俺達はヒーローになれなかった。   作:名は体を表す

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とあるヒロアカ二次に触発されて書きました。


クソみたいな個性じゃヒーローになれない。

 午前7時30分

 

 目覚まし時計の五月蠅いアラーム音に叩き起こされ起床。

 カーテンを開け、お天道さんの寝起き顔を拝んでやる。

 窓を開き、軽く身を乗り出せば、眼下にはスーツを着た中年オヤジがせかせかと歩き、高校生と思しき二人組が会話をしながら並んで自転車を漕いで行った。

 今日も良い日だ。

 今の時間なら、このアパートの住人も会社に行くための準備だったり、或いは学校に向かう準備だったりしてるんだろう。

 ふと、目を閉じて息を吸い込む。どこからかトーストの香ばしい匂いがする。

 

 実に、良い日だ。

 

 そんな、朝から忙しい世界に軽く思いを馳せながら俺は・・・

 

 

 

 

 二度寝する事に決めた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 全ての始まりは中国のけい・・・けい・・・KK市?

 やっべー、中学の歴史ん授業で習ったじゃねえか。健忘症にゃ早すぎんぞオイ・・・。

 えーと、あれだ。なんか光るガキが生まれて、何やかんやで世界中で超能力的な何かが発見されて、今や世界人口の7割・・・8割?そんくらいのヤツが何らかの特異体質をアレして、アレがあーなって誰もが一度は夢見たヒーローに俺も夢見た的な?

 いやそうじゃない。

 

 人は生まれながらにして平等じゃない。

 

 これはきっと、”無個性”として生まれて来た人間全員が遅かれ早かれ思うことだろう。

 人間が社会の中で生活するために不可欠な物がコニュミケーション・・・ん?コミュニュケーション?コミュミュケーション?コムュ、コm、コ、・・・まあアレな訳で。

 円滑なコヌヌ・・・アレの為には自己紹介が必須な訳で。

 そしてその自己紹介の時点で社会的なランク付けがほぼ決まる訳で。

 今の世界、”無個性”ってだけで社会カーストの最下位になるのはもはや必然な事だった。

 

 ”無個性”

 

 ”個性”と呼ばれる超常を持たずに生まれて来た。ただそれだけの人。

 ただそれだけの違いで、あらゆる物事に『劣』が付けられる。

 たとえば、”無個性”だと言うだけでイジメの対象になったり。

 たとえば、”無個性”だと言うだけで学校の推薦が取り消されたり。

 たとえば、”無個性”だと言うだけで面接に落されたり。

 たとえば、”無個性”だと言うだけで人権を侵害されたり。

 ”個性”が無い。ただそれだけで社会はあらゆる理不尽を与えてくる。

 生まれて来た子供が”無個性”だったから殺した。なんて親も居るくらいだからな。

 ・・・まあ、つまり何が言いたいかっていうと、”個性”持って生まれてきて良かった、ってこった。

 

 

 例えその”個性”がクソみたいなモノだとしてもな。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 昔々、俺がまだ4歳のガキだった頃。そう、まだ”個性”が発現してないと思っていた頃の話だ。

 同じ幼稚園に通っていたとある女の子が居たんだが、その子の足の小指の関節が()()あったらしい。”無個性”の型だ。

 ある日、その”無個性”の女の子の服が切り刻まれていた。

 別の日、その子の児童帽が泥だらけになっていた。

 更に別の日、その子が痣だらけで砂場に転がされていた。

 早い話、その子はイジメられていた。

 勿論の話だが、この事は園内で大問題となった。その子の両親は当然として、イジメていた子等の両親も幼稚園に来ては囂々と口論していた。

 色々あって裁判沙汰になったくらいだ。

 当時の俺は、未だに”個性”が発現してないと思っていた事もあってその子の味方的な立場に居たんだが、既に”個性”を発現していた奴らはむしろ、その子がイジメられるのは当然とヘラヘラしていた。

 ちゃんちゃら可笑しい話だが、そんな奴らでもヒーローになりたいと言っていた。俺は、子供ながらに頭のおかしい奴だと思っていたが。

 

