ムヒョとロージーの魔法律相談事務所~幻想郷出張~   作:二色蓮赤喋

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長らくお待たせしてすみません
ムヒョロジ2のフリオニールが胡散臭すぎる
タイトルは某ゲームから借りました


知識と勇気と力

「要領を得ない言い方だナ。一体どうして欲しいんだ」

 

 レミリアが発した、妹をなんとかして欲しい、という言葉に対してムヒョはそう答えた

 この幻想郷の言葉を話す存在は得てして曲者だ。彼女の言葉を単純に受け取るのは幻想郷で暮らす者達に関わった彼らには難しい話であった

 

「なに、そう難しく考える必要は無いさ。土は土に、灰は灰に、吸血鬼は吸血鬼に。フランドールを本来のフランドールに戻してくれるならなんの問題もないよ」

 

 小難しい顔をしてるムヒョ達に対してケラケラ笑いながらレミリアが言った

 

「本来のフランドール、と言われても俺達はフランドールとは全く関わりがない。そんな人間にそんな頼み事をしても問題は無いと考えているのか?」

 

「関わりなら今出来たじゃないか。フランドールの姉である私を通じて、ね」

 

「揚げ足を取るのもそろそろ止めにしておけ。テメェは何を考えてオレ達……いや、魔法律家を頼る?のんびり暇つぶしをしている余裕があるなら、テメェら(幻想郷)でソレを解決することも不可能じゃないはずだ。最悪、あの博麗の巫女が出張ればそれで解決だ」

 

「生憎だが、運命ってのはそこまで単純ではないんでね。我々(幻想郷)の干渉が大きくなると、運命は更に身勝手に捻れるんだ」

 

「運命だかウンテイだか知らねえが、テメェら(幻想郷)の問題は俺たちの世界とは関係無いだろうが」

 

「おっと、それは違うな」

 

 今までは愉快そうに笑っていたレミリア。しかし、ムヒョの発した俺たちとは関係がない、という言葉に対しては眉を釣りあげ、怪訝な顔つきをしてこう答えた

 

「運命っていうのは1つの長い糸みたいな物だ。長いか短いか、曲がるか真っ直ぐになるかはそれぞれ違う。そしてその運命はどんな物にも平等に与えられる。生物、無機物、異変……そして世界にも、ね」

 

「……何が言いたい?」

 

「単純に考えろ。お前達の世界から流れ込んできた問題(亡霊)という糸に我々(幻想郷)という糸が混じり出したらどうなる?それも異変を終わらせるレベルで大きく干渉したら、だ」

 

 そこまで聞いたムヒョは物事の本質を理解して……そして、心底不愉快そうな顔をしながら答える

 

「確実に何かが起きるとは断定は出来ねえ。だが、不必要なリスクを背負う必要もない。だからリスクをなるべく減らせる手段を用いたい、と。そう言いてえのか?」

 

 その答えを聞いたレミリアは、満足そうに頷く

 

「そういうこと。お前は断定は出来ない、と言ったが……私は断言するね。私達が関わり過ぎると面白くない異変が起こる、と」

 

「ヒッヒ……マジでメンドクセェ依頼を持ってきやがったなァ、あの妖怪の賢者サマは」

 

 そして、その問答を聞いてたロージーはと言うと……

 

「??????」

 

 疑問符を頭から大量に出して混乱している

 

「えっと、つまりどういうことなの?運命の糸が混じるとまずいって言うけど、どうしてまずいの?」

 

 ロージーは小声でムヒョに問う。だが、それに対して答えたのはレミリアだ

 

「ふむ、家事をするお前に分かりやすく言うのなら……混ぜるな危険、と書かれた洗剤と漂白剤を混ぜたらどうなる?」

 

 そのレミリアの答えを聞いてロージーは青冷めた。それは人を死に追いやるほど危険な毒を発生させるからだ

 

「じ、じゃあ急いでフランドールちゃんを助けないと!このまま僕達の世界の問題が幻想郷に干渉し続けたら、二つの世界が滅んじゃうかもしれないってことだよね!?」

 

「ようやく事の重大さに気付いたかスカポンタン。ヒヒヒ……ましてや禁書や禁魔法律家が関わってたら何時爆発するか分かったもんじゃねえナ」

 

