魔法少女と異世界の暗殺者   作:繊月紅

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ストックが出来たので一話投稿です。
多分後二~三話程で無印編へと入れるかなーと思います。
今回は八神家なら切っても切れないあの人登場です。


─第七話─[ギル・グレアム…ですか?]

 

 

 

 

 

 

 

────八神家────

 

 

 

 

 

 

アラシとツバメが亡くなってから数日後。

はやての主治医であった石田先生の助けも借りつつ、二人の葬儀が行われた。

葬儀場で二人が火葬され、煙となって空に登っていくのを黙って見続けた。

石田先生に手助けしてもらった葬儀もほどなく終わり、

一度病院に戻った石田先生を見送った後、

八神家で今後について親戚一同集まって話し合いが行われた。

 

そして話し合いが始まった途端、周囲の雰囲気が一変した。

 

アラシとツバメの両親が早くに亡くなっていたのは聞いていたが、

なぜ親類の人間が近所にいないのか気にはなっていたんだ。

その答えはこの場にいる人達の顔色や言動に出ていた。

 

全員が全員、親類が亡くなったというのに悲しんでる雰囲気がないのだ。

むしろ亡くなって清々したといった感じの雰囲気を出している…。

そして決定的だったのは一人の老人の言葉だった。

 

 

「あの馬鹿者共は死んでもなおワシらに迷惑をかけてくれるわい。

 足の悪い娘一人に養子に取ったどこの馬の骨とも知れぬ娘が二人…。

 流石、駆け落ちして親類に迷惑をかけた阿呆の弟の娘じゃ。

 いらぬ置き土産をしてくれたもんじゃな」

 

「まったくですね養子の二人は兎も角、足の不自由な娘がいるとは…。

 どうしますか? 誰か面倒をみようという方はいらっしゃいます?

 …まぁ誰もいないでしょうけどね」

 

 

『確かに誰もいないな!』等とあの優しかった二人の親類とは思えぬ発言の数々。

親戚の心無い言葉の数々に私たちは怒りを顕にする。

 

 

「…それが両親を亡くした直後の私たちに対して言う言葉なのですか!?」

 

 

親戚達の言葉に我慢できなくなったアリスが、この場にいる人達にそう言ったが、

まるでアリスの発言は無かったかのように今後どうするか話し合っていた。

あまりの態度にはやては俯き身体を震わせ、私はどこかこの人たちが同じ人間に見えなかった…。

 

その後も私たちが発言しても元からないものとして話が進んでいき、

『それじゃあこの子達は施設にでもいれるとして、遺産の話をしましょうか』

との言葉が聞こえその話し合いが始まって少したった後、今まで黙っていた一人の男性から発言があった。

 

 

「申し訳ないが君達の発言はこれ以上聞きたくはない」

 

 

その言葉にその場にいた全員がそちらへ顔を向ける。

まるで幾多の戦場を走り抜けた老練の戦士のような顔をした、一人の年老いたおじさんがいた。

そのおじさんの側には二人の若い女性が控えており、更にその後ろにはもう一人男性が座っていた。

 

 

「…それはどういう意味ですかな? そもそも貴様は何処の誰だ?」

 

「私の名前はギル・グレアム、亡くなったアラシ君の友人だ。

 先ほどから聞いていれば親を無くした子供の前だというのに、

 悪びれる様子もなく、よくそのような態度が取れるものだね」

 

「ただの友人風情が親類の話し合いの場にしゃしゃり出てくるでないわ!」

 

 

グレアムさんの言葉に怒りの形相で捲し立てる老人と嫌悪感を顕にする親類達。

そんな感情を一身に受けているにもかかわらず、グレアムさんは涼しげな顔で親類達を見る。

 

 

「最初はそうしようと思ったのだがね、この話し合いは子供達にあまりにも酷すぎる。

 故に口出しさせてもらうよ、彼女達は私が子供達の面倒を見よう。

 ただの友人にその様な権限はないのは分かっているが、

 正直君達の手にこのまま彼女達を委ねるのはあまりにも危険だと思うからね」

 

 

グレアムさんは捲し立てるように親戚一同にその言葉を告げ、後ろに控えていた男性を前に出す。

 

 

