感想ありがとうございます。
個別にお返事をなかなか返せず申し訳ありません。
こちらからのお返事になるのですが、一件だけお返事させてください。
もともと掲載していた自サイトは実質閉鎖したようなものですし、なにぶんグレーなジャンルですのでお教えすることはできません。ご興味持っていただけて大変嬉しく思うのですが、何卒ご容赦ください。
今回は丸々加筆部分になります。
あのあと、なんとか紅玉姉様の癇癪とマギの反抗期(?)を抑えることに成功したあたしと赤い髪の女の子。お互い見つめ合って苦笑いしたときは、思惑通り謎の連帯感に包まれていて、妙な達成感もあった。
ふと、そのことに気がついた次の瞬間にはお互い笑顔を浮かべて、名乗り合うことにようやく成功した。ホントね、その時のあたしのテンションまじだだ上がり。
彼女、モルジアナさんって名前らしいよ。モルさんってあだ名なんだって。年も、多分同じぐらい。物静かで、落ち着いてて、気遣いもできてホントもっ、もる、モルジアナ、さん可愛すぎるんだけど。
あたし、この世界で自分が一番可愛いと思ってたけど、そのうぬぼれっぷりをちょっと反省しちゃったわ。ちょっとだけだけどね。だって超絶美人の女が母親だもん。
そりゃ、その血をひいている娘は美形に決まってるっしょ。自惚れるに決まってんじゃん。だって実際にめちゃくちゃ可愛いし?………父親が豚とかそんなの気にしない。実際、母親似だからカンケーないしー?ホントあの豚に似なくてよかった。マジ神様感謝。
自己紹介も挨拶も無事に出来て、あと残るのは昨日のお礼を言うだけだ。
「あっ、あ、あああのぉ……っ!」
だというのに、頑張って口を開いたら、また声が裏返った!!!!しかも噛んだ!!!!
あまりの恥ずかしさに、俯きながら身悶えする。
さっきまでうまくいってたのになんでだよ!なんでそこで躓く!
ぶるぶるとあからさまに震えないように頑張ってるけど、それよりも次の言葉が出て来ないのが問題だった。
なんでこんなに上手くいかないんだ。なんでだ。
……まさか緊張してる…?
悶々としながら、一つの考えに行き着く。
…緊張?緊張だって?
まっさかぁ!!
そして、すぐ様否定する。心の中だけでだけど。
緊張?このあたしが?
でも、だって、あり得ない。
このあたしよ?皇女よ?一番とは言えなくても平民よりは確実に偉いのに?たかだかお礼を言うだけで緊張?あははは。
……………まじで?
まさかの事実に愕然とした。思わず落としそうになった扇を慌てて握りしめなおす。
こ、こんなことで動揺を悟らせるわけにはいかない。なんたってあたしコージョサマだもの!
そう!あたし皇女だよ?一国のオヒメサマだよ?
自分よりも身分が低い人間相手に、なんでき、きき緊張なんかぁ、しないといけないわけぇ…?これじゃただの不審者じゃん。
呼びかけておいて喋るどころか、俯いてプルプルしてるとか怪しすぎるだろ。
変に思われてない?何こいつって思われちゃったりしてない?
ただでさえ煌帝国の人間、ってだけで嫌なやつって先入観あるのに、これ以上悪印象与えたくないんだけど。
思い切って顔を上げることもできず、こっそりと伺うように、も、モモル、モルジアナさん、をこっそり盗み見る。
ばっちりと目が合った。視線と視線がぶつかり合う幻覚も見えた。
それはもう、思いっきり。こっそりした意味もなく、所在なさげにオドオドしてる様を見られていた。
「何か?」
その上、微塵たりとも表情に変化はなかった。
目が合っているにも関わらず、表情筋がピクリとも動いてないようにも見える。
……な、何も思ってないどころか、興味さえ持たれてない…だと…?
び、美少女だぞ…。美少女が恥ずかしそうにもじもじしてるんだぞ…?
同性とはいえ可愛い…ってなるだろ…?なるはずだって…。……なるよね…?ね?ね?
な、ならなくても、どうしたんだ?ってならない?ねぇ…ねぇちょっと。
………え、あれ…うそ…。うそうそうそ、なにこれやばい。まじやばい。やばいやばいやばいなんか自信なくなてきたんだけど。揺るぎない自信が急に萎えてきたんですけど。なにこれなにこれ。えっやば…。
なんか間違って飴玉とか氷とかを丸のみしちゃったときみたいな嫌な感覚…ってこれ動悸だわ。
めちゃくちゃ心臓バクバクいってるっていうかなんか胃の腑が鷲掴まれたみたいっていうか肝試ししたときみたいっていうか、なんか…なんか腰抜けそう、なんだけど、やっば…。
ね、ねぇもしかしてさ、あたし…あたしって、もしかして可愛くない…?
