【艦隊これくしょん短編集】Love&Love   作:鬼狐

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ノーマルラブ。男女の恋愛のこと。略してNLと呼ぶこともある。
尚、この注訳とタイトルに関係があるとは限らない。

表紙はこちら。
【挿絵表示】

ぜひ、ご覧になってからお読みください。


NL

『NL』

 

十二月一日

不知火です。司令のススメで日記を付けることになりました。

十二月二日

日記を、司令に見せました。

「いや、見せなくていいから。……ってなんだこれ! 超短ぇ! 日記の意味ねぇだろ!」と叫んでいました。

……交換日記だと思っていたのに。違ったようです。でも、人に見せないなら何でも書けますね。『昨日のは、司令に見られると思うと何を書けばいいのか分からなかったせいで短くなった』、とか。

あぁ。やっぱり、誰にも見られないと思っていても相当恥ずかしいですね、こういうことを書くのは。

万が一、いまこの日記を読んでいる人がいたら殺します。

司令が一昨日、リンゴをくれました。

司令がリンゴをくれました。

 

十二月三日

日記開始から三日目。日記帳の一ページの半分も埋まっていません。もう少し長めに書きたいけれど、業務中にあったことは別で報告書にまとめているので、それ以外となるとなかなか書けません。

あ、そういえば。今日は司令といつもより長く二人きりになれました。とても嬉しかったです。

恥かしけ……恥ずかしい。今、顔が赤いです。読んでたらホントに殺しますからね。それも、なるべく惨たらしく。

 

十二月四日

三日坊主になることなく続いています。偉いですね、私。

最近思うのですが、ひょっとして司令は私に対して何か誤解をしているのではないでしょうか。

膝の上に無理矢理乗ろうとしたら『やめてくれ、殺さないでくれ!』と叫ばれました。

普通に、ショックでした。

 

十二月五日

昨日の件を陽炎に相談してみました。『不知火は顔が無表情のままそういうことするから怖がられる』、と言われました。

そう言われても正直、私はあまりその自覚はありません。全身全霊で司令に好意を投げつけているつもりなんです。

もっと分かりやすくラブコールを送った方がよいのかもしれませんね。

十二月六日

はぁ。……あ、思わず日記にもため息を書いてしまいました。ボールペンで書いているので消せないですけど。

今日は司令に抱きついてみました。頭を撫でられました。とても嬉しかったのですが。『お前も歳相応にさみしくなる時があるんだな』と言っていました。……どうも女として見られていない気がします。

まぁ、たしかに見た目も年齢も子供ではありますけど。腹が立ったので司令のエロ本をすべてロリ系のエロ本にすり替えることにします。

 

十二月八日

既にほぼ全ての本がロリ系でした。

頑張ります。

 

十二月七日

嫌なモノをみました。執務室で、司令と雷がお互いに「あーん」をしていました。なんだか仲が良すぎて夜な夜な卑猥な行為をしている兄と妹のようです。まさか、付き合ってたりするのでしょうか。

私も彼女と同じぐらいの身長と年齢なのに。なんだか悔しいです。

もっと、私が女であることを全面に押し出すべきでしょうか。全裸で……いえ、やめておきましょう。いくらなんでもそれは。

 

十二月八日

司令に抱きつこうとして、転びました。

 

おや? どうしてでしょう、これ。なぜ既に、今日の日付で日記が書かれているのでしょう。昨日の日記の日付を間違えた……のでしょうか。でも、書いてあるのは今日の話ですね。どういうことでしょう。

 

十二月九日

司令に抱きついたら、転ばせてしまいました。

 

今日も、今日あったことが既に書かれています。私が痴呆症にでもなっているんじゃないとしたら……正直、怖いですね。誰かが勝手に読んで勝手に書いている、とかならいいのですが。

幽霊とかそういう類のモノじゃないといいんですけれど。私、実はそういうの大っ嫌いなんです。いや、まぁ。この艤装自体、私という艦娘自体がオカルトの塊ですけども。

 

十二月十日

司令に抱きついて胸を押し付けてみました。無反応でした。

 

