ONE-PUNCH-MAN 『IF』~最強の正義VS最強の悪~   作:上井カルタ

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よっしゃ三撃目突入!


第三撃目 『希望の先に見えた絶望』

 

 突如として現れた人間怪人グラン。その姿は覚醒したガロウのように、人間の原型を留めていなかった。

 分厚い筋肉に覆われ、人間離れした銀色の肉体。額から生えた二本の角。目の色は狂気に満ちて赤く染まっている。

 実際、こんな怪人を目の前にしたら戦う勇気など到底持つことはできない。

 しかし、この青年は違う。

 ただ一人を見つめ、ただ一つの拳を握り、一歩、また一歩と歩き出す。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 両者共に瓦礫を踏み砕き、目にも留まらぬ超スピードの戦闘が始まった。

 

「ふんっ!!」

 

「でやっ!!」

 

 拳と拳がぶつかり合い、その衝撃は遠く離れたサイタマの足元にまで伝わる。

 

『マシンガンブロー!!』

 

 ジェノスの放つ、豪雨のような鉄拳の連打が、悪を有する怪人に降り注ぐ。

 

「いい連打だ。お前は中々強いな」

 

 鉄の雨を顔色一つ変えず、拳一つ一つを完璧に受け流すグランも中々だ。

 だがその拳は鳴り止まない。

 

「まだだ! 『加速』(ブースト)!」

 

 腕部に取り付けられたブーストにより、鉄の雨が激しさを増した。

 

「チッ......さすがに厳しいな」

 

 より高速に繰り出された連打に耐え切れなくなったグランはやがて、その連打に飲み込まれていった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ジェノスは少しも速度を緩めずに、鉄の拳を撃ち続けた。

 

 何発も。

 

 何十発も。

 

 何百発も。

 

 その拳を撃ち続けた。

 

「はぁ......はぁ......」

 

 ジェノスはやがて連打をやめ、サイタマの元へと退いた。

 

「意外と余裕だったんだな」

 

 ジェノスの元へと駆け寄るサイタマにジェノスは笑みを浮かべた。

 

「はい。そこまで強くは......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――この程度か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 砂埃を払い、激しい鉄拳の雨を受けて尚、顔色一つ変えずに、怪人グランは二人の目の前に佇んでいた。

 

「そんな......」

 

「点数をつけると10点って所だな」

 

「クソッ! 『焼却』!」

 

 鉄をも溶かす熱線が、グランに向けて発射される。

 放出された高熱により、周りの建物も瞬時に灰になる。

 

 

 

 

 しかし―――――。

 

 

 

 

「ぬるいな。湯船に浸かっている気分だ」

 

「な!?」

 

 それでも、奴の体には傷一つ付かなかった。

 

「他に無いのか?」

 

 グランは呆れたように額に手を当てた。

 

「――――――ッ!!」

 

 怒りを露にしたジェノスは再度、敵の前に立ちはだかった。

 

「鬼サイボーグ。お前を排除する」

 

「やってみろ!」

 

 そうやってジェノスがその場を飛び出した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マシンガンブロー』

 

 それはジェノスが放ったわけじゃない。もちろんサイタマでもない。

 じゃあ誰が?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪人(ヤツ)だ。

 

 怪人から放たれる、高速の連打がジェノスを捕らえた。

 

「ぐあっ......」

 

 ジェノスは木の葉のように宙を舞った。

 

「所詮はヒーロー。たかが知れてる」

 

 グランは、地に落ちたジェノスを見下すような体勢で拳を握った。

 そんな中、ジェノスは疑問に思った。何故相手が自分の技が使えるのか、何故自分の攻撃が効いていないのか。

 

 

「さて、そろそろ終わりだ。......確かこうだったな」

 

 そう言いいグランが手を前に突き出し、力を込めると――――――

 

 

 

 

 

 

 

『焼却』

 

 グランの手の平から、ジェノスと同じ熱戦が発射された。

 

「そんな......」

 

 迫りくる『死』を覚悟したジェノスに、鉄をも溶かす熱線が直撃し、大爆煙が巻き起こった。

 周りの建物は焼け、熱戦に触れた部分は赤く発光していた。

 

