横須賀港大型艦停泊場所。かつて虎の子とも呼ばれた米国海軍第七艦隊の本拠地であった場所にいまは海上自衛隊の大型護衛艦と離島防衛用機動護衛空母が2隻泊まっている。
新たに戦力として第一特別編成護衛隊に配備されたのは護衛空母「あかぎ」「かが」の2隻。かなりな戦力として期待されている艦隊に、遂に任務が下される。。。
ー入港22日目ー
横須賀港を出航してから既に3時間。
今回の任務は舞鶴近海、及び、日本海の未確認艦隊の殲滅である。今回の編成は「しなの」「おおなみ」「あさぎり」の3隻編成で、一路、呉基地を目指していた。呉基地で、護衛艦「いなづま」と合流した後、佐世保基地へと向かう。「いなづま」を佐世保へ送り届けてから、舞鶴へ向かうはずだったのだが、随伴する艦艇が少ない。なぜかと言うと…
一昨日ー
「…以上の理由より、第一特別護衛隊の出動を命じる。」
「受領します。ですが、なぜ艦隊を二分して行動するのですか?」
と、俺の前にいる鷲崎孝文海将が我々に対して新たな任務を下した。
それは舞鶴近海、および日本海の未確認艦隊殲滅を主任務とした艦隊練度強化。だ。
実践が練度強化と言われるのだから、鼻で笑いたくもなってくるが、ここは堪える。
だが、不自然なことに艦隊を二分せよとの命令だ。
それは、「しなの」「おおなみ」「あさぎり」は佐世保ルートを。それ以外の艦隊は大湊ルートを通って舞鶴を目指す、というものだ。
「新しく就役した空母は出来れば失いたくない。東北、北海道方面は大湊配備の部隊と三沢の空自の努力で駆逐し終わったし、大半の敵はロシア海軍港を落とすべく全力をそちらへ向けている。それを機に、戦況が膠着している舞鶴の状況を変える。」
確かに空母は受領した。横須賀港で待機中である。なら、航空機だけを飛ばして行けばいいのでは…と思ったが、慣熟訓練をまだ済ませていない。海将はその事を仰っているのかもしれない。
「…それはつまり、米軍もいる佐世保はもう艦艇でパンパン、ということですか?」
「実際そうなのだ…こちらの護衛艦も何隻かダメージを食っていてな…入渠ドックもパンパン、対馬を回って呉に回そうと思ったが、対馬にどうも厄介なのがいるらしいのだ…」
「厄介なの、でありますか」
対馬と聞いて、少し嫌な予感がした。だが、その予感が当たるとは限らない。
「とにかく、その情報は佐世保で受領せよ。後そうだ、呉に寄ったら『いなづま』を回収し、佐世保へ迎え。補充戦力らしい」
「了解しました、それでは、指定された時刻に出港します。」
そして、呉に入港し、護衛艦「いなづま」と合流した艦隊は一路、佐世保を目指していた。
ー入港26日目ー
いつ敵機が襲ってくるか、いつ敵潜水艦から魚雷がくるか、いつ敵影が見え、砲戦になるかわからない状況の中、我々は第二警戒配置のまま、佐世保に急行していた。
「副長、佐世保入港はいつごろだ?」
「ヒトキュウフタマルを予定しています。」
「うむ…少し急いでいこう。早く厄介者の情報を得たい。両舷第四船速!」
「両舷第四船速、アイ!」
「これなら、ヒトハチゴーゴーには佐世保に着きますかね」
「なるべく早くしたいからな。航海長、御床島までこの速力を以上せよ」
「ヨーソロー!」
ー午後6時45分ー
佐世保に予定よりも10分早く入港できた。…が、入港に手間を食った。なにせ、大型艦が通常艦船停泊港に入港するのだから、
いつもとは勝手が違ったからである。
入港後は総監部指令に挨拶をして、しなのに帰ったら珍しく客が来ていた。
ーしなの艦長室ー
「小官は、護衛艦『あしがら』艦長、高橋竜一等海佐であります。先ほど、防衛省の指示を受けました。明日の出航は、『あしがら』『むらさめ』の2艦も同行させていただきます。これが、防衛省より届いた命令書です。」
そう言うと、懐から封筒を差し出した。防衛省の印字が入っているやつだから、本物であろう。
「確かに受領します。しかし、こんな報告を私は聞いていませんでしたが…」
「はい、今しがた、防衛省からの命令で来ましたので」
「なるほど、それでは我々のところには情報は来ないわけだ…(報道されてないってことは、発表してないな?上は…)」
この時の報道規制は意味があるのか…?と心底思ったが、上に対してアレコレ言える立場にはないので控えておくことにしよう。
「では、明日の出航時刻は」
「明朝マルゴーフタマルに出航する」
「了解しました」
「では、よろしく」
そして、客人が帰ってから、俺は鹿屋航空基地から発信した
P-3C哨戒機からの連絡を受けるのであった。
ー入港13日目ー
佐世保の朝は、この日は騒がしかった。
大型艦に加え、それ以外の護衛艦が6隻出航するのだから。朝から港は騒然としていた。
そんな騒がしい港を置いておいて、しなの艦橋では、重苦しい雰囲気が漂っていた。。。
ーしなの艦橋ー
「昨晩の情報は、信じていいんだな?」
