神様「転生するために資格が必要になったから」
転生者「えっ」

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神様転生するために

神様転生。

 

トラック、病死、自殺、ありとあらゆる死によって

神のもとに送られ、別の世界への転生をさせられる

一連のお約束(テンプレ)である。

 

 

 

いつだっただろうか。

 

 

某、ゼロな使い魔のライトノベルによって、

異世界への転移ものが流行りだしてから、

神様転生といった物語も人気を博してきた。

 

 

それから、ネット小説には自分の好きなように

主人公にチートを与え、ハーレムを築かせ、

思うがままに無双し、俺TUEEEEEする小説、

作品が多く生まれてきた。

 

 

が、それが原因で神様転生は変わった。

 

 

 

 

 

「えー。テステス。」

 

 

壇上にあがる、真っ白な長髪と、豊かなひげを蓄え、

白のローブを身にまとい、スタンドマイクに向かって

発生練習している一人の老人。

 

 

周りを見渡す。

 

皆、緊張した顔だ。

 

何百人もの人間が、この白い空間にひしめき合って

立っていた。

 

 

「あー。・・・・ハウリングがきっついのう。あ、めんごめんご。」

 

 

マイクの調子がようやく良くなったのか、話始める男性。

 

 

 

「ようこそ。------死後の世界へ。」

 

 

 

 

俺は今、神様の前に立っている。

 

 

は?麻薬でも決めたの?と思われそうだがそうではない。

 

 

 

マジで神様の前にやってきたのだ。

直感的に悟ってしまった。

 

 

あれが、俺たちの世界を作って、見守っている存在なのだと。

 

動物園で初めてライオンを見たときに本能的に

自分では勝てないとわかってしまったあの感覚に近い。

 

 

そして、俺がここにいる理由は一つ。

 

 

死んだからだ。

 

 

そう、死んだ。

 

 

死んでどうなるのかは生きている間は知らなかったが、

どうやらあの世というものに行くことになるらしい。

 

今、こうしているのがその証拠だろう。

 

 

 

 

いや、結構わくわくしたののだが。

 

だってあれだぞう?

 

 

本物の神様と会えたんだぞ?

昔の神話とかに出てくる畜生な神様と違って

常識的そうだし、お、これは結構いけるんじゃないか?

と思ってこれからの生活に胸を含まらせているくらいだ。

 

 

 

最低限の話を神様の使いである天使たちから受けて、

この場所で神様の話を聴くことになった俺たち死人。

 

 

一体、何が行われるのか。

 

 

周りの奴らは「転生っ・・・!!」「ニコポ、撫でポは

必須・・・っ!!」「ハーレム!!」とかざわめいているが

やはり、神様転生に期待しているのだろうか。

 

 

無理もない。

 

 

創作物でしか見られない魔法や超能力、そして美少女たちとの

触れ合いができるかもしれないのだ。

 

 

そして、神様は言った。

 

 

 

「あの世に来て、神様転生したがる奴が多すぎるから

資格とったやつだけにさせることにしたぞ。」

 

 

 

時が止まったかのように、あたりが静まり返った。

 

 

 

 

 

それからはもう大変だった。

 

 

 

神様転生をさせてくれると思っていたやつらが

壇上のおじいさんに殴りかかろうとして

周りにいた天使に捕縛されてどこかに連れていかれちゃったし。

 

 

そんで、神様がその後に捕捉で説明してくれた。

 

なぜ、資格を取った人間だけが転生できるようにしたのかと。

 

 

『・・・・だって、社会不適合者が多すぎるし・・・。』

 

 

一緒に帰って噂されると恥ずかしいし・・・、みたいな

テンションで言われてしまった。

 

 

何でも、神様転生して別の世界に行ったのは良いが、

問題を引き起こす輩が多すぎるとのこと。

 

 

『転生して別の世界に行ってからと言ってなんでもしていい

とは言っておらんぞ?最低限の常識もないような人間を

送るわけなかろう。』

 

すみません、俺も社会不適合者(元リーマンのニート)なんです・・・っ。

社会でまっとうに働いて生きることができなかった自分の

過去を思い出すだけで死にたくなってくる。

 

あ、もう死んでいるんだった。

 

 

 

そして、転生するには現世で言う「職業訓練所」なる

ものに通ってもらうと。

 

・・・・あの、思っていたのと違うんですが。

 

 

 

自分の担当の天使さんにそういうと、ため息を吐かれながら

こう返される。

 

 

「あのですね、全く別の世界に行くってことは、すなわち赤ん坊の

状態で社会に放り出されてしまうようなものなのですよ?

