ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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ちょっと短いです。





パラベラムの国籍マークである緋の丸を機体に貼付した無数の航空機がグローリアの大空を飛び交っている。

 

「これはまた壮観というか、なんというか……」

 

「今頃きっと航空管制官達が悲鳴を上げているんじゃないですか。……にしても注意しないとちょっと危ないですねこれは」

 

一度は竜騎士により制空権を奪われたものの、再び制空権を握ったパラベラム軍は本隊である海兵隊三個師団が上陸準備を整えるまでの時間を稼ぐべく、また劣勢を強いられている地上部隊の援護を目的とし大量の航空機を投入したためグローリアの上空は大混雑の様相を晒していた。

 

「さてと……ウイッチバード01より02、03へ。ここから1機ずつに別れるぞ。ウイッチバード02は第75レンジャー連隊の支援。ウイッチバード03は城で孤立しているデルタの支援につけ。こちらは第1大隊の支援につく」

 

『ウイッチバード02、了解』

 

『ウイッチバード03、了解』

 

ニミッツ級航空母艦のCVN-77『ジョージ・H・W・ブッシュ』から飛来したF-35CライトニングIIの一個小隊を護衛に付けグローリア上空に到着した3機のAC-130UスプーキーIIは城で孤立しているデルタ、砂浜で敵部隊と交戦中の第75レンジャー連隊、そして仲間の救出に向かっている第1大隊の支援を行う為に各機が別々に散って行った。

 

『ホークアイ01よりウイッチバード01へ。応答されたし』

 

ウイッチバード01が第1大隊のいる場所に向かって飛行していると特殊電装機器や外部アンテナ、指揮及び統制システムを搭載したEH-60Lブラックホーク――ホークアイ01がAC-130Uの横に並び無線で呼び掛けてきた。

 

「こちらウイッチバード01。どうぞ」

 

『我々、ホークアイ01が第1大隊の進路誘導にあたることになった。よろしく頼む』

 

「ウイッチバード01、了解した」

 

分断されてしまった仲間の救出に向かう第1大隊に空からリアルタイムで最適な進路を知らせ誘導するべくやって来たホークアイ01と合流したウイッチバード01は連れだって第1大隊の元へと急ぐ。

 

「ん?あれか……。こちらウイッチバード01。第1大隊の指揮官は応答されたし」

 

『こちら第1大隊カービィ大尉!!ようやく来てくれたか、待ちかねたぞ!!』

 

「待たせてしまってすまない。これより近接航空支援を開始する。攻撃目標の指示を乞う」

 

『悪いがこちらにそんな余裕は無い!!反撃だけで精一杯だ!!そちらの判断で敵を排除してくれ!!』

 

近接航空支援を行う為に攻撃目標の指示を求めたウイッチバード01はカービィ大尉の返答に困り果てた。

 

「……無茶を言ってくれる」

 

「機長、どうします?」

 

「余裕が無いのは本当のようだしなぁ……しょうがない、最終的な攻撃目標の判断はうちの奴らに任せよう」

 

「了解です」

 

敵の集中砲火を浴びながら仲間の救出に向かう第1大隊からは攻撃目標の指示を送ってもらう事が出来ないと理解した機長と副機長は頷き合い支援態勢に入った。

 

「高度は2000メートルに固定。バンク角は30〜35度、オービット旋回始め」

 

「高度2000メートル、バンク角30〜35度、オービット旋回開始します」

 

機長が副機長に指示を出し、支援態勢に入ったウイッチバード01の機体はオービット旋回(地上の目標を中心に左回りの定常旋回を繰り返す事)を行う。

 

「機長より通達。基本的な攻撃目標は味方部隊の進行を阻む敵兵。なお、家屋については道沿いの家屋のみ攻撃可能とする。他は撃つな民間人がまだ居るらしいからな。それと味方には絶対当てるなよ、誤射には細心の注意を払え。以上だ」

