『…ん… ぁ…あれ…』
「あ、目覚めた?朝霧」
『……………、しゅう、や…?』
そう言えば、ニコッと笑った終夜
深紅のルビーのような瞳を細めて笑う姿はまるで太陽のよう
「…ふぅ、吃驚したよ 淡海さんと一緒に帰って来た朝霧が気絶してるから」
『…あ、はは…、でも私、いつ気絶したんでしょう…』
「…?…覚えて、ないの?」
深底不思議そうに言った終夜にコクリと頷く
金色が見えたと思ったら、ブツリと意識が途絶えたのだ
金色…もしかして、あの妖じゃぁ…って…そんなはずないじゃん!
「…なんかね、淡海さんが言うには 自由すぎるぬらりひょんという妖に朝霧を取られたそうになったって…」
『へぇ…自由すぎる“ぬらりひょん”という妖…………ん?』
ぬらりひょん…?
あれ、なんか忘れてる気がする…ーーー
あ"っ思い出したぁ! ぬらりひょんってぬら孫の主人公のお爺ちゃんじゃん!
わ、私 雪麗さんのことは覚えてたのに… ま、女子に会いたいと思ってただけだしね
…ぬらりひょんに会ったのは、予想外だったな…
「…どうかした?朝霧」
『あ…ううん なんでもないです』
「…そう?…ねぇ、朝霧 その敬語ホントに抜けないの?」
『…あぁ…まぁ…』
敬語は私がこの世界に転生トリップした時から使っていたせいか、今では全く抜けなくなってしまった
癖、みたいなものだろうか… 標準語を喋っている方が違和感がある
でも、そんな私に「そっか」と言って笑ってくれる終夜は優しい
終夜とは、最初に会った頃より随分打ち解けた
最初は、いつも瞳を隠すように前髪を伸ばしていて、俯いていた
でも、同じ家に引き取られてからは、よく話すようになった
終夜は、人の表情で何を考えているのか読み取ることが出来るようで、よくさりげなくだけど気にかけてもらっていた
『…それにしても、終夜は…』
「…ん?」
『…気絶、してなかったんですか?』
そういうと、気まずそうに笑いながらコクリと頷いた
「…僕の元いた家がお寺とか、神社とかに関係しているところだったからかな?
そういうのには慣れてるんだ。自然とそういうのには強い体になっちゃっているみたいで…」
『そうなんだ、私と似てるんですね…』
「…朝霧も、そうなんだ…」
さすがに、花開院本家で、次期当主の妹だなんて言えないけれど、このぐらいは許されるはずだ
…でも、そうなんだ
終夜も…妖とかの妖力になれちゃうほどそういうのに関係のある家柄だったんだ…
似ている、私と終夜は…
なんだか、これ以上は聞いてはいけない気がして、話を変えた
『…そういえば、妙に家が静かじゃない?皆、まだ気絶しているのですか?』
「…うん…さすが、淡海さんだよね…皆が気絶してから半刻は経っているんだけど、皆起きる気配はなくって」
『…!そうなんだ…』
それからはしばらく、終夜と話していた
…少し思ったが、終夜は体、大丈夫なんだろうか
私は淡海ちゃんの妖気を真正面から当てられて気絶はしなかったものの、途中倒れてしまった
終夜だって、近くにいなかったけれど、体調が悪くなったりするんじゃないか
そう思っていたけれど、全然元気そうで安心した
そう言えば、終夜は笑った
瞳が哀しそうに揺れていたことには、気付かないふりをした
指摘すれば、今にも泣き出してしまいそうなほど、不安定のような気がしたから
この時、朝霧 終夜 15歳 原作が始まるまであと2年