ベディ: んでは(部屋)借りて大丈夫でしょうかね
YGM: いいよ!来いよ!
詩乃: はいな
ベディ: ではこちらは陛下に出奔の願いを受理された後、まあ後処理とか軍装の返却とか旅支度とかしたとしてー
ベディ: どのタイミングでミス・詩乃に追いつけるでしょうね? いや国を出た後だとしても追いつきますけど
詩乃: 出た後だとしても
詩乃: こっちは小柄な女性なので
詩乃: そちらとは移動速度がどうしても遅いですから
詩乃: 準備にどの程度かかったかしだいではあるがまあ一週間はかからないだろうかな。
ベディ: では、最寄の街の・・・・・・そうですね。そちらが宿泊している宿にでも尋ねましょうか?
詩乃: OK。
ベディ: ではそういうことで
ベディ: では、最寄の街の宿、ミス・詩乃の宿泊している部屋のドアをノックします
ベディ: 宿の方には、ちゃんとご説明をして、尋ねたということで
詩乃: 「・・・・・・?はい。どなたでしょうか。」
詩乃: ぎし、と寝台を軋ませながら、床に下り。
ベディ: (コンコン)「失礼します。こちら、竹中半兵衛詩乃重治様のお部屋で間違いないでしょうか?」
詩乃: 「……はい。間違いございませんが。」
詩乃: 杖を携え警戒態勢。なぜなら自分の名は完全には明かしていないからだ。
詩乃: 知っているのは、かつて世話になった国の王と、旅をした仲間と。
詩乃: あの時手紙を残して去った彼だけ。
ベディ: 「ああ、よかった。……ミス・詩乃。私です、ベディヴィエールです。今、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
詩乃: 「――――は?」
詩乃: 思考が理解を放棄した。
詩乃: だって、あのとき、私は彼と袂を別ったはずなのに。
詩乃: からんと杖が倒れ、思考が止まり。
詩乃: 気づけばその止まった思考のまま、部屋の扉を開けていた。
ベディ: では、そこには
ベディ: (画像表示:英霊正装・ベディヴィエール)
ベディ: このような、鎧ではなくきれいな平服姿のベディが立っています
詩乃: 「……え、ベディ、様?」
ベディ: 「はい、こんにちはミス・詩乃。ええと、入室しても大丈夫でしょうか」
詩乃: 「その、お姿、は…………あ、はい!すいません!!」
詩乃: 一度も見せたことのない、あわあわと慌てふためいた様子で道を開ける
ベディ: その調子はいつものように。変なところで律儀なままで
ベディ: 「はい、では失礼します」
ベディ: 部屋に入って、ドアをぱたんと閉める
ベディ: 「さて、では・・・・・・ええと」
ベディ: 「とりあえず、ここにいる事情をどこから説明しましょうか?」
詩乃: 「あの、そのまえに、です!」
ベディ: 「あ、はい」
詩乃: 「鎧は、鎧はいかがなされたのですか!?」
ベディ: 「国に返して来ました。もう、持つことのできる立場ではないので」
詩乃: 「聖王様に派遣されたのではないのですか!?」
詩乃: だって、彼の立場を考えたらそれしか……
詩乃: 「……なん、で……?」
ベディ: 「ああ、いえ。ここに居るのは私個人としてです。国は出奔してきましたので」
ベディ: 「それで、なんで、と言われますと・・・・・・ええと、良ければミス・詩乃に同行させていただけないかと」
詩乃: 「しゅ……ッ!?」 思考が止まる。いやすでに止まっているが言葉すら出ない。
詩乃: 「・・・・・・え?」
詩乃: 「え」
詩乃: 「わた、し、と……?」
ベディ: 「はい。ミス・詩乃とです。必然的にアクア殿ともご一緒することになりますが、まあ、そこは変わらないですね」
詩乃: 「だ、って、ベディ様、聖王国で、やりたいことがあったの、では、ないのですか……?」