 

『『『『了解!!』』』』

 

機長からの命令に射撃準備を整えていた射手達は威勢良く返事を返し直ちに攻撃に移った。

 

まず始めに105mm榴弾砲が目標を定め砲撃を開始。105mm榴弾砲の目標となったのは車列が通り過ぎた後、隠れていた家屋から道に出てきて車列に追い撃ちを加えている敵兵である。

 

誤射の危険性を考え車列の進行方向に威力の強い榴弾を撃ち込む事は出来なかったが、目標とする敵兵がいる場所は車列が通り過ぎた後なので何の心配もなく榴弾が叩き込まれ調子に乗っていた帝国軍の兵士達を消し炭に変える。

 

そして次にGAU-12 25mmガトリング砲と40mm機関砲による弾丸の雨が敵兵に降り注いだ。

 

25mmガトリング砲が道沿いの家屋を掃射し壁の向こうに隠れる敵兵を悉く殲滅、40mm機関砲が家屋の中に潜み攻撃のチャンスを窺っていた敵兵を木っ端微塵に破砕する。

 

「車列から75メートル先に壁が出現、排除しろ」

 

「了解」

 

「車列から300先、T字路の角に魔導兵器2体を確認。40mm機関砲で対処しろ」

 

「イエッサー」

 

「敵歩兵部隊が移動中、目視出来る今のうちに25mmガトリング砲で殲滅せよ」

 

「了解!!」

 

第1大隊を誘導しているホークアイ01より送られてくる情報を頼りに最適な位置取りを決め、空を飛ぶウイッチバード01から降り注ぐ弾幕は熾烈を極めた。

 

またFLIR(赤外線前方監視装置)を使い、叩くべき敵の指示を的確に出す戦術士官により車列を攻撃する敵兵は確実に排除されていった。

 

「分断された味方部隊が近いな……撃ち方止め」

 

「「「了解」」」

 

分断された味方が立て籠る家屋の前で車列が停車したのを確認して戦術士官が攻撃中止を命じるとウイッチバード01の支援攻撃が一時中断される。

 

『こちら第1大隊、味方と合流した!!繰り返す味方と合流した!!』

 

ホークアイ01とウイッチバード01の支援のおかげでようやく仲間がいる場所へ辿り着く事が出来た第1大隊から喜びの声が上がった。

 

『カービィ大尉よりウイッチバード01へ。航空支援に感謝する。お陰でなんとか仲間と合流する事が出来た』

 

敵中を突破し分断されていた仲間との合流を無事に果たしたカービィ大尉からウイッチバード01へ感謝の言葉が送られる。

 

「それは何より。……こちらは弾薬が無くなっためこれより帰還する。オーバー」

 

近接航空支援で搭載していた弾薬を全て使い果たしたウイッチバード01は補給のため母艦である『フォレスタル』への帰還を決めると地上で手を振っている味方に機体を揺らしバンクで答えた後、機首を『フォレスタル』に向けた。

 

「さて、今からがまた正念場だぞ」

 

「えぇ、気合いを入れますか」

 

『フォレスタル』への着艦という難事を控えたウイッチバード01の機長と副機長は弛めた緊張の糸を張り直し母艦へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「よぉ……相棒、まだ生きてたか」

 

「それはこっちのセリフだ、ルーフェ。よく無事だったな」

 

「へへへッ、彼女も居ないうちに死ねるかってんだ」

 

「……元気そうで何より」

 

帝国軍の待ち伏せを食らい分断された第1大隊の約半数、300人の中で幸運にも生き延びていた55人。

 

その内の1人であるルーフェ軍曹と再会を果たしたジークは別れた時と同じように拳を付き合わせ再会を喜んだ。

 

「で、今の戦況と城に孤立したデルタはどうなったんだ?こっちには断片的な情報しか回って来なかったからさっぱり分からん」

 

