俺達はヒーローになれなかった。 作:名は体を表す
個性『悪堕ち』人の抑圧された欲求を解放したり、恨みを増幅させ悪逆の限りを尽くさせる。
もうね、この個性が発現した段階で「あ、俺ヒーロー向いてねえわ」って悟ったわ。悟ったすぐあと生きることにも向いてねえわって気が付いたわ。
何がヤバイって、俺の両親がヒーローだったのに実質俺の所為で他のヒーローに追われる羽目になった事だな。両親はヒーローランキングに乗る位には有名なヒーローだったんだが、俺の個性が発現した所為でもう悪に染まってしまいました。
プロヒーロー『マインドライフ』個性『感動』発する声を聞いた者の心を震わし、感動の涙を流しやすくする。
プロヒーロー『ジャッジメント』個性『裁き』犯した罪の大きさ相当のダメージを与える雷を落とす。
そんな両親から何故か生まれた諸悪の根源。そして最初の犠牲者。そんな訳で今も元気に闇社会で元プロの名で通っています。
元プロヒーロー『マインドハッカー』個性『心動』発する声を聞いた者の心を操作し、正常な活動を出来なくさせる。
元プロヒーロー『パニッシュメント』個性『処刑』自身が思う罪相当のダメージを与える雷を落とす。
なんでや!個性関係ないやろ!
と、まあ悪堕ちしたらなんと個性まで変容してしまうのだ。ヤベェ。
勿論強化されることもあれば弱体化する事もある。とある人物で例を挙げてみよう。
膨張埼分福、個性『膨らむ』身体が膨らむ。風船のように柔らかくしたり親のかかとの様に硬くできるぞ!
これが
膨張埼分福、個性『爆裂』身体が限界以上に膨らんで爆裂するぞ!当然中身も飛び散るぞ!
おかしい人を亡くしてしまった……。
さようなら膨張埼君。ハゲでデブでホモの犯罪者だけど君の事は忘れない。テメエのモツぶっ掛けられた恨みは絶対にな。
と、まあ個性『悪堕ち』なんて名前してるけどぶっちゃけ元が善人だろうが悪人だろうが個性の有効範囲内と言う罠ね。
悪人が更に悪堕ちしたらどうなるか、所謂ダーク化する。
ヴィラン名『ナイトキル』個性『月光強化』月夜になると身体能力が増強される!代わりに昼弱くなるぞ!
これが
ヴィラン名『ダークナイト』個性『闇強化』暗くなればなるほど身体能力が強化される!更に自身から闇が吹き出るぞ!
ヴィラン名変わっとるやんけ!
てな感じで厄介な名持ちヴィランが更に厄介になったりならなかったり。
もうね、やばい。こんなヴィラン製造機は早いとこ世の中から消えたほうがいいんでない?ソヤナー。
だがよく考えろ。そのヴィラン製造機、俺だぞ。じゃあ死ぬのは嫌じゃない。死ぬしかない訳無いじゃない。生きろ。
そんな感じでのうのうと生き延びてる訳ですけどねハイ。もう色々やばいんすよ。何がヤバイって個性発動条件がヤバイ。
個性が発現したのは5歳だったが、その時の発動条件が『両手で相手の身体を握る』だった。だからこそ当時は両親くらいしか発動条件満たせるのが居なかった訳だけど。
それがいつの間にか『片手で相手に触れる』になった。もうね、満員電車で接触した程度でヴィラン大量生産ですよ。意味分かんなーい。
そして更に進化して『身体の一部分でも相手に接触する』となった。人通りの多い所に居るだけで其処は人災確定。はい。いや、はいじゃないが。
最終的に今現在。『相手と接触する。衣服越しでも接触とする』になってる。もうね、無理。俺は病原菌か何かですか?
街がヴィランしか住まない街になるのも時間の問題ですね。
お、俺は悪くねえ(震え声)
助けてオールマイト!此処に生存してるだけで悪を産む悪魔が居ます!