詩乃: だから自分は手紙を残したのだ。彼の道を応援するために。決して邪魔にならないように。
ベディ: 「ふむ。そうですね・・・・・・ではまあ、私の行動について、まずはもっともらしい理由からご説明します」
ベディ: 「まず、同行を申し出た理由ですが……一つは、今のミス・詩乃がアクア殿、つまり『リヴァイアサン』と契約していることですね」
ベディ: 「力を失ったとはいえ神代弩龍となれば、存在を隠したとしても降りかかる問題はいくらでも生まれるでしょう」
ベディ: 「それを見過ごすというのは、私にはできません。それに、お二人には恩義もあります」
ベディ: 銀腕を掲げ、差し出しながら
ベディ: 「私はこの銀腕を、あの戦いの際に『聖剣』として解放して振るいました。それは今の私には本来不可能なことであり、いつか可能になったとしても」
ベディ: 「命の全てを使い、それで一度が限界だったでしょう。ですが、私はこうして聖剣を振るい、生き延びている・・・・・・それは、ミス・詩乃をアクア殿のおかげです」
ベディ: 「貴女達に降りかかる災難があると知っていて、私には護る力があり、恩義もある。ならば、それは私が動くに足る理由だと思っています」
ベディ: と、説明します。騎士としての『もっともらしい』道理を
詩乃: 「は、はい。ひとまず理由は……ん?」
詩乃: 「もっともらしい、理由、ですか?」
詩乃: 回転を取り戻した思考が、つまり別の理由があるのだろうかという結論を弾き出す。
ベディ: 「はい、少なくとも正当な理屈に乗っ取った理由は、これです。ですが、それ以上に・・・・・・」
ベディ: 「ただ、私が貴女と離れがたいと思っている。それが、私がここにいる理由です」
詩乃: 「……あ、の……」
詩乃: 「それ、って・・・・・・」
ベディ: だから、これは私個人の事情なのだと、示します
詩乃: 自惚れてもいいのだろうか。
ベディ: 「あ、ええと・・・そうですね」
ベディ: そういえば、以前にも言われていたな。と思い出す。私の言葉はつい勘違いされるようなことが、あると
ベディ: 「誤解されると嫌ですので、恥ずかしさを抑えて言いますが……」
ベディ: だから――
ベディ: 「私は、ミス・詩乃のような愛くるしい方に何度も支えていただいて、何の感情も抱かないような木石のような男ではありませんよ」
ベディ: 正直に、自分の思っていることを口にした
詩乃: 「――――――ぅ、ぁ……」
詩乃: これは夢だろうか。
詩乃: 「夢なら、覚めないで、ください……ッ」
詩乃: まんまるの目から涙が零れる。
詩乃: ぐずぐずと泣き声を零し、涙をぬぐい、喋ろうとして何度も何度もしゃくりあげて。
ベディ: 「夢ではありませんよ。というか、夢にされると私が困ります」
ベディ: 「ミス・詩乃」
ベディ: 「私は、貴女の」
ベディ: 言葉を続けよう。多分、この先一生、このことを掘り返されると悶えるだろうけど
ベディ: 「己に誇りを持ち、多くの者を導こうとするその姿を尊いと思っています」
ベディ: 「いつも努力を忘れず、机に向かう姿を素晴らしいと思っています」
ベディ: 「幾度となく私を助け、支えていただいたことを有り難いと思っています」
ベディ: 「私が貴女を褒めると恥らう姿を、可愛らしいと思っています」
ベディ: 「凜とした姿で、果たすべき役目に臨む姿を、美しいと思っています」
ベディ: ああ、それと、今一つ言いたいことが増えた
ベディ: 「そうですね、ああ、それと……今、貴女を抱きしめたいと思っています」
詩乃: 貴方の懐に飛び込むよ。
詩乃: それこそ弾かれたように。
ベディ: では、その体を抱きしめます。生身の左腕を腰に、温もりのある、けれど硬い銀の腕を肩に回しながら