……いつもは二十時に寝ている私でしたが、今日はより遅くまで起きました。日付が十二月十日になった瞬間、上の文章が紙に浮かんできました。

なんなんでしょうこれ。怖いです。とても怖いです。

でもとりあえず抱きついて来ることにします。

 

十二月十一日

司令が怖がってる私に気づき、頭をなでてくれました。流石司令、私のことをよく知っていてくれています。

 

……今日も書かれています。こわい。でも撫でられたのは嬉しかったです。

 

十二月十二日

日付が変わると同時にその日のことが書かれる以上、予知日記、とか未来日記帳とでも呼ぶべきでしょうか。そんな漫画があったような覚えがありますし。

幽霊が勝手に書いた、などと考えるよりはまだそういう超常現象として処理した方が怖くないですね。非現実的ですが……。

……非現実的な技術で作られた艤装の適応者である私が非現実的だの何だのと言えた義理ではありませんが。

艤装には『輪廻転生を利用した時間軸に囚われない魂の科学的利用』とか『工学的サイコメトリーによる思念の残留の読み取りを使った強化』がどう、とかまるで理解できない技術が使われているようですし、ひょっとしたらそのあたりが何らかの理由と副作用で日記帳に変な効果を与えたのかもしれません。

雑で曖昧すぎるな推測……というか、推測にもなっていませんけれど。考えるだけ、ムダだったような気がします。

 

まぁ、たしかに。今日は休みだったので司令にも会えずにこうしてこの日記に関して考えるしかやることはなかったですけれども。

思いついたことや書きたかったことが既に書かれているというのはなんだかムカつきますね。

こうなったらもう、怖がるよりも利用することにします。せっかく、未来が分かるのですから。

 

 

十二月十三日

司令に全裸で抱きついてみようと思いましたが、陽炎に止められました。

 

むぅ。利用できませんでした。止められると分かっていたから、やるつもりはなかったのですが。

普 通にお風呂に入ろうと全裸になって部屋から出た段階で陽炎に会い、『司令の所に突撃しようとしてるでしょう』と勘違いされてしまいました。たまたま今日に初めて見つかっただけで、毎日自室から全裸でお風呂場まで行っているのに。うっかり提督と遭遇しないかな、という下心もありますけれど。

未来は変えられない、ということなのでしょうか。今こうして付け加えて書いていることまでは、先に書かれていないことを考えるともう少しなんとかできそうな気がするのですが。

 

十二月十四日

司令がお風呂に入ってる所に突撃しようと思ったのですが、中から雷の声が聞こえた気がしたので止めました。現実を見たくありませんので。

 

今日もダメでした。もしかしたら途中から一緒に入っているのかもしれないと思い、司令がお風呂へ行ってすぐに向かったのですが、やっぱり雷の声が聞こえたような気がして引き返しました。

最初から一緒に入っていた、のでしょうか。聞き間違いならいいのに。司令。なぜ、私じゃダメなんですか? 何が、未来予知。なんの役にも立ちません。

十二月十五日

司令に怒られました。悲しいです。

司令に褒められました。嬉しいです。

 

なるほど。なるほど、なるほど。にやけた笑いが止まりません。この日記帳、なんて便利なのでしょうか。

いつものように、朝にこの日記を開いて、今日起きることを確認しました。『司令に怒られる』。その一文が、あまりにも気に食わなくて、ついつい線で消して真下に違う一文を付け加えたのです。

まさか、書き換えた方のことが起きるなんて。なんて。便利な日記。

これさえあれば。司令と、どんなことでも。

十二月十六日

司令と雷がキスをしているのを見てしまいました。

司令に抱きしめられました。

 

司令の暖かさをたっぷりと堪能できました。幸せです。彼が自発的にやってくれたのではなく、私が転んだ拍子に転倒先にいた司令が受け止めてくれただけ、というのは気に食いませんが。

 

十二月十七日

司令が、死にました。

司令がキスしてくれました。

 