「ま、今のはあくまで例え話さ。それに多少なら私達が干渉しても恐らく問題ないよ。じゃなければ今、私とお前達が話すことさえも出来ないだろうしね」

 

 分かり切ったような言葉を発するレミリア。それに対してムヒョが問う

 

「運命の糸といい、干渉の加減といい、悟ったような話し方をしてるな。未来視でも出来るのか?」

 

「少し違うな、私が見ているのはあらゆる物の『運命』さ。もっとも、何もかも見据えられるわけではないし、思い通りに弄れるわけでもない」

 

「キナくせえが、とりあえずは信じてやる。んで、そのフランドールとやらを元に戻してほしいんだろ?そいつを抑え込んでる場所に案内しな」

 

「では、私が案内しますよ。道案内ついでに、ちょっとロージーさんに教えておきたいことがあるので」

 

 傍で話を聞いていた美鈴が再び道案内を立候補した。そして、ロージーに教えたいこともある、と言った

 

「僕に教えたいこと……?」

 

「はい。フランドール様を相手にすることと、貴方の『煉』の使い方について教えたいことがありますので。お嬢様、お話はもう済みましたか?」

 

「ま、こんなもんかな。ああ、そうだ、ひとつロージーに伝えておくことがあったんだ」

 

「たとえ取り憑かれてても、吸血鬼は最強の肉体を持つ『妖怪』だ。殺す気で行かないとお前が死ぬよ。じゃ、またね〜」

 レミリアの部屋を出たムヒョ達と美鈴はフランドールの居る地下室へと向かっている。美鈴から聞いた話では、元々フランドールは産まれてから地下に幽閉されていたこと、しかしフランドール本人も外出することにそこまで興味を抱いていなかったため、望んで引きこもっていたこと、最近は屋敷内をふらふら気ままに探索するようになったこと、そして気狂いに近い気分屋であることを美鈴から聞いた

 

「ま、そんなこと言いましたけど、妹様はレミリアお嬢様よりはワガママ言わないですし、私個人としては妹様のが接しやすいですねぇ」

 

 ニヘら〜と笑いながら呟く美鈴。その姿はフランドールを妹のように想っているかのようだ

 

「あのー……このタイミングでアレかも知れませんけど、僕に煉に関して伝えたいことって、なんだったんですか?」

 

「ああ、それなんだけどね。あなたが持ってる無花果を食らう聖者、だったかしたら?その腕輪を着けていることが前提になるわ」

 

「……これを、使うんですか?」

 

「相手は最強クラスの妖怪である吸血鬼。殺す気で行け、とお嬢様も言ってたわよね?」

 

 先刻までの気の抜けた笑顔はとうに消え、武人としての表情をしている美鈴

 

「そして、貴方が放った破魔の術。アレも悪い技ではないけれど、単調過ぎる上に非常に鈍い。威力より弾速と数を重視するべきね。弾幕と言えるくらいに数を増やせれば文句無しよ」

 

「でも、破魔の術は頑張っても5発が限界なんです。弾幕と言える位に放つのは……」

 

「なに、発想を変えればいいのよ。当てるのではなく、置くようなイメージでいいわ。普段ならともかく、今の妹様ならその戦法も通じるはずよ」

 

 その美鈴の言葉に対してムヒョが反応する

 

「今の妹サマ、ね。つまり単純これから戦うフランドールは戦い方が下手、てことか?」

 

「そうなるわね。ま、取り憑いてる亡霊は元々は夢見がちなただの人間だったようだし、ただあしらうだけなら私でも出来るわ。それでも取り憑いてる霊を追い出すことは出来なかったんですけどね」

 

 だから貴方達には期待してますよ、と、爽やかなウィンクを飛ばしながら告げる美鈴

 

 そうして地下を目指していると、一行は蔵書が大量にある部屋に着いた。そこはまさしく大図書館。外からこんな図書館があるとは考えられないほどに広大だ。最早図書館と言うよりは本で造られた大密林と言っても差し支えはない

 

「ここは紅魔館の図書館です。今は用はないので、通り抜けるだけですけどね。でも私から離れないで下さいね?ここは似たような景色が延々続くので、下手したら上の階より迷いやすいですからね」

