薙芝留美は冒険したい   作:フリッカ・ウィスタリア

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何の刺激も無い平凡な生活を送っていた留美は気分転換に散歩に出かける。
すると、その出掛け先で不思議な体験をして…


暇人留美

留美「暇や…ごっつ暇や…死にそう…」

まあ、実際それで死ぬわけないのだが、本当にやる事が無くて暇や

留美「…ちょっと気分転換に散歩でもしよっかな」

今日は日曜で大学も休み、私は趣味と言えるような趣味が存在しない為、休日が来るたびに暇でしょうがないのだ

小銭をポケットに突っ込み何処へともなく近所をうろついていると、いつものルートを少し外れたあたりで見慣れぬ家が見えてきた

留美「あそこは…いつからやったか廃屋になってる家やっけ?やけど、なんで取り壊さんのやろ?」

記憶が確かなら、あの家2、3年前から廃屋のはずだ。さっさと取り壊せば新しい家なり駐車場なりにできるのに…

しかし奇妙なものだ

留美「向こうの通りもこっちの通りもそれなりに通行人がおんのに、この通りだけ全然人がおらへんなぁ」

ここまで不自然に人がいないと、不思議を通り越して不気味だ

留美「はよ通り抜けてコンビニでも行こ…」

無人の通りを早足で抜けようと歩いて行くと、何やら視線を感じた

留美「(誰かに見られてる気がするんやけど…)」

チラッと廃墟の方を見ると、二階の割れた窓から誰かがこちらを覗いているような気がしたが、暗くて確証は得られなかった

留美「(気のせい…やんな?)」

もう気のせいでも何でもいい。早くここを抜けよう…

留美「…え?」

再び歩き出そうとしたが、私は気が付くと通りに突っ伏していた

なんで倒れているのかさっぱり理解できず、お腹に手をあててみると、大きな矢が刺さっていた

留美「なんや…これ…?」

そこで私の意識は途切れた

 

数時間後

警官「おいアンタ、そんなとこで寝とったら風邪ひくぞー」

留美「う…うぅ…あれ?」

老警官に叩き起こされて私は目を覚ました

留美「傷が…あらへん」

警官「傷?なんだ嬢さん誰かにヤられたのかい?ハハハ!」

留美「いや、お腹に大きな穴が開いてたはずやねんけど…」

警官「わしの冗談にツッコんでおくれよ…まあいいが。あんたの腹に穴なんか開いてないぞ?服は破けてるみたいだがね」

確かにお腹の一部分に10㎝位の穴が開いていた。しかし、肝心の体の方には傷一つなかった

警官「言っちゃ悪いがなぁ、アンタ酒でも飲んで酔ってたんじゃないのかい?若いうちから飲んだくれてたらいかんぞー?」

留美「そんなはず…いや、でも…」

警官「とりあえず、大丈夫そうだから、わしはもう行くぞー」

私に異常が無い事を確認すると老警官はすぐ帰って行った

留美「こんな昼間から私はお酒なんか飲まへんし、そもそも弱いから飲めへんし…」

先程自分に起こった出来事が夢だったのか未だに不思議だが、散歩する気分でもなくなってしまった為帰る事にした

 

