そしてまた休日となり、今度は北の方へ行こうとバイクに乗ったが…
直子「留美ってさ、最近なんか良い事あったの?」
大学の昼休みに食堂で昼食を摂っていると、友人が話しかけてきた
留美「え?急にどないしたん?」
直子「いや、前までつまんなそーに講義受けてたのに、最近すっごい活気に満ち溢れた様な顔で過ごしてるからさ。趣味でも見つけたの?」
留美「趣味?…まあ、そんな感じやねぇ。今回のは長続きしそうやわ」
直子「へぇ…よかったわね。良ければどんな事してるのか教えて欲しいわ」
留美「んー…強いて言うなら、超能力?」
直子「え?…留美、変な宗教とかハマったんじゃないでしょうね?」
留美「ちゃうちゃう、そないな怪しい活動に手ぇ出しる訳やあらへん」
直子「ならいいけど…」
留美「まあ、物は試しや。このペンで紙に何か書いてみ?」
すると、直子は訝しげな表情を浮かべながら紙とペンを受け取り、自分の名前を書いた
直子「名前書いたけど、これをどうするの?」
留美「あっ、いや、文字は重要やないんや。今、文字書けたやんな?」
直子「文字?…あぁ、書けたわね」
留美「でもな、私が念を送ると…はい、これでなんか書いてみ」
直子「え?念を送るだけなの?…本当ね…何も書けないわ」
不思議そうな顔をしながら再び紙に文字を書こうとすると、今度は書けなかった
言うまでもないが、これは仗助の家でやったのと同じ仕組みだ
直子「でも、これって超能力というより、マジックじゃないの?」
留美「そう思うんやったらタネを見つけてみぃ♪まあ、見つからへんやろけどなぁ」
直子「調子に乗ってるわねぇ…良いわ!そのトリック私が暴いてやろうじゃないの!」
言葉上は直子はムキになっているように見えるが、怒っている訳ではない直子の方も私の軽口に付き合う関係を気に入っているようである
留美「あっ、でも、もうそろそろ私は講義の時間やから、また今度なー」
直子「勝ち逃げかい!」
数日後
留美「今日は杜王町の北部の方へ行こうかな」
地図を見つつ今日の行き先を決め、バイクに跨り私は杜王町の北部へと出かけて行った
留美「それにしても、今日はええ天気やなぁ」
昨日の夜空は星が幾つも見えていた為、晴れる事は天気予報を見るまでも無く分かっていたが、今日は本当に快晴という風な天気だった
そのまま陽気に鼻歌を歌いながらバイクを走らせていると、後方からすごい音が聞こえてきた
ブゥゥゥゥゥン!
留美「(なんや?えらい爆音響かせながら走ってるバイクやなぁ…暴走族の一人か?)」
チラッと後ろを見ると、ヘルメットも碌につけず改造したと思しきバイクを乗り回していた
留美「(まあ、やんちゃしたい年頃なんやろ…)」
そんな事を思いながら気にせず走っていると、急にそのバイクが私の前に割り込んで来た為、危うくぶつかるところだった
留美「あっぶなぁ…ちょっとアンタ!急に割り込んだら危ないやろ!」
不良「こまけぇ事を言うんじゃねぇよ…もっと楽しくに生きよーぜ?」
そうとだけ言うと、その男子はすぐにバイクを発進させた
留美「あっ!ちょっと待ちぃ!」
私も急いでバイクを発進させ、その不良を捕まえようとした
しかし、向こうはリミッターを外しているのか、フルスロットルで走らせても追いつけなかった
留美「(しゃぁない、エンジン止めさせて文句言ったる!)」
運の良い事に、すぐにバイクを発進させた為、相手との距離はまだ3mほどだ。十分ストッパーの射程距離内である
留美「(あのバイクのエンジンは…あれか!)」
エンジンと思しきものを見つけ、『動き』を止めようストッパーに触れさせようとした次の瞬間、思わぬ誤算があった
男子「ったく、しつけぇな!」ブゥゥゥゥン…
なんと、不良のバイクが急にスピードを下げたのだ
その拍子にエンジンへ向かっていたストッパーの手は、バイクの前輪に触れてしまった
つまり…
不良「え?…」ガシャァァァン!