 

 美鈴の言葉に従い、ムヒョとロージーは美鈴の後に続く

 そうして歩いていると、蔵書はなく、かわりに巨大なテーブルと、いくつかの椅子が設置されている空間に辿り着く

 

「ここは、まぁ見ての通り本を読む場所、ホールです。お嬢様が見栄えのために必要だ、と仰ってたので設置しましたが、パチュリー様がここを使ってる所はお嬢様と話す時くらいにしか見ないですね」

 

「パチュリー……様?」

 

「おっと、紹介が遅れましたね。この図書館は紅魔館に附属していますが、この空間はパチュリー・ノーレッジが支配している空間と言っても良いでしょう。もっとも、お嬢様も蔵書の管理には無頓着な上、取り扱いも雑なのでパチュリー様が代わりに管理しているようなものですが」

 

「ノーレッジ……和訳で知識、か。そんな名を冠するってことは、この図書館の主とやらは頭が良いか、狡猾かのどちらかってとこだナ。ヒッヒ……」

 

「あはは、酷い言い様ですね。でもまぁ両方合っているでしょうね。パチュリー様はとても頭が切れますが、ものすごく意地悪な方ですもの。しょっちゅうお嬢様を手玉にとっていますし」

 

 けらけら、と、愉快そうに笑う美鈴。そうしていると、物陰から1つの影が一行の前に現れる

 

「随分好き勝手言ってくれるじゃない?美鈴」

 

「げっ、パチュリー様。聞いていたのですね……」

 

 やってしまった、と、顔を顰める美鈴。そう、美鈴に話しかけた少女こそがパチュリー・ノーレッジその人であった

 ドアノブのような薄紫色のナイトキャップにネグリジェのような格好。そして、陶磁器のように、しかし決して健康的とは言えない白さの肌に、線の細い身体。活発的で、陽気な雰囲気を醸し出す美鈴とは正反対の外見だった

 

「狡猾も、頭が切れるも、私にとっては褒め言葉。でもね、意地悪になった覚えはないわよ?美鈴」

 

「どの口が言ってるんですか?」

 

「この口よ」

 

 ゲンナリした顔の美鈴に対し、パチュリーは笑顔とドヤ顔の中間のような表情を浮かべる

 

「ま、そんなことは今はどうでもいい。貴方達、これから妹様……フランドールと戦うのでしょう?なら、対吸血鬼の知識を得てからでも遅くはないわ。貴方達、吸血鬼の弱点を知ってるかしら?」

 

 パチュリーはゲンナリした美鈴を無視して、ムヒョとロージーに問いかける。それに対して、ロージーは一瞬考え、答える

 

「弱点と言うと、やっぱ日光?あとは心臓に杭を打ち込むとか、ニンニク?」

 

「地下に日光なんて取り込めないし、心臓に杭を打てるくらいに追い込めるのかしら?あとニンニクは大して効かないわ。それに用意するのが面倒臭い」

 

「じ、じゃあ、十字架?」

 

「レミィは十字架のブレスレットがお気に入りよ」

 

 対策を考えついては一蹴されるロージー。そこへ、ムヒョが提案を出す

 

「……なら、流水や銀はどうだ?」

 

「流水って?」

 

「身近なものでは川や雨だナ。吸血鬼は流れる川を渡れないと聞いたことがある。ニンニクも十字架も効かないなら、消去法で流水か銀しか残らん」

 

「そうね、その通り。スカーレット姉妹に対して有効とも言えるのは銀と流水、それと煎った豆くらいね」

 

「煎り豆?鬼以外にも煎り豆が通じるんですか?」

 

「吸血鬼だって【鬼】よ。少なくとも幻想郷ではね。でも、煎った豆を当てても少し火傷させる程度。動きを止めるくらいはできても、ダメージを与えることは難しいかもしれないわね」

 

「なら、流水と銀を使えばいいのかな?でも銀はともかく、流水ってどうやって用意すれば……?」

 

「手っ取り早いのはこの館を爆破して、そこに水を流すことだナ。そうすりゃ身動きは取れないはずだぜ」

 