「では改めまして皆様初めまして、グレアムさんより依頼された弁護士の宇喜多と申します。

 暫くは傍観するよう伝えられていたので黙っていましたが、

 遺産相続や今後については彼女達の弁護士として、全てこちらで処理させていただきます。

 なにか反論などあれば今のうちに仰ってください…、ないようですね。

 では彼女達の今後についてこちら一任させていただきます…。

 あぁ安心してください、貴方たちの言動に関しては私からは何も言いませんよ。

 …まぁ彼女達が訴えを起こすというのであれば、その限りではありませんが…ね?」

 

 

宇喜多と名乗った弁護士はまるで反論は許さないとばかりに言葉を告げ、私たちの方へと歩いてくる。

一気に話が進んだため呆然としている私たちの前まで来て宇喜多さんはこう話しかけてきた。

 

 

「という訳で、貴女達の今後について私が代わりにお話を進めておきます。

 今までよく我慢しましたね、偉いですよ。

 さ、後は大人に任せて先に部屋へ戻っていなさい…。

 なぁーに心配はいらないよ、君達にとっては最高の状態で話を纏めてあげるからね」

 

 

そう話しかけてきた宇喜多さんは私たちに対して片目を瞑りウィンクをした後、

グレアムさんの傍にいた若い女性二人に顔を向けて合図を送る。

それを見た女性二人は私たちを親戚一同が集まるこの部屋から、手を引いて連れ出してくれた。

 

 

 

 

 

 

あの話し合いから数時間後、集まっていた親戚一同はすでに帰宅していた。

現在はグレアムさんとその娘さんの、リーゼロッテさんにリーゼアリアさん。

今後私たちの顧問弁護士として動いてくれる宇喜多さんの三人と私たちがリビングに集まっていた。

集まった理由は宇喜多さんから私たちの今後について話してくれるからだ。

 

 

「では貴女達の今後についてお話させていただきますね。

 まず貴女達の生活についてですが、これについてはグレアムさんにお任せしようと思います。

 ただ彼自身はお仕事の都合などによりご自宅のあるイギリスから動けないので、

 必然的に貴女達にはイギリスへと行ってもらうことになるのですが…。

 そこで貴女達にお聞きします、グレアムさんの住むイギリスに移住するつもりはありますか?」

 

 

宇喜多さんの言葉に私たちは首を横に振る事で拒否する。

グレアムさんが私たちを引き取ってくれるのはありがたく思うけれど、

この新居に来てから僅か半年程だが、

八神家の思い出が詰まった家を出るなんて考えは私たちにはないからだ。

その答えが解っていたのか宇喜多さんは頷きながら言葉を続ける。

 

 

「だと思いましたよ…、ではグレアムさんには当初の予定通り、

 ご自宅のあるイギリスから八神家の生活支援をしていただきます。

 遺産の管理に関しては私が一任させていただきますが、グレアムさんにも少しお手伝いしてもらいます。

 このままだと児童施設などに行かねばならないのですが、そこは私の手腕でなんとかしてみせましょう。

 …とは言ってもたしかアリスさんは十八歳なのですよね?」

 

 

宇喜多さんが確認のためにアリスの年齢を聞いてきたためアリスはそれに頷いて肯定する。

事実、戸籍を取得する際にアリスの年齢は十五歳で登録してた。

それから三年経過してるため戸籍上は十八歳で確かなのだが、

実年齢は正直それをはるかに上回っているのは黙っていよう。

 

 

「ならば若干厳しいかもしれませんが保護責任者としての体裁は保てるので、

 この家に住みながらグレアムさんの援助で不自由ない生活はできますね…。

 アリスさんは就業経験もお有りのようですから当面は問題ないとみて大丈夫でしょう。

 今後は貴女達の顧問弁護士として動きますので何かあれば遠慮なく仰ってください。

 私が出来うる範囲で最大の弁護をさせていただきますよ」

 

「もちろん私も生活の援助者として最大限に力になると約束しよう。

 私自身は中々動けないが、その代わりとして娘たちに様子を見に行かせるよ。

 連絡先も渡しておくから何かあればすぐに言って欲しい」

 

 

宇喜多さんとグレアムさんの言葉に私たちは感謝し、頭を下げた。

その様子を見たグレアムさん達は微笑みながら私たちの頭を撫でている。

正直二人が亡くなった後に親類達のあれがあったわけで、

私やアリス、そしてはやての三人は完全に参っていたのだ。

見知らぬ他人とは言え、私たちを思って行動してくれたこの人達には感謝しなければ。

 

