いよいよだ。
控室で作戦の確認をしている。やはり、緊張の色がみられるが大丈夫だろう。
案の定、観客席は満席で記者もたくさんいる。
どうやら、どちらも全校応援のようだ。
え、そうなの?あったの?なんで誰も言ってくんないの?
しかし、気になることがある。
アップの時、奴は現れなかった。まぁ、これはいいとして。
俺は今、絶賛ステルスヒッキー中なのだが、(え?誰が年中だって?)お構いなしに見てくる2つの視線。
好気的な視線ではなく、品定めのような。
もう1つ。
なぜ、俺は参加できた、ということだ。選手登録は、一週間前では間に合わないはずだ。
秋の風が、プロテクターをすり抜け、肌寒い。
試合前の最終ミーティングを終え、選手入場。
走ってくる相手の中には奴に姿がない。前と同じか。
剛力と相手のキャプテン、審判が中央に集まり攻撃権を決める。
不正が無いよう、その様子が特大スクリーンに映される。
一人は緊張、一人は余裕。
先行か。よし。
剛力が戻ってきたところで円陣を作った。雰囲気にのまれたら話にならん。
「作戦通り行くぞ」
そう、作戦通りいけば、戦える。
「おう!!」
熱いのか、頼もしいのかよくわからん奴らだ。
しかし、よくついてきたもんだ。俺ならきつすぎて夜逃げするレベル。
両チームがコートに入ると観客が沸いた。
ベンチから、佐々木、雪ノ下、由比ヶ浜の不安げな視線。
そして、2つの視線はそのままだった。
やはりいないか。
相手が一列になりキックの体制をとってきた。
俺たちは、深めに位置取る。準備OK。
ピーーーーー!!
ホイッスルとともに、蹴られるボール。
蹴った瞬間に作戦。
{フィールドクラッシュ}
俺がボールを取りに行きほかの奴らは敵に張り付く。基礎をやってきた賜物だ。
しっかり抱え、押さえた。相手陣地まで残り90ヤード地点。いける。
俺が前を向いた瞬間、ほかの奴らは・・・・転ぶ。
故意でだが、究極に自然で、確実に相手を巻き込むように。
その、隙に一気に相手のエンドゾーンまで運ぶ。
残り50ヤード
前に出てきたやつは、足止めを喰らっていたからただ走っているだけで抜けた。
だが、たかが一瞬。なんとも無いように立て直す深い位置にいる選手。
相手は、油断している。だから、行ける。
あと5人。
横からのタックル。一瞬の加速で置き去り。
あと4人。
正面で構えている2人。伸ばしてきた右の奴の腕を引き、左を巻き込み突破。
あと2人。
斜めに走り、2人と距離を離し、実質的には突破。
エンドゾーンまで残り15ヤード。問題なし。タッチダウン(6点)だ。
ピーーーー!!
ホイッスルとともにスクリーンの総武の得点欄に6が入ったことを確認。
まあ、こんなもんだろ。てか、うるさすぎんよ観客・・
こっからだ。
駆け足で自陣へ戻る。ステルスヒッキーはデフォルトだが、今は無意味。だが、悪くはない。
不思議と足取りは軽かった。
「うおおおおぉぉぉ!!!」
やっぱし、来たか・・その元気、もつんかねぇ・・
集まってきたのなら好都合。そのまま、次の作戦。行動は読めている。
エクストラ・ポイント(タッチダウン後に1点をキックによって追加できること)を決め、7対0。
俺らからのキックによって、試合が再開された。
俺らの陣地まで65ヤード地点で止めた。そして・・・
ピーーー!相手選手交代の知らせだ。
風が強くなる。鳥肌が立つ。顔が強ばる。観客が沸く。
コート外にいる2メートル越え、ユニフォームの上からわかるほどの筋肉の持ち主に全視線がいった。
ここに来た奴らは、こいつを見に来たのだ。
「審判、タイムアウト(両チーム1・2と3・4クォーターに3回ずつ使える1分30秒の休憩)」
そう告げ、審判は笛を吹き、腕で合図をした。最終確認だ。