[常識なんて人が作った物だ!だから…」
剣は僕の生きがいだった…僕のすべてだったんだ。
漫画に影響され剣道を習いだし、埼玉県2位にまで上り詰めた。
だけどある出来事がきっかけで僕は剣を握っていない。
それからはただただ現実を生きるつまらない人間になった。そして高校の入学の一週間後、僕は変な夢を見ることとなる。
・・・・・・・・・・・・・・・
「夢見し者よ、あきらめるのか、永く培ってきたものを捨てるのか」
白い空間に漂っている僕に声が聞こえてくる。
夢だからこそ夢と気付かずに、夢だからこそ変な疑問を持たなかった。
…僕が培ってきたもの?
「そうだ。おまえが思い、願い、そして望み続けたもの」
一つだけ心当たりがあった。
…剣道はもうやらないって決めたんだ。
「剣の事でない、それによって失ったものだ」
…意味わからないよ?
僕は剣道しかやってこなかった。
失うものなんてそれ以外ないくらいに…
「お前は理想を追い求める心、夢、生きがいを失った」
っっっ!?
言葉が出なかった。そうだ、僕はあの出来事の後、その時あったものの全てを捨て、只のつまらない人間になった。
その自覚はあったし別にそのことに関して不満もなかった。
現実を認め、それに対して諦めを抱いたのだから不満どころか興味、関心、執着心さえ失っているのかもしれない。
そんな僕は、僕が本当に僕であるのかわからなくなる時がある、まるで僕は只のゲームのキャラで、別の人に僕は操つられ、勝手にイベントは進んでいく。
理想への探求心、夢、生きがい、それらを持っていないということは同時に無気力であるといえ、それはまさに今の僕のこと、いや僕そのものだった。
すべてを見透かしたこの声の言っていることは往々にして正しい。
只一つのものに心を打たれ、一生懸命努力をし、自分の未来を託せるもの。
・・・そんなものを見つけることができたにも関わらずその全てをなげうって、逃げ出した人間に対してこの平坦な声は攻める様子も、憐れむ様子もなかった。
この声はただただ真実を並べて僕に確認を取ろうとするように…いや、僕にそのことを思い出させようとするように問いかけてきたのだ。
その事実は僕に怒りを感じさせるには十分だった…それから暫くして鼻を鳴らしながら少し馬鹿にしたように僕は言った。
…失ったんじゃない見切りをつけたのさ。結局現実なんてその程度だと、だからそんなものいらない。
「現実なぞ、人が集まった結果に過ぎん」
…それでも人はその現実に生きてるんだよ‼それが常識だ!!!!!!!!!
僕の一番したくない話題にどんどん踏み込んできて、核心を突いてくる。どうしようも無い位腹が立って今度はヤケクソ気味に怒鳴った。
「常識なぞ、人の作った物だ。ゆえに…
僕はそこで目を覚ました。いや覚まされた、かな?
・・・・・・・・・・・・・・・
頭が痛かった。これは疲労からくる痛みでも精神的な痛みでも、ましてや風邪からくる頭痛などでは決してない。
その痛みの元凶は目の前にいるからだ
「私の授業から寝るとはいい身分だな、水無瀬!」
もう一度僕の頭を辞書で思いっきり叩いて来る。それを薄い教科書(数学)でガードしながら
「辞書は調べ物の時に使う物であって叩くものでは…」
必死に説得 (?)をする。
しかし先生はその講義に目(耳)もくれずに薄い装甲を正面から突破してくる。ふと横を見ると(昨日決まった)委員長が僕を睨んでいるのに気づいた。
僕以外にも寝てた人はいたのにこの教師も委員長も…泣きたくなりながら反論を試みる
「あと僕以外にも寝ているひ…
「うるさい、黙れ、静かにしろ、えーっとあと静かにさせる単語は・・・」
最後まで言い切れない(泣)
恥ずかしいくらい大きな悔しさと情けないほど小さな勇気を携えてこの教師に反撃を仕掛ける。
「こんな所で辞書を使うな!しかも今の授業は数学だろ!!」
この言葉を聞くと鬼畜女教師は一瞬驚いたようにしたが、そのあとにんまり笑い
「そうだな、では今やっていた問題を解いてもらおう(ニヤニヤ)」
と、言ってきやがった。
当然寝ていた僕にはどのような問題か想像することもできない。
くっっ!ヤツのほうが一枚上手だった。しかしまだ負けるわけには行かない!!
