俺達はヒーローになれなかった。 作:名は体を表す
「ぼくもいつかすっげぇヒーローになるぞ!」
そう決意したのは確か2、3歳の時。
「お宅のお子さんは珍しい例ですな。足の小指の関節が少ないにもかかわらずこれといった個性の発現が見られないとは・・・」
「そんな・・・じゃあうちの子は」
「うむ、お子さんの世代では実に珍しい『無個性』ですな」
夢が夢で終わってしまったのは6歳の時。
思えばその時から僕は歪み始めたんだろう。
「へへ・・・ヒーロー、ヒーロー。ヒーローって凄いよねぇ、どんなピンチでも最後は必ず助けちゃうんだ・・・!」
「ヴィランに囲まれても。大火災の中でも。背中に足手纏いを背負ってても。必ず最後は助けるんだ・・・!かっこいい・・・かっこいいなあヒーロー!」
「もっと・・・もっと僕にかっこいい所を見せてくれ!!」
「凄い・・・凄いなぁ・・・!どうやったらもっと近くでヒーローの活躍が見れるんだろうなぁ・・・!」
「そうか・・・そうか・・・!僕がヒーローに
「は、はは。ははは!いい、いいぞ!さあヒーロー、僕を、僕を
そうしてビルの屋上から飛び降りた僕は、地面に真っ赤な花を咲かせたのだった。
・・・現場に駆け付けたヒーローを一人巻き添えにして。
◇
「おれもいつかすっげぇヒーローになるぞ!」
そう決意したのは確か2、3歳の時。
「ふむ。珍しいな・・・。足の小指の関節が少ないにもかかわらずこの歳で個性の発現が見られないとは」
「・・・つまり?」
「『無個性』だな。まぁ目に見える形で個性が発揮されてない可能性も無くはないが、両親の遺伝的になぁ・・・」
夢が夢で終わってしまったのは6歳の時。
思えばその時から俺は歪み始めたんだろう。
「凄いなぁ・・・かっこいいなぁヒーロー!どんな窮地に陥っても最後は必ず勝つんだ・・・!」
「凶器を突きつけられても。人質をとられても。身体がボロボロになっても。必ず最後は勝っちまうんだ。・・・凄いなぁ。凄いなぁヒーロー!」
「俺も・・・俺も
「強いなぁ・・・強いなぁ・・・どうやったな
「そう、そうだ。そうだ!
「は、はははは!ヴィラン、ヴィラン!ヴィラァァァン!!俺が相手だ!最後に勝つのがヒーローだ!!」
そうして銀行強盗に単身で突撃した俺は、犯人グループの一人が撃った銃弾が頭部を貫き倒れたのだった。
・・・リーダー格の男の心臓に包丁を突き立てながら。
◇
全く異なるようで
「つまり君も死んだって訳かい」
「の・・・ハズなんだけどなぁ。こうしてベラベラ喋ってると実感湧かないな」
「ははは、僕もさ。もしかしてこれも”個性”ってやつの所為じゃないかな?」
二人は気付く筈もない、否、この世界のほぼ全ての人間にも気付きようは無かった”個性”が彼らには宿っていたのだ。
「にしても奇遇だねぇ。君も僕と同じ、ヒーローを志して
「ヒーローを志して
死後、彼らの魂は地獄へ送られる筈だった。肉体は滅びる筈だった。彼らは死んで、それでも世界は回り続ける筈・・・だった。
死者蘇生。人類の夢なのかもしれない。
死の克服。権力者が目指してしまう到達点なのかもしれない。
死んだ筈の生命が、再び動き出す。それは余りに冒涜的に。世界の法則を歪ませる。
「ひ、ヒィィィ!!?な、んだこいつ・・・!?頭が吹き飛んでんのに・・・動いてやがる!!?」
「ば、化け物だ!!」
「は、はは。ヒデェ言い草。全身ゴツゴツの岩人間が抜かすぜ」
「お前の方が化け物じゃん、って話だね」
頭部が吹き飛んで死んだ筈の大生袋 人一が起き上がる。吹き飛んだ頭部は
滴り落ちる血は黒く、暗く濁っていき、身体に戻っていく。
「う、うわああああ!!こっちに来るなぁぁぁああ!!!」
しかし。
「全く、こんな街中で銃を撃つなんて・・・。それよりヒーローはまだ来ないのかなぁ?早く来ないかなぁ?」
「すぐそこにコスチューム纏ったヒーローが居るだろ。なんでか棒立ちしてっけど」
