ムヒョとロージーの魔法律相談事務所~幻想郷出張~ 作:二色蓮赤喋
現実世界の通貨と幻想郷の通貨は同じ価値とします
銭とか厘とかわかんないです(馬鹿)
ムヒョ達がスキマを潜り抜けた場所は、神社…鳥居の内側だった
ロージーはわけがわからない、という顔をしている
「ここ、神社…?でもこんな神社、行ったことないし…ムヒョ、ここはいったい?そもそも幻想郷って__」
「黙ってろ___どうやらここは幻想郷の出入口に当たる場所みたいだナ。鳥居の向きを考えるとここは出口の使い方が主らしいと思える。つまり、鍵番みたいなやつが居るはずだ」
「なにがなんだか分かんないよ、ムヒョォ~!そもそも鳥居の向きって何?」
無知すぎるロージーの態度に少し苛ついたのかムヒョの口が悪くなる
「霊に関わるならこれくらい知っておけ、このカスが___まぁ、俺も詳しいわけじゃないがな。だがこの鳥居は本来の鳥居とは逆向きに建っている。出口から神社に入って、入り口から神社を出てくるようなモノだゼ」
「あれ?それはおかしくない?神社を建てた人が間違えてたのかなぁ…」
「普通の神社ならそうだろうナ。だがこの神社はおそらく幻想郷の要にして境界、聞いた話が正しいならこの神社の名前は___」
「博麗神社、よ」
唐突に声がした。どこから聞こえたのかと思うと、その声の主は空から降りてきた
「あなた達が紫の呼んだ魔法律教会、とやらかしら?」
声の主はまだ年端もいかない少女だった。その格好は紅白色で腋が見える、かなり派手な格好だ
「き、君は一体…?というか空から…」
ロージーは困惑を隠せないまま少女に問う
「私?私は博麗霊夢。
「博麗…お前が当代の博麗の巫女、か。まさか少女だったとはな…ヒヒヒ」
「…あなた、幻想郷について少しは知ってるみたいね」
「おとぎ話みたいなものだ。霊やあやかし__妖怪と人間が共存してる世界がある、という程度のナ」
「半分正解で半分は間違ってるわね。人間と妖怪は共存ではなく敵対してるわ。…見せかけだけだとしてもね」
霊夢は気だるそうにムヒョに説明したあと、ロージーに向き直る
じろじろとロージーを見るその姿は商品の品定めをする商人のようだ
「中々イケてるわね…いや、それは今はいいわ。貴方、かなりの霊力があるわね。それも私に匹敵するくらい」
「霊力?…霊の力?」
「あなたたちに分かりやすく言うなら…うーんと」
「煉、だナ」
「煉、かしら?まぁ多分そんなとこよ」
大雑把な説明をする霊夢。だがなんの意味もなしにロージーの錬を見定めたわけではない。だが理由があるか、と言われたらそういうわけでもない
「なぜ、突然僕の錬のことを…?そもそもどうやって」
「なせ?どうやって?そんなの勘と実力よ。私の勘はよく当たるから、きっと意味があることよ。でもどうして外の人間がこれほどの霊力…錬を?」
霊夢は少し困惑したような顔をするが、また表情を素面に戻す。どうでもいいや、と言わんばかりな態度をとる
「なにはともあれ、貴方たちは招かれた客、ということね。ま、適当に歓迎するわ。どうやら悪い人間ではなさそうだしね」
霊夢が話を終えると、ロージーは手を上げて霊夢に質問をする
「さっき、空から降りてきたけど、どうやって…?」
霊夢は一瞬困惑するが、すぐに理解する。空を飛ぶことは普通の人間にとっては当たり前ではないことを思い出したのだ
「あー、まぁ、私の場合は能力ね。宙に浮かぶ程度の能力」
ロージーは理解したようなしてないような、あやふやな態度になる
「空を、飛ぶ…?」
「こういうことよ」
そう言った瞬間、霊夢は地面から浮き、高く飛ぶ。そして空中を自由自在に動き回る
「ま、説明するより見た方が早いわね。こんな感じ…ねえ、聞いてる?」
ロージーは驚愕を隠せずにいた。人間は空を飛べない、その常識があっさりと覆ったのだから
「ねぇ…あなた…あ、そう言えばあなた達の名前を聞いてなかったわ。あなた達の名前は?」
その声でロージーはハッとする
「ごめんごめん、自己紹介が遅れたね。僕は草野次郎、ロージーって呼んでよ。こっちは六氷透。ムヒョって皆は呼んでるよ」
「そ、よろしくね。透さんに次郎さん。私はここで巫女をしているわ」
次郎さんって呼ばれたのは久しぶりだな、と感じながらロージーは霊夢に質問を続ける
「巫女の仕事って、なにをしているの?」
