ムヒョとロージーの魔法律相談事務所~幻想郷出張~ 作:二色蓮赤喋
香霖堂を飛び発ったムヒョとロージー。彼らの次の目的地は紅魔館と呼ばれる、吸血鬼の住む館だ。
その館は霧の湖の畔にあると魔理沙に言われたロージーは、まず霧の湖を探すことにした。徒歩では時間がかかるが、空を飛びながら移動しているため、難なくそれらしき湖を見つけることができた
そしてロージーは辺りを見渡す。紅い館と言っても、ロージーが思い浮かべてるのは現代日本の横浜にあるような、赤レンガ倉庫のような館だ。それはどちらかというと銅色と言った感じだろうか
暫く見渡していると、霧がかってる館をロージーは見つける。ロージーは、それの全貌がはっきり見えるまでゆっくりと近付く。だが、霧が晴れ、近くで見るそれはロージーの思い浮かべてた紅い館とは全く異なっていた
薔薇のように紅い、ぶっちゃけ目に悪い「真紅の館」が異様な雰囲気を醸し出しながら佇んでいた
このような館は見たことがないため、館から放たれる異様な圧力にロージーは呑まれていた
だがムヒョはいつものように背負われたまま眠っている。ロージーはただ単に腰が引けてるだけなのだろう
しかし、ここでヘタれるわけにはいかないとロージーは自分を奮い立たせ、その館の出入口にあたる場所を探す。上空から許可なく侵入してしまってはコソ泥と見間違われると考えられたのと、ロージーの生真面目な性格がそうさせたのだった
ロージーはしばらく探していると、大きく立派な門を見つけた。その側には人影らしきものが立っている。門番かなにかだろうか?そう思ったロージーは門の前に着陸し、その人影に話を聞こうと考えた
着陸してその門に近づくと、その人影の正体も見えてきた。黄色い星の紋章が飾られてる緑色の帽子を被り、その身体は緑色のチャイナ服に包まれ、その下には長ズボンを穿いている少女だ
そしてその少女は門に寄っかかったまま、幸せそうな顔をしながら居眠りをしていた
居眠りをしていた
思わずロージーはそこから立ち去ろうとする。こんな場所で居眠りをする人間がまともな感性をしてるわけがない、関わらない方がいい、と己の勘が告げていたからだ
だが、それを許さない人間がそこに居た
「なに帰ろうとしてやがる、このヘタレ」
「ム、ムヒョ?起きたの?いや、ちょっと、家に忘れ物をしたかなーって……」
「テメェの今の行動を忘れて欲しいならさっさと行けこのカス」
「ひゃい……」
恐い顔をしながらロージーを脅すムヒョ。ロージーはそれに逆らえず、項垂れたまま少女に近付く
「えっと、ここで寝てたら風邪引きますよー……?というか、そんなとこに寄っかかったら誰も出入りできませんよ……?」
だがその声掛けは眠っている少女には届かなかった
「お、起きないね、この子。時間を置いて、またここに来ようか、ムヒョ」
だが、ムヒョの表情は先程の脅しをかけてる時と変わっていた。その顔は、霊と対峙するときの顔付きだ
「ロージー、そいつに破魔の術を打て。そうすりゃすべて分かる」
「えっ!?いや、いくらなんでも人間に破魔の術を放つのは___」
「そいつが人間なら、ナ。だがそいつは人間じゃねえ」
ムヒョのその言葉でロージーはすべて察した。この少女が人間ではないのなら感性を疑うような行動も当人にとっては当たり前なのだろう。人間の常識に当て嵌めて考えていたことをロージーは少し後悔した
「わかったよ、ムヒョ。でも威力はなるべく抑えるからね」
そう言うとロージーは札と魔封じのペンを取り出す。そして術式を書き込み、その眠っている少女へと放つ
破魔の術はたとえ威力を抑えてても、霊には大きなダメージを与える。ましてや人間に放てば当たった人間の五体は保障できないだろう
それだけの威力を持つ破魔の術が今、少女へと向かう。そして鼻先まで近付いた瞬間、少女は目を開き、破魔の術をその右腕で上空へと弾く
「いきなり弾幕攻撃してくるとはね。驚いちゃったわ」
先程まで惚けていた顔で眠りこけていた少女とは別人と思えるような、引き締まった顔でロージー達を見据える
「あわわ、いきなり攻撃してごめんなさい!でも、あの、その」
「テメェがオレ達を感じ取っていたのは分かってたぜ。俺達の存在を目以外の部分で感じ取ってたんだろうな。試すような真似しやがって、腹が立つゼ」
腹を立てている、と、言った割にはムヒョは不敵な笑みを浮かべている。本気で苛ついてるわけではないのだろう
