握りしめた幸せを   作:夜空 星月

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12話【眠り姫】

ワシと淡海が出会ったのは ワシが魑魅魍魎の主を目指す前

ワシがまだ 12、13程の年だった

 

親は いつの間にかいなくなっており 気付いたら1人だった

そのせいか 寂しいという感情もなく これが当たり前だった

 

そんな時 淡い水色の羽衣を被った美しい女がふわりと現れた

驚いたワシは 何も出来なかったが 女は優しく笑っていった

 

《…なんで、お前は泣いてる?》

 

その一言に目を見開いた

ワシは泣いていないはずだ、と…

瞼に触れても 濡れておらず この女は何を言ってるんだ、と

 

でも、女はクスリと笑って言った

 

《お前の心が泣いてるんだ …寂しいなら妾と一緒に来ればいい》

 

今思えば、ワシが初めての子だったのかもしれん

今では、人買いから子を買っとるが…

 

素直に付いて行き、ワシは5年の間淡海と一緒に過ごした

 

その中で聞いたのは、ある “眠り姫” という異国の話だった

 

 

《ーーー…美しい姫がいた その姫は美しすぎる容姿ゆえに 魔女に妬まれた

魔女がかけた呪い、それは永遠の眠り、いわば死と同じ呪いだった

しかし、死んだわけではない 美しい容姿は腐らず そのままの姿のまま眠り続けた

姫の両親、王と妃は 望みをかけて 美しい姫に似合う美しい部屋に姫を寝かせた

…それから100年

両親は死んでしまい 姫達が住んでいた城には誰もいなくなった》

 

 

美しい容姿のせいで、永遠の眠りという呪いをかけられた姫は

とても気の毒だと、子供の時は思った

 

 

 

《…だが、そこに迷い込んだ美しい王子がいた

王子は 城の中を見て回り 姫の眠る部屋に辿り付いた

血の通っていないような真っ白な肌 閉じられた瞼に影が出来る睫毛

高い鼻 紅色に色付いた唇

その全てに魅せられてしまった王子は その紅色の唇に惹き寄せられるように 口吸いをした

ゆっくり離し、名残惜しそうに 部屋から出ようとした王子

その時 目を覚ましたのは姫だった

姫は永遠の眠りになど付いていなかったのだ 100年という人間では

とても長い月日の中で 人間に殺される日を待っていたのだ 魔女は

 

しかし ちょうど100年経ち目を覚ました姫

その美しい蒼色の瞳に魅せられ 告白した王子 そして2人は末長く幸せに暮らした》

 

 

 

その姫の容姿は 金色の長い髪に蒼色の瞳だったらしいが

 

いま、目の前にいる女はなんなんだろう

 

今なら王子の気持ちがわかる

 

惹き寄せられる唇に触れようと そっと近付いた

 

紅い唇に触れると 自分の唇も寄せようとした、のだが…

 

ワシは目を見開いた

 

泣いていたのだ 女が

 

苦しそうに 切なそうに

 

時折 絞り出すようにいう言葉

 

兄様、父様母様ごめんなさい、助けて

 

この3つだった

 

ワシは 立ち上がり 襖にそっと寄りかかった

 

何をかかえているのか、知らんが、この娘…

 

 

ワシのもんにする

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