今日ほどこの日記を有りがたく感じた日はありません。

大好きな彼を失うこともなく、それどころかキスをもらえるだなんて。今も、あの唇の感触を思い出してニヤけてしまいます。司令が階段で滑った所で、私が走って下敷きになることで助けた際にたまたま唇が触れ合っただけなのですけれど。

もしかしたら、本来はあの階段の時に彼は死んでいたのかもしれませんね。

 

十二月十八日

特になにもない一日でした。

司令が居眠りしていたので、膝に乗ってしまいました。

 

良い匂いでした。……正直、ものすごく興奮しました。もうちょっと。もうちょっとだけ。先の段階に進んでしまいたい。……私は本来、そんないやらしい女じゃない。だから、こんなことを考えてしまうのは。

司令の。司令のせいなんですからね?

 

十二月十九日

司令が褒めてくれました

司令が私を抱いてくれました。

 

まぁ。まぁ、たしかに抱かれましたけど。三日前と同じ状況になっただけじゃないですか。夜を共にする、という意味で書いたのに。けっこう、融通が効きませんね。昨夜、覚悟を決めたのがばかみたいです。……テンションが上がってついついあんなことを書いてしまいましたが、冷静になると恥ずかしくて仕方ありません。

もう少し、おとなしめの欲求にしておくことにします。

 

十二月二十日

司令に撫でられました

司令が私に『すき』と言ってくれました。

 

『最近、戦いの時に隙が多いぞ。何か良い事があったみたいだが、戦闘中は浮かれてないでしっかりと気を引き締めてくれ』

そう言われました。……恥ずかしくてひらがなで書いたのがまずかったのでしょうか。ほぼダジャレじゃないですか。腹が立ちます。

 

十二月二十一日

司令に撫でられました

司令が『愛してる』と言ってくれました。

 

胸が痛くて痛くて、とてもつらいです。『私に』と付けるのを忘れていた。まさか、雷に『愛してる』と言っているところを見てしまうだなんて。

悔しい。悲しい。辛い。胸が痛い。涙が止まらない。嫌だ。嫌です、司令。私は、司令のことが好きなんです。大好きなんです。愛しているんです。

絶対に、渡したくない。

ごめんなさい、雷。あなたには犠牲になってもらいます。

十二月二十二日

司令が雷を抱きしめていました。

司令が雷を急に嫌いになっていました。

司令が雷を抱きしめていました。

 

は。え。なにこれ。どういうことですか。司令が雷を抱きしめるのを見てしまい、急いで部屋に戻ってきて日記を開いてみれば。

どうして私が付け加えた文章がまた消されているんですか?

 

十二月二十三日

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を叱っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殴っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を何度も何度も殴っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷の首を締めていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

 

日記帳を閉じて、開くたびに。書き換えた文章に二重線が引かれて、同じ文章が書かれている?

ふざけないで。こんなの、認められない。認めたくない。なぜ急に、こんなことに。

 

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を叱っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殴っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殴っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を何度も何度も殴っていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷の首を締めていました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

司令が雷を殺していました。

司令が雷に愛を囁いていました。

 

 

 

十二月二十四日

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

司令が私を犯してくれました。

昨日の無断欠勤について怒られました。

 

書き換えに限界がある、ということなのでしょうか。『ありえない未来は起こらない』、とか。……起こりえるささやかな幸せだけで満足する女になれ、ということですか?

嫌です。絶対に嫌。司令が欲しい。司令に求められたい。司令に愛されたい。

司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。司令。

どうすれば雷を殺して私を選んでくれるの。ずっとずっとまえから、私は貴方のことがすきなのに。……ずっと前。何か引っかかる。ずっと前……この日記を書き始める前から、すき。あ。あぁ。あぁぁああああぁぁ。ひょっとしたら。そういうことなのかも。

 

司令が十一月の下旬にくれたリンゴのことを覚えていました。

 

司令が十二月の頭にくれたリンゴのことを覚えていました。

 

あぁ。やはり。日記を遡ってリンゴのことを書いたら、頭の中にリンゴをもらった記憶が現れました。司令も、本当にリンゴのことを覚えていた。それは、つまり。この日記の効力は、この日記が始まった時からしか効かない。それ以降なら、いくらでも捏造できる。