 そうして時間が経ち、俺とその子は同じ小学校に入った。

 しかし、環境が変わっても人間ってな早々変わんないらしい。小学校でもその子はイジメられていた。

 俺は小学校に上がった時くらいに自分の”個性”を漸く把握できたが、おいそれと人に言えるような”個性”じゃなかった事と、小学生特有の精神から誰にも、親にすら言わなかった事で”無個性”として周囲から扱われていた。

 だが、同じ”無個性”でも俺はイジメの対象になる事はほぼ無かった。というのも”殺ドッチボール未遂事件”のお陰でクラスで一目置かれるようになったからだ。

 しかし、その代わりにその子へのイジメは激化した。いや、より苛烈に陰湿になった。

 上履きが無くなるなんて良い方だ。カバンや服が無くなったりは日常茶飯事。ある日なんて処女を無くしてきた。

 その子は不登校になった。俺も不登校になった。

 当然だろう。今まで『”無個性”だからイジメられていた』のだから、次の標的になるのは『”無個性”と思われている俺』になると考えるのは多少頭が回る奴ならすぐに思いつく。

 流石にケツバージンは失いたくない。

 そうして小学校から中学校に上がる頃には、二人して社会不適合者の烙印を押されていた。

 中学では流石に変わるかな・・・と期待していたが、結局変わらずイジメの標的にされるので保健室登校と相成った。まあ、それでも授業を受けるためにチャイムギリギリで教室に突撃し、授業終了と共に教室を去る、通称”真夏の台風作戦”を実行したりもしたんだが重要な事じゃないので割愛。

 

 その後、中学を卒業したんだがマトモな神経してりゃ高校なんて行く気も無く、かといって中卒で働こうにもロクな就職先なんて無く、ましてや”無個性”や俺のクソ個性の様な攻撃性皆無の”個性”じゃヴィランなんてリスクが高いだけ、しかもそこまで追い詰められている訳でもない。

 そうしてぷらぷらプー太郎しているある日、謎の男に声を掛けられ・・・今に至る。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 午前10時12分

 

 二度寝の魔力から解放される。夢を見ていたような気がしないでも無い。

 何気なく窓の外を眺めれば、悪魔の様な翼の生えた女性が犬の散歩をしていた。ご苦労なこって。

 いい加減に起き上がる事にする。フカフカ低反発のベッドから抜け出し、寝室を後にする。

 朝起きたら顔を洗う。ここ最近で身に着いた習慣だ。鏡を見る。おめめパッチリ。

 その後、リビングに出て機械を起動する。俺みたいに料理が出来ない一人暮らし野郎の心強い味方、『クックマスターAI(あい)ちゃん』だ。

「おはようございますご主人様!今日は何が食べたいですか?」

「今日はあいちゃんがいいなー」

「は?」

 急にマジトーン止めろ。

「じゃ、オムレツ作って」

「『ジャムオムレツ』ですね!かしこまりました!」

「待て待て、いきなり謎の食い物錬成しようとしてんじゃねえよ」

 実に心強い味方だろう?

 週刊少年ジャンプを読みながら数分。料理が出来上がる。

「お待たせしましたご主人様!『ジャムオムレツ』と『マテ茶』です!」

「何だその組み合わせ」

 クックマスターAIちゃん。とあるヒーローが考案し、サポート会社が本気になって作り上げた逸品。中身がキッチンと冷蔵庫とスーパーコンピューターを掛け算したかのような作りになっていて、あらかじめ食材を放り込んでおけば勝手に最適な保存方法で収納し、口頭で食べたいモノを言えば自動で作ってくれる超すごい機械だ。おまけに皿洗いとかも自動でやってくれる。

 超すごいが、唯一ネックな所は凄すぎて一般人の年収でも手が出せない位高価な所か。あとデカすぎて普通の一般家庭には置けない所。業務用機械でもここまでデカくねえよ。

 あ、ジャムオムレツうま。マテ茶まず。

 

 

 午前10時51分

 

 朝食を食いおわる。歯を磨いて排便する。今日も快調。

 