「それは名案……とでも言うと思った?そんな事したら私もレミィも黙っちゃいないわよ」

 

「ムヒョ、流石にそれは……でも、川を作れれば動きを止めることは出来るのかな?」

 

「雨でも良いわ。本来は私が手伝ってあげても良いのだけど、喘息もひどいし、迂闊に手を出して霊に取り憑かれたら紅魔館は塵一つ残らないわ」

 

「手伝うって、一体どういうことですか?」

 

「そのままの意味よ、私が雨を作り出すの。地下空間に雨を降らせたりするくらい、魔女である私には造作もないことよ」

 

「魔女って、魔理沙ちゃんみたいに魔法を撃てるんですか?」

 

「魔理沙ね……あいつは色々とイレギュラーな存在よ。そもそもあいつは魔法使いの人間で、私は生まれながらの魔女。ま、そこら辺は今は置いておくわ。強く長く持続する魔法を唱えるには、詠唱が必要なのよ。でも今は喘息がひどくて、短い詠唱さえも覚束無いくらいよ」

 

「長いこと地下暮らししてるから、ホコリやカビでも吸ったんじゃねえか?外に出て運動することを推奨するゼ」

 

「背も気も短い貴方には言われたくないわね。ちゃんと好き嫌いせず食べてるのかしら?」

 

「お前こそ本ばっか齧ってないで、まともな食事をしたらどうなんだ?」

 

「魔女には食事なんて必要ないわ。食事する時間を知識を蓄える時間に変えた方が効率が良いもの」

 

 唐突に始まる口論。ロージーはまた慌てふためく

 だが2人は本気で言い争っている訳では無い。相手の腹の中を探ろうと、煽りを入れているだけだ

 

「紫モヤシみたいな外見のくせに食えねえヤローだ……ヒヒヒ」

 

「私がモヤシなら、あなたはタマネギかしら?口も中身も辛いわね。焼けば甘くなるかしら?」

 

「パチュリー様、いつまで楽しんでるんですか。こっちの仕事がつっかえてるので、さっさと次に進めてください」

 

「え、これ楽しんでるんですか?美鈴さん……」

 

「楽しんでなきゃ、こんなに饒舌になりませんよ。全く、毎日こうやって気分を明るくすれば血の流れも良くなって喘息もマシになるのに……」

 

 ハァ、と溜息を吐く美鈴

 

「さて、茶番はここまでよ。結論から言うと、私の協力無しで妹様を抑えつけるのは難しいわ。だから、2人には私が力を出せるように協力して欲しいの」

 

「協力?でも喘息を良くする方法なんて、僕達は知らないよ」

 

「実の所、継続した魔力供給があれば私は詠唱無しで強力な魔法を使うことが出来るわ。その準備に長い時間がかかるから、実用的ではなかったのだけれど、貴方達が協力してくれれば、手間をかけなくていいの」

 

「つまり、僕達はなにをすれば?」

 

「六氷透には霊を裁く魔法律の執行を、草野次郎には私に魔力……貴方達が煉と呼ぶエネルギーを供給してくれればいいわ。貴方の持つ魔力は私が見たことのあるどの魔力よりも、六氷透よりも異質で、しかし強い力を持つ」

 

「ボクの煉が、ムヒョより異質?」

 

「ええ。理由は分からないけれどね」

 

 その話を聞いたムヒョは、冷たい視線をパチュリーに投げかける

 

「……なにを考えている?煉の受け渡しは渡す側に大きな負荷をかける。そしてコイツの煉が特殊だと言うのが事実なら……会って間もない、ましてや狡猾であることを自認している魔女に、はいどうぞ、と渡すと思っているのか?」

 

「それは理解しているわ。けれど、それこそが最も効率的で、最も効果が大きいの。あと魔力を受け取ると言っても、全ての魔力を受け取る訳では無いわ。そんな事したらかえって身体に負担をかけるだけ。草野次郎に大きな負担をかけるほど供給してもらうつもりはないわ」

 

 そう答えたパチュリーを睨み続けるムヒョ

 ロージーは下を向いて少し考え、しかし悩む素振りを見せることは無くパチュリーのほうに向き直る

 

