本日2話目
informationーー宿主に深刻な傷害を確認
informationーー生存確率計算中
informationーー確定 : 生存確率0%
informationーー状況打開策の検討開始
informationーー検討中
informationーー打開可能案を1つ確認
自己否定ーー判定に失敗しました
自己否定ーー判定に失敗しました
自己否定ーー判定に失敗しました
自己否定ーー判定に失敗しました
自己否定ーー判定に失敗しました
・
・
・
自己否定ーー判定に失敗しました
informationーー実行には練度が圧倒的に不足中
informationーー代案検索中
informationーー発見
informationーー宿主の承認が必需
自己否定ーー却下判定
informationーー承認
informationーー宿主不在の為強制実行を開始
なんだ、これは。
自己否定ーー右耳の聴覚を昇華しました
自己否定ーー左耳の聴覚を一部昇華しました
自己否定ーー左眼の物理視覚を昇華しました
自己否定ーー味覚を一部昇華しました
自己否定ーー左腕の霊体を昇華しました
自己否定ーー左腕の再生余地を昇華しました
なんなのだ、これは。自分の意思を外れて、干渉できる限界ラインだったものを軽々と踏み越えてチートが稼働している。
目が閉じられているのか、真っ黒な視界に文字だけが延々と流れて、意味が叩き込まれて訳がわからない。気持ちが悪い。██。
自己否定ーー██の感情は既に消去されています
informationーー宿主の意識のサルベージが完了
informationーー作業の継続を提言
自己否定ーー弓術の才能を昇華しました
自己否定ーー弩術の才能を昇華しました
自己否定ーー剣術の才能を昇華しました
自己否定ーー刀術の才能を昇華しました
自己否定ーー鞭術の才能を昇華しました
ドクンと、心臓が脈打った。文字列が増えれば増えていくほど、自分の身体に熱い火が灯されていく。
自己否定ーー鎌術の才能を昇華しました
自己否定ーー銃術の才能を昇華しました
informationーー自己否定の練度が上昇しました
informationーー自己否定の練度が上昇しました
informationーー燃焼回路が解放されました
その真っ赤な文字を見た途端、自分の中の本能が全力で警鐘を鳴らした。それを使ってはいけない。それを使わせてはいけない。それは止まっていないとダメなものだ。
そんな俺の声なき絶叫を置き去りにして、チートは淡々と作業をこなすように文字列を綴っていく。
燃焼回路ーーHello world
燃焼回路ーー起動完了
燃焼回路ーー動作を開始します
informationーー本人意識不明瞭の為自動承認
informationーー██、██、██を装填
燃焼回路ーー了解
燃焼回路ーー3つの感情を焼却します
ジリ、と後頭部が灼熱の実感を生じさせた。それを皮切りに、全身に炎が回ったかの様な痛みが駆け巡る。
燃焼回路ーー焼却率2%
燃焼回路ーー焼却率4%
・
・
・
燃焼回路ーー焼却率30%
informationーー必要エネルギーの確保が完了
informationーー宿主の蘇生を実行します
全身を炎に包まれる如き激痛の中、更に電力が直接流されたかの様な痛みが襲いかかってきた。この時ばかりは、不思議と声も涙も出ない状況に感謝する。もしそれが出来ていたのならば、狂って自殺に走りかねなかっただろうから。
「カハッ」
止まっていた身体が活動を再開し、全身を血流が駆け巡る。
視界に色彩が加わり、耳に音が届き始める。正確には『左耳にのみ違和感を伴って』と頭に付くのだが。
だがそんな事はどうだっていい。何せ耳に届いた音の方が、よっぽど俺にとっては重要だったのだから。
「これで、終わりよ!!」
泣いている
そこまで条件が整えば、何が起きようとしているのかは容易に予想することができる。
燃焼回路ーー2%のエネルギーを充填
「《収納》!」
何故か青い炎を纏う腕一本で身体を跳ね上げ、チートの発動を叫びながら全力で虚空に蹴りを叩き込んだ。瞬間、振り下ろされる愛槍と脚が接触し、槍が収納された。
燃焼回路ーー3%のエネルギーを充填
「なっ!?」
「
このまま足を振り下ろして態勢を整える場合、エウリさんに直撃してしまう。そう判断して、魔法で生み出した根を踏みつけて回転運動を止めた。
「《排出》!」
強化を再開し、炎を纏う脚で速度を乗せて、掴み取った驟雨を捻りを入れながら突き込んだ。いつだったか師匠に教わった、槍として最大威力の攻撃だ。槍よりは薙刀に近い驟雨だが、それでも威力は折り紙つきだ。
《ムダダヨ──アッ》
またも現れた光の球が張る障壁が突きを防ぎ、しかし大きなヒビが刻まれ女子勇者は吹き飛ばされた。
informationーー宿主の再起動が完了しました
自己否定ーーinformationの越権を否定しました
燃焼回路ーー焼却率50%
追撃はせず、文字列を見ながら息を整える。心臓の音が五月蝿い、荒い息が五月蝿い、炎の弾ける音が五月蝿い。けど、生きている。まだ生きている。
「エウリさん。まだ、生きてますか?」
「モロハ、さん?」
酷く掠れた涙声だったけど、エウリさんもまだ生きている。フロックスさんとお婆さんに関しては知らないが──
自己否定ーー希望的観測を否定しました
恐らく、ダメだろう。だけど今は割り切らねばならない。悲しみも慟哭も後悔も、割り切らねばまた死ぬだけだから。