 

「ではそろそろ私たちはお暇しましょうかグレアムさん」

 

「そうだな、今彼女たちに必要なのは休息だろう。

 ゆっくり休むといい…、今後は今まで通りとはいかないだろうが、

 家族仲良くこの家で日々を過ごしなさい」

 

「私たちはたまに様子を見に来るからその時はよろしくね」

 

 

こうして私たちを援護してくれたグレアムさん達は八神家を後にした。

この先は大変なことが多いだろうけど、それでもこの家から出なくてすんだのはよかった。

アラシとツバメはもういないけど、残された私たちで頑張っていこうと心に誓った…。

 

 

 

ただ一つ問題として残ってるのは、私たちが異世界の人間だとはやてにまだ話してない事だろう。

流石に三歳の子供に話しても理解されないのは分かってるので、

アラシやツバメと話し合って大きくなったら伝えると決めてはいたのだが…。

もう少しはやてが大きくなったら私たちの世界の話をすることも考えておかないとなぁ。

はやてから拒絶はされないだろうけど…、それでもやっぱり少し怖い気持ちはある。

まぁ今そんな事を考えても先の話なわけで、未来はまったく分からないんだけどね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギル・グレアムの手記

 

 

闇の書によるエスティアの制御が奪われ、闇の書に乗っ取られたエスティアを私は部下諸共破壊した。

クライド・ハラオウン…、いずれは私の跡を継いでもらうはずだった…。

そんな大事な部下を闇の書諸共…、私は殺したのだ。

クライドの奥さんであるリンディには本当に悪いことをした。

あの時、せめてクライドだけでも助けられたら…、

彼女とその子供であるクロノにこんな辛い想いをさせなかったというのに。

それもこれも全ては私の見通しの甘さから来た結果だな…。

 

 

破壊した闇の書には転生機能があるゆえに、私は私の持つ全てをかけて闇の書の行方を追った。

私が生きているうちに闇の書の完全破壊を達成するために…。

そのために娘たちにも要らぬ苦労をかけてしまった。

 

そしてそれから数年の時が経ち私はついに見つけたのだ…。

闇の書の新たな転生先を…。

 

闇の書の新たな転生先に選ばれたのは、ごく一般的な家庭に生まれた一人の少女だった。

車椅子にのった彼女は家族にとても愛されており、中でも上の姉とはとても仲が良いようである。

そんな幸せな少女の命を奪おうとする闇の書に対し、私は激しい憎悪を抱いた…。

 

なぜ闇の書などという魔導書がこの世に存在するのか?

完成した際には主を取り込み暴走する物など作った人間はもはや狂気の沙汰ではない。

しかしその理由も闇の書を独自に調査する際に解ってしまった。

 

闇の書はその昔、夜天の魔導書と呼ばれ数多に存在する魔導を収集、研究するための魔導書だった。

その魔導書は過去の主達による改変に次ぐ改変で一部の機能が変質し、

やがて闇の書と呼ばれる災厄を撒き散らす呪いの魔導書として生まれ変わってしまったのだ。

 

過去に改変された闇の書を、外部からアクセスしてシステムを直すという方法も考えられたが、

闇の書は主以外によるシステムへのアクセスを一切認めないのだ。

おまけに無理に外部から操作をすれば、主を呑み込み転生するというという記録が残っている。

それゆえにプログラムの停止や改変ができず、完成前の封印すらもできない。

 

完成後、闇の書が暴走するのほんの僅かな時間がある事も調べていて分かっているが、

その僅かな時間で闇の書の主にシステムを直してもらうなど出来るはずもない。

むしろ余計にシステムが改変されこれまで以上の災厄を撒き散らす存在にでもなられたら、

もはや管理局に闇の書を止める手立てがなくなってしまうからだ。

 

ゆえに私は別の視点から闇の書を止める手立てを考え抜いた。

 