「あら、バレてましたか。暇だったんで久しぶりに門番らしくしようとしたけど、そこまでバレてるならもうこんな演技は無しですね。ようこそ紅魔館へ、お客様のご要件は?」
少女は引き締めた顔を緩め、人懐こい微笑みを浮かべる。その表情は門番というよりは受付人と言った方が適切な笑顔だった
背中に背負われていたムヒョは地面に降り立ち、そしてその少女に問う
「聞きたいことは二つある。まず一つ目だ」
「その前に、自己紹介ね。私の名は
チッ、とムヒョは舌打ちする。話を遮られたことが不快なのだろう
それを見たロージーは慌てて自己紹介を始める
「あ、僕たちは魔法律相談事務所を営んでます。僕の名前は草野次郎。ロージーって呼んでください。そして、この人は僕の上司の六氷透。知り合いからはムヒョって呼ばれてます」
「ありがとうございます、ロージーさん。魔法律相談事務所については後々聞かせてもらいます。それで、ムヒョさんの聞きたいこと、というのは?」
ムヒョは不機嫌そうな仏頂面を隠そうともせずに再び問いかける
「一つ目。この館は外の世界の物品が集まるそうだが、つい最近はなにを確保した?」
「それを知っている、ということは少なくとも一般人ではなさそうですね。しかし残念ながら、ここ最近はめぼしいものはなにも集まっておりません。せいぜい、木の葉くらいでしょうか。私も主も退屈で仕方ありません」
「なら二つ目だ。ここ最近は『誰が』『この館に』やってきた?」
その問いをムヒョが口にした瞬間、美鈴の顔は再び引き締まり、先程の威圧感のある雰囲気を醸し出す
「……そこから先は屋敷内にて話します」
「その必要はねえだろ。この場でお前に聞けば済むだけの話だ」
「そうもいかないのですよ。そもそも、男の来客が二人組で来たら実力を確認した上で私の下に案内しろ、と主から命を受けてますので」
「……お前の主はオレ達がここに来ることを知っていた、そういうことか?」
「そういうことです。私の主がわざわざ通せ、と前もって命ずるならばただの暇潰しや気まぐれではないでしょうしね」
実力の程も生半可な妖怪なら返り討ちに出来ると判断しますけどね、と美鈴は付け加える。
「チッ……めんどくせえ事になったナ。こんな悪趣味な館の主なんざ、人間だろうと吸血鬼だろうとロクなヤローじゃねえ。深くは関わりたくないのが本音だゼ」
ムヒョが美鈴に聞こえる様に憎まれ口を叩く。だが主への侮辱とも取れるその行為を美鈴は気にする様子はない。むしろ、その気持ちを察しているかのような表情だった
「ハハ、大体そうかもしれないわね。人間が人外の、ましてや吸血鬼の考えることを理解するなんて難しいわ」
「フン、当たり障りのない言い回しだナ。気を『遣う』のが得意なのか?」
「あら、よく分かったわね。私は気を『使う』のが得意よ」
微妙に噛み合ってるような、噛み合ってないような、そんな会話をしながら三人は屋敷の玄関口へと進む。美鈴が先頭に立ち、それに続いてムヒョとロージーも後続に付く
外から見たその屋敷は目に悪い紅色だったが、その内部も例に漏れずに紅色に染まっていた。絨毯、テーブル、階段、そして扉。正常な人間でもここで長期間過ごすと色覚異常を起こすだろう
だが美鈴は気にする様子もなく、ロージー達も美鈴に付いて行くことに頭がいっぱいなため、屋敷を気にする余裕はなかった。なぜならその屋敷は目印になりそうな物がないくせに恐ろし広大だったからだ。屋敷というより迷宮と認識した方がいいかもしれない
「絶対に私から離れないでくださいね。初めて来た人間がここで迷ったら出口を見付けられず衰弱死するかもしれませんから。窓も目印もほとんどないですしね」
迷子癖のあるロージー、思わず冷や汗をかく。魔法律学校や魔法律協会でも迷子になっていた経験があるからだ。迷子で衰弱死、という可能性はロージーにとっては捨てきれない可能性なのだろう
だがムヒョは全く動じる様子はない。迷子にはならないと思ってるのか、ただ単に何も考えてないだけなのか
「オレとしてはテメェの主の吸血鬼が何故オレたちがここに来ることを知っていたのか、そもそもどうして招き入れたのか、そっちのが疑問だがナ」
「取って食うわけではありませんのでご安心を」
「それはなによりだゼ。文字通りいいエサにされたらたまったもんじゃないからナ」
そう言った割にはムヒョは不敵な笑みを浮かべている。恐らく誰が相手であってもこの態度が変わることはないのだろう