「捕らえたか?......いや違うか」

 

 グランは空を見上げた。

 

 

 

 

 

「いやー。今のはさすがにビックリしたぜ」

 

 

 

 

 

 グランが目にしたのは、脇にジェノスを抱え、黄色いヒーロースーツを身に纏い、赤色の手袋と靴を履き、特徴的な頭をした、一人の青年だった。

 

「サイタマ先生......すいません」

 

「気にするな。とりあえず今はバトンタッチしとけ」

 

 その男はスタっと綺麗に着地すると、ジェノスをそっと降ろした。

 

「貴様......何者だ」

 

 

「俺か? 俺は......」

 

 怪人が問い、ヒーローが答える。

 

「俺はサイタマ。趣味でヒーローをやっている者だ」

 

 ☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 悪を語りし怪人の前に、一人のヒーローが立ちはだかる。

 

「サイタマ......貴様は他の雑魚(やつら)とは違うようだな」

 

「そうか? 俺は普通だと思うんだがな」

 

「その態度......余裕だな」

 

「当たり前だ。怪人がヒーローに勝てるかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――馬鹿が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(速い!)

 

 ジェノスが目で追っていたときには、すでにグランはサイタマとの距離をつめていた。

 

『マシンガンブロー!!』

 

 さっきよりも速さと威力が倍増した連打がサイタマを襲う。

 

「顔が近い!」

 

 ドゴォッ

 

「―――――――――ッ!!」

 

 悪を打ち砕くサイタマの正義の一撃がグランの腹部に突き刺さる。

 その一撃に体が耐えられなかったのか、グランはその場から数十メートル先にまで吹き飛ばされた。

 

「何がなんだかよくわかんねぇけど。とりあえずぶっ飛ばすから掛かって来い」

 

 サイタマは吹っ飛ばした怪人の元へと歩き始めた。

 その数秒後。

 

「ふむ......中々の攻撃だ。素直に感心したぞサイタマ」

 

「そ......そんな。先生の一撃を受けた筈なのに......」

 

 瓦礫の山から、平然とした表情で奴は起き上がった。

 やがてパンパンと肩の砂を払うと、サイタマ同様に歩き始めた。

 

「貴様のようなヒーローは消しがいがある」

 

「それは褒め言葉として受け取るべきか?」

 

「違う。冥土の土産だ」

 

「そうか」

 

 その一言によって引かれた引き金は、即座に火花を散らした。

 先程のジェノスとは比較にならないほどの衝撃がZ市全体に伝わる。

 

「先生っ!! そいつは相手の攻撃を使用することが出来ます!! 先生の一撃を喰らった奴なら、先生と同じ威力の一撃を放つことが出来るはずです!!」

 

 声を振り絞り、サイタマに届くような大声で、ジェノスは叫んだ。

 だが、その声は虚しく、空に響き渡る衝撃音でかき消された。

 

「サイタマ、お前は選択を間違えた」

 

「は? 意味分からん。中二病なら帰って寝てろ」

 

「その余裕......殺してやる」

 

 一発一発が超威力の連打が止み、グランが再度拳を打つ。

 

「またそれか。もう飽き―――――」

 

 サイタマは腕を伸ばし、グランの拳を止めようとした。

 

 ――――――が。

 

 ドゴォッ!!

 

「―――――――――ッ!!」

 

 Z市に鳴り響く重い音。

 そして。

 

 

 

 

「悪は勝つ」

 

 

 

「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 今までとは比にならないとてつもない爆風と超爆発的に広がる衝撃波がジェノスの眼に映し出された。

 

「ぁ......」

 

 ただ口を開け、涙を流すジェノス。

 数秒後、爆風が一気に消えたかと思うと、そこには隕石でも落ちたのかと思うほど巨大なクレーターが出来ていた。

 

「せん......せぇ?」

 

 サイタマを今まで一番近くで見ていたジェノスには確信があった。

 

 "この人ならどんな怪人も目じゃない。"

 

 "この人なら必ず勝つ。"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――そんな確信は、血を流したサイタマの姿を見たことによって、打ち消された。

 

 




ご閲覧ありがとうございました。
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