銃弾が身体を貫いているというのに大生袋 人一は一切の意識をしていない。まるでゴム鉄砲が当たったように、風が吹いているだけかのように振る舞っている。
事実、今の彼には一切の痛みを感じていない。何故なら彼は既に死んでいて、痛みを感じる神経全てが止まっているからだ。
そして身体が銃弾により肉塊へと近づいている傍から、闇が欠損を補完していく。
銃の中にあった弾全てを撃ち、その全てが彼に当たったにも拘らず平然と立っている彼を見て、辺りの人間たちの思考が止まった。
「なんなんだ・・・なんなんだよお前ええええ!!!」
理不尽で、理解不能であるという恐怖から逃れるように岩人間は叫び、その重く、硬い拳を全力で振るう。
斬。
「あ。え?」
「ヒーローは必ず勝つってな」
怪物は、人間の心臓に突き立てた
「あ、あ?俺の脚が何で目の前にあるんだ?なんで、なん」
ドボッ。
身体が今斬られたのに気が付いたかのように、切断面から血を噴き出す。岩人間は自分の血に溺れ、間もなく死んだ。
「あー。今ので包丁ブッ壊れちまったなぁ」
「お気に入りだったの?」「いや、別に」
「ヒィ、あ、は、は、は、は」
荒い呼吸音が聞こえる。もはや、呼吸する事も出来ない程に恐怖している。足が縺れて動かない。
「・・・さて、残るはお前だけだな。とりあえず、俺を殺した恨みでも晴らすか」
「っぅぁ、た、救、救け」
腕を振るう。首から上が血煙と化した。
「・・・さーてさてさて。結局どういう状況なんだこの身体」
「とりあえず分かってる事は、僕が君の身体に
「んで、俺のこの身体は既に死んで、化け物染みた・・・いや、これ完全に化け物だなこれ」
「驚きの黒さ」
「言ってる場合か」
世界にとっての不幸は、奇跡によって彼らが生み出されてしまったことであり・・・
一連の騒動が、白昼堂々と、人気の多い大通りで行われていた事であった。
「・・・で?どうすんだこれ」
「一躍有名人って所だね」
「そうだけどそうじゃねえよ。ほれ、なんかヒーローが集まってきたぞ?」
「・・・いやぁ、アレ等は
「?あんな町中でコスチューム着てるのなんてヒーロー以外ねえだろ?」
「ヒーローじゃない。ヒーローじゃぁないんだよ」
「ヒーローって言うのはねぇ。救けるんだよ。絶対に、何があっても、救けを求めるモノを。だけど、アレ等はさっきの奴が救けを求めても動きもしなかった。だからヒーローじゃないんだよ。ニセモノなんだよ」
「ああ・・・成程。理解した」
「へへ、解かってくれる?嬉しいなぁ。生前は誰にも理解してくれなかったんだよ」
「・・・俺も、似たような考えを持ってるんだ。ヒーローは、最後は絶対に勝つってな」
「へへへ。うん、そうだねぇ。ヒーローは、勝つ。勝つよ。だからそう・・・」
「おいお前・・・!なんで・・・なんで殺した・・・!確かに強盗は悪だ・・・だが!それで殺していい理由にはならない!!」
「こういう
「銃で撃たれても死なない・・・なら拘束系の私の技を受けてみなさい!」
「痛みを感じないのか・・・?なら電撃ならどうだ!」
「近づくのはヤバそうだ。なら近づかなければ良い」
「ああ、ああ。あぁ。うるさい煩い五月蠅いなぁ。ちょろちょろ、うろうろ、ぐだぐだと。ニセモノ、偽物。贋者が。人数が増えた所で叩きに来るなんてらしくない、ラシクナイ。ヒーローらしくないなぁ」
「ヒーローは必ず勝つ。絶対、何があっても。どんな理不尽にも勝つ。だからそう、俺に勝って証明してくれ。ヒーローだと。
◇
悪夢、降臨。
○○日の午前、東京都●●区にて凄惨で最悪の事件が起きた。事件の発端はありがちな銀行強盗だった。どうせすぐにヒーローが駆けつける・・・そう思っていた見物人の前に一人の少年が躍り出た。
その少年は素早い身のこなしで銀行強盗を取り押さえた。驚くべきことに個性らしい個性を使わずにだ。
ここまでならよくある英雄譚。
だが、少年が銀行強盗を取り押さえた直後、銀行強盗の仲間と思わしき二人組が現れ少年を攻撃。少年を突き飛ばし、拘束された仲間を救出したのだ。
