課外活動のヴァイスリッター   作:阿修羅丸

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例えばこんな神様転生

【1】

 

 ここはどこだろう?

 日曜日、昼食のカップラーメンにお湯を注いで3分待ってたら、いつの間にか雲の上にいた。比喩表現でも何でもなく、本当に雲の上だ。

 足下には白い雲が、周囲には青い空がどこまでも広がっている。

 雲を突っ切るように赤い絨毯が伸びていて、その先には五段ほどの短い階段があって、その上に金色の玉座があった。

 その玉座に座っているのは、白髪をリーゼントに決めたやたらファンキーなおじいさんだった。

 

「やぁやぁ、よく来たのう。実はお前さんは死んでしもうたんじゃよ。本当は90歳くらいまで生きられる予定だったんじゃが、書類整理中に寿命欄に修正液こぼしてしまってな、お前さんの残りの寿命ゼロになってしもうたんじゃよ。いや本当にすまなんだ。ワシも深く反省しておるので許してくれい」

 

 おじいさんは一気にまくし立てた。

 どうやら彼のうっかりミスで、僕は死んでしまったようだ。にわかには信じがたいが、夢を見ている時とは違う、言葉にはしにくい現実感がある。それに、さっきまで時間つぶしにスマホでゲームをやっていたのに、まるでテレビのチャンネルを切り替えたみたいにいきなり周りの景色が変わってしまったのだ。夢とは思えない。

 ――しかし僕には、このおじいさんが反省しているようには見えなかった。

 無事に高校に進学出来て、友達も出来て、結構楽しい人生を送っていた。

 なのにそれをただのうっかりミスで台無しにされた上に、その張本人がこの態度……僕は思わず怒鳴り付けてやりたくなったが、

 

「お詫びにお前さんを好きな世界に転生させてやろう。漫画やゲーム、アニメ、望みの世界に送ってやろう。今の記憶を引き継がせた上で、その世界で有利に生きていけるオプションも付けよう。お前さん次第では、好みの娘を選り取り見取りの掴み取りじゃぞ?」

 

 ――選り取り見取りの掴み取りッッ!!

 

 おじいさんの福音が僕の魂を打ち震わせた。

 

「是非お願いします!」

 

 僕は迷う事なくそう答えた。

 

「ハッハッハッ、正直者で可愛い奴よのう。では行き先を選ぶが良い」

 

 おじいさんがパチンと指を鳴らすと、雲の中からモニターが現れた。何故か枠の部分にローマ字で『TENNGOKU』と書いてある。

 モニターには漫画やアニメ、ゲームにライトノベルのタイトルがズラリと並んで表示されている。僕の知っている物もあれば、知らない物もあった。

 僕は『ToLOVEる』の世界を選ぶ事にした。ここなら命の危険にさらされる事もないだろう。僕はタイトルを指差した。

 

「ここがいいです」

「ほほう、『ToLOVEる』の世界か。ではラッキースケベを特典に与えよう」

 

 改めて口頭で伝えられると、微妙に嬉しくない。とは言えあの世界で生きるのなら、あって困る物でもないだろう。

 おじいさんが僕を指差すと、指先から稲妻がほとばしって僕の体を直撃した――が、別に痛くも痒くもない。

 次に彼はもう一度指を鳴らした。今度は僕の後ろに大きな扉が現れた。

 

「よし、ではその扉をくぐり、新たな人生を楽しむが良い」

「ありがとうございました。行ってきます!」

 

 僕は期待で胸を膨らませつつ、扉を開けた。すると白い光が溢れ、その中へ吸い込まれるような感覚を覚えつつ、僕は意識を失った。

【2】

 

 今日という今日は、お前という大馬鹿野郎に愛想が尽きたよ。

 

 新たな世界に生まれ変わり、前世の記憶を取り戻した瞬間に、僕は自分自身をそう罵った。

 僕が新しく生まれ変わった世界には、獣人がいた。彼等は人間と同じように洋服を着て、人間の言葉を喋り、人間と同じように生活している。それどころか国王になってる奴もいる。

 スイッチを押してポイッと投げると乗り物や家になるカプセルが流通している。

 

 僕は何故か『ドラゴンボール』の世界に転生させられていた。

 そういえばあのモニター、『ToLOVEる』のすぐ上に『ドラゴンボール』があったような……まさかあのおじいさん、間違えた?