前輪の『動き』が止まった事でバイクは制御を失い、その不良は空中に放り出され、前方に見えていたトンネルの壁に叩きつけられた
留美「やっば…」
さっきまでの私はどこへやら、一気に血の気が引いた
留美「と、とりあえず、警察と救急車!あぁでも、どうやって説明すればええねん!?」
両方のバイクに傷がついていれば接触事故とでもいえるかもしれないが、生憎な事に私のバイクには割り込まれた時も含め接触の跡などない。だが、急に前輪がロックして吹っ飛んだなんて言ったらアブナイ薬でもヤッてるのかと思われるかもしれない
留美「…あぁもう!なるようになれや!」
私は急いで救急車を呼んだ
留美「さてと、救急車がここに来るまでは生きとってもらわなあかんな…」
なんだかんだ言って怪我の原因を作ったのは自分である。簡単な止血ぐらいと思い男子に近付いて行った
留美「お、おーい、大丈夫か?死んでへんか?…一応息はしてるみたいやな…」
かなりのスピードで壁に衝突した為、両手足は変な方向へ曲がっているし、頭からも少し出血しているが、直接死に直結しそうな風は無かった(とはいえ、ずっと放置してたら死にかねないけど)
留美「良かった…とりあえずは死にそうにはないな…てか、なんかこの子酒臭くないか?」
こんなバイクを乗り回しているくらいだ。おそらく周りの仲間と一緒に酒でも飲んでそのまま飲酒運転でもしていたのだろう
留美「どないしようかな…この子が何も覚えてない事を前提として、飲酒運転で勝手に壁にぶつかったって事にしとこうかな…」
実際、私は不良のバイクには一度も触れておらず、バイクの前輪のロックもあと2、3分で解ける。痕跡も残らないだろう
留美「なんか最近、碌な事に能力使ってへんな…」
自分の事ながら呆れる
その時、私は上空から何かが降ってくるのが見えた
留美「なんやあれ?…!あれって確か私を射った矢やないか!」
どういう原理であんな上空から飛んできているのかは分からないが、あんな特徴的な柄をした矢は見間違えるわけがない
留美「まさか、この子をスタンド使いにしようとしてるんとちゃうんか!?」
以前仗助に聞いた話を思い出し、私は急いで不良を引きずって道の端に動かした
だが、矢はこの不良を追従するように進路を変え、一直線に不良へ向かってきた
???「このアマ!儂の邪魔をするんじゃない!」
何処からか老人の声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう
留美「(あの矢に貫かれた人間はスタンドを発現する資質が無ければ普通に死ぬやろうし…もしもの事があったら申し訳ないしな…)」
???「ええい面倒くさい!女諸共ブッ刺してやるわ!」
また声が聞こえた。少し周りを見渡してみると、何と声の主は矢の後ろにぶら下がっている写真からだった
写真が喋っているという非現実的(スタンドも大概非現実的だが…)な出来事に気を取られ、私は回避行動が一瞬遅れ、矢に刺されてしまった
矢はそのまま私を貫通し、不良にも突き刺さった
すると、すぐに矢は空へ飛んでいき、見えなくなった
私はその場で倒れ込み、貫かれた場所が熱くなっていくのを感じた
留美「(なん…や?…体が…熱い!)」
自分の鼓動が骨を通して頭に響き、不意にストッパーが勝手に出現している事に気が付いた
ストッパーは苦しそうにそこらをのたうち回り、周りの物に能力を使っては解き、また使っては解くを何度も繰り返しながら子供が癇癪を起こしたように暴れていた
留美「ストッパーが言う事聞かへん…暴走しとるんか?」
ようやく体の火照りが静まり、やっとの思いで体を起こしたが、ストッパーの制御が利かなくなっていた
だが、次第に疲れてきたのか、ストッパーの動きは鈍くなり、倒れ込んでしまった
心なしか、何もしていないのに私も疲れた…
ようやく大人しくなったと思って私がストッパーに近付くと、今度は右腕が黒く染まったうえに、胸元についていた錠前が外れた
留美「まさか、あれってストッパーの能力を制御してた枷やったんか?いや、でも最初の頃は無かったし…」
パワーアップするかもという淡い期待を抱いていると、更に仮面にヒビが入り、遂に割れた
留美「これが…ストッパーの素顔…」
狐面の下の顔はあどけない少女のようだったが、焦点の定まっていない目をしており、昔の自分を見ているようだった
留美「色々と気になる事はあるけど、そろそろ救急車が来てもおかしない時間やし、後にしよか」
その数分後、ようやくトンネル前まで救急車が到着し、不良を載せて病院へ向かった