まてよ、オールマイトまで悪堕ちしたらどうなるんだこの世界。
助けに来ないでオールマイト!(泣き声)
もうアレだよ。今の住処から出れない。出たら(世界が)終わる。
そんな俺の今の生活はどんなものか見てみましょう(唐突)
朝起きて歯磨き。悪を産む悪魔でも歯は大事。これ古事記にも書いてある。
その後朝食。両親が悪堕ちした時からネグレク地獄な俺はもはや何を食うのにも躊躇しない。腹が満たされればそれでええんや工藤。
朝食が終われば服を着込み着込み、外出準備。特に手袋は入念に三重で着用する。俺が触れた場所に誰かが触っても個性が発動しないように……ね?一応だよ一応。どうせ無駄な努力かも知れないけどもしかしたらワンチャンあるやろ工藤。
外出準備が終わればそのまま外に出る。電気チェック?鍵閉め確認?んなもん要らんわ。だってこの住処電気通ってないし鍵かける場所もないからな!
そうしてまずは日用品調達。いい加減歯ブラシ変えたい。トイレットペーパーもそろそろ欲しい所。愛は無くても糞は出る。もうトイレの為に近くの公園まで走るのはコリゴリだお……。
そして日用品調達のついでに食料も調達する事にした。今目の前にカモがネギ背負って更に自前の鍋まで用意している様なので遠慮なくカモを狩る事にする。これも弱肉強食の掟なんやで工藤。
調達した食料と日用品を一度自身の塒に置いておく。日用品はともかく、食料は冷蔵庫が無いので早いとこ加工して食わないと腐ってしまう。性格が腐ってるとはいえ流石に腐った物を生で食うのはご遠慮願いたい。あーいい加減冷蔵庫欲しいなぁ。電気ないけど。こういう時に個性『食い溜め』を持っていた友人を思い出す。
とりあえず燻製にでもするかー。と思い色々準備していたら日が傾いてきた。やばいやばい。食糧調達と日用品調達だけで一日が終わる。この肉はもう燻製用に加工してしまったので今日の夜食用に軽く食べられる物でも手に入れないとな。そうしてササッと移動する。5歳から常にこうして厳しい自然の中で鍛えられているから増強型の個性を持つ奴以外になら負けない程の素早さだ。SNSにアップすればイイネが貰えるに違いない。
そうして近くの公園についた。その公園は狭く、遊具の類が滑り台とブランコの二つしかないが、トイレと水飲み場があるので自分的には重宝している所だ。そんな公園に小さな子供が一人だけブランコを寂しそうに漕いでいた。
「……お前一人か?」
「……兄ちゃん、誰?」
「俺はこの公園のヌシだ」
「……それってホームレスって奴?」
「ちげえし、この公園がホームだからホームレスじゃないし」
「それホームレスって言うんじゃないの?」
「だからちげえっての」
ああ
「……ぷっ」
「何わろてんねん工藤」
「兄ちゃん面白いね」
「何上から目線なんや工藤」
「僕クドウじゃないよ。ユウキって言うんだ」
「せやかて工藤」
「だからクドウじゃないって、やたら着込んでる変な兄ちゃん」
「これはあれだ。俺の封印されし個性を抑える重要な拘束具だ」
「……個性、かぁ……」
なんて久しぶりなんだろうか、この気持ちは。
「なんだユウキ、個性になんかあんのか?」
「ん、ううん。何でもない」
「あっそ。で、お前何でこんな辺鄙な公園で一人でいるんだよ」
「うん、あのね、今お母さんが買い物に行ったきり帰って来ないんだ」
「あ~?もう夕方だぞ?」
「うん……」
この感覚。この感情。呼び起こされる嘗ての記憶。
「……ずっと一人で待ってたのか?」
「……さっきまで友達が居たんだけど、皆帰っちゃった」
「はぁ、そうか。お前は帰らないのか?もう暗くなるぞ?」
「うん……でもお母さんが来ないし……」
「暗くなるとヴィランが出るかもしれないぞ?知らないのか?この辺を騒がしてる奴」
「……でも、お母さんが……」
「そうか、仕方ねえな」
「……兄ちゃん?」
「お前の母ちゃん、一緒に待ってやるよ。但し日が沈むまでだからな」
「っ!いいの!」
「俺から言い出してんだ。良いに決まってるだろ」
この小さな子供を見るたびに身体から涌き出るこの感覚。
「お前の母ちゃんどこまで買い物に行ったんだよ」