仕方がないから僕は立ち上がり今日一番の大声で
「すいませんでした」
・・・・・・・謝ったのだった
・・・・・・・・・・・・・・・
僕は水無瀬圭、新総盟学院附属高校に通う一年だ。この学校の学力は並の上、部活は帰宅部、そんなつまらない人間だ。
そして、これからもつまらない人生が続いていくと思っていた。
すべてを失っていた…いや、全てに見切りをつけていた僕はあの夢ですべてをはじめることとなった・・
一人の少女の思惑と神の遊戯、そして全人類の未来をかけて・・・
授業が終わるとつかれきった僕の前に一人の女子生徒がやってきた。
「ありがと、おかげで授業がつぶれたよーみなっち」
このニヤニヤ笑いで心のこもっていないお礼を言うのは前川清香、全然清くない体育会系だ。
中学からの腐れ縁で凶暴なバーサーカーである。
口という大変便利な器官や、言語という高等技術を所持しているにもかかわらず、何よりも先に手が出る足が出る。
だが、なぜか昨日殴られたときに男子達からいいなぁと、言われた。…僕のクラスはMが多いのか?
「清香、お前はどっちにしろ寝てただろ!あとお礼を言うならなんか寄こせ、ついでにいつも言っているがみなっちをやめろ、女みたいだろ」
「おうおう、一気にそんな沢山言うと会話相手である私は混乱してしまいますのことよ。・・・まぁそんなこと言ったってみなっちはみなっちだし、あとあたしがあげられるのなんてパンチぐらいしか…」
「恩をあだで返すな!!」
「うーんパンチがだめなら…パンツ?」
「ぶっっ!!おまっ、お前何の話してんのっ!?」
やっぱりぜんぜん清くない。まったくなにを言ってんだよ、仮にも女の子だろ、思春期男子の前で…
「話変わるけどみなっちは何で口調が乱暴なのに一人称が僕なの?」
「ほんとに話変わるな、って言うか中学でも聞いたことない質問を今頃するか?」
「ねぇ、なんで?」
僕の質問は無視なんですね、清香さん
「はぁ、昔の名残が消えなかっただけだ。何か深いわけがあるわけでもない。」
「何だ。つまんないの、もっと壮絶なものを期待していたのに」
「自分から聞いといて勝手にあきれるな!!大体そんなこと言うんだったら僕も言いたい事ある
ぞ。」
「このパーフェクトな大和撫子たる私にどんな文句があると?」
「どの口が言う、このバーサーカーお前はなんで名前と性格があっていないんだ!」
「それこそ今頃しますか、みなっちさんよ」
「僕は今、どっかの先生のせいで精神的に大きなダメージを負っているんだ。そんな人間に追い打ちをかけてくる女性の名前に『清い』が入っているなんて認められるか」
「うーん。名前を改名したほうがいいのかな」
「そっちじゃなくて性格を変えろよ!」
と、いつものように馬鹿なやり取りを繰り広げていると、誰かに腕を掴まれた…結構強い力で。
「ちょっといいかしら?」
「委員長??」
話しかけてきたのは授業のときに僕を思いっきり睨みつけていた委員長だった。
彼女とは一度も話したことがなかったので少し緊張する。
「何にも言わずに着いてきて」
「はぁ?ちょっとまっ!痛いから離して、ついでに話も聞いて!!」
「つまらないダジャレに興じているほど私は暇じゃないのよ」
そう言って委員長は僕を引っ張っていった。
「・・・おーいみなっちー私は放置ですか」
・・・寂しげの清香の声が廊下に響いたのだった
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