次の日

留美「ん…なんか外がうるさないか?」

今日は大学で私が取る講義がない為、少し遅めの起床をした私は、なんだか外が騒がしい事に気が付いた

なんとなく面白そうだったので、私は朝食も摂らずコートを羽織って外へ出た

留美「なぁ、何かあったん?えらい騒いではるけど」

男性「コンビニ強盗だよ。犯人が店員を人質に取ってるらしい」

なるほど、それで皆が野次馬してるってわけや

犯人「おら!そこの野次馬共退け!車に乗るんだからよ!」

私も野次馬に加わっていると、犯人が出てきたようだ

留美「(うわぁ…いかにもって感じのが出てきよったなぁ)」

犯人「そこの変な髪したガキ!車から離れろっつってんだろ!殺すぞ!」

犯人が逃走用の車に一番近かった高校生に怒鳴っていた

留美「(ククッ、確かにあの髪は奇抜かもあらへんな。昭和のリーゼントみたいやないか)」

思わず笑いそうになったが、どうにかこらえた

男子「あ゛ぁ゛!?今俺の頭の事なんつった!?」

すると、急に怒鳴られた男子高生がすごい形相で野次馬の中から出てきた

犯人「お、おい!近づくなって言ってんだろ!この女ぶっ殺すぞ!?」

今にも犯人が女店員をナイフで刺そうとした瞬間

留美「えっ?」

男子高生の背中からスッとコスプレイヤーの様な人が現れ、人質諸共犯人を拳で貫いた

だが、次の瞬間には拳は引き抜かれ、胸に風穴を開けられた二人も元通りになっており、コスプレイヤーも再び男子高生の背中に消えて行った

犯人「な、何だよこれ!?」

男子「病院にでも行って取り出してもらうんだな」

私は最初どういう事か分からなかったが、犯人がこちらを向いたときに理解した

留美「胸の所…ナイフの形に盛り上がっとる…」

先程まで犯人が持っていたであろうナイフが今の一瞬で男の体内に入ってしまったのだ

留美「な、なぁおっちゃん、今の何が起こったか分かる?」

男性「いや、さっぱりわからん…あの学生が犯人に近付いたかと思ったら急に犯人が叫び出して気が付いたらナイフが体内に入ってたみたいだが…」

…え?あの尋常じゃないくらい特徴的な人は?

留美「なんか学生の背中から人みたいなん出てこんかった?」

男性「人?俺は学生一人だけが出てきたように見えたが…」

留美「(どういう事や?あんなん出てきたら絶対に目行くやろ…)」

だが、この二人の話を聞いていた周りの野次馬も、おっさんと同じような反応を示していた

留美「なぁ!そこの兄ちゃん!」

かくなる上は本人に聞くまでや

そう思い当人を追おうとしたが、向こうはこちらに輪をかけて野次馬が多く、全然間を詰めれない

だが、人に揉まれているうちに私はあの男子高生を見失ってしまった

 

さらに次の日

留美「昨日のはなんやったんや?…明らかにおかしかったやろ…」

昨日の事が未だに気掛かりでたまらないが、今日は重要な講義があるため、大学をサボる訳にはいかない

留美「まあ、暇な休日よりはマシなんやけどねぇ」

講義の準備をして大学へ向かった

 

D学院大学生物学部

教授「~なので、こうなるわけですな…っと、そろそろ時間か、それじゃあ今日の講義はここらで終わろう」

生物学というのは面白いもので、なかなかいい話を聞いた

留美「そういえば、今日はデパートで人参と白菜が安かったはずやな。帰りに買っていこっと」

帰り道の途中で特売の事を思い出した私は、デパートへと向かった

 

1時間後

留美「よし、これ位買えば、そうそう野菜が足らなくなる事はあらへんな」

大方の買い物を済ませた私は、買い物袋を両手に抱え、エレベーターに乗った

留美「このデパート、特売が多いのはええんやけど、食料品が6階にあるから買い過ぎたら持って帰んの大変なんよなぁ…」

まあ、だからこそエレベーターがあるのだろう

留美「今日は鍋でもつつこうかな」

エレベーターが1階に着くまでの間、私は夕飯の献立を考えていた

しかしその時、私はふと違和感を感じた

留美「なんか、エレベーター斜め向いてない?」

気のせいかもしれないが、少し右に傾いている気がする

すると、エレベーターの上から嫌な音がした

メキッ…メキメキッ…

留美「まさか…ワイヤーが千切れかかっとんちゃうやろなぁ…」

少し不安になったため、次の階で降りようとボタンを押した

少し待つと、4階に着いたようで、エレベーターが停まった

留美「はよ降りよ…」

そう思いエレベータの扉が開くなりフロアに出ようとした次の瞬間

ブチッ…ブチブチブチィ!

目の前の風景が上に消えた

留美の悪い予感は当たっており、エレベーターのワイヤーが老朽で千切れたのだ

留美は混乱する頭で必死に考え、買い物袋を自分の下に抱え込み、無駄だと分かっていても1%でも助かる確率を上げようと足掻いた

その時、一瞬視界の端に見慣れぬ物が映った気がしたが、必死だった私はそっちを見る余裕はなかった

留美「(床が少しずつ近づいてくる…私、死ぬんやろか…)」

恐怖を感じ目を瞑った直後、床に衝突した衝撃で私は気を失った

 

数十分後

留美「う…いったぁ…あれ?なんで私生きてるんや?」

4階の高さから地下2階まで落ちたのだ、普通なら生きている訳がない

だが、実際私は打撲位の傷しか負っていない。それに加え、エレベーターの方は落下の衝撃であちこちが歪み、天井が座るのがやっとの高さになっていた

留美「最近意味分からん事が盛り沢山やないか…」

私が戸惑っていると、エレベーターの外が騒がしくなり始めた

留美「もしかして救助が来てくれたんか?おーい、こっちやー!私はここにおるでー!」

すると私の声が聞こえたのか、人の声がこちらへ近づいてきて、姿を現した

隊員A「あっ!居たぞー!生存者がいる!こっちだー!」

するとすぐに他の隊員も近付いてきた

隊員B「大丈夫ですか?とりあえず担架に」

留美「えっ?いや、私は怪我なんてしてへんので大丈夫ですよ?」

隊員C「この高さから落ちて無事なわけありません!さあ早く!」

隊員に促され、私は担架に寝転がると、すごい勢いで非常階段から1階へ運ばれ、そのまま病院へ担ぎ込まれた

 