「ムヒョ、心配してくれてありがとう。でもボクは、パチュリーさんの提案を信じるよ。理由は分からないけど、パチュリーさんは自分を狡猾だと思っているとしても、悪い人だとは思えないんだ。そしてパチュリーさんは本気で取り憑かれたフランドールのことを考えて、そして僕達のことも考えている。そうじゃなかったら、不意打ちされて力を奪われてても不思議じゃないよ」

 

 ロージーは少し微笑み……しかし強い意志を持った瞳でパチュリーの提案に乗ることを承認した

 

「草野次郎……いえ、ロージー。貴方、呆れるほどのお人好しね。でも嫌いじゃないわ、そういうの。レミィが貴方達の訪問を心待ちにしていた理由が少し分かるわ」

 

「ヒヒヒ、ほぼ初対面の人間にもお人好しと言われるとはナ……。だが、ロージーの言う事もあながち間違っちゃいないナ。この紫モヤシの提案に乗ってやる」

 

「交渉成立ね」

 

 ふふっ、と、見た目から考えられ年齢相応の笑みを浮かべるパチュリー

 

「じゃ、ロージー。そこの角を曲がって、真っ直ぐ進んでちょうだい。少し進めば、八角形の魔法陣が地面に描かれている場所に辿り着くわ。私も一緒に行くから迷う心配はしなくていいわよ」

 

「……ボクって、そんなに迷子になりそうに見えます?」

 

「美鈴とのやり取りを聞いてれば誰だってそう思うわ」

 

「パチュリー様?最初から聞いてたんなら、なんで早くこっちに来てくれなかったんですか」

 

「面倒臭いからよ」

 

「そこで面倒くさがるから不健康なんだろうナ。健康的なモヤシと不健康なモヤシでいい対比になってやがるぜ、ヒッヒ……」

 

「もう、うるさいわね。自分から動くなんて魔女らしくないじゃない。魔女はどっしり構えている方が様になるのよ」

 

 プリプリと怒るパチュリー。その姿は先程までの妖しさや、威厳などが感じられない少女のような雰囲気だ

 案外、素の彼女は思ったよりも子供っぽくて、ムヒョと似てるのかもしれない、とロージーは考えた

 

「「オイ(貴方)、なんか失礼なこと考えてないか(しら)?」」

 

「ヒッ!?」

 

 ジロりと睨まれるロージー。背筋が凍りつくような視線を感じ、思わず情けない声が出てしまう

 

「……まぁいいわ。とにかく着いてきて。すぐ終わるから」

 

 パチュリーはロージーに後に続くよう促すと、無数に並んだ本棚の隙間を通り抜ける。ロージーは遅れないよう慌てて後へ続く

 

「そうそう、念の為言っておくけど、本には触れない方が良いわよ。妖魔本……いわゆる意志を持つ本があるから。ま、本に触らなきゃいけないほど狭くはないから問題ないと思うけどね」

 

 恐ろしい忠告を聞いたロージーは、冷や汗をダラダラ流しながら、本棚に触れないようにパチュリーの後に続く

 そうして歩いていると、ほの暗い空間の中で淡い光を放つものが見えてくる。目を凝らすと、パチュリーが言っていた八角形の魔法陣が床に描かれている。八角形の魔法陣の中には、気味の悪さを感じさせる紋章のような記号がビッシリと書き込まれていて、陣の中心部にぽっかり空いた空白部分が気味の悪さを更に際立たせる

 

「さて、早速始めるわ。その魔法陣の中央に立ってちょうだい」

 

「う、うん。分かったよ」

 

 ロージーが魔法陣の中央に立つと、パチュリーはロージーの喉仏に両手をかける

 その行動にロージーは大きく動揺する

 

「うわあっ!?な、何を!?」

 

「大丈夫、怪我を負わせるつもりは無いからじっとしてなさい。心臓に近すぎると余計な分まで吸ってしまう可能性があるけれど、だからと言って心臓から遠すぎても効率が悪いから首で妥協してるだけよ」

 

「な、なるほど……」

 

 理屈はわかってないが、理由を理解したロージーはそのままじっと立ち、待機している

 5分、10分と時間が過ぎていく

 