 

 午前11時10分

 

 食器が洗い終わったらしい。どうでもいいが。

 あ、積みゲー消化しよ。

 

 

 午後2時27分

 

 電話が鳴る。例の男からだ。迎えに行くから準備しろって。

 

 

 午後3時00分

 

 ピンポーン♪

 インターホンが鳴る。相変わらず時間に律儀な奴だ。

 家の鍵と携帯、ついでにサイフを持って出る。明らかに怪しい事してますよって服装の男がつっ立っていた。

 

 

 午後3時04分

 

 車に乗る。

 

 

 午後3時18分

 

 車から降りる。

 

 

 午後3時22分

 

 あっあっあ。

 

 

 午後7時42分

 

 今日も盛大に出した。こんなんでお金貰えるとか人生イージーモードだわ。

 

 

 午後8時02分

 

 帰宅。腹が減ったのでAIちゃんに料理を注文。

「ステーキ食いたい」

「素敵な夜にしたいだなんてフケツです!」

「やっぱコイツアホだわ」

 出てきた料理はホールケーキだった。食った。

 

 

 午後10時31分

 

 ゲームをしていたらなんか眠くなったから寝る。

 ふと思ったが、今の俺の生活は完全にニートだよなぁ・・・。だがよく考えたら”個性”と身体を使って稼いでる以上、ヒーローとそんな変わらないという結論に至った。寝た。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 謎の男は、とある製薬会社の製造担当だと名乗った。そんな奴が俺に何の用なのか。

 聞けば、俺の個性に興味があるらしい。誰にも話していないはずなのになぜ知っているのか。

『そもそも不自然さがあった。なにせ中学生にもなって()()()()()()()()()()()()()なんて、探してもそうそう居るものじゃない。ましてやこうして顔を突き合わせているが、思春期真っ只中だと言うのに顔にはニキビ一つとてないなんてね。』と。

 つまりこういう事なんだろう。俺の『最強の健康優良児』な状態を”個性”によるものだと仮定して、そのメガ、メカニェクス?メガロニウス?メガロマニア?を解明し、あわよくば薬剤として売りたいと。

 俺は言った。「報酬次第」と。

 

 かくして交渉は成立。俺はそのまま製薬会社に連れてかれ、健康の秘訣をあらゆる手段で探られた。

 お互いにとって朗報だったのは、その秘訣が簡単に判明した事。そして、それが驚くほどあっさりと薬剤に出来たこと。そして、

 

 その薬剤を作るのに俺の遺伝子が不可欠な事。

 

 俺はその日からその製薬会社に雇用され、一人の手に余るほどの大金を報酬として受け取る。

 製薬会社は、俺の遺伝子を元に薬剤を作り上げ、莫大な売り上げを出す。

 互いにWINWINの関係が出来上がった。

 ただ惜しむらくは、俺の”個性”による影響が大きい所為で日本では未だに認可されていないモノとなっている。しかし効果の程は確かな上、海外では膨大な利益を生み、日本でも口コミからブラックマーケットに手を出してまで欲しがる人がそこそこの数居る以上認可は近いだろう、と謎の男は笑いながら言った。

 

 

 

 人は生まれながらに平等じゃない。

 

 遅かれ早かれ人間が知る、社会の現実。

 

 俺は生まれながらにして、()()()()()()()()()という現実(不平等)を味わい、

 

 人生の勝ち組という美酒を飲む。

 

 これは

 

 

 俺がヒーローになれなかった物語だ。

 

 




?? ??

16歳 男

個性:超快便

 常に排便がスムーズになる個性。それに伴い腸機能がとんでもなく進化した。
 ウ●コは最強のデトックス。って事で一日に一回から二回、体中の老廃物・異物を一本にまとめ上げ、プリッとだす。そのおかげか、彼は病気知らずの超健康優良児、更にお肌すべすべ、常に最高のパフォーマンスを発揮できる。
 彼の遺伝子には消化されることで一度、彼と同じ”個性”を発動させることが出来る力がある。


トイレに籠りながら考えたのは言うまでもない。
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