「そうねぇ…朝起きて祈祷して…ご飯を食べて、境内を掃除して…お茶を呑んで煎餅を食べて昼寝して…夜にご飯を食べたら寝てるわ」
「ヒッヒ…要は暇なんだな。閑古鳥が鳴いてそうだぜ」
ムヒョが毒を吐く
「そのせいでうちの家計は火の車よ。哀れだと思ったならそこの素敵なお賽銭箱に慈悲を頂戴な」
それを気にする様子もなく賽銭を要求する巫女。普通の人間ならこんなことを言わないだろう
だが常識に囚われない幻想郷の巫女。常識非常識からも浮いているのだ
「あはは…僕たちもスカンビンなんだ。賽銭を入れられるなら米を買ってるよ…」
ロージーがうなだれながら呟く
「あら、お腹が空いてるのかしら?お昼には少し早いけど、良かったら食べていく?山菜とか茸とか余ってるのよ。腐らせるよりは食べてもらった方が良いし、遠慮しないでかまわないわ」
金はないが蓄えはある霊夢。ロージーとムヒョは目を輝かせる
「是非!」
「なら準備するから手伝ってちょうだい」
ロージーと霊夢は食事支度を始めていた
種類豊富な山菜とキノコ、そして沢山の米。1日の食事すら厳しいロージー達にとっては宝の山に感じたようだ
ロージーは適当な山菜…ヨモギを手に取り、そして葉を一枚ちぎって齧った
「このヨモギ、苦くない!これならサラダやおひたしにしても食べやすいな…」
「生も悪くないけど、油はあるし、天ぷらにしちゃいましょ」
そういって霊夢は油を用意した
天ぷら、和食の定番だが実はお金がかかる。油がロージー達には高いのだ。貧乏なロージー達にとってはその黄金色の油が黄金にも等しき輝きに見えた
「天ぷらは危ないし、僕が準備するよ」
「あら、ちゃんと料理できるなんて、男の人には少し珍しいわね」
「なんとかやりくりしてたからね…50円のネギ丼とかね…ハハハ」
乾いた笑いを浮かべるロージー。一方、50円、という単語を聞いた霊夢はロージーに詰め寄る
「詳しく教えて頂戴。50円のどんぶりって?ネギならあるわ。ネギだけでもできるのよね?」
「た、卵とダシも。あとこっちで半額のときに作れただけで…」
「卵もダシもあるわ。作り方を教えて頂戴」
「じゃあ、すぐにできるから今教えちゃうね。まず刻んだネギを___」
※ムヒョロジ3巻、おまけまんが参照
「………で、なんだこれは?」
目の前にならんだのは山菜とキノコの天ぷらと……ネギ丼3つ。ムヒョはネギ丼を食い飽きてるのだ
「なんでこっちに来てまたこれを作った?」
「い、いや霊夢ちゃんに教えてほしいって言われて、つい___」
「まぁいいじゃない。ただご飯食べるよりなにか乗っかってた方が美味しいでしょ?」
「火の車の割には随分と蓄えがあるじゃねえか…」
「まぁお節介な奴らがいるからね。ありがたいけど結局迷惑かけられるし」
「ま、まぁ食べようよ!いただきまーす!」
「ねえ霊夢ちゃん…これ、ベニテンクダケなんだけど…」
「あら、これをくれた人間は死ぬほどうまいって言ってたわよ」
「いや、まぁ美味しいけど毒だよこれ…」
「まぁ死にはしないわよ。火を通してるし」
「……まぁ、美味しいらしいし齧るだけなら」
ちゃぶ台での食事を終えた三人。腹痛などはないらしい
そして霊夢がムヒョとロージーに問いかける
「さて、博麗の巫女として聞かせてもらうわ。貴方達はなんのためにここへ来たのかしら?」
「ああ、それは地上で悪さをしている霊を___」
「そんな建前いらないわ。本来それは私の仕事だもの。紫もそのためだけにわざわざ外の人間を連れてはこないわ。本当の理由___と、いっても紫のことだし教えてない可能性が高いわね」
ロージーはさっぱりわからない、という様子だがムヒョは何となくわかってるようだ
そしてその問いかけにはムヒョが答えた
「ああ、本当の理由は聞いてはいねえ。だが、なんとなく察しはつくぜ。協会を脅すだけの理由、そして極秘でありながら俺達の友人だけに話していい、という理由もナ」
「む、ムヒョ?それはどういうこと…?」
「ティキの事件の後、不可解なことがあっただろ?それを考えてみろ」
不可解なこと、それをロージーは思い出していた
「たしか、消えた禁魔法律家に…消えた禁書…」
そこまで言ってロージーは理解した。理解してしまった
「…まさか、まさかそんな…」
「確定はしてない。だが…恐らく『ソレ』だ」