完成前の闇の書はアクセスもできず、主に危害が加われば主を呑み込み転生してしまう。

故に完成前の封印は不可能であるとの結論があるのであれば、

完成後の暴走するまでの僅かな時間に封印はできるのではないかと考えた。

収集後完成した闇の書の主として覚醒すれば、強力な凍結魔法による永久凍結の封印で、

主諸共封印すれば闇の書の転生機能も発動しないのではないかと…。

結論から言えば、主の覚醒後の僅かな時間の間での封印は可能との研究の結果がでた。

 

ただその場合、その段階では永久凍結になる程の罪を犯しておらず、

それを実行しようものなら違法の一言に尽きるだろう。

倫理的に見てもあの幸せそうに暮らす少女を永久凍結封印するなどあってはならない事だ。

そんな事をすればあの幸せそうな家族達から恨まれもするだろう。

 

だが私は成さねばならない…、闇の書の被害を今後永久に起こさないためにも。

管理局の法で永久凍結封印が違法だと数多の人々から言われようと、

例えあの少女の家族から恨まれ命を狙われようとも止めねばならんのだ…。

 

それが管理局という組織に所属する者の最善の選択であり、

数多の次元世界に住む人々の平和のためになるのだ。

 

 

 

闇の書を発見後しばらくして、あの少女の両親が事故で亡くなった。

私は、これは闇の書を封印するための最大のチャンスだと思った。

闇の書の主である少女をできる限り安全かつ近くで監視するため、

私は彼女たちのご両親の葬儀に父親の友人として参加した。

もちろん私を含め娘たちと、彼女たちの処遇を円滑に進めるため、現地の弁護士も雇った。

弁護士にはしばらく黙って様子をみようと事前にお願いしておいたので、余計な事は言うまい。

そして私は彼女たちの置かれている立場というものを知ってしまったのだ…。

 

彼女たちの親類は彼女たちをまるで人間扱いせず、最初からいてもいないものとして扱ってたのだ。

私が弁護士を連れてきたのは彼女たちの援助や遺産の管理を一手に引き受け、

親類を一切この家に来させないために色々と手を打つためだった。

 

────だがこの状況は一体何だ?

 

彼女たちが必死に訴えているにも関わらず、彼らはそんな言葉はないものとして話を進めている。

養子である二人の姉は別々の施設に預け、二度と自分たちに関わらないようにし、

車椅子に乗る少女は適当な児童施設に預けたあと、

どこかの養子にでも出してしまえと目の前の老人が話していた…。

更に両親の遺産は彼女たちが相続するが、その管理は彼がが引き受けるとまで決めていた。

だが管理と言っても恐らくそれは詭弁であろう。

その証拠に彼ら全員が遺産をどのように分けるか各々で相談しているのだから…。

 

その光景を見て私はついに我慢の限界を迎えた…。

私は数多の次元世界に住む人々のために、彼女たちを監視しそのうえ凍結封印しようとしているが、

それまでの間はせめて幸せに暮らしてもらいたいと思っている。

偽善だと言われようがそれが罪もない少女を凍結封印する罪滅ぼしだと考えている。

 

だというのにここにいる者達はなんだ?

私とて人のことは言えないがそれ以上にここにいる者達には反吐が出る…。

なぜ誰も彼女たちを保護しようという者がいないのか?

過去に何があったかなど私には知る由もないがそれでもこれは…、

両親が亡くなってしまい悲しみにくれる彼女たちがあまりにも可愛そうではないか…。

 

故に私は弁護士の彼を前に出し全てを彼に委ねた。

もはや彼らに彼女たちを任せるつもりなど微塵もない。

それは弁護士の彼と私の中での共通の認識でもあった。

 

 

 

こうして個人的な私の復讐のため、そして数多の次元世界に住む人々のため行動を開始した。

だが果たしてそれでいいのだろうかと疑問に感じる事がある…。

心優しき彼女たちを、このまま凍結封印してしまってもよいのだろうか?

自分の決意はこんな簡単に揺らぐものだったのだろうか…?

 

 

 

目の前のサーチャーから送られてくる彼女たちの生活を目にしながら、

私は答えの出ない思考の迷路に囚われ続けていた…。

 

 

 

 




ここまでの読了お疲れ様でした。
今回のお話ではギル・グレアム提督が登場。
個人的にはグレアム氏は嫌いじゃないですので、若干内容を盛らせてもらいました(笑)

彼の心の葛藤みたいなのが書けていたらいいなと思います。
ちゃんと書けてる…よね?
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