全光線種がレーザーを放つ直前、私はすでに照準を完了していた魔術弾を撃った。解き放たれた弾は狙い過たず全ての光線種の足元を崩し、なぎ倒した。
倒れた光線種のレーザーの向かう先は、狙い通り巨大BETAへ!
巨大BETAは激しく体表を融解させ、周囲のBETAを巻き込みながら身もだえる。
やがて光線種は次々レーザーを止めた。
だが無理にレーザーを止めようとしたためであろう、光線級は腹を大きく膨らませ
――――爆発した!
「奴らは体内に高エネルギー体のG元素を持っている。無理に押し止めたレーザーが、それらを誘爆させているのか!? うお、ヤバイ!!!」
重光線級は奇跡的に全てが未だに爆発はしていなかった。
しかし3倍もの体積に膨らんだそれに、連鎖する爆発が迫った瞬間だ。
私は万一の用心に展開していた25層にも重ねた防殻を全力展開。
そして上空へ離脱!
太陽の如き眩い爆発光と共に、
全ての光線種を誘爆させた巨大な爆発が起こった――――!
それは25層もの防殻すら全て粉砕。
だが、私は最後の防殻が破られるまでに、全力で術式展開。
「怒りの日は今。堕落の終焉を告げる鷲は来た。
高き御空より裁きの槌は雷雲に乗ってきたる―――――」
『苦しい時の神頼み』などと言うが、この時ばかりは初めて自ら聖句を唱えた。
「落ちよ、吠えよ、信仰無き邪悪共の頭上へ。
断罪する裁きの雷霆よ―――――シュヴァルツェスマーケンを下せ!」
最後の防殻が破られた瞬間、全力の一撃を放った!
「収まったか。万が一を考えて25層もの防殻を用意しておいたが、それでも間に合わなかったとはな。危うく私自身がベルリンを消滅させる所だった」
最後の一撃は爆発の威力を力ずくで打ち消すためのものだ。お陰で、爆発の威力をBETAのいた一帯のみに限定させることが出来た。
私はBETAが消滅し、すっかり様変わりした大地を見下ろした。
大地は半円状のクレーターに抉られ、高熱でガラス化してツルツルになっており、あちこちピカピカ光っている。
「『神のクソッタレ。邪悪、業悪、悪辣、悪魔な存在X。身に覚えのない難癖でねじ曲げた私の人生を返せ』…………よし、心は正常だな。正しく神を僭称する存在Xを憎悪している」
私は一番心配だったエレニウム九五式宝珠による精神汚染の影響が無いことに安堵した。
光線種は体内の超高エネルギー体『G元素』を自身のレーザーで灼いて自爆。
、他のBETAもそれに巻き込まれ、きれいに蒸発した。
無論、BETAの足場を耕すだけならあれ程の魔術展開は必要無い。あれは25層もの強力な防殻や防御膜を展開するためのものだ。万一レーザーの照射を受けた時の保険であったのだが、それをしていなければベルリンは…………いや、それ以上の範囲が焦土と化していた。私はもちろん、撤退途中のフッケバイン大隊も、私の元いた孤児院の皆や避難民までも生きることは出来なかっただろう。
さて、光線種や一般のBETAは消滅。だが最大目標の巨大BETAはというと、
「まだ生きているのか。あの質量とはいえ、相当な生命力だな」
巨大BETAは体表が大きく融解し、大きさも3分の一程になりながらも健在。この場から逃げようと、溶けた足を不器用に動かして大地に潜ろうとしている。
「だがまぁ、それならそれでいいか。わかりやすくカティアの仇を取るとしよう」
私は再び突撃砲を巨大BETAに向ける。
そしてエレニウム九五式宝珠稼働。
「『主よ。我、御許に近づかん』」
デカブツの背中の損傷の激しい部分に、高威力魔術射撃開始。
上空から数発撃ち込むと空洞が見えたので、そこに向かって突進。
アリゲートルに装備してあるマチェットナイフを取り、そこを中心に魔導刃を展開。
加速をつけた機体から魔導刃をたたきつけ、空洞の裂け目をさらに大きく切り裂く。
機体が通れる程の大きさにまで広がると、私はそこから巨大BETAの体内に侵入した。
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バルク少佐Side
「BETAがいない? 一匹もか?」
『いえ、正確にはあの巨大BETAが一体のみいます。しかし体表は大きく融解し、体積を大きく減らしております。動きも緩慢で、大分弱っているようです』
「俺も観測をする。見張りを代われ」
俺とエレメントの相方のラーケンはベルリンに引き返し、遠距離からあの巨大BETAが観測できる位置まで戻ってきた。偵察任務なぞ衛士駆け出し以来だが、『戦場で学んだことは何一つ忘れない』の言葉通り問題なく成すことが出来る。
さて、俺はラーケンと代わり問題のあの場所を観測した。
あの巨大BETAだが、ラーケンの言葉通りの状態になっており、死骸になる一歩手前にも見える。他のBETAは死骸どころか影さえも見えない。
そして何より不可解なのは、問題の場所はクレーター状になっていることだ。そしてそのクレーター内の土は所々溶けたようになっている。
「あれは、高熱によって灼かれたのか? あそこまでの高熱をどうやって発生させたんだ?