数時間後

あの後、隅々まで精密検査を強制的に受けさせられ、どこにも異常が無いことが分かり医者は首をかしげていたが、そのまま家に帰されることになった

私は病院から帰る途中、ずっとデパートでの事を思い返していた

留美「やっぱり私4階から落ちたんよなぁ…」

あのデパートはそれなりに昔からあるため、エレベーターも旧型で緊急停止装置もついていなかったはずだ。というより、緊急停止装置が働いたなら地下2階まで行かずに止まっていなければおかしいし、なによりエレベーターが潰れている訳がない

つまり、あのエレベーターは地下までノンストップで落ちているはずだ。だが私は無事。そこが奇妙なのだ

留美「まさかとは思うけど、私もあの高校生みたいに背中から人を出せたりするんやろか?」

昨日のコンビニ強盗と対峙していた高校生の事を思い出し、自分にもあんな不思議な力が使えるのか?と考えたが、いまいち確証が得られなかった

 

土曜日

留美「さあ、待ちに待った土曜日や」

今まで今日ほど土曜日が待ち遠しかった事はなかっただろう

留美「確かあの高校生は、怒った時にあの人みたいなん出してたよな?」

家の近くにある人気のない公園に来た私は、思いつく限り腹立たしい事を頭に浮かべ、一人で怒りを浮かべていたが、一向に何かが出る感じはしなかった

留美「やり方が違うんかな…じゃあ、危険を感じた時?」

なんとなく、あの人の様なものは高校生を守っていたような気もした為、自己防衛の心理で出現するのかもしれない

ルナ「何か手頃なんは…あっ、これとかどうやろ…」

近くのゴミ箱にボロボロになった野球ボールが捨ててあった

それを壁に向かって投げ、跳ね返ってきたボールに当たろうと考えたのだ

留美「でも、出てこんかったら凄い勢いで球が顔に直撃するんやんなぁ…怖いわぁ…」

恐怖心を抑え込み、思いっきり壁に野球ボールを投げると、案の定凄い勢いで跳ね返ってきた

留美「当たるっ!!」

そう思った瞬間、目の前で球が止まった

その球を止めていたのは、肌は異様に青白く、狐面を顔に付けた少女だった

 

【挿絵表示】

 

まあいろいろと普通じゃない所はあるが、まず第一に…浮いてる

留美「なんか、あの兄ちゃんのと雰囲気ちゃうなぁ…まあ、細かい事はええか」

とりあえず、この子をどうやって動かすかだ

留美「見た感じ、出てきたら勝手に動くわけじゃないんやな。なら…イメージ?」

試しに頭の中で目の前の子が手を上げるイメージを作った

留美「…おぉ!まだぎこちないけど、動いたで!」

たかだか手を動かせただけでここまでテンションが上がるというのも些か妙な話だが、私の中では5歳児が上手く両親の絵を書けたと自慢する時の気持ちに似た感情が込み上げてきた

留美「あの高校生は触ったもん直してたけど、私もなんかできんのかな?」

とりあえず目についた木を手で触らせた

すると、急に地面がぬかるみだした

留美「え?なんやこれ…地面が急にぬかるんできたんやけど…」

しかし、ある程度地面がぬかるんだ後は何が起こったというわけではなかった

留美「もしかして、この子は触った物の水分を引き抜くんか?」

まだ確定要素が少ない為、他の物にも触ってみる事にした

 

1時間後

留美「さてと、これ位にしよか…」

1時間かけて色んな物を触った結果、木を触ると地面がぬかるみ、竹(公園横に群生していた)に触れると小枝の様に簡単に折れた他に、シーソーのバネに触れた時は一度縮むとそのまま戻ってこなくなった

しかし、そのどれも5分程で何事も無かったかのように元通りになった(流石に折れた竹は戻らなかったが)

一応右手でも触れてみると、同じ現象が起こった

留美「この三つに共通してる事って言ったら…触れた物の特性が何か無くのうとる事…か?」

なんとなくこの子の能力が分かってきた

留美「よし、それじゃ、アンタの名前は『ストッパー』や!」

 

【挿絵表示】

 

 

To Be Continued




留美は目の前に現れた少女のような者に『ストッパー』と名付けた
ストッパーの事をもっとよく知る為に、留美はあの男子高生に会おうと決めた
次回『スタンド使い』
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