ヒュ、と。
一瞬呼吸の仕方を忘れたみたいに息が止まった。
生まれてこのかた、一度たりとも考えた事どころか、掠りもしなかった疑問にぶち当たった瞬間である。
まさにセーテンノヘキレキとでも言うべき事態に、一気に血の気が引いた。
え?まじ?あたしって可愛くないの?えっ?え?可愛いと思ってたのまさかの勘違い?
だ、だだだっだっだって!だって!傾国級の美女の娘じゃん…?豚の血が混じってるからって、豚似じゃないんだから、救いはあるはずじゃん…?
最悪、美人にはなれなくても、美しくはなくても、ブスではないはず…。はずだ。……はずだ…よね?
チラリともう一度、もっ、モル、モルジアナさん、を見上げる。
「……………」
先ほどと寸分違わぬ無表情でした。完全に心が折れました。ありがとうございます。
………あたしブス?いや、そんなはず…でも、興味持たれてないってことはブスってことじゃ…?
だ、だって可愛かったら多少なりとも友好的になるでしょ?非力でか弱そうな美少女なんだから、そこまで警戒しないでしょ?最悪、好意持たれなくても興味と何かしらの関心は持たれるはずじゃん…?
でも、ここまで無表情で関心さえ持たれてないってことはさ…。
それって、それってつまりさ。
つまり、あたしがブスってことなんじゃ…?
ブス……あたし、ブスだったんだ……。その上醜い豚にそっくりな子豚ってことでしょ?
いや、子豚ならまだ可愛げある。愛玩動物くらいにはなる。…ってことは、そう言い表すのもできないくらい醜いってことじゃ…。
「…………っ」
これまで、どんなに蔑まれようと嫌われようと、憤りを覚えるこそすれ、傷つくようなことはなかった。落ち込むどころか怒りを露わに仕返してやろうとさえ思うほどには、メンタルが強いと、そう自負していた。
ああ、でも。
でも、無理だ。
どうしよう。鬱だ。
だ、だれかー!!
あたしの絶対的な味方呼んできてー!!
承認欲満たしてくれるような人!
この場合、永徳が適役だけど、この際祐徳でもいいから!!!!はやく!!!!
はやく誰かきて!まじでヤバイから!!!!
仕事でもいいからあたしを励ましてくれる人が必要なの!!!
だって!あたしから顔を取ったら何も残んないじゃん!!顔以外取りえないもの!!顔が唯一の取柄だって信じて生きてきたんだもの!!今更ブスだって気づかされてどうやって生きて行けと…!!!
「……の…か?」
それにあれじゃん!?今まで意識して微笑み浮かべたりそれらしい仕草とかさ!研究して最高に可愛く見えるだろう角度決めてきてたじゃん!?「あの…?」あれって可愛いくて美人だから決まるものじゃん!?なのに顔があの豚以下ってことはいままでしてきたやつ全部見るに堪えないモノだったってことじゃん!!??つまりそれって「顔色が…」ゴミ以下じゃん!?無理じゃん!?普通に考えて無理じゃんか!!
や、やだ…もうむり…。ふつうにむり…。
「…いきるのつらい…」
「…!だ、大丈夫ですか!?」
「っ!?」
いきなり大声を出されてどこかへと飛んでいた意識が現実に引き戻された。
宙をさまよっていたらしい視線が、声の主であるも、もる、モルジアナ、さん、を捉えて、慌てて口を両手で覆った。
えっ!?なにっ?なになになに!?えっ、もしかして声に出てた!?まじ!?どこからどこまで!?
どこまであたしは口にしてた?全部?全部しゃべってた?それとも一部!!?いや、どっちにしてもマズすぎる…!!!
「……紅蘭ちゃん…?いったいどうしたの?」
二の句が継げないでいると、ただ事じゃない様子を察知したのか、マギ様と嫌みの言い合いをしていた紅玉姉様が近づいてきた。その顔には心配の色がありありと浮かんでいて、あたしのことを気にかけているのがよくわかった。と、同時に、あたしたちの会話を聞いていた様子はみられなかった。
よ、よかった~。紅玉姉様が鈍感・天然の人種でほんとよかった…!何を口走ってたかわかんないけど、聞かれてたらほんと今までの猫かぶりなんだったん?ってなるからほんと良かった…!!
いるのかどーかも怪しい神様に一瞬感謝して、次の問題にぶちあたった。
紅玉姉様への言い訳である。
何を口走ったのかわからないから下手に誤魔化しができないのだ。
見たところ、紅玉姉様はこの三人と特別親しくなるつもりがないようだから、適当に誤魔化してもいいけど、問題は白龍兄様だ。
ちらっと見た感じでは、紅玉姉様みたいにアリババ王子との会話を切り上げてこっちに寄って来る気配はなさそうだけど、ここでは誤魔化せたとしても、そのうちモルッ、モルジアナさん、からあなたの妹こんなこと言ってましたよ、と伝わる可能性は高い。それはダメだ。なんとしても防がないといけない。白龍兄様は今後の保険でもあるし、こんなところで猫かぶってるのがバレちゃったら愛想のいいか弱い妹してた意味がない…!