今度は霊夢が首をかしげる。当事者以外は禁書も禁魔法律家もピンとこないのは当然である
「なんだかよくわからないけど、どういうこと?」
「霊夢ちゃん、ここって…ある日突然物が流れてくるっていうことは、あるかな?」
「そりゃあるわね。幻想郷は外の世界で忘れ去られたものや存在意義を失ったものが入ってくる場所だもの」
「なら、落ち着いて聞いて。もしかしたら禁書がこの世界に流れてきたのかもしれない」
禁書という言葉にいまいち理解が届かない霊夢。ムヒョは分かりやすく、そして悪人のような顔をしながら言う
「ヒヒヒ…禁書が『幻想入り』してたらやべえぜ。あれを悪用する輩が出てきたらこの幻想郷は滅ぶかもしれん」
滅ぶ、その言葉を聞いて霊夢の表情が険しくなる
「…詳しく教えて頂戴。もしそうなら、これは異変よ。それも超弩級のね」
ムヒョは言葉を続ける
「禁書ってのは100万以上の魂…命を代償として発動する魔道具だ。その効果は不死をもたらすだとか生命を蘇らせるだとか…だが、発動して良い結果をもたらすモノじゃ断じてネエな。しかも禁書と一緒に禁魔法律家も流れてる可能性もある。そいつらがもし禁書を利用しようとしていたらただじゃ済まねえ」
「……合点がいったわ。たしかにこれは貴方たちじゃないと無理ね。この幻想郷は藪蛇を突付く輩ばっかりよ。もし好奇心でその禁書を発動されたらただじゃ済まないわね。特に白黒の魔法使いは、ね」
「呼んだか?なにやら面白い話をしてるじゃないか」
その声の主はふすまを開けて霊夢達の目の前に立っていた。いつの間にか忍び込んだようだ
「聞いていたのね…魔理沙」
「ああ、お前らが食事を終えた辺りからな」
「あんたが関わるとろくなことにならないわ。あんたは藪蛇どころか虎の尾を喜んで踏みにいく性格だもの」
「ハッ、踏んだまま抑えつけちまえばいいだろ?…だが流石に幻想郷が滅ぶ、てなるなら私も考えはするぜ。私は人間だ。好奇心だけじゃ動かん」
呆然とするロージー。ムヒョは相変わらず不適な笑みを浮かべている
「おっと、自己紹介だな。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ。えーっと、ちっちゃい方がムヒョでノッポがロージーか?まぁよろしくな。魔法律家、とか言ってたがお前らも魔法使いなのか?」
「ヒッヒ…ノッポと同じ勘違いしてやがらぁ」
「ムヒョ、ノッポなんてひどいよぉ!…えっと、魔法律家っていうのは魔法使いと少し違って霊達を裁くことを生業にしてるんだ。魔法薬とか実験とかは魔具師の仕事かな?」
魔理沙はなんとなく合点がいった、という表情をしてる
「要は巫女や坊主と似たような仕事ってとこか」
「話を戻すわ。その禁書、どこにあるのか分かるのかしら?」
霊夢が話題を禁書に戻す。だがムヒョとロージーはわからない、といった表情をする
「どこにあるか分からんから八雲紫も詳しく教えなかったんだろうナ。無暗に推測を話すと混乱を招く。だが、この幻想郷のどこかに『有る』のは事実だ」
魔理沙は少し疑問を浮かべる
「しかしなんでわざわざこいつらを?私達だけで解決すればいいじゃねえか」
霊夢はどこか呆れながら魔理沙に答える
「魔理沙、この幻想郷の住民で、力を持つ者の性格を考えてみなさい。命より好奇心を優先する奴らばっかよ」
「………ああ、納得したぜ。藪蛇を突付くどころか噛まれにいく奴らばっかだったな」
しかしロージーは不安げに呟く
「でも調べるにしても手がかりが全くないんだよね…どうしよう…」
魔理沙は手をポンと叩き、提案する
「幻想入りしたものが流れ着きやすい場所に行ってみるか?道は案内するぜ」
その言葉を聞いた霊夢は顔をしかめる
「魔理沙、あんたまさか無縁塚に案内するつもり?あそこはまともな人間が寄れる場所じゃないわよ」
「平気平気、いざってときは彼岸花を焼き払えば良いさ」
「罰当たりなやつ…」
「お前が罰当たりとか口にするとはな」
「あら、私は博麗の巫女よ?私が行うことは結果的に正しくなるわ」
「巫女という立場を悪用してるお前のがよっぽど罰当たりだろ…」
彼女達のペースは止まる勢いがない。このままでは脱線すると考えたロージーは慌てて話題を戻す
「ま、魔理沙ちゃんの言っていた無縁塚って、いったいどんなとこなの?」
おっと、と魔理沙は言いながらロージーに向き直る
