転生皇女様   作:さがる

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わたしについて

 死因は確か、交通事故。大量出血とかでショック死だったような気がする。

 歳は、16歳。ピッチピチのJKで、何日か前に新しい水着を買って浮かれてたっけ。あー、あの水着三万もしたのにな。一度も着れなかったとかマジ最悪ー。

 ほんっとさぁ、JKに車で突っ込むとかなんなの?そういうプレイなの?特殊すぎてついていけないっつか、ほんとマジあり得ない。もうすぐ夏休みだったのにさぁ!!

 思い出しただけでイライラするからこの話はもー終わり!

 あたしは死んだ。ただ、それだけ。特にやり残したことも未練もない。って言ったら嘘になる。

 でも、死んだ後であーだこーだ言ってもさ、生き返れるわけないじゃん?無駄じゃん?人生一度切り。死んだらそこで即しゅーりょー。正にそのとーり!正論すぎて欠伸も出ない。だから、死んだことに関してはなんもないわけよ。あの世だとかそんなモノも信じてないし。

 天国?地獄?気にしてどーすんの?

 選択肢なんて、はなっから用意されてないんだから気にしてもしょーがないっしょ。

 文句言ってどーこーなるんなら言うよ?そりゃ、あたしだって地獄なんて嫌だし。天国行きにしてくれるんなら現役JKの生足見せて上げたっていいよ?ピチピチギャルの太ももとかちょー価値ありすぎでしょ?興奮モノでしょ?あ、お触りはモチロン禁止でーす。

 まあ、そんなわけで死にましたわけですよ。

 永遠の16歳。

 笑えなーい。まっっったく笑えない。

 と、まあ。あたしはあたしの死をあたしなりに理解したわけでして。まさかまさかその後のことがあるなんて思いもしなかったわけでして。

 え?何が言いたいかって?

 そりゃ、死んだはずのあたしはまだ生きてるってことだけど、それ以外に言えることある?

 正しく言うなら、記憶を持ったまま生まれ変わった?生まれ直した?言い方わっかんなーい。えーっとなんて言うんだっけ?難しいことは流石になぁ。うん!まあ、生まれたわけよ。全く違う世界に!剣と魔法の世界って言うの?あ、それともRPGってやつ?ゲームには詳しくないからよくわかんないけど、魔法もあるし、迷宮っていう冒険どころもあるそんな世界にあたしは生まれ落ちたのでした。

 記憶持ったままとか、それなんて地獄、って感じ。

 

 

 

 

 

「これもダ~メ!これもこれもこれも!どれもこれも着れたもんじゃないわぁ」

 差し出された何着目かの着物を床に投げ捨てて、うんざりとした態度を隠しもせずに、言葉を吐き捨てる。

 床に散らばった衣服はどれもこれも、望んでもいない華美って言葉を前面に押し出した物ばかりだ。求めてもいないのにこれで金銭発生するとか嘘すぎでしょ。

 もーやだ。憂鬱。着る気もない服寄こされるのって、精神的にキツイわー。何着も何十着もあったって、着ていく予定なんてないっていうか。そんなモノをあたしに着ろって?冗談じゃねぇっての。

 そうしたら、目の前で跪いていた女が顔を真っ青にさせて、床に擦り付けんばかりに頭を下げてきたもんだから、余計に気分はだだ下がりである。

 お前のうなじ見下ろすとか、欠片もキョーミないんですけど。床が汚れるからやめろとしか思わない。

「も、申し訳ございませんっ。直ぐに仕立て直しを…」

「はあ?腕の悪い仕立て屋なんかにいくら直させたってロクなもんできるわけないでしょ?何言ってんの?貴方はもう下がりなさいな」

 あーあ。命令通りに服も作れないってどーいうわけ?あたしは、こぉんな在り来たりな服なんて着たくないんだってーの!今回の注文は部屋着のつもりで要望出したのに!!なんだこれ!!いい加減わかれよ能無しめ。

 従者の一人に女を外に出すよう命令をして、足元に散らかった着物を見下ろす。

 日本にあるものとは作りは違うけど、華美なのは変わらないその着物は、どちらかと言えば中国ドラマとかで昔のオヒメサマやキゾクサマが着てそうな民族衣装だ。丈や裾が馬鹿みたいに長い。それでいて重苦しい機能性皆無の服。あり得なーい!何これ?外出用ならわかるけど、部屋でもこんな重ね着しなきゃいけないわけ?夜着の方が億万倍マシとか服としてどうなの?あたしが着たいのは、こおんな締め付けられてビラビラしてズルズル引き摺るだけの着物じゃなくて、ショートパンツとかさ、レースのついたブラウスとかさ、欲を言うならスウェット的な、もっとこう!ね?そーいう楽な格好がしたいんだよ!!部屋着だぞ!!寝転ぶのにも苦労する服なんて着れるかっつーの!まあ、お洒落もしたいけど!でも!違うの!