「……」
「もう日が沈んだぞ。帰らないのか?」
「……鍵、お母さん持ってる」
「……そうかい、しょうがねえな。しょ~がねえなぁ!」
「……兄ちゃん?」
「お前を特別に俺の秘密基地に案内してやろう」
「ひ、秘密基地!?」
「おー。お前みたいな子供なら一人くらいだったら大丈夫だろ。暴れるなよ?」
「あ、でも……お母さんが……」
「……ヒーローにでも連絡入れておいてやるから。真っ暗になる前に行くぞ」
「……うん」
ああ、
実に、腹が減った。
コン、コン、コン。
深夜の塒に控えめなノックの音が響く。燻製の火の様子を徹夜で眺めていた俺はそのノックの音に答える。
「入ってまーす」
「トイレか」
ガチャリと俺の許可なく入ってくる女。黒いコスチュームに身を包み、大小様々な刃物を隠し持っている女は見たことのある相手だった。
「よう
「いまは
「いつもじゃねえし?仕方ないだろ俺だって健全な男子なんだ。自室のイカスメルには目を瞑れ」
「これのどこがイカスメルだって言うのよ。これはブラッドスメルって言うのよ。……あんたの
「……キヒッ、仕方ないだろ?俺だって食いたくねえが、他に食うモノが無いからなぁ?」
「……今の時代、金が無くてもコンビニ襲撃すれば安全な食べ物くらいあるでしょうに」
「あぁ?ダメダメ。今のコンビニは強盗対策がキツイからな、すぐにヒーローが駆けつける通報装置が無い方が珍しい。だが
「だからって『人間』を食べる必要は無いでしょ?」
「昔馴染んだ味だからぁ?しょーがねーから、時々無性に食べたくなるから。お前だって時々カップ焼きそばが食べたくなるって言ってるだろ?」
「人とカップ焼きそばを一緒にしないで頂戴。……あら、そっちの『子供』まだ生きてる様だけど?」
「あ?ああ、明日の朝食用に半分生かしてる。殺した瞬間から鮮度が落ちるから、多少はね?」
「……あんたの個性に
「あぁ?結婚相手探すために殺人犯してるナイトキル様に言われるとは光栄ですわぁん?」
「殺すわよ?」
「キヒッ、で?お前結局何しに来たの?」
「どうせあんたロクなの食ってないんだろうと思って食料持って来たんだけど……必要なさそうね」
「あー。保存がきく奴ならくれ。若い女も子供も肉が柔らかくてイイんだがすぐ腐るからな」
「残念、持って来たのは私お手製のサンドイッチよ。人燻より長持ちしないわ」
「ちっ」
「……あんた、仮にも女の子が手料理持って来たんだからちょっとは喜びなさいよ」
「女の『子』???」
「死にたい様ね」
「お前そういうとこだぞ結婚できねえの。誰が殺戮系と結婚したがるんだよ」
「お前は言ってはならぬ事を言った。故に此処で屍を晒すが良い」
「キヒッ!屍晒すのはどっちかなぁ!」
俺は生きているだけで社会に害悪をもたらす。その事を自覚している。
だが、そんなゴミ以下の俺でも未だに生に執着するのは何故だろう。
天寿を全うするため?快楽を探索するため?
きっと、それは違う。きっと、それは運命なのだろう。
ただ、社会で生きるだけで悪を量産する、諸悪の根源は
そんな、生きることにも向いていない俺の、無様な死に様を描く物語。
悪が英雄の手によって滅ぶまでの、そんな物語。
?? ??
25歳 男
個性:悪堕ち
抑圧された欲望を解放し、正直になる個性。また、恨み等の負の感情を増幅させ、復讐等の行動に走らせる。
更にこの個性の効果を受けた相手の個性も変容させる。
当然、自分に正直になる程度の個性なので食人をしなければいけない訳など無い。
個性の効果は、触れただけで感染するように発動する。精神力の強い人間ならば効かない事もある……やもしれぬ。
『ダークナイト』
??歳 女
個性:闇強化
暗くなればなるほど身体能力が強化される上、自身から闇を出す事も出来る。闇は光源を食べることが出来る。
昼は普通の女性程度の力しかなく、闇も闇というより黒い水を霧吹きで吹きかける程度の濃度しかないが、夜に近づくにつれ身体能力がガンガン増強され、満月の夜でも軽トラを持ち上げることが出来る。新月にもなるとエライ事になる。
少なくとも結婚というワードに過敏反応するくらいの年齢。