留美「杜王町の中やし、多分ぶどうヶ丘総合病院やろな」
矢に刺された事が致命傷になっていたりしないで欲しいと願いながら私はバイクに跨り、当初の目的だった北部へ向かった
この時、運ばれていった不良が後に仗助達を苦しめるなどとは知る由もなかった
杜王町 北部
留美「とりあえず、スタンド使いを探すのもおもろいけど、先にストッパーの変化について調べようかな」
早速ストッパーを出すと、やはり右腕が黒く、仮面が無かった
留美「仮面の方は…特に意味はなさそうやな。でも、腕の方が気になるわ」
試しに右腕で鉄棒に触らせてみた
留美「問題なくロックは出来とるけど…何も変わった感じせえへんな」
???「うちの能力分かってへんのかーい!」
私が唸っていると、何処からか子供の声が聞こえてきた
留美「え?誰や?」
周りを見渡しても誰も居なかった
???「こっちやこっち!」
留美「ま、まさか…」
なんと、声の主はストッパーだった
留美「アンタ、喋れたんか!?(というより、私より関西弁キツイやないか…)」
ストッパー「今の体になってからやけどな」
今の体というのは、おそらく素顔が出てからという事だろう
留美「さっき能力が分かってないって言ってたけど、どういう事や?」
ストッパー「そのまんまの意味や。うちの能力は性質を『ロック』するんやなくて、5分間だけ『借りる』んや」
留美「えぇ…ストッパーの能力をはき違えてたんかいな…」
まさかの出来事である。今まで自分が使ってた能力が勘違いだったとは…
ストッパー「そもそもうち、ストッパーなんてダサい名前ちゃうけどな」
それは自分でも思っていたが、まさかスタンドから直接言われるとは思わなかった
ストッパー「うちの名前は『トリッキー・フォックス(T・F)』、虎の威を借る狐や」
自分で言うかと思ったが、言われてみると能力的にはそんな感じだ。というか、だから狐面をつけていたのだろうか
留美「(というより、スタンドって意思持ってるもんなんか?)」
少なくとも、今まで会ってきたスタンドは全員、使用者の意思のもとで動いていた
留美「まあええけど…!前の状態からどんなパワーアップをしたか知りたいから、人気のないとこ行くで!」
T・F「はいよ!」
T・Fの応対がまるで友達のようだなと思いながら、私は近くで人気のなさそうな場所を見つけに街中を歩き回った
数時間後
留美「なるほど…なかなかに興味深いわ…」
先程T・F本人から聞いた通り、能力を鉄などに使えば頑丈に、水などに使えば変形して腕だけなら狭い所に入り込ませれるようになったりと、触れた物の特性を腕に身に着け、使用することができた。しかも両腕別々で機能するため、使い方によっては結構便利な能力である(まあ、R・H・C・P戦で分かっていた事だが)
それに加え、もう一つ成長しているところがあった
留美「パワーもスピードも上がっとる…私は運動は全然ダメやのに…」
まあ、別に頭が良い訳でもない為、運動『は』ではなく、運動『も』だが…
ついさっき、能力抜きでどれほどのパワーやスピードがあるのか調べてみたが、確実に以前よりパワーもスピードも格段に上がっていた
T・F「まあ、本体の運動神経はスタンドには関係あらへんしな」
やれやれといった風の表情と身振りである
精神力の化身が本体の精神をガリガリ削ってくるとはいかに…だが、思った事を率直に言うあたり私のスタンドといったところだろう
その時、私はある事を思いついた
留美「T・Fの能力使ったら、もしかして他人のスタンド能力借りれるって事か?」
以前、仗助の家で戦闘になった時、確かに仗助のスタンドは能力が使えなくなっていた
という事は、劣化版かもしれないが、少なからず相手の能力を使える可能性があるという事だ(とは言っても、能力を事前に知っていなければ使えない為、何でもかんでも使える訳では無いが)
留美「これはまたええ事知ったわ♪」
今度会った時にでも仗助達を驚かしてやろうと決め、スタンド共々悪い笑みを浮かべていた
T・F「うちの能力使えば、悪戯の範囲が広がるでぇ」
留美「ふっふっふ、アンタも悪やなぁ」
T・F「何言うてんねん。うちはアンタのスタンドやろ?アンタの考える事はうちの考える事や♪」
この時、あまりにもテンションが高くなりすぎて、近所の住民に白い目で見られたのは言うまでもない
To Be Continued
ストッパー改めトリッキー・フォックスと名乗った少女の能力は触れた物の力を借りる事だった
新たなスタンドと共に悪戯の幅を広げようと模索をしていくのだった
次回『キラークイーン』