 だから、専属の仕立て屋にわざわざ事細かに注文したのに!なのに!

 何あの女!注文通りの服を持ってくるどころか、似せようと努力しようともせずに在り来たりなもん持ってきやがって!!なぁにが、そんなお召し物は貧民層の者が着るものでございますよ。だ!わかってんだよそんなこと!!だから部屋着だって言ったんだろうが!部屋着なんだから誰も見ねえっつーの!

 あー!もう!おこなんですけど。プンプン丸じゃなくてムカ着火ファイアーなんですけどクソが!

 ドカリと苛立ち紛れに音を立てながら、座面がクッション素材になってるでかい椅子に座る。後ろに控えていた口煩い従者が何か小言言ってるけどどーでもいい。

 お行儀悪いってあたしはガキか!ただでさえ小言なんて聞くに耐えないのに、今のあたしは不機嫌なんだから、わかれよバカ。バァーカ!!

 はいはいと聞き流してると、聞いているのですか!とまたぐちぐち言い出す始末。うるさいなー。

 何か言い返してやろうと後ろを振り向こうとした時、女を外に追い出しに行っていたもう一人の従者がタイミング良く戻ってきたのが気配でわかった。

 入り口の方を見ると、にこやかに微笑む口元だけを兜の下から出している従者の姿。きっと、あたしに命令されたから嬉しいのだろう。だって、こいつ普段暑苦しいし張り切りすぎて鬱陶しいから、最近は特にまともな命令してなかったし。置き物か、って思うくらい放置するのとかザラだから、久々の命令で浮かれてるのが、よぉくわかった。

 そんな従者の笑顔を眺めながら、ああ、こいつ機嫌が良さそうだな、と思った。

 しかし、それも一瞬の出来事で、あたしはなるべく悲しげに聞こえるような声音で従者の名前を口にした。

「永徳ぅ、祐徳が虐めてくるの、なんとかしてよぉ」

 あたし悲しいわ。そんな風に付け足した瞬間だった。

 にこやかだった永徳の口元は、見る影もないほど歪んで歯をむき出しにして唸り出し、あたしの後ろに控えていた祐徳を鋭くに睨みつけたのだ。兜で目なんか見えないけどたぶんめちゃくちゃ睨んでる。あたしにはわかる。

 ひっ、と祐徳の小さな悲鳴が聞こえて少し可哀想だとは思ったけど、不機嫌なあたしに説教した祐徳が悪いんだもん。だから庇ってなんかやらない。これに懲りたら当分の間は黙っていてほしいな。

「祐徳ぅうううううう!!」

「ちっ、違います!私はただ…っ」

「言い訳するでないっ!姫様が嘆いておられるだろうが!!!」

「いや、どう見ても笑っていらっしゃっ、じゃなくて!私は虐めてなどいないのですよ!ただ、少しばかり小言を」

「祐徳ぅううううううううううう!」

「人の話をきっ、ぎゃー!こっちに来ないでくださっ……いたっ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い姫様っ永徳をなんとかしっ」

「あたししーらない」

 雄叫びを上げながら祐徳に掴みかかる永徳の姿はやはり武官と褒めてやりたくなるほど素早かった。

 その反面、祐徳は文官だから、鍛え上げられた永徳の体さばきを避けきれるはずもなく、関節固めをあっさりと食らっている。

 そんな光景を見て、存分にお腹を抱えて笑ってやった。

 行儀が悪い?はしたない?

 知るかそんなのって感じ。

 それを判断する外の人間なんてここにはいないし、小言を言う祐徳は永徳の相手で忙しいんだから気にする必要ないし。小言だって別に怖くないし。つまり、他の目がないのに気にするだけ無駄ってこと。

 笑いすぎて滲んだ涙を拭いながら、取っ組み合いを始めた二人を横目で見る。

 方や鍛え上げられた逞しい肉体を持つ武官、方や知識のみを重点に鍛えて来た理知的な言動をする文官。双子なのに見た目も中身も全く違う二人は、あたしに与えられたたった二人の従者だった。

 奇しくも、前世の記憶を持って生まれ変わったあたしの名前は練 紅蘭。煌帝国第九皇女である。

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