詩乃: 「ばかな、ひと。」
詩乃: 「あそこにいれば、生活には困らないでしょうに。」
詩乃: 「あそこにいれば、名誉だって手に入ったはずなのに。」
詩乃: 「貴方は、私一人とそれらを天秤に掛けて、私を取ったんですか・・・・・・?」
詩乃: 涙でゆれる瞳が貴方を見上げる。
ベディ: 「私は生まれは農民ですし、幼少時は孤児でしたから、あまり贅沢な生活にはこだわりません」
ベディ: 「名誉も・・・・・・確かに、惜しいかもしれませんが。他に大事なものがあるならそちらを優先します」
詩乃: 「ああ……」
詩乃: 本当に、この人は。
詩乃: 私を追いかけてきてくれたのだ。積み重ねたキャリアも、名誉も捨てて。
詩乃: だから、一旦離れて。
詩乃: 「ふつつかなものですが……」
詩乃: 「末永く、よろしくお願いいたします……ッ!!」
ベディ: では、離れてからのその言葉を聞いて
ベディ: ミス・詩乃の手を取ります。掌を上にして
ベディ: そして、その掌に口付けを
ベディ: 「はい、こちらこそ」
詩乃: 「はい・・・・・・!はい・・・・・・・ッ!」
詩乃: もう一度貴方に抱きついて。
ベディ: 抱きしめながら
ベディ: 「それと、一つ訂正をします。私は、別に、自分の道(ユメ)を忘れたわけではありませんよ?」
詩乃: 「……??」 腕の中から見上げて。
ベディ: 「まず一つ目として、出奔はしましたが聖王国と陛下への忠義を忘れたわけではありません」
ベディ: 「もし、この先聖王国と陛下にこの『銀腕』の力が必要になる時があれば、私は恥知らずと言われようと向かうでしょう」
ベディ: 「ミス・詩乃にはご迷惑をかけると思いますが、お許し下さい」
ベディ: 「そして、二つ目ですが……少なくとも私は、あの方が『見ている』理想は、聖王国の安寧だけではないと思うのです」
ベディ: 「あの日、私が見た理想(ユメ)はそうではなく、もっと遥か遠くを目指すような……」
ベディ: 「誰も見たことのないような未来(あした)を齎すこと。それを目指していたような気がするのです」
ベディ: ―――それはきっと、いつか誰かが『丘の向こう』と表現したものだろう
ベディ: 「だから、大丈夫です。きっと私の理想(ユメ)も、この先に続いています」
ベディ: 「なので、ミス・詩乃……どうか、至らぬ私の歩む道を、隣で照らしていただけないでしょうか?」
詩乃: 「……本当に、あなたは。」
詩乃: 「愚直で、やさしい方ですね……。」
詩乃: 「わかりました。それならば、この竹中半兵衛詩乃重治。」
詩乃: 「我が九枚笹の紋と、我が名と。」
詩乃: 「貴方への愛に賭けて。」
詩乃: 「私たちが歩む道を照らしてごらんにいれましょう。」
ベディ: 「有難う御座います」
詩乃: 「いいえ。こちらこそ。」
詩乃: 「……本当に嬉しいです。貴方とともに歩めることが。」
詩乃: 「ですから。」
詩乃: 「ずぅっとずぅっと、一緒ですよ?」
詩乃: ――――ベディ――――
ベディ: ―――はい、詩乃―――
ベディ: では、シーン終了ーーーー!
詩乃: もえつきたぜ
ベディ: お疲れ様でした
YGM: おつかれ~!
詩乃: おつかれさまでしたぁ!
ティナ: おつおつ
恋愛に挫折するとそれは悲恋、失恋となるが。
悲恋を裏返すだけの強い力は、互いの歩みが届くが故の相愛だ。
それは対義ではなく、いずれ至る一つの道の在り処。
人の齎す無限の縮図の一つそのもの。
人が覆すときに発せられる想いの強さ、その極限の一つであり。
それこそがこの星に生きる生命を生きながらえさせた。
ならば此度も祝福しよう。
冒険譚を追え、またあらたなる旅路へと発つものへ。
ごく当たり前の――祝福の吉報である。