『淡海ちゃん 嫌です!絶対に嫌です!私が怒られる!』
「……なんでだ きっと 皆も気付かないだろう 」
『…終夜にやらせれば…』
「終夜は男だろう?」
『…………』
それはいきなりだった
私と終夜がここで暮らすようになり一月
私達はここに馴染み 淡海様のことを淡海ちゃんと呼ぶほどの仲にまでなった
しかし 日が経つにつれ 淡々と不機嫌になっていく淡海ちゃん
何かあったのだろうか と心配する私達を笑って見ていた 使用人の1人である
茜さんは この時期は毎回こんな感じになるから そう言った
どういう意味かわからず 首を傾げていた
しかし やっと今日 その意味がわかった
1週間前からは もう自室から出なくなった淡海ちゃん
さすがに心配になり 声をかけに行くと 涙声で 中に入れ と言った
あの男盛りで着物を着ていることすら 図々しがってる淡海ちゃんが涙声なのだ
いつもの 失礼します も忘れて中に入れば 切なそうに眉を寄せている淡海ちゃんの姿が
『…ど、どうされたので……ぇ』
頭に生えている耳 それに目がいった
まるでそれは狐の耳のようで… でもこういうのは妖にしかないわけで…
……でも 淡海ちゃんからは妖気は感じ…感じ……る
『感じる!』
「うわッ いきなりどうした!」
『淡海ちゃん、貴女妖なのですか!?」
「……ほぅ よくわかったな 褒めてつかわそう」
いやいやいや 耳生えてりゃ皆気付くだろう
もしや と思い少し後ろを覗かせて貰えば ユラリユラリと揺れる尾が
……あ、やっぱり妖だ
「…妾はな 半妖なんだよ 狐と人間の
いつもは人間の姿をしているが この時期8月になると妖気が漏れ始め
本来の妖の姿になってしまうのだ …困った体だ」
説明しよう
淡海ちゃんは大妖怪である狐の妖と人間の半妖なのだ
得意とするのは やはり化けることで 人間に化ければほとんどが人間と
近いものになり 流れる血も完全ではないが人間となる
しかし 大妖怪の血をずっと押し込めておくと 妖気が抑えきれなくなり
一定の時期になると 妖気が溢れ始め 完全な妖になってしまうらしい
ここの使用人は全員知っているみたいだが この部屋から一歩でも
出れば 屋敷中に淡海ちゃんの妖気が充満し 妖怪屋敷のようになってしまう
だから出ないようにしている…らしいのだが…
「……そこで 朝霧にお願いがあるのだ」
『…?なんでしょう?』
何か買ってきてほしいものでもあるのだろうか
そう思うのは 普通だと思う でも…
「妾の着物を着てここに閉じこもっていては くれないか!
妾はもう こんなとこに閉じこもっているのは 絶対に嫌なんだ!
自由がない生活なんて…面白くないではないか!」
『………一歩でも出たらアウトなんですよね?』
「…そうだ だが妾はもう我慢出来ない だから朝霧に頼んでいるのだ!」
『それじゃあ意味がないでしょ〜!』
そして のちに勝ったのは…
「…ふん 勝った…」
『……う、うぅ…』
もちのろん淡海ちゃんだ
じゃあ 行ってきまーす そう言い部屋を飛び出した瞬間
ブワッと屋敷中に妖気が立ち込め バタバタと使用人たちが倒れてしまった
それを見た私は ギョッと目を見開いたが 淡海ちゃんは
「気絶してるだけだ」とウィンクをして去って行った
『…お、淡海ちゃ〜ん!』
半妖
狐の大妖怪って…まさか、ね