本来、転生者に送られる特典というものは、

転生者を守るためのセーフティーネットでして・・・・。」

 

 

淡々と事務的に説明される。

 

ぐうの音もでない正論だった。

 

 

 

 

 

後日。

 

 

温かなベッドで一晩眠り、

 

体力を回復した俺は、「転生資格認定所」

という場所に向かっている。

 

 

学校のようなもんをくぐり、体育館みたいな

建物の横を通り抜け、学校に外見がそっくりな

4階建ての建物の中へと入る。

 

 

4階のまで上がり、一番奥の教室までやってきた。

 

ドアに手をかけ、中に入る。

 

すでに、何人かやってきているようだ。

 

 

黒板を見て、自分の机の位置を確認し、

座る。

 

 

 

時間が過ぎていき、教室の中に

人が集まってくる。

 

 

30個あった席が全部埋まり、

チャイムが鳴り響くとドアががらがらっと開けられ

中に誰かが入ってきた。

 

 

「皆さん、おはようございます。」

 

 

そういって壇上にあがり、ぺこりと一礼する

銀髪、ポニーテールに釣り目、

OLが着て居そうな黒のレディスーツに

黒タイツ姿の女性だった。

 

 

 

「さて、さっそくですがあなたたちには

転生するために必要な資格を取ってもらうために、

訓練してもらいます。」

 

 

 

どよよっ、と教室がどよめく。

 

 

 

ドン、と壇上の机を彼女が右手で

軽く叩く。

 

 

静まり返る教室。

 

 

 

「お静かに。・・・・・さて、あなたたちにお聞きしましょう。

神様転生の”特典”・・・。一体何を思い浮かべますか?」

 

 

当てられていく周りの人間たち。

 

意見を思い思いに言っていき、それが

黒板に書かれていく。

 

一通りの意見が出尽くしたところで、

銀髪の女性が手を止める。

 

 

「こんなところですか。」

 

 

黒板に書かれた特典を見る。

 

 

ニコポ、撫デポ、王の財宝、UBW、悪魔の実、

ハーレム、魔力SSS、成長限界突破、最強、

チート、俺TUEEEEE、踏み台、オリーシュ・・・。

 

 

うわあ、と両手で口を抑える。

 

なんか、こうして文字で客観的に眺めてみると

いたたまれない。

 

 

そして、女性は言った。

 

 

 

「チート、大いに結構。ハーレム?女性を

傷つけなければ良し。原作介入?どうぞご自由に。」

 

 

何だか投げやりっぽい。

 

「あなたたちにこれらの特典を得られるチャンスを、

この『転生資格訓練所』では与えております。」

 

 

しん、と静まり返る教室。

 

 

俺も、口の中が緊張で渇いている。

 

 

 

・・・・マジで?

 

 

「それでは、さっそく講師の方に入っていただきましょう。」

 

 

 

がらがらっとドアを開けて入ってきた金髪に、黄金の鎧を身に着けている

超美形の美丈夫。

 

 

・・・ん?んん?

 

 

手で目をこすって二度見する。

 

 

仁王立ちして、俺たちをじっくりと観察するような

視線を向けてくる赤目の人物。

 

 

知っている。

 

おそらく、この教室にいる人間は全員

この人物を知っている。

 

 

「それでは、自己紹介をお願いいたします。」

 

 

 

「・・・王たる我に命令するか。」

 

まあ、よい。

 

 

そして、にいいっと口の端をつり上げ、

俺たちの肝が底冷えするような声色で言った。

 

 

「我は英雄王、ギルガメッシュ。さて、我の財宝に

手を付けようという不届き者は誰だ?」

 

 

 

明らかに怒っている表情で自己紹介する彼に

苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

王の財宝を欲しがっている人間を何回も殺し、

すっきりしたのか教室から出て行く彼。

 

30人いた人物が、残り11人まで減ってしまった。

 

 

 

「ご覧のように。特典を得るためには、

その能力をもった人間から認められる必要があります。」

 

 

何事もなかったかのように話を続けていく。

 

あ、さっきのスプラッタな光景を思い出しただけで

胃から・・・・。

 

 

「UBWがほしければアーチャーに、サイヤ人の身体能力が

ほしければ孫悟空に、チートがほしければ、そのチートを

持っている相手を認めさせなさい。ゴミみたいな生活を

送っていたあなたたちクズには、もったいないほどの

チャンスでしょう?」

 

 

 

 

転生は、楽じゃない。

 

 

神様転生したいとか言っている奴。

 

ちょっと来い。

 

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

 

 






神様「基地外とか、精神異常者とか異世界に送るわけないじゃろ。
特典がほしかったらちゃんとコミュニケーション取って
使わせてもらえ。」

なお、誰でもチャンスはもらえるもよう。
(誰でも特典を勝ち取れるとは言っていない。)

冷静に考えたら、変な奴を異世界に送るわけ
ないよね?という疑問から作られた話。


特典はそもそも別の世界にいきなり放り出されて
大変だろうから、と神様が付け届けしてくれるものであって
当たり前のようにもらえるものではないのです。(戒め)


なお、毎秒、数百人の転生候補者があの世にやってくるので、
あの世はクッソ大変な模様。

王の財宝?我様と"友達"になれるほどのコミュ力と
精神力があればいけるいける。(友達になれるとは言っていない。)


あ、僕は優しいお嫁さんをもらえればそれでいいです。(予防線)



KEY(ドM)



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