶好の鴨であることに代わりはなかった。

 

そのため空を飛ぶ哀れな鴨達は1隻たりとも逃げおおせる事が出来ず、F-35Bによってバタバタと海に叩き落とされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「敵艦隊、見ゆ!!」

 

大型の双眼望遠鏡を覗いていた見張り員が大声を張り上げる。

 

「いよいよだな」

 

「はい」

 

敵艦隊がアーネストの軍港を出港してから数時間後、ようやく第1独立遊撃艦隊は敵艦隊を目視した。

「さて……砲雷撃戦用意」

 

「砲雷撃戦用意!!」

 

敵艦隊を随分と前から射程圏内に捉えていたものの、高価で高性能なミサイル(カズヤの能力を使って召喚した物の為、実質的にはノーコスト)を使ってわざわざ敵の雑魚を沈める必要もないだろうということで砲撃で敵を撃滅する方針を固めていた第1独立遊撃艦隊は敵艦隊を目視したと同時に艦隊陣形を解き各個に戦闘を開始。

 

まず第1独立遊撃艦隊に随伴している軽巡洋艦『五十鈴』と5隻の駆逐艦、秋月型駆逐艦の『秋月』『照月』『涼月』『初月』『新月』が盛んに砲撃を行いながら増速し首輪から解き放たれた猟犬のように敵艦隊に向け一目散に走り出す。

 

そしてそれに負けじと重巡洋艦『青葉』と『衣笠』が後に続く。

 

「敵艦隊、12時の方向。距離1万」

 

「……目標、敵戦列艦。弾種、三式弾。主砲撃ち方用意」

 

敵艦隊との距離をある程度詰め必中を狙えるようになると『伊勢』の艦長が静かに指示を飛ばす。

 

「主砲撃ち方用意っ!!」

 

「てっ」

 

「撃てえぇ!!」

 

万が一に備え後方に残してきた補給艦3隻とその護衛の『こんごう』と『きりしま』以外の8隻の軍艦が一気に敵艦隊との距離を詰めていくのを眺めながら『伊勢』と『日向』は堂々と戦艦という海の王者の風格を纏いつつ、戦艦が海の王者たる由縁である大口径の主砲の一斉射を開始。

 

轟音と共に船体前部にある35.6cm連装砲2基4門が火を噴くと砲口の先端で巨大な火花が花開き、次いで発生した真っ黒な爆煙が艦全体を包み込む。

 

モウモウとした爆煙に包まれた『伊勢』と『日向』の姉妹艦だったが、すぐに船体を覆う爆煙を後方に置き去りにしてその雄々しい姿を現した。

 

「次弾装填を急がせろ。一気に片をつけるぞ」

 

「「「了解っ!!」」」

 

三式弾が空を飛翔している間にも主砲へ零式通常弾の装填が急がれる。

 

「第1、第2高角砲群攻撃を開始」

 

また8発の35.6cm砲弾が敵艦隊に向け飛んでいく後ろからは射角を得ることが出来た12.7cm連装高角砲の砲弾が次々と追いかける。

 

「着弾まで5、4、3、2、1。着弾、今!!」

 

既に突撃を開始した重巡以下の砲撃により戦列艦及び装甲艦25隻が轟沈、20隻が炎上中、30隻が何らかの被害を受けているという状況で『伊勢』と『日向』の主砲弾、それも対地攻撃用の三式弾が逃げる帝国艦隊の逃げ道を塞ぐように空中で炸裂。

 

超高温で燃え盛る無数の弾子が帝国艦隊に襲い掛かる。

 

「と、取り舵一杯!!急げ!!」

 

「駄目だ間に合わない!!船を捨てろ!!」

 

空から流星の如く降り注ぐ真っ赤な火の玉は戦列艦や装甲艦に落着するとすぐに船の一部を燃やし始め、そして一気に船を業火の中へと包み込んでいく。

 

特に燃えやすい木造帆船の戦列艦などは一度火が付けばもう何もかもが手遅れだった。

 

「全砲門開け、各個撃ち方用意」

 

「各個撃ち方用意!!」

 

最大戦速で突き進む『伊勢』と『日向』は敵艦隊の両側面へ4隻ずつに別れて攻撃を加えている味方艦とは違い、敵艦隊を避けることなく艦隊のど真ん中に侵入。

 

元々搭載されていた(改良型)25mm3連装機銃や追加で搭載されたCIWS、更には両舷側や艦橋に据え付けられた2連装式及び単装式のM2重機関銃、武器庫から引っ張り出してきた陸戦隊用の対戦車ミサイル、FGM-148ジャベリンなども駆使して敵艦を沈黙させていく。

 

そして端から見れば船が燃えているのではないかと見間違うほど対空火器がマズルフラッシュを放つ中、時折俺の存在を忘れるなと言わんばかりに35.6cm連装砲が吼え、放たれた零式通常弾が目標の戦列艦の至近距離に着弾。

 

命中こそしなかったものの着弾の衝撃で空高く上がった水柱と共に戦列艦は浮き上がるとひっくり返ってしまい、静かに沈んでいった。

 

「終わりましたな」

 

「うむ……呆気ないな」

 

台風のように鉄の嵐を撒き散らした『伊勢』と『日向』が敵艦隊の中央を突っ切り抜けた後には燃え盛り沈没を待つだけの船の骸が海面を漂っていた。

 

「……では本来の役目に戻るとするか」

 

「そうですな」

 

敵艦隊の船を、179隻もの敵艦を全くの無傷で沈めた第1独立遊撃艦隊は得た戦果に満足しつつ悠然と進路を南に取り本来の任務へと戻っていった。

 


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