「無縁仏…まぁ供養されなかった人間たちの墓地ってとこだな。怨み辛みも貯まってるし、彼岸花の毒で狂わされることもあるから妖怪や人間は滅多に近付かないぜ。んで、そこは外の世界との境界が緩いせいかよく変なものが漂着するんだ」
ムヒョ、無縁仏と聞いて察したように呟く
「無縁仏…ヒヒ、嫌な予感しかしないナ」
ロージーは冷や汗をかきながら言う
「前にも無縁仏に関する事件があったからね…気を引き締めないといけないね」
「んじゃ、案内するからついてきな」
魔理沙はそう言うといつのまにか用意してあった箒に跨がり、宙に浮く
「あ、ま、待って!僕達飛べないんだ!」
「あー?なんだ、飛べないのか。じゃあ簡単に飛び方教えるからなー」
「え?簡単に飛べるって…」
「出来ないと思ってたら歩くことすらできないぜ。空を飛べるのは当たり前だと思えば良い」
「でもどうすれば…」
弱気なロージーにムヒョが呆れたように言う
「基礎を忘れたのか?錬のコントロールができるならあとは簡単だ。ヨイチや今井が高い身体能力を持っているのは地力だけじゃない。ティキやエンチューが飛んでたのも幽霊だから、てわけじゃねえ。ただ人間で出来るのはごく一部だがな。まぁ俺は余計な錬を使いたくないから空は飛ばないが。とにかくやってみろ」
「わ、わかった!やってみるよ!」
出来なければムヒョに怒られる、そう考えたロージーはなんとか実践しようとしてみる
「ふぬぬぬぬ!」
力んでいるロージーに対して今度は魔理沙が呆れる
「はぁ…力むものじゃないぜ。もっと自然に、身を任せるように、な」
その言葉を聞いてロージーは一旦力を抜き、目を瞑ってリラックスをする
「(僕は空を飛べる…イメージするんだ…イメージ…空を飛ぶと言えば、ヒーロー…リコピンマンのような)」
そうイメージをした瞬間、ロージーは自分の体が少しだけ浮いた気がした。目を開くと、自分が浮遊していることを自覚した
「と、飛べた!本当に飛べるんだ!」
「はしゃぐな鬱陶しい。飛べるならさっさと無縁塚に行くぞ」
「ま、空を飛ぶのは幻想郷じゃ当たり前だしな。人間でも飛べるやつは多いさ」
ムヒョと魔理沙の言葉に少し傷つくロージー
だが二人は気にも留めない
「んじゃ、空を飛ばないムヒョは私が箒に乗せるからお前は普通に着いてきてくれ」
「ムヒョばっかり楽するなんて、ずるいよぉ~!」
「ヒッヒッヒッヒ……」
「なぁにすぐさ。この幻想郷は空を飛べば広くないし、すぐに辿り着くぜ。…ましてや、無縁塚に好んで近付く奴らなんて私の知る限り一人しかいない。妨害されることもないだろうな」
そう言い、魔理沙 ムヒョ ロージーは境内から空へと飛び立った
残された霊夢はぼつりと呟いた
「さて、私なりに調査しないとね…」
幻想郷のどこかにある隠家
ある二人の妖怪が会話をしていた
「紫様、本当に彼らをここに連れてくる必要があったのですか?」
九つの尾を持つ紫の式__八雲藍__が紫に問う
「彼等でないと駄目なのよ。アレは私達が手出し出来る代物じゃない」
「しかし魔法使いなら…」
「妖怪は呪いや怨念といった、精神的攻撃に弱いのは知ってるでしょう?だからアレをなんとかできるのは精神的に強い人間、それでいてなおかつ呪いに詳しい人間でないとならないのよ」
「ならば魔理沙は…」
「魔理沙は惜しいところよ。もう少し技術があれば…いえ、それでもあれは魔理沙だけの手に負えるものではないわ。それに幻想郷だけで終わるとは思えない。外の世界を巻き込む災厄になりかねないわ」
「だから、禁魔法津家を退ける実力がある彼等を?」
「それもあるわ。…でもね、私は彼等の『糸』が解決に導いてくれると思ったのよ」
「糸、ですか」
「ええ、腐れ縁の赤い糸…数式じゃ証明できない、彼等を繋ぐなにかを、ね」
その言葉と同時に彼女らはその隠家から姿を消した
後には何も残らなかった
蘭「てゆーかなんですか腐れ縁の赤い糸って。ダサすぎます」
紫「そんな、私はとても素敵だと思ってたのに」
※本編には関係ありません
ロージー強化です。ムヒョは煉を温存するため、幻想郷キャラと戦うのは基本ロージーです。まぁムヒョは力試しとかしなさそうですし、妖怪に気に入られそうなのはロージーですからね
次回、無縁塚。無縁仏…近付く人間…あっ
8/11訂正
錬→煉