「あぁ、戦況は五分五分と言った所だ。デルタは迎えに行ったナイトストーカーズが無事に回収したよ」

 

「そうか、それで俺達はどうするんだ?撤退か?」

 

「撤退しようにも負傷者が多すぎるし、何よりうちの連隊も今は戦闘中だ。恐らくはここで海兵隊が来るまで待機だな」

 

「ま、それもそうか。無理をして動くよりもここで味方の到着を待っていた方が利口か……」

 

「ブレッド軍曹とワックス軍曹、味方のヘリが物資を運んでくるついでに重症の兵士を運びに来るから手伝ってくれ」

 

「「了解」」

 

家屋の壁に寄りかかりながら2人が腰を下ろし話をしていると指揮を取っているカービィ大尉に命じられ仕事にかり出された。

 

「うぉ……砂まみれになるなこりゃ」

 

「ゴーグルを持ってきて正解だったな」

 

ジークとルーフェ軍曹が分隊規模の兵士と共に家屋の屋上に上がると、風に吹かれて飛んでくる砂埃が皆を襲った。

 

「風が出てきたせいで――ペッ、口に砂が……」

 

「黙ってないと腹一杯に砂を食べるハメになるぞ」

 

「まったくだ」

 

飛んでくる砂埃に苛立ちながらジーク達が周辺警戒の任についていると、数機のヘリが低高度で編隊を組んでジーク達に向かって飛んでくる。

 

「来たな」

 

「ん?無線が……」

 

ヘリに視線を送っていたジークが自身の無線機に通信が入っていることに気が付く。

 

「こちらブレッド軍曹、どうぞ」

 

『ザーザーザーザー、ザッこちらパーク・ジャクソン一等兵!!軍曹、聞こえますか!?』

 

その声を聞いた瞬間、ジークは凍りついた。

 

「ま、まさか……嘘だろ……パーク……なのか?」

 

『そうですよ、パークです!!というか酷いですよ軍曹!!あのヘリがエンジントラブルで『サン・アントニオ』に引き返さなかったら俺、完全に本土行きでしたよ!!』

 

「……お前、今どこにいるんだ?」

 

『今?今は軍曹の所に物資を運ぶヘリの護衛機――ブラックホークに便乗させてもらってますが……それがどうかしましたか?』

 

パークの言葉を愕然とした思いで聞いていたジークは屋上にいる兵士全員に向かって叫んだ。

 

「総員周辺警戒を厳となせ!!」

 

しかし、ジークの命令は少し遅かった。

 

『ッ!?不味い!!バリスタに狙われているぞ!!』

 

『緊急回避!!ブレイク、ブレイク!!』

 

『はぁ!?――うわっ!?』

 

そんな声が無線機を通して聞こえてくると同時にヘリの編隊が一気にバラける。

 

『ッツ!!スイーパー06被弾した!!』

 

『テールローターに直撃を受けた!!機体が安定しないっ!!駄目だ、墜ちる!!』

 

『う、うおおおぉぉぉーー!!ヤバい、軍曹!!』

 

だが、不幸にもバリスタから撃ち上げられた巨大な矢がパーク一等兵の乗るスイーパー06のテールローターを直撃。

 

機体の制御が出来なくなり制御不能に陥ったスイーパー06はグルグルと回りながら高度を落とす。

 

『スイーパー06被弾、墜落する。繰り返すスイーパー06が被弾した!!――……ブラックホークダウン!!ブラックホークダウン!!』

 

『スイーパー06が墜落、繰り返すスイーパー06が墜落!!』

 

そして低高度を飛行中だったスイーパー06は皆が見守る中、瞬く間に墜落してしまった。

 

「「「「……」」」」

 

パーク一等兵を乗せたスイーパー06が墜落する様をただ見ている事しか出来なかったジーク達は呆然と墜落現場の方角を眺めていた。




次回、ファンタジー臭漂う戦闘の……予定(´∀`)

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