「(すぐに済む、て言ってたけど思ったより時間がかかるのかな?でもボクに負担をかけないようにしてるから仕方ないのかな)」

 

 これが当然なのだろう、とロージーは考え、何も言わずにただじっと立っている

 だが、魔力を供給してもらっているパチュリーは内心焦っていた

 

「(妙ね、さっきまでは溢れんばかりの魔力……いえ、煉が彼を包んでいたのに、今はそこまで強くは感じられない。けれど少しずつ私の中に彼の煉が少しずつ流れ込んでいるから、陣に不備は無いみたいね。なら、時間はかかるけれど、このままでも問題は無さそうね)」

 

 そう結論づけたパチュリーは、このままでも問題はないだろうと考え、煉の吸収を続けようとした

 その時、1つの影が近づく

 

「いつまでやってんだ。さっさと終わらせろノロマ共」

 

 声の主はムヒョ。帰ってくるのが遅く、痺れを切らしてパチュリー達の後を着いてきたようだ

 1歩、また1歩、とムヒョが近付く。そしてパチュリーとムヒョの距離が、手を伸ばせば届くほどに近づいた時、パチュリーの身体がビクンと震え、ロージーの首から手が離れる

 電気ショックを受けたかのような反応を見たパチュリーを見て、思わずロージーは駆け寄る

 

「だ、大丈夫!?もしかして喘息の発作が……!?」

 

「いえ、大丈夫よ。それに魔力……いえ、煉の供給は完了しているわ。ロージー、あなたこそ身体に異常は感じないかしら?」

 

「ボクは大丈夫だよ。それよりパチュリーさん、本当に大丈夫?」

 

「くどいわよ。ともかく、これで貴方達を手助け出来る。作戦会議をするわよ」

 

 そう言うと、スタスタと早歩きしながらパチュリーはホールへと戻る。ロージーも慌てて後へ続いていく

 そして取り残されたムヒョはニヤリと、何かを含んだように笑った

 

「ヒヒ……やっぱりな」

 

 早歩きをしながらパチュリーは思考を巡らせる

 

「(六氷透が私達に近づいた瞬間、ロージーの中の煉が爆発的に増加した)」

 

 パチュリーは考える

 

「(六氷透がロージーか私に何かをしたのなら、彼の持つ煉が私かロージーに影響を及ぼす瞬間があるはず。だけど、彼はそのような仕草は全くしていなかった。いえ、正確には煉が僅かに増幅していた様に見える)」

 

「(だが、何の代償も無しに煉や魔力などが増幅する?そんなの私でさえまだ実用化は出来ていない)」

 

「(それに、彼は小さく『やっぱりな』と言っていた。つまり、私の反応を予想していたということ。つまり、六氷透がロージーと一緒に居ると、ロージーの中の煉が爆発的に増加するということを知っている)」

 

「(けれどロージーにそんな素振りはなかった。あんなお人好しが嘘をついていたり、自分の力を黙っているとは考えにくい。そもそも嘘や欺瞞を通せるほど器用な性格には見えない。……いや、そもそも前提が違う?)」

 

 そこまで考えて、パチュリーはある結論に辿り着く

 

「(人間は、本来持つ力にリミッターをかける、と聞いたことがあるわ。それが筋力といった物理的な力ではなく、魔力などの概念的な物にも影響するとしたら?そして、ロージーは煉を増加させていたのではなく、抑えていた力を無意識に開放していたとしたら?)」

 

 パチュリーは自身の持つ経験と知識を全て稼働し、イレギュラーな事態をなんとか理解しようと試みる

 

「(そもそも彼ら個人個人の力は異質ではあるものの強力では無い。今回の異変だってレミィや博麗の巫女といった有力者ではなく何故彼らがこちらへ来たのかが疑問でしか無かった。けれど、彼ら二人が揃った場合は、もしかしたらこの幻想郷の上位に立つ者に匹敵する力を持つ、ということ?)」

 

「八雲紫。そしてレミィ……貴女達、一体どこまで知ってるというの?」




お待たせしました遅いヤツ
書き直そうとしたらデータ消えてモチベ失せてました。はい言い訳ですね
本当に申し訳ございません。これから完結目指して頑張ります
そしてこの長文。誤字脱字報告、感想待っております
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