「あぁ…画像添付もされていたし、間違いなく本物だろ…だが…」
「奴さん、まさか対馬に出てくるとはな…」
と言うと、俺と副長は海図版の上に置かれた数枚の写真と報告文を再度見返した。
「どうする?迂回して、鳴門海峡を通るか?」
「いや、ルートを変更したとしてもどの道捕捉される。タダでさえ舞鶴がやばいと言うのに、捕捉、追尾されたら、戦況が悪化しかねない。それならいっそ、我々で蹴散らしてやらねば…」
「はぁ…、了解しましたよ」
と言うと、カーテンの向こうから声が掛けられ、俺達は艦橋へ戻った。
「報告!全艦、出航準備整いました!」
「よし、出航!」
パパラパーンパパラパーンパパラパーンパパンパパーン
「しゅっこーう!!!!!」
こうして、しなの以下、護衛艦隊が佐世保を出港したのである。
ー2時間後・対馬海峡まで15kmの海域ー
『艦橋、CIC、水上レーダー感有!本艦10時から11時方向!』
この一声だけで、艦橋の雰囲気が一気に緊張感を増す。それもそうなのだが、些か今日はその緊張感が強いような感じを受けた。
「CIC、艦橋。了解した、艦種識別は出来るか?」
『艦橋、CIC!敵艦は、前弩級戦艦などを含め、敵艦、約40!』
「艦長、この海域でこの艦種、そしてこの数…」
副長がそう呟いたあと、左舷ウォッチから報告が入った。
「敵艦影を確認!……クニャージ・スヴォーロフと思われるのが旗艦です!」
「対馬にスワロフ…なになに、敵艦日本海海戦をまたやろうっての?」
「そのようだな…仕掛けるか?」
「艦隊の進路の障害となるのであれば容赦なく排除する。三笠もいないし、連合艦隊なんて到底及ばない数だが目にもの見せてやるさ」
「了解、仕掛けますか」
「CICに向かう、以後、第一艦橋は副長に一任する」
急ぎ早に俺はCICへ向かった。大湊へ行った艦隊の方も気になるが、あっちは今回のみ「いずも」が同伴している。早見海将補ならば大丈夫だろう。
ーCIC内ー
「ご苦労」
『ご苦労様です!』
俺が入るとすぐに返礼が帰ってくる。だが、戦闘中は自分の仕事に集中してもらいたいものだと、内心思ったが複雑になってかなり考え込みそうになったので考えをそこで辞めた。
「状況報告!」
「敵艦、二列縦陣でこちらに向かってきます!」
「了解、砲雷長、部署を発動せよ」
「了解、部署を発動します。」
そして、その後すぐに…
「対水上戦闘用ー意!これは演習にあらずっ!!」
「通信士、艦隊に打電、『合戦用意』とな」
「了解、艦隊に打電します!」
「トマホーク用意、それから、艦旗z掲揚!」
マストにz旗が上がった、その旗で、全艦気づいたのだろう。
艦隊が慌ただしくなった。
「トマホークMarkTHR、装填完了!発射用意…用意良し!」
「トマホーク、発射!」
「トマホーク発射、サルボー!」
全艦からトマホークが放たれた。
なお、本艦から放たれたトマホークMarkTHRは、任意の場所で爆発させることができる。爆発すると、中に入っているアルミの玉が爆発の衝撃で加速され、目標二弾着する。言わば、墳式拡散弾頭(ショットガン・ミサイルとでも言っておこうか)になる。
これは現在はしなの型とあすかにしか搭載されていない。が、じきに各艦艇にも配備が進むであろう。
「トマホーク!炸裂!」
「効果は?」
「効果あり!正し、MarkTHRのみ!爆発タイミングにも、修正の要ありと認む!!」
「了解、誤差修正後、再度発射!」
「今も攻撃で敵艦隊の三分の一は壊滅も、敵旗艦、健在!」
「トマホーク、装填完了!」
「再度発射!」
「サルボー!」
この二回に攻撃で敵艦隊の四分の二は戦力を削ぐことができたが、
旗艦は残っていた。
(こうなったら…)
「艦隊に打電!戦列を離れ、舞鶴を目指せと!」
この事を言うと、砲雷長がすぐに反論してきた。
「艦長!いくらなんでも危険です!」
「では、第一艦橋につなげ!」
「りょ、了解!」
そう言うと、インカムのマイクはすぐに艦隊に繋がり、俺は艦橋へある指示を飛ばした。
「艦橋、CIC!艦増速!両舷最大船速!」
『CIC、艦橋!了解、増速します!」
「艦隊に打電、貴艦はそのままの船速を維持せよ!っとな!」
「了解、伝えます!」
「艦長、いったい何を?」
「本艦の主兵装は?」
「大型主砲…、なるほど、了解しました。
機関室に伝えろ!副主機起動、全速発揮せよ!」
こうして、近代戦艦一隻対前弩級戦艦15隻との、
最初の大砲撃戦が繰り広げられるのだった
to be continued
あとがき
いかがでしでしょうか、第四話。
この第四話は、物語として今後のお話に少しだけ関わってくる部分が出てきます。
さて、そろそろ夏も終わりに入ってきて寒くなってきましたね…冬場はお布団に入ってゴロゴログダグダと過ごしていたいですね…お外に出たくない!
次回:「舞鶴、入港」
次回まで気長にまいります!