白き主と黄金の剣閃TRPG   作:八つ手

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◆マスターシーン1:無我夢中◆

 

 

YGM: では、OPフェイズ――の前に

YGM: マスターシーンを一つ挟みます

 

ジャンゴ: ほう?

リャノン: 大陸壊滅かな?

ベディ: ふむ

 

YGM: では

 

 

 

◆マスターシーン1:無我夢中◆ シーンPC:かつての少年

 

 

 食い散らかされた。

 喰い散らかされた。

 悔い散らかされた。

 

 かつて住んでいた場所は、なんの躊躇いもなく踏み潰された。

 俗に言うトレイン、スタンピード。

 

 ぼくのその時の記憶は、きっかけが起こるまでの間まで、ひどくあやふやだ。

 ただ覚えていたことは、家族も、近所の大人の人達も、友達も、兵隊さんも、何もかも――蹂躙され、肉塊になったことだった。

 

 ぼくの体は右肩から先がなくなっていた。

 最初にそれで済んだことは幸いで、だけれども。

 二回目の波が即座にやってきて、そのケモノ達は動けないボクに再び目をつけて――吹き飛んだ。

 

 その後に、ぼくは神々しき光を持つ、凛々しき人に見つけられた。

 

 否――本当はただの少女だったのかもしれない。だけれども。

 悲しみを堪え、悲痛を見せず、ただただ手を伸ばしたその姿。

 ぼくにはそれが孤高の騎士であり、理想の体現であり、あらゆる大男よりも強き鋼の鍛錬を積んだ、救いの聖者に見えたのだ。

 

 そして――

 

 『ああ―― 一人生きていた』

 『けれど助からない――我々は、私は…彼らを弔う以外に道は無いというのか』

 

 『…いいや、貴方の眼は――そうか、生きたいのですね』

 『…『それ』が、この光が、貴方にとっての理想なのですか……それとも、この私の伸ばした右腕か?』

 『……ふふっ。未だ若輩なるこの身なれど、憧れを持たれたならば――民の志に応えることは、騎士の務め也』

 

 『ならば――これを、貴方に』

 『繋ぐためのもの、剣を握るもの、髪を撫でるもの、そして――』

 

 『貴方が今喪い、今もう一度求めた――“生きるための、右腕となりうるもの”です』

 

 

 彼女が持っていた剣は、片時たりとも忘れたことはない。

 彼女から授かったこの腕は、ぼくに手をのばすための全てをくれた。

 ぼくが初めて本当に憧れたものは、この『手を伸ばしてくれる人<きし>』で――ぼくもそうなろうと。

 目覚めた焼け野原で、ぼくは誓った。

 

 

 ・15年後・・・――

 

 

 聖王国ディバイロード。

 

 あれから孤児として預けられ、様々な勉強をしていき、最終的に――否、騎士になったというスタートラインに立って、暫く経つ。

 一人称もすっかりぼくから私へと変わり、復興のため騎士としての仕事に邁進する。

 

 だが、全てが綺羅びやかに進むことは、人生にはありえない。

 聖王国は貧富の差が激しく、階級内では貴族のみが無為に尊いとされる価値観が長年続いていた。

 これを疎む現王による改革が進むこの時こそまだ良けれ、それ以前の膿は、今とは比べ物にならなかったという。

 

 『あの人』は、そんな時代の中で、死にかけの私に腕を恵み、施し、そして情を込めてくれたのだろうか。

 そうだと信じ続けても、答えは出ない。

 何故ならば――私を救った『あの人』は亡くなったとされ、今やこの国に戻ってこないと言うのだから。

 

 

 それを初めて知った失意は、表にこそ出ないが、未だにこの心に巡っている。

 そんな毎日が続いていた或る日だった。

 

 

 「騎士ベディヴィエールよ、そなたに調査を任せる。明晰なる予感のもと危惧有れど、その確証の持てぬ地だ。」

 

 「此れは謂わば調査に過ぎぬものだが、いざという時の裁量は現場にゆくそなたに多くを委ねよう」

 「そなたは頑強にして不屈たる荒行者。初めて向かう土地でも食や生存には困るまいと断じた」

 「調査に役割を持つ連人を許す――親しき食客が居たであろう。調査予算を多く出す故、工面すると良い」

 「危険だが深く寄らねば、例え何が有るにせよ無事に戻ってこれるだろう。故に我が委ね、故に貴殿は選択するのだ」

 

 「此を任務とし、そなたを調査へ派遣するものとする――手形を持ち、発つが良い」

 

 

 現聖王――ネロ・セイバー。

 私が憧れを抱いた『あの人』の妹君であり、私よりも一つ歳が低いらしき王は――されどこちらとは格の違う覇気、魅力性を備えていた。

 暴君と称されているが、その実臣下や民からの信頼は一度も絶えず、あらゆる貴族からの圧力も跳ね除けてみせる。

 圧政であったこれまでの国家維持方法に刃を切り込み続けているとされ、故に情報工作の戦いも有るのだと。

 

 そんな王が私に告げた此度の任務。

 時折気分の良い時に気まぐれで浮かべると噂される笑み、それと同じ表情で発したその命令は、一種の遊び心か?

 それとも、王にしかわからぬ景色の内に、見据えた何かが存在するが故か?

 

 

 私は『あの人』に憧れし身、されど忠節たる王の騎士。

 道楽ともわからぬが、王が命じたこと。考えがあると見て迷わず承知した。

 

 

 「――はっ!騎士ベディヴィエール、この命にかけましても、此度の任を果たしてみせましょう!」

 

 

 仕えるべき意志をあの時からずっとこの胸に――未だ無我夢中。

 私が真に、理想の忠節へと至る時は遠きなれど――

 

 

 

YGM: 以上です

ベディ: はい。ご下命、しかと承りました

 

YGM: というわけで、ベディの前日譚となるマスターシーンです

ベディ: はーい。有難うございます

ティナ: あいさい

ジャンゴ: 乙乙

 

YGM: 此度の任務、聖王からの期待は大きいようです

YGM: 何かやってくれると信じているのでしょう

 

 




PC1:ベディヴィエールの掘り下げに当たるマスターシーン。
彼の運命を変えた勇者:アルトリア・セイバーとの関係性を象徴するエピソードである。

貫禄を見せる聖王ネロもさり気なく描いているあたりがGMからの個人的なポイント。
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