しかし少年は諦めなかった。諦めるべきだった。強盗団はすぐにでも逃げるべきだった。
少年は懐から刃物を取り出し、リーダー格の男の脚を浅く斬り、痛みに蹲った所で一切の躊躇をせずにその心の蔵を突き刺したのだ。
当然、男は即死。強盗団の一人は怒り狂い、持っていた銃で少年の頭部を撃ち抜いた。
少年は死んだ。死んだ筈だった。死んでいるべきだった。
悪夢が始まる。
野次馬達の目の前で、僅か数秒の間に二人の人間が死んだ事で大きな動揺が生まれたが、それ以上に衝撃的な事が起きた所為でパニックになるのは防がれた。
死んだ人間が蘇った。
否、あれは甦りなんて高尚なものでは無い。死人が上等な操り人形の如く動き出したのだ。
頭部を撃ち抜かれた少年が何かを話しながら起き上がる。
誰かと話をしている様に、いや、正しく誰かと話をしていたのだろう。
死人が起き上がる。そんな衝撃的な事が起きたが故に、その場に大勢の人間が居たにも拘らず誰も言葉を発せずにいたことで現場は静かだった。
それなのに話し声が二つ。一つは起き上がった少年の声。もう一つは別の、若い男の声だった。
何かが居る。其処に居る全員が思った。
いち早く思考が再起動した強盗団が叫ぶ。そして、半狂乱になりながら銃を乱射し、少年の身体を破壊していく。
しかし、破壊していった次の瞬間には、闇其の物の様な黒い光が少年の身体を覆っていったのだ。
強盗団の一人が少年に殴りかかる。しかし少年は、持っていた包丁で殴りかかった男の上半身を斬り落とした。
もはやそれは、”個性”と呼ばれる力の範疇ではない。化け物の力だ。
そして、少年は強盗団の最後の一人を理外の怪力で殺したのだ。
此処に怪物が誕生したのだった。
しかし悪夢はまだ終わらない。
既に現場に駆け付けていたヒーロー3名。少し遅れて現場に現れたヒーロー4名。計7名のヒーローをその怪物は殺したのだ。
既に機動部隊まで出動する大きな戦闘になったが、大小様々な怪我をした人は多くとも、死者は強盗団3名とヒーロー7名だけで済んだ。
その怪物はヒーローが来ないと知ると闇へと消えた。
警察がその後捜査をするも、現在までで判明した情報は少ない。
恐らくこの怪物の仕業、と思われるヴィランとヒーローの死体が合わせて数十名見つかるぐらいである。
警察はこの怪物、『
耐久力全振りのステインじゃねーか。
15歳 男
個性:死魂憑依
魂を他の物体に憑依させる個性。任意発動だった上、魂の存在を自覚できなければ発動すら出来ない。そもそも既に魂が入ってる肉体に憑依出来ない。
両親、及びその血筋の個性からかけ離れた突然変異型の個性。
飛び降り自殺の際、限界状態の中で一緒に死んだ(ほぼ殺した様な物)ヒーローの魂と自分の魂を感じたことで覚醒。死の直前に肉体から魂だけ抜け出る。
肉体が赤い花と化し、魂だけ生きている歪な状態の所為で”個性”が変容しやすく、大生袋に憑依した際、魂の一部が黒く現界して肉体の欠損を補った。
15歳 男
個性:肉体記憶
記憶領域が脳だけでなく体全体にある個性。言うなれば全身が脳味噌。訳が分からない?”個性”ってそんなもんでしょ。
大抵の場合、全身脳味噌で記憶力及び他脳機能の強化が見込めるが、そもそも脳でしか考えないという”常識”から一切の個性を使えていなかった。しかし死の直前、脳が破壊される瞬間に記憶のバックアップを体全体に残した。だが結局脳が最重要器官に変わりなく、脳が破壊された後死亡。
犀牙が憑依した後、”個性”が混ざり合った所為で肉体が超強化。怪力と再生力を得た。
魂の支配権は犀牙。肉体の支配権は大生袋が握っているのでいい感じ。
『護る、救ける』ヒーローは犀牙が、『勝つ』ヒーローは大生袋が審判します。
何方かが不合格の場合、死にます。
ヴィランだったら普通に死にます。
一般人なら見逃されますが、ヒーローの真似事をしてると判断された場合は死にます。
ヤベエなコイツ。