どうしようどうしようと焦ったところで、いつもみたいに都合の悪いことは曖昧に笑って煙に巻いたり、自慢()の微笑みで話題転換などできるはずもなかった。というかうまく笑える気がしない。笑顔の完成図がいつもみたいにイメージできないうえにモザイク処理までされている。お、汚物になり果てている…だと…。
泣きたくなるのを必死に堪えていると、傍までやってきた紅玉姉様が心配そうに顔を覗き込んできた。
心配されるのは嬉しいはずなのに、今だけはその優しさが邪魔臭い。…身勝手すぎるってわかってるけども…。
「あ、あの…その…」
上手く言葉を返せないでいると、見かねたも、もももモルジアナさん、が助け舟をだしてくれた。
「体調が優れないのかもしれません。先程から顔色も悪く、呼吸も少し乱れているようですし…」
モッ!!モ、モルジアナさん…!!!あなたが神か…!!!
永徳が聞いていたら、姫様の神は日替わり定食のようですね、とか嫌味言われそうなくらいチョロイとは思うけど、神様なんじゃないかと本気で思った。神様じゃなくても天使だ。普通なら話しかけようとして噛んで何も言わずにプルプル震えた挙句にボソボソ訳のわからないこと呟くような奴、気持ち悪くて放置どころか関わる気さえなくすだろうに都合のいい誤魔化しをしてくれるなんて…!!…関わりたくないから早く帰らそうとかそんな感じかもとかも思ったけど、親切だって信じてる。
体調云々の下りで、心配そうだった紅玉姉様の表情は一変して慌てたように自分の侍女を呼びに本殿の方へと駆けて行った。
は、早い。そこまでしなくてもいいって、止める暇もなかった。
「紅蘭」
駆けだした紅玉姉様を見てただ事ではないと察したのか、今度は白龍兄様までもが慌てた様子で傍まで駆け寄ってきた。
メンタル的には重傷だけど、肉体的には今日は何ともないせいで湧き上がってくる罪悪感に蓋をして、いつものように眉尻を下げて困ったように弱弱しく表情を作る努力をする。……よ、よし、なんとか表情筋は動かせるようになったぞ…。…たぶん。
そんなあたしの表情を見て、白龍兄様はぐ、と何かを堪えるような苦い顔を返してきた。
「…っ、体調が優れないのなら、なぜ言わなかったんだ。そうすれば、無理に部屋から連れ出すことなんてしなかったのに…!」
と、両肩を強く掴まれて苦し気に言われたあたしの感想は、ほんとそれな、である。
いや、確かにあたしにも身になることだからさ、いずれは挨拶しとかなきゃなんだけどね?でもさ、ふつーに考えて真っ当な尊い血が流れてる兄と、似たもの同士でも武人として国に益をもたらしてる姉の誘いを足元にも及ばない人間がおいそれと断れるとでも…?馬鹿?普通の一般家庭のオニーチャンオネーチャンのお誘いじゃないんだよ?馬鹿なの?あんたらはいいかもしんないけどさ?断った瞬間不況かっちゃうから。あんたらに仕えてる護衛やら従者やら侍女やらのな!圧倒的にあたしの方が仕えてる人間少ないのそんなことできるわけないじゃん?こんな旅先で頼らなきゃいけない場面があるかもなんだから。
と、まあ。そんなこと口が裂けても言えないから、困ったように、けれど申し訳なさそうにするしかないんだけど。
「だ、黙っていたわけではないのですっ。わたくし、お誘い頂けたのがすごく嬉しくて…!そ、それに、このような時でないと、兄様達と外出できないと思ってそれで、」
最後まで言い切ることはせずに、視線を反らしながら俯いて表情を隠す。これで相手は、あたしが今、どんな顔をしているのか想像するしかなくなった。ついで、吐く息を小さく震わせればもう完璧。
兄と姉を慕う、健気で気弱な女の子の完成である。
……よし!よし!だいぶん調子が戻ってきた…!これならこれ以上ボロを出さずに済みそうだ。
そうとは悟られないよう、そっと胸をなでおろして、やっぱりなぁ、改めて思い知らされた。
やっぱり、前世の記憶のように簡単に友達なんてできないもんだな、と。
イージーじゃなくてこれ難易度ルナティックじゃね…?いや、だいぶ前から知ってたけども。
と、更に精神的に追い打ちを駆けられそうな事実に、そんなもの知るかと見て見ぬふりで蓋をしておいた。存在さえ隠せばそれはなかったことだ。臭いものには蓋をする。いい言葉である。
またの名を現実逃避とも呼ばれる思考的逃避行をしながら、紅玉姉様が戻ってくるよりも先に、なぜか知らせも出していないのに、何かを察知して姿を現したらしい永徳に抱えられながら、とりあえずその場からお暇することにした。てかこいつどうやって知ったし。兄様たち呼んでもないのに現れた永徳を見てドン引きしてたんだけど。
まじこいつエスパーすぎ。こわ。