幼女 シュヴァルツェスマーケン来たりて   作:空也真朋

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第7章 幼女の黙示録
第59話 パンツの王子様


 謎の紳士と別れ、カウルスドルフ収容所にアリゲートルを預けた後に放送局へと向かった。そこでアイリスディーナ、カティア、ズ-ズィ女史と再会し、互いの情報交換を行った。

 

 「反体制派も放送局を狙いましたか。ベルンハルト大尉もいたのに放送には出なかったのは何故です?」

 

 「国家保安省を倒すなら、市民や軍に決起を促すのに私が出た。しかし国家保安省本部が潰れ、混乱する武装警察軍を落ち着かせて武装解除させるには、ウルスラ・シュトラハヴィッツが適任と思ったのだ。

 しかしお前がバラライカで出たのは陽動のためと言っていたのに、我々に先んじて演説などした上に国家保安省本部を潰すとはな。たった半日で革命を成し遂げてしまうとは、どこまで有能なのだ、お前は」

 

 アイリスディーナに、続きズーズィ女史も私に言った。

 

 「そうね。打ち合わせじゃ、アイリスディーナと同志たちの解放のみのはずだったけど。貴女、同志たちの解放を了承した時には、そのまま革命を決行することを考えていたわね?」

 

 「ええ、まぁ。事前に説明をしなかったのはお詫びいたしますが、話しても信じられなかったでしょう?」

 

 「………………まぁね。あの時はアイリスディーナの解放すら半信半疑だったし。それを言われても誇大妄想の危険人物としか思えなかったわね」

 

 するとカティアも言った。

 

 「まぁ、ともかくベルンハルト大尉はターニャちゃんが救出したし、国家保安省も倒したし。目標は全部達成できてしまいましたけど、これからどうします? ハイム少将を待ちますか?」

 

 「そうだな……………彼が来るまでベルリン市内の混乱を押さえ、武装警察軍の投降を呼びかけよう。いや、そういえば人民政府はどうなっている? 我々に対し何と?」

 

 「議会や人民宮殿は現在、国家保安省の手の者が制圧しているわ。もっとも、本部が潰れて相当混乱しているようだけど。あと、モスクワ派の中心的人物とみなされていたザンデルリンクという議員が裏切って国家保安省本部をミサイルで潰したことで、酷い拷問を受けているらしいわ」

 

 「やめさせよう。連中が一度でも議員を殺したら、無秩序な武装集団に堕ちかねん」

 

 「そうね。投降を呼びかけ議員を解放させたら、議員とそのまま交渉しましょう」

 

 「解放はいいが、交渉はハイム閣下も交えて行うべきだ。でなければ、これから………」

 

 この後はアイリスディーナとズーズィ女史だけが会話した。ほおっておくといつまでも続きそうなので、無理矢理中断させ、議員の解放へと行動に移った。

 あと、次のBETA防衛戦が終わったら私は内政官になりたい旨をアイリスディーナに言ったのだが、『なんの冗談だ』と全員に不思議な顔をされた。何故だ!?

 

 

 ブレーメ少佐の死亡をアイリスディーナに報告すると、彼女の遺体を確認したいというのでカウルスドルフ収容所での安置している場所に連れてきた。

 ベアトリクス・ブレーメ少佐の遺体を前に、アイリスディーナは目を瞑り胸元の十字架に小さく祈った。

 

 「兄さま、いまベアトリクスが逝きました。どうか迷わぬよう、迎えてあげて下さい」

 

 と祈る彼女の顔は、まるで少女のようであった。

 アイリスディーナとブレーメ少佐は対立している間柄だとばかり思っていたが、何某か立場を越えた重いがあるようだ。気にはなるが、それを聞いて踏み込むつもりはない。

 そのまま埋葬するよう指示すると、もういつもの中隊長殿にもどりベルリン中の武装警察軍の投降の呼びかけに出て行った。

 

 その後、ファム中尉率いる第666戦術機中隊が来て、翌日にはハイム少将と、西ドイツ使者の会談から戻ってきたイェッケルン中尉もベルリンに到着した。

 各所をクーデターで制圧していた武装警察軍も、突然の本部の反社会主義声明と消失により激しく混乱しており、あっさり投降に応じた。

 議員の解放にも成功し、政権の委譲を認めさせることが出来たので、革命軍を改めて『東ドイツ修正委員会』を名乗ることになった。政府は民主投票によって新たな議員を選んでから創る予定だが、その前段階に政治を肩代わりするための組織だ。

 監視システムの撤廃、思想と言論の自由化、自由主義圏との協調等を目指しての政府を創る予定だ。理想はそうなのだが、実務面では官僚として、解放した政治総本部の政治将校を使わねばならず、またまた彼らと政治的に戦わねばならない。

 そこで私もその戦いに加わるべく、内政官への希望をハイム少将やイェッケルン中尉に進言したのだが、やはり即座に否定されてしまった。有能なのに…………

 委員会は主席委員にハイム少将。主席補佐にカティア改めウルスラ・シュトラハヴィッツ。委員にアイリスディーナとイェッケルン中尉とズーズィ女史。他にカウルスドルフ収容所から救出した反体制派の主要メンバーや政治将校の何人かが参加するらしい。

 

 新政権の建設はハイム少将、ズーズィ女史、イェッケルン中尉、そして革命の象徴となったカティアに任せ、第666中隊は前線に復帰することになった。

 だがその前に、臨時の昇格をすることをハイム少将から告げられた。

 