「酷なことを言います。エウリさん、どうにかして下がってください。俺じゃ、貴女を守れません」
既に、俺は一度殺された身だ。元々思ってもなかったが、そんな奴が守るなんて言葉を発していた筈もない。
「でも、どこ、に?」
「溝の中が1番かと」
そう言ってから、大怪我をしている中下に降りるのは苦行だと気がついた。
「《排出》」
溝の淵から底あたりにまで、排出したスペアの槍でスロープを掛けた。刃の部分は完全に地面に埋まっているから、滑って降りることに問題はない。
エウリさんに目で合図をして、俺は一歩を踏み出した。
「なんで、なんで貴方が生きてるのよッ!?」
「どの口が!!」
燃焼回路ーーエネルギーを5%充填
次瞬放たれた光条を、青い炎の軌跡を残した斬撃が斬り払った。何故だかは知らないけれど、この青い炎は何にでも使える気がする。
燃焼回路ーー焼却率80%
燃焼回路ーーエネルギーを5%充填
強化された脚が青い炎を纏い、恐るべき速度を叩き出した。そして、残り距離が僅かになった時漸く女子勇者が動いた。
「クヴィ、お願い」
《リョウカイ、リョウカイ》
クヴィというらしい例の光る球が、3枚もの障壁を展開した。そしてその奥で、女子勇者が何か詠唱を開始したようだ。その顔には理解出来ない表情と、焦りが張り付いている。
燃焼回路ーーエネルギーを15%充填
「邪魔、だぁぁぁッ!!」
激しく燃え盛る青い炎を纏う愛槍が、障壁を全て撃ち抜いた。そして穂先は、光る球体を完璧に貫いていた。
燃焼回路ーーエネルギーを10%充填
「砕けろ」
《アッ──》
穂先から青い炎が噴き出し、光の球を蹂躙した。光が翳り、青い炎が内から漏れ、最終的には爆散した。アレだけ猛威を振るったバケモノの、呆気ない最後がそれだった。
「クヴィ!? よくも!」
自分のことは棚に上げてふざけるなと言いたいが、グッとこらえて息を整える。しくじったら、顔向けが出来ない。千載一遇のチャンスを無駄にするなんて、あってはならない!
燃焼回路ーー焼却率95%
燃焼回路ーーエネルギーを5%充填
「シッ」
短く息を漏らす音のみを残し、炎を纏う脚で地面を蹴る。だが、そんな心の乱れが足を引っ張った。光る粒子が女子勇者に収束する。恐らくこれは、つい先程俺を殺した技。3人がかりで止めて漸くだった莫大な魔力による砲撃。
燃焼回路ーー焼却率100%
燃焼回路ーー焼却が完了しました
燃焼回路ーー焼却を停止します
それが発射される直前、赤い文字か現れた全身が脱力した。無理やり言語化するならば、心に何も残っていない虚無の空間が生じたような感じだ。しかも、2度と治ることがないことが直感出来た。
informationーー焼却により虚無が出現
informationーー人格崩壊の可能性大
informationーー精神補填候補検索開始
informationーー既に×××××の魂の融合を確認
informationーー阿頼耶識よりダウンロード開始
「デコン、ポーザーッ!」
文字列の乱舞の中、白い光が迫る。こんな脱力しきった状態では、またも無駄に死ぬだけ。そう感じる俺の頭に、突如情報の激流が襲いかかってきた。
自己否定ーー×××××の人格を否定しました
informationーー主人格を確定しました
informationーーフィードバックが完了しました
見知らぬ
聞いたこともない言葉。
見たこともない景色。
見知らぬ人影。
行った記憶のない修行。
戦ったことのない強敵。
覚えた記憶のない感情。
経験したことのない終わり。
だけどその中に、槍を扱う技術があった。俺なんかとは比べ物にならない程高い練度で、鍛え上げられた技がそこにはあった。俺とは逆だが、その隻腕の英雄が持つ技は迫る光なんかよりもよっぽど眩しい。
焼却回路ーー25%のエネルギーを充填
1人の英雄が生涯をかけて生み出した技を再現できるだなんて、恥ずかしくて言うことはできない。けれど、効果を僅かでも発揮する真似事なら出来る。勇者という才能の塊らしく、生きている俺ならば不可能ではない。
一度払えば1つの軍が壊滅した、記憶の中にしかない絶技。×××××なる英雄が至った1つの境地。魔力と槍術が組み合わさったその技の名を、無理やり現代語に当てはめるならば──
「村雨」
地面から掬い上げる様に槍を振りつつ、その名前を口にした瞬間のことだった。魔力が不自然な動きで流れ、追随する様に青い炎が噴き出していく。
『魔術とは、力ある言葉によって世界に語りかけ、己の内にある力を起点に力を行使する術よ』
いつか姫様から教わった言葉が頭に浮かんだ。
そんな中でもまるで染みついているかの様に身体は勝手に動き、槍は振り抜かれた。本命は斬撃ではなく、その軌道に生まれる霧の様な白。前方に拡散し触れたもの全てを切り刻む筈のそれは、何故か青い炎として現出した。
頭に疑問符が浮かぶが、感じる圧は本物だ。
ならばと気を引き締め直した直後、白の爆光と青の炎が激突した。
チート
《自己否定》
効果
・自己の否定
【解放1】内的害の否定・information
【解放2】任意発動・範囲&強度強化
【解放3】燃焼回路(激痛を伴い、任意の感情とそれに連なる記憶を完全焼却してエネルギーへと転換)
【備考】燃焼回路で感情を焼却した場合、人格の崩壊を引き起こす可能性が極めて高い。それ故、他人の魂を何処かから呼び寄せ取り込み否定して魂を補填する。