 うっかりミスで人の寿命を消してしまうあのドジっ子おじいさん、略してドジいさんなら充分に有り得る。

 特典にもらったラッキースケベも、役に立つ事はほとんどなかった。何せ人造人間が暴れてるんだから。タイトル間違えた上に、未来トランクスのいる時代に生まれ変わらせてくれるとか、もはやうっかりでは済まされない。

 ドジいさんを呪いながら、僕は17号の運転する車で面白半分に轢き殺されて、20年の人生を終わらせてしまった。

 

【3】

 

 気が付くと、また雲の上にいた。

 ドジいさんが玉座の上からカラカラと笑いながら話し掛けてくる。

 

「いやー、すまんすまん。間違えてドラゴンボールの世界に送ってしもうた。まぁワシも深く反省しておるし、そもそもあんな紛らわしい位置にあるタイトルを選ぶお前さんにも責任はあるので許してくれい。お詫びにもう一回、今度こそお前さんの望む世界に転生させてやるぞ。もちろん記憶の引き継ぎを含めた特典付きでな」

「……そうしてくれるのなら、文句は言いません」

 

 と言うか、ドジいさんの態度を見てると文句を言う気力も失われた。

 

「おおっ! お前さんは何と心の広い男なんじゃ! ワシが女だったら結婚を申し込んでおるところじゃわい!」

 

 この人が男で本当に良かったと、僕は心から思った。

 

「で、どの世界が良いかのう。神であるワシでもこういうサービスはあと一回が限度じゃから、しっかり選ぶのじゃぞ?」

 

 しっかり選ぶも何も、あんたが送る先を間違えたんだろ。

 そう言いたかったが、このドジいさんには馬耳東風だろうからやめにした。

 

「学園ものの世界で、可愛い女の子がいっぱいいれば文句はないですよ。年上のお姉さんとかにいっぱい甘えられたら、もっと嬉しいです。……それと特典に、高い戦闘力も付けてくれませんか?」

 

 これから行くであろう世界に超サイヤ人並みのパワーはいらないだろうけど、それでも危険に立ち向かえるだけの力は欲しい。どんな世界にでも、柄の悪い連中というのはいるものだし、腕力はラッキースケベ以上に、あっても困らないものだからだ。僕はその点をドジいさんに説明した。

 

「ふぅむ……どちらかと言えば戦闘力というより生存力が欲しい、といったところか……あいわかった、どんな事があっても死なぬよう取り計らおう。あと、年上のお姉さんとかに甘えたいとも言っておったな、その辺もサービスしてやろう」

 

 ドジいさんは前と同じように、指先から稲妻を放った。

 すると、僕の視点がどんどん低くなっていく……これはいったい?

 

「では今度こそ、新たな人生を楽しむが良い。さらばじゃ!」

 

 ――え、ちょっと待って! まだ行き先も決めてないし、体が変なんですけど!

 だけど、僕がそう抗議する前に、ドジいさんは空から伸びてきた紐をグイッと引っ張る。

 すると僕の足下にポッカリ大きな穴が空いて、僕はその中へと落ちていった――。

【4】

 

 息苦しさで目が覚めた。

 何か大きくて柔らかい物に、顔を塞がれている。時々、細い手が髪を撫でてくるので、どうやら誰か――恐らく女の人――に抱き締められて横たわっているようだとわかった。

 絡み付く腕から抜け出して起き上がる。

 僕が寝ていたのは、広いベッドの上だった。大人三人が川の字になって寝られそうなほど大きい。

 部屋も広い。まるでホテルだ。

 そして、僕を抱き締めていたのは、燃えるような紅い髪をした、外国人のお姉さんだった。しかも全裸だ。さっきまで僕の顔を塞いでいたのは、彼女の丸出しになった巨乳だったらしい。

 そしてそこまで状況を把握してから、僕はようやく自分も裸なのに気が付いた。

 僕が着ていた服はどこへ行ったんだろう? ベッドの上やその周りを見渡していると、後ろから細い腕が伸びて、僕を抱き締めてきた。

 

「おはよう……」

 

 耳元でささやかれて、僕はくすぐったくて腕の中で小さく身悶えた。

 

「具合はどう? どこか痛い所はない?」

「え? あ、いえ、大丈夫です……」

「そう、良かった……朝食までまだ時間もあるから、もう少し休んでいましょうね」

 

 赤毛のお姉さんはそう言うと、返事も待たずに僕を押し倒して、手足を絡み付かせてきた。

 少しして、スゥスゥと穏やかな寝息が聞こえてきた。

 

 何かおかしい。

 互いのつま先が触れあっているけど、同時に僕の顔が彼女の豊かなバストに完全にフィットしている。

 このお姉さんが凄く背が高いのか、それとも、僕の体が縮んでいるのか……。

 鏡か何かを探して確認したいところだけど、お姉さんが僕の上に覆い被さって体重をかけてくるので、今度は脱出不可能だった。

 でも、何だかいい匂いがするし、お姉さんの体は柔らかくて気持ちがいいしで、状況を完全に把握出来ないまま、僕も眠り込んでしまった。

 

 再び目を覚ますと、お姉さんは裸のまま、ベッドの傍らの椅子に座っていた。テーブルの上には二人分のコーヒーとサンドイッチが並べられている。

 

「起きた? 朝食も出来たから、一緒に食べましょう」

 

 お姉さんは僕の手を引いてベッドから下ろすと、椅子に座らせた。椅子もテーブルも、やけに背が高い。

 そして自分も隣の椅子に座ると、サンドイッチを一つ手に取り、僕の口元に差し出した。

 

「はい、アーン♪」

「……い、いえ、自分で食べら」

「アーン♪」

「いや、だから」

「アーン♪」

 