日記が始まる前から続いている事柄を変える文章は、『あり得ない未来』として二重線が引かれて消されてしまうんだ。

つまり。

司令は、雷のことが。十二月よりも前から好きだったんだ。その気持ちを、この日記で変えることは無理。だから。私を好きになることが出来ないんですね、司令。

あぁ。そんなのは、そんなのはだめです。ゆるせない。

だとしたら。

ずっとずっと前から作り直さなきゃいけません。

十一月三〇日

何事もない一日でした

 

十二月二十五日

今日も平和でした。部屋で一人、のんびりしていました。

それと、司令が大量の日記帳を部屋に持ってきてくれました。最高のクリスマスプレゼントです。

 

十二月二十六日

今日も平和でした。部屋で一人、のんびりしていました。

 

十二月二十七日

今日も平和でした。部屋で一人、のんびりしていました。

十二月二十八日

今日も平和。一人。

十二月二十九日

今日も平和。一人。

十二月三十日

今日も平和。一人。

十二月三十一日 平和。

一月一日 平和。

一月二日 平和。一月三日 平和。一月四日平和。一月五日平和。一月六日平和一月七日平和一月八日平和一月九日平和一月十日平和一月十一日平和一月十二日平和一月十三日平和一月十四日平和一月十五日平和 十六日平和十七日平和十八日平和十九平和二十平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和平和

 かりかり。かりかり。部屋の中に、不知火がペンを走らせ続ける音が響いている。彼女の背後には、大量の日記帳が捨てられていた。数十冊、いや数百冊はある。どれもこれも、中身がびっしりと書かれていて、それでいて全ての本に同じことが書かれている。 

 彼女が書き続けているのは、過去の日記だ。十二月以前のことを、真実と嘘を織り交ぜて書き続けている。そして、書き終えると――新しい日記帳を用意して、また再び同じモノを書く。

 ただの日記帳がなぜ、事象を操れる日記帳になったのか。それは誰にも分からない。もちろん、不知火にも。だから彼女は何冊も何冊も同じモノを書き続けるつもりなのだ。いま書いている日記帳が、また『事象を操れる日記帳』になるまで……何冊、何十冊、何百冊、何千冊、何万冊でも。ただただペンを動かし続けるつもりだった。

 そのために、彼女は未来を捏造したのだ。何万時間でも書き続けられるように、既に超常のモノと化していた日記帳の未来の日付に、あらかじめ『平和』だと書き連ねた。誰にも邪魔されないようにと願いを込めて。事実、この数週間の間に不知火の部屋を尋ねる者は誰一人としていなかった。まるで、誰も不知火を覚えていないかのように――不知火は知らない。部屋の外で何が起きているのかを。不知火のことを記憶している者たちが皆、『たまたま』頭に衝撃を受け、『たまたま』記憶の一部を失ったことを。それが、『たまたま』不知火に関してのことだけだということを。

 かりかり。かりかり。誰もが彼女のことを忘れていることを知らず、不知火はペンを走らせ続けている。

 だが。ばたり、と不知火の身体から力が抜け、彼女は倒れた。何も飲まず、食わず。ただ文章を書き続けていた不知火の肉体はとっくに限界だった。むしろ、数週間生き続けたことの方が驚異的だ。

 そして、……不知火は、死んだ。あっさりと、死んでしまった。けれど、それを知ることのできる者は誰もいない。なぜなら今日も――平和な日だから。誰かが死ぬことを知らされるだなんて、あり得ないのだ。今日も、明日も、明後日も、ずっと平和な日々が続いていく。

 もしかしたら、誰かが不知火のことを急に思い出すかもしれない。思い出さなくても、誰かがたまたま不知火の部屋の扉を開けるかもしれない。たまたまずっと漏れなかった死体の腐った臭いが突然部屋から漏れて、騒ぎになるかもしれない。

 その時が、平和の終わりだ――この呉鎮守府の平和が終わるまで。残り、千五十八日。

 

 

 

『Never Love』




残り二本は数日後に。
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