俺達はヒーローになれなかった。   作:名は体を表す

12 / 15
あなた、私、出来ちゃったみたい(小説が)


無個性は生きていけない。

 

 人は生まれながらにして平等ではない。これはどうしようもない程の世界の真実だ。

 世界の総人口の約八割が何らかの特異体質を持ってしまった超人社会。残りの二割は何の特異性を持たない”ただの人”である。

 そんな超人社会、その初期には人が人と呼ばれる枠組みを超えた所為で様々な迫害が起きた。そのほとんどは今で言う”個性”と呼ばれる力を持った者達だったそうだ。

 

「かわいそう」

 

 僕の隣に座る女の子がそんな事を呟いた歴史の授業。

 かわいそう。この女は間違いなくそう言った。上から目線で憐れむように。

 それはそうだろう。この女は自身の髪を操る個性を持っている。もし自分がその時代に生まれたら迫害されていたのかもしれないと思えば、そんな言葉が出てくるのも頷ける。

 だが、考えて欲しい。これは、過去の話では無く今現在の話である。今、世界の総人口の約八割が何らかの特異体質、”個性”を持っている。なら、残りの二割は?

 言い方を変えよう。昔こそ個性を持った人間が少なかったが、突然変異を持つ遺伝子が優性遺伝だったのか時を経るにつれて個性を持つ人間が爆発的に増えていった。つまり、世界の総人口の約二割は無個性だが、僕と同じ年代に生きる無個性は総人口の一割以下、数パーセントも居ない程にマイノリティーである。もし、そんなマイノリティーの中のマイノリティーが同じクラスに居たとしたら?

 そう、それはきっとこうなるだろう。

 

「よぉ”無個性”クン。ちょっとツラ貸せよ」

「……」

 

 そうして校舎裏の人目に付かない所に連れてかれ、持っていたなけなしのお小遣いを奪われるのだ。

 

 イジメは、イジメられる方も悪いという。イジメられる時の反応が面白いから、イジメがエスカレートするのだという。

 ふざけてる。被害者が”無個性”であることを理由に、カツアゲをする個性持ちも、それを見逃す教師も。

 ああ、ふざけている。

 

 

 

「君の”個性”は実にユニークだね」

 

 通りすがりの男は言った。

 

「あらゆる努力も。あらゆる才能も。そして、あらゆる施しすら完全に無かった事にする、異常なほどに捻くれた”個性”だ。僕ですら欲しいと欠片も思わないなんてね」

 

 通りすがりの男は嘯いた。

 

「その君の”個性”に名前を付けるとしたら、そうだな。まさしくこの名がぴったりだろう」

 

 通りすがりの男は宣告した。

 

「君の個性は『無個性』だ」

 

 

 昔、運動が出来る奴はクラスで人気者になれると聞いた。だから、無個性なりに努力をし、毎日のようにサッカークラブに通った。だが、いくら努力を続けても上達せず、後から入ってきたクラスメイトに実力を抜かされ、止めた。

 昔、音楽が出来る奴はクラスで人気者になれると聞いた。だから、無個性なりに努力をし、毎日のようにピアノ教室に通った。だが、いくら努力を続けても上達せず、コンクールに出る事すら出来ずにピアノ教室の先生からやんわりと才能が無いと告げられ、止めた。

 昔、絵心がある奴はクラスでそれなりに人気者になれると聞いた。だから、無個性なりに努力をし、毎日のように絵をかき続けた。だが、いくら努力を続けても上達せず、対して練習もしていない様な子供とどっこい位の画力に絶望し、止めた。

 

 その、どれもが。僕が望みに望んだ”個性”が持つ力によるものだったなんて、なんて面白可笑しい喜劇なんだろうか。だが、僕には人を笑わせる才能なんて無く、笑われる才能すら無かった。

 学校を卒業してしまえば、毎日のようにイジメていた相手だったとしても忘れる、忘れた事すら忘れる存在、それが僕だったのだ。

 