 「諸君、よくやってくれた。革命をこれ程短期間で成し遂げてくれた諸君には深く感謝し、称えたいところではあるのだが、現在BETAがオーセル・ナイセ絶対防衛戦を踏み込まんと迫ってきている。

 第666戦術機中隊には前線復帰してもらう。が、その前に略式ではあるがアイリスディーナ・ベルンハルト大尉は少佐に。テオドール・エーベルバッハ少尉は中尉に。ターニャ・デグレチャフ上級兵曹は正式な衛士として少尉に任命するものとする。現在はこの3名のみだけではあるが、残りの中隊各員も随時昇格の予定だ」

 

 将来的には武装警察軍を解体して只の警察にし、その余った人員を軍にいれる予定だそうだ。その人員でアイリスディーナに大隊を編成させる予定だそうだが、その前段階として少佐に昇格。

 テオドール少尉は小隊長を務めてもらうために中尉に昇格。

 実は私、今まで立場的には衛士訓練兵であった。訓練兵のまま実戦に出ていたのだが、正式な衛士になるには年齢や身長などが足りなく、衛士訓練学校にも通っていないので正式な衛士にはなれないと思っていた。だが少尉の階級と共に、革命のドサクサで正式な衛士にされてしまった。

 つまり内政官の道は完全に閉ざされ、軍人一直線だ。はっはっは。完全に前世と同じだよ………

 

 

 

 

 そして現在。昇格した3名はハイム少将と中隊皆の前で決意表明などをやらされている所だ。だが私は落ち込んだままで、アイリスディーナの決意表明も耳に入ってこない。何故なら、内政官になりたい旨を全員一致で否定されてしまったショックから抜け切れていないからだ。

 こんな茶番などやめて、今すぐバーにでも駆け込みたい。

 

 『親父、コーヒーをくれ。悲しいことがあったんだ。人生のように苦く、私の絶望のように黒いコーヒーを! 今、私の心を癒やせるのはカフェインしかないんだ』

 

 などと言ってカフェインに溺れたい。

 隣では次の順番を控えているテオドール中尉が『ヤレヤレ』といった感じで哀れんで見ているのが堪に障る。

 

 「以上。不肖の身ではあるが、全力を持って国家に尽くす所存だ。中隊の皆は変わらず私について来て欲しい」

 

 と、アイリスディーナは話の終わりに敬礼。それを皆で敬礼で返して終了した。次はテオドール中尉の番だが、出て行く前にこんなことを私に言った。

 

 「いいかげん落ち込むのはやめろ。一人でゲイオヴォルグを全滅させたり、収容所からアイリスディーナを救い出せる奴を内政官になどするはずがないだろう。死ぬほど軍人が似合っているから退役まで務め上げろ」

 

 ――――なんだと! くそっ、魔導刃で切り裂いてやろうか!

 

 などと八つ当たり気味に思ったら、本当に魔導刃が出てしまった!?

 

 

 

 

 

 「テオドール・エーベルバッハ少尉改めエーベルバッハ中尉。只今、決意をのべます」

 

 ………………………いや、何ともなっていないな。テオドール中尉は何事もなく皆の前に立って話している。

 気のせいか。気をつけよう、魔力の暴走など冗談ではない。

 

 

 ――――――パサッ

 

 なっ!! テオドール中尉のズボンが落ちてしまった!? やはり私は魔導刃を暴走させてしまい、テオドール中尉のズボンを切り裂いてしまったというのか!?

 

 「自分ごときが中尉などになり、正直不安ではある。しかし、任されたからには全力でやっていくつもりだ」

 

 ―――しかも気づいていない!? そのままパンツ姿で決意表明!? 全力で何をするつもりだ!?

 

 「知っての通り俺には妹がいた。そして彼女は中隊の皆を裏切って窮地に陥らせた。これはリィズを説得できなかった俺の責任だ。その件をここで謝罪をしたい」

 

 ―――――パンツ姿の謝罪など受けられる人間がいるのか!? 私はイヤだぞ!

 

 「これから向かう先のBETA攻勢は非常に厳しいものだと聞く。だが、与えられた役割に恥じないよう国家に忠誠を尽くすことをここに誓う」

 

 ―――十分恥ずかしいよ! パンツ姿で忠誠を誓って、東ドイツを地の底まで貶めているぞ!!

 

 「…………………どうした、カティア? 顔が赤いぞ。いや、少佐やファム、アネットもか。イェッケルン中尉まで? シルヴィア、何故俺をそんな目で見る?」

 

 

 

 

 その後のことはテオドール中尉の名誉のために割愛しよう。ただ、その夜は今日一日の悲劇を洗い流すため、私とテオドール中尉はバーで大いに迷惑をかけたことだけを明記しておく。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

第7章予告

 

 

 『失ったよ。軍人としての誇りも名誉も…………』

 

絶望を見た東ドイツ青年軍人と

 

 『大切なものが胸から抜け落ちたようです』

 

人生に希望を見失った幼女

 

この日、二人の友情がとあるバーで生まれた

 

――――それはこの国の小さな奇跡の始まりであった

 

 「くそっ!この国は終わりだ! いや、もしかしたらヨーロッパも………」

 

滅亡迫る東ドイツを舞台に織りなす、究極のヒューマニズムストーリー

 

マヴラブSS最大の感動大作

 

『幼女 シュヴァルツェスマーケン来たりて』

 

『第7章 幼女の黙示録』ここに開幕!

 

――――「あなたも、私と希望をさがしに行きませんか?」

 

物語の終わりを目撃せよ!

 




以上、ウソ予告でした。
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