「僕は少し怖いな……吸血鬼って血を吸った相手を干からびたミイラや食屍鬼にしたりしちゃうんでしょ?」
「お嬢様はそんな節操無しではありませんよ。それに、少食なのでワインに血を少し混ぜるだけで1食には十分なのです」
「『私の血はワイン』か。アンチキリストとも言える吸血鬼がキリスト教徒がやりそうなことをするとはナ」
「和食が好きで節分を祝い、豆を撒きながらその豆で指を火傷させる変わり者な吸血鬼ですよ、ははは」
「ヒッヒ、吸血鬼が邪気を払う和食を好み、『鬼』を払う豆撒きをするとはナ。頓智が効いてるぜ」
けたけた、ヒッヒ、と笑いながら会話をする二人。ムヒョは美鈴に気を遣うのが上手いと言ったが、今のロージーには美鈴は社交辞令抜きの本音で話していたように感じられた。主に対してここまでフランクに振る舞えるのはここの主がそういうのに疎いのか、はたまた妖怪にとって上下関係なんてものは飾りなのかとロージーは思考する
そう思っていると美鈴がある扉の前で立ち止まる。その扉は他に見える扉と比べると幾分か大きく、立派に感じられる
「ここが私の主、レミリア・スカーレットの私室です」
そう言って美鈴はドアに手をかける
「ノックとかしなくて大丈夫なの?」
「私達がここにいることには気付いてるはずです。ならノックして返事を待つのは意味の無い無駄ですよ」
そして美鈴はドアを開く。そしてその先には____
「ああ気づいているとも。お前達の失礼な物言いにもな」
この屋敷の主、レミリア・スカーレットが椅子にふんぞり返りながら不機嫌そうな声色で美鈴達をジト目で見つめていた
「吸血鬼は耳もいいとはナ」
「頭も良いのさ。機嫌は悪いけどね」
「機嫌を損ねたら取って食われるのか?」
「お望みならやってあげよう。もちろん対価はいただく。悪魔との契約には対価は必須だもの」
「悪魔との契約は間に合ってるんでナ。おかげで契約書には悪魔のサインがいっぱいだゼ」
嗚呼、吸血鬼でも例に漏れずこんな言葉遊びをするんだな、と項垂れると同時にお約束のような安心感を感じるロージー。さっきまで恐怖を感じていたのがアホらしくなってきたまであるようだ
「さて、くだらねぇ茶番はここまでだ。吸血鬼、なぜテメェがわざわざオレたちをここに呼んだ?」
不敵な笑みのまま本題をぶつけるムヒョ。レミリアも先程まで不機嫌だった表情がムヒョと同じ不敵な笑みになっていた
強者は常に笑顔、その言葉の通りに笑顔のまま睨み合う二人
そしてレミリアはその問いに口を開く
「暇つぶし。ま、これが一番の理由ね。私、最近暇だもの」
「……一番、ということはまだ理由はあるようだが?」
「察しのいいヤツは好きだよ。2つにお前達の力が必要なこと。3つは私の従者のためね。ま、一番の目的は達成されたから残りはふたつよ」
そこで今まで静観していたロージーが口を開く
「僕達の力が必要、とは?」
「霊の専門家であるお前達や霊夢にしか出来ないことだよ。だがわざわざお前達の力をアテにする理由、なぜだか分かるか?」
そのレミリアの問に対してロージーは答えを詰まらせる。彼女の言い方からすると、その問題は霊夢にも解決できるようにも思える。なぜわざわざ自分達を、初対面の人間の力を借りようとするのかはロージーには分からなかった
だが、その問に対してはムヒョが口を開いた
「そりゃその問題とやらが幻想郷側の干渉を限りなく小さくしたい問題だからだろうナ。大方、最近活発化している霊とやらだろ」
「ご名答。この問題に下手に私達が関わるとあらゆる事象の予測が不可能な事態になる。本来なら私でも十分なんだがね」
「なぜオレ達のことを知っているのかは後で聞かせてもらう。要件だけ言いな」
「せっかちね。でも嫌いではないよ、そういうの」
「いいからとっとと話せ。内容次第じゃこの時間すら無駄にできないかもしれないからナ」
「ま、それもそうね。じゃ、わかりやすく直球で言うわ」
「私の妹、フランドール・スカーレットが霊に取り憑かれたからなんとかしてちょうだい」
レミリア「あと美鈴。主を嗤い者にするくらい退屈で眠たくなるなら私のストレッチに付き合いなさい」
美鈴「ひえっお許しを」
※本編とは関係ありません
あけましておめでとうございます。そして投稿遅れてすみません
ムヒョロジ、再連載決定ですね!楽しみです
……こっちもちゃんと進めます、はいorz