 人は生まれながらにして平等ではない。これはどうしようもない程の世界の真実だ。

 努力は報われる?成程、良い言葉だな。でも僕には響かない。

 成功した者はすべからく努力している?なら僕は何を努力すればいい。

 人生は楽しんだモン勝ちだ?楽しめばいいじゃないか、僕で。どうせすぐ忘れられるけどね。

 友情、努力、勝利。確かにソレは存在する。でも、僕には全て無縁だったけど。

 何も成せず。何にも成れず。誰も育てず。誰も留めず。ただ、無色透明に生きて、生きた。

 勝者が居れば敗者が居る。だが、その場に居る事すら出来なかった者が存在した事だけでも覚えて欲しかった。そんな願望すら、かなえられなかったけど。

 

 そんな、ある日。

 

 僕の考える『世界の真実』ってのは一瞬で崩壊した。たった一人の、執念と狂気によって。

 

『偽物のヒーローの時代は、終わりだ』

 

 努力も、才能も、個性も、一切関係ない。誰もが超人になれる、平等な世界。必要なのは、一歩踏み出す勇気と狂気だった。そんな道具(チカラ)が今、何の因果か僕の手に有る。

 そのチカラを使って、僕は。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 逃げる。逃げる。なんで、どうして。そんな言葉ばかりが脳裏によぎる。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 俺は、ただ普通に生きてきただけだ。なのに、どうしてこんな事になってしまったんだ。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 自慢の走力ももはや尽き、星明かりが照らす夜山の中を這いつくばりながら逃げている。仲間は、皆殺された。俺以外。いや、俺もきっと、間もなく殺されるのだろう。

 

「嫌だ……」

 

 死にたくない、どうしてこんな目に、何を間違えた、俺は。

 

「助けて……」

 

 

 

タスケに来たよ

 

 

「ひ、ヒィィィ!?」

 

 ソイツは、いつの間にか既に俺の真後ろに居た。死神の鎌をその腕に持って。

 

「ふざけるな……ふざけるな!!お前、俺達になんの恨みがあってこんな事しやがる!」

「なんの恨み、ねぇ……心当たりはないのかい?」

「ある訳ねえだろ!何なんだよお前は……誰なんだよ!」

「……ふ、誰……か。良いよ、教えてあげようか。この顔の傷、見覚えないかい?」

 

 そう言って、目の前の死神はその黒いフードを脱ぎ、顔を晒した。星明かりに照らされたその顔には、余りにも大きな傷跡が額から顎先にかけて残されていた。

 

「ンの、傷……」

「あぁ、この傷は君らが僕からカツアゲした時に出来た傷さ。他にもこの体中には君らから受けた暴行の傷だらけだよ。こんな顔と身体してるお陰でマトモな就職先が無くてね。……で?何の恨みがあって、だっけ?」

「ふざ、ふざけんな!昔の、ちょっとした悪ふざけじゃねえか!その程度で俺等を殺、殺すってのか!?」

「……はは、悪ふざけ、悪ふざけか!ははは、はははははは!!そうかそうか!僕が引っ越すまでの中学生活二年間、君らが僕から強奪した金銭は数十万!怪我を負わせた回数は数百にも及ぶのに、全部悪ふざけか!!はははははは!!!」

「クソ……無個性のザコだったろテメエ……!!」

「ああ、そうだね。僕は無個性だった。だけどどうだい?馬走健脚くん?君のご自慢だった足の速さよりも速く駆ける事が出来るこの脚は。無個性のザコにも劣る個性を持っていたことを自慢してみろよ、あの時みたいにさぁ!」

「うるせえ!ブッ殺してやる!!」

 

 そう言って、奴の頭を蹴り砕こうとしたその瞬間。

 音もなく俺の脚が地面に落ちた。

 

「……あ?」

 

 脚の切断面からドボドボと大量の血液が噴き出してくる。それを見て漸く、俺は自分の脚の感覚がない事に気が付いた。

 

「あ、あ、あ、ああああああ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

 熱い、熱い、熱い。本来有るべきはずの部分が灼ける様に熱く感じる。そして同時にそれ以外の身体からどんどん熱が失われていくのを感じる。

 

「ああ、大変だ!君のご自慢の脚が無様に地面に転がり落ちちゃった!でも安心して?君のその馬みたいな気持ちの悪い脚なんて無い方が遥かに人間らしいだろ?」

 

 寒い、寒い、寒い。身体から血液と共にナニカが抜け出っていく。

 

