雄二虐殺から数日が経った。
今日改めて二人は家に来るらしい。
(今度こそちゃんと来るんだろうな?一応、昨日念は押しておいたが・・・)
前はあいつらから約束を取り付けてきてあれだったから心配になる。
(しかし誰かを家に招くなど初めてだな…)
改めて部屋を見渡し散らかってないかを確認する。
大丈夫だろう。うん、大丈夫・・・ほんとに大丈夫だろうか?
自分では大丈夫に見えるが人からみたらどうかはわからない。
(もう一度くらい掃除しておくか?)
ちなみに今日すでに2度ほど掃除している。
そして掃除をしようとしたところで
「ちーねぇ、ちーねぇ。」
弟の一夏が足元に来ていた。
一夏は一歳と少しの弟で私の唯一の家族である。
「どうした一夏?」
「ん、ん。」
一夏は絵本を手に持ってこちらに見せている。
「読んで欲しいのか?」
「ん。」
「いいぞ。よし、こっちにおいで。」
私はソファーに座り膝をポンポンと叩く。すると一夏はふらつきながらも歩いてくる。
そう、歩いてくるのだ。なんと一夏はもう歩けるのだ。
私は