それに問題のアリゲートルは…………ターニャ・デグレチャフはどうなったんだ?」
『謎ですね。他のBETAは全て蒸発したのでしょう。何かを語りそうなのは、あの巨大BETAのみですか』
「ああ……………うっ!?」
『どうしました、何か異常でも?』
「デカブツの動きが完全に止まった。一瞬体を大きく震わせたと思ったら、一切動かなくなっちまった。多分、くたばっちまったんだろう。
とりあえず、ベルリンをBETAに制圧される驚異は無くなったな。周囲には敵影もいないことだし、この報告をどこかの拠点へ送ったら、近づいてあの場を詳しく調査するか」
『了解です。ベルリンのCPの機能は生きているので、そこから国内の司令基地へ長距離通信を行います』
ラーケンが報告をしている間、俺は観測をやめて警戒に戻った。何をするにも、必ず一方は周囲の警戒を担当をするのは基本。駆け出し時代から、完全にこの習性は身についている。
『え? 何ですって!? …………原因はわからない? …………了解しました』
「どうした。向こうでも何かあったのか?」
『はい。前線からの報告ですが、圧力を続けていたBETAが突然攻勢を止め、一斉に撤退しはじめたということです。尚、原因は不明です。
ただ、ベルリンに謎の光が観測された直後にBETAが引いたことから、”ベルリンに神がご降臨され、奇跡をもたらした”などという噂が広がっているとか』
「……………………それは先程発生した光、だな?」
『はい。”BETAの脅威がないのなら、それに関しても何が起こったのか調査せよ”との命令です』
「正式な命令となったか。なら命令遵守よろしく、あの穴ボコにいるバカでかい芋虫を調査に行くとするか」
『了解です』
俺たちはクレーターに向かい出発した。
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ターニャSide
「しかし恐るべきBETAだな。これが再び現れてまた挑むとなると、やはり何とか体内に入るしかないだろうな」
巨大BETA体内の長い空洞を進みながら私は呟いた。戦術機が楽々進める空洞など、これがBETAの体内など信じられない。ここにあの大量のBETAを入れているのか。
これがこの一体だけとは思えない。おそらくあと数体はいるだろう。これが再び出現した時のために、この調査で何とか弱点のようなものが見つかれば良いが。
やがて終点に着いた。BETAの体内だというのに、眩く光っている場所に着いたのだ。この光はどこか光線種の放つレーザーに似ている。
そこには一際輝く柱の元に、光る地面に20体程のBETAが蹲っていた。
私がそこに入ると一斉に襲いかかってきたので、貫通爆裂術式をかけた弾で応戦。全滅はさせたが、いつもより手強い感触がした。いや、必死だったというべきか。
どうやらここが巨大BETAの中枢部。ここがエネルギーの元であり、BETA群長距離遠征のエネルギーをまかなっている所か。
私は一通りこの場所の記録を取ると、中央の柱に向けて発砲した。
パァン! パァン! パァン!
術式弾を3発くらいながら、尚も健在な柱を見て呟いた。
「ふむ、削れてはいるが、相当に固いな。ならば!」
私はより強力な貫通術式を劣化ウラン弾にかけた。
そして、ヒビの大きく入った場所に精密に狙いをつけ―――
―――――発射!
バキャァァ!!
「やった! 砕けた!……………………う?」
柱を破壊した時だ。その瞬間全てが止まった。
砕けた柱の破片は落下することなくその場に留まり、機体内の計器も同じ数値を示したまま動かない。
光すらその場に留まり、私以外の全てが時が止まったように動かなくなった。
(これは…………この現象、覚えが有る。まさかヤツが来るのか?)
それは砕いた柱のすぐ近く。見覚えある老翁の姿となり、顕現した。
―――――――久しぶりだな、我が子よ。あれより信心は育んだか―――――
「存在X!? 何故ここに!?」
母艦級との決戦は決着。
そして欧州最大の戦いも、BETA撤退により勝利をおさめた。
だが、突如現れた存在Xの目的は?