「助けて……誰か……」

「『テメェみてぇな無個性のカスなんて誰が助けるんだァ?』……だっけ?ははは!あの時の言葉をそっくり返してあげる!個性的な足の無い君なんて無個性同然だろ?そんな君を誰が助けてあげると言うんだい?ほら、言ってみろよ。言ってみろよ!!」

「ギィアアアアアアア!!!」

 

 脚の切断面を蹴り抜かれ、脳天に雷でも直撃したかのように痛みが駆け巡る。意識が暗くなるが、痛みで強制的に覚醒する。

 

「岩腕の奴も腕が無ければ唯の無個性だし、長眼の奴も目が無ければ唯の無個性さ。ははっ、どんな気持ちかな、散々バカにしてきた無個性になった気分は、ええ?」

「クソが……死ね……」

「はは!その威勢がいつまで続くかな?安心してよ!僕を虐めてた主犯格の君だけは簡単に殺したりしないから!!」

 

 そう言って、懐から何かの薬品を取り出して俺の傷口にかける。

 

「さあ、これで早々死ななくなったよ、良かったね長生き出来て!」

「……クソが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「もう叫ぶ元気も無いの?はぁ、じゃあもういいよ、バイバーイ」

 

 グチャリ、と頭部を跡形も無く踏みつぶした。

 

「お気に召して頂けたかな?」

「あ、鬱戸さん。ええ、そりゃあもう。今まで無個性だからと散々な目にあってきましたからね」

「それは、良かった。では、貴方も()()の活動にご参加頂けますかな?」

「ええ、勿論!『無個性』だからと言う理由で虐げられる理不尽がまかり通るこの時代を、共に変えていきましょう!」

「ご協力、ありがとうございます。そのパワードスーツはどうぞそのままご利用ください」

「良いんですか!?有り難うございます!……それで、活動するその団体名ってのは何かあるんですかね」

「団体名、ですか。そうですね、この個性社会。超人社会をひっくり返す者の集い―――

 

 

 ―――『レジスタンス』なんてどうでしょうね?」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 人は生まれながらにして平等ではない。これはどうしようもない程の世界の真実だ。

 世界の総人口の約八割が何らかの特異体質を持ってしまった超人社会。現在では何の特異体質を発揮しない人間を”無個性”と呼び、無能の代名詞として呼ばれていた。

 だが、今はもう違う。

 ”無個性”はもはや嘗ての様に無能の代名詞では無い。”個性”に対して誰よりも貪欲だったからこそ。”個性”に対して人一倍劣等感を抱いていたからこそ。この道具(チカラ)を手に入れたがる。

 

「そうだろう?()()()?」

「フン、量産型(ニセモノ)ヒーローをより早く駆除するために手を組んでるだけだ」

「それでいいさ。ああ、それでいい」

 

 君と僕では、思想が決定的に違うからこそ手を組んでいるに過ぎないのだから。

 君は、より正しき社会の為にパワードスーツを造る。

 僕は、こんな世界をぐちゃぐちゃに壊すために君に資材を投げ打つ。

 僕には御大層な志なんてものは無い。『無個性』と呼ばれた僕がこの世界を、生まれも育ちも関係ない、ただ殺すか殺されるかの世界に変えたいが為にいたずらに道具(チカラ)を振り撒くだけだから。

 

 人は生まれながらにして平等ではない。これは、個性を持っているかどうかの話じゃない。

 

 道具(チカラ)を持っているかどうかだ。

 

 これは、借り物の道具(チカラ)を自身の実力(チカラ)と勘違いした者が、本物のヒーローに成敗されるだけの物語。

 

 そして、それでも増え続ける反逆者(レジスタンス)に社会がぶち壊されるまでの物語だ。

 

 

 





鬱戸(うど) 大樹(たいぼく)

??歳 男

個性:無個性

 あらゆる才能、努力を踏みにじり、凡人に変える個性。
 誰かに影響を与えることも出来ず、鍛えることも出来ない。なぜなら凡人だから。


馬走(ばそう) 健脚(けんきゃく)

個性:馬の脚

 馬の様な足で、馬の様に速く走れるぞ!


 未定だけど、まだ続き書くとしたらそろそろ原作にブッ込んでいきたいなぁ。その場合原作キャラ死亡タグ待ったなしだけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。