 あくまでも食べさせてあげるつもりらしい。

 抵抗を諦めて、僕は口を開けた。

 そんな感じで食事と見せかけた羞恥プレイを終わらせると、お姉さんは僕を再びベッドに押し倒して、抱き付いてきた。

 

「はぁ……たまらないわ、この抱き心地……お肌もスベスベで、こうしているだけでも凄く気持ちいい……」

 

 ゾクゾクするほど甘い声で呟きながら、僕の体のあちこちを撫で回してくる。

 それだけでは飽き足らず、いたる所にチュッチュッとキスの雨を降らせてきた。

 

「あ、あの! ここはいったいどこなんですか!」

 

 僕は軽く身の危険を感じ、大きな声で質問した。

 彼女は愛撫を止めて、目をパチパチさせた。

 

「覚えてないの? ここは私の人間界での住まいよ。あなたはうちの庭に空から降ってきたの。クレーターが出来るくらいの勢いで落ちてきたのに怪我一つしてないんだもの、ビックリしちゃったわ」

 

 空から降ってきた? それも、クレーターが出来る勢いで?

 何か嫌な予感がした。

 お姉さんは起き上がると、僕の体も引き起こした。こうして座った状態で向き合うと、やっぱり彼女は大きい……いや、もちろん胸もそうだけど、何よりも身長が、だ。

 食事している時も思ったけど、部屋の調度品も大きかった。

 やはり僕の体が縮んでいると考えた方が良さそうだ。お姉さんの態度も、どちらかと言えば小さな子供に対するものに近いし。

 そして次のお姉さんの発言で、僕の疑問は一気に解消された。

 

「まずは自己紹介ね。私の名前はリアス・グレモリー。冥界に住む悪魔の一人で、今は人間界の学校に通ってるの」

 

 謎は全て解けた。

 ここは『ハイスクールD×D』の世界だ。学園ものの世界がいいと言われて、あのドジいさんは『ハイスクール』の部分だけ見てここを選んだに違いない。

 特典に関しても、生存力をどう履き違えたのか、絶対に死なない不死身の体にでもしてくれたのだろう。その肉体も、縮んでいるのではなく子供の姿になってしまったと見ていい。だからリアスはこんなに優しくしてくれているのだ。

 しかも、僕は彼女の家の庭に落ちてきたらしい。恐らく転生ではなく転移してきたのだろう。

 何かもう色々と間違えすぎてて、あのドジいさんに悪意すら感じてきた。

 

「あなたのお名前は?」

 

 リアスに聞かれて、僕はおずおずと答えた。

 

「山野馳夫です」

「馳夫くんね……あなたは何者? いったいどうして、空から落ちてきたの?」

 

 リアスは尋ねながら、僕の頭を撫でる。

 僕はその優しい手つきにうっとりしながら話した。

 

「元々は別の世界で暮らしてました。でも、気がついたら神様とかいう変なおじいさんの所にいて、その人の話だと、僕はその神様のうっかりミスで死んでしまったらしくて。それで神様に、お詫びに絶対に死なない体にした上で別の世界に送ってやるから、そこで生きていけって言われて……気が付いたらここにいました」

「無責任な神もいたものね……お詫びではなく、自分のミスをなかった事にしたいだけのようにすら思えるわ。可哀想に……」

 

 リアスは僕の説明を聞いて同情したのか、ギュッと抱き締めてくれた。そしてそのまま、ゆっくり優しく押し倒す。

 

「だけど、何も心配はいらないわ。あなたは私が守ってあげる。私が一生面倒を見てあげるわね」

「え、ど、どうして……?」

「だってあなたの身体、とっても素敵なんだもの……ああ、この抱き心地、この一体感……本当にたまらないわ……私が求めていた最高の抱き枕……もう絶対に手放すものですか……あなたは永遠に私のものよ……」

 

 リアスは艶っぽい声でささやき、僕の体を撫で回し、そしてキスをしてきた。

 唇と唇が重なり合い、舌が入り込んで来て、情熱的な動きで僕の口の中をクチュクチュと掻き回す。

 頭がボ~ッとしてきて、僕は彼女の大きな胸に本能的に手を這わせた。

 

【5】

 

 最初はドジいさんを恨みもしたが、悪い事ばかりでもない。

 最初にもらった特典『ラッキースケベ』はまだ生きてる上、リトさん並みの指使いも含まれていたのか、

 

「馳夫にしてもらうと、とっても気持ちいいの」

 

 と言って、リアスは毎日胸を触らせてくれる。

 朱乃さんも僕を気に入ったようで、リアスの目を盗んでは僕を人気のない場所へ連れていき、抱き締めて、胸を押し付け、キスをしてくる。

 

 もっとも、僕がする以上に、二人に悪戯される方がよっぽど多い。

 朱乃さんとの関係はすぐにリアスにバレてしまったけど、

 

「これからは二人で馳夫をシェアしましょう」

 

 と彼女が言い出して、今では二人がかりで僕の体を愛撫するようになった。

 

 ちなみに、二人ともまだ高校二年生。つまり原作開始前だ。

 原作始まったらどうなるんだろうと不安になる事もあるけど、今日も僕は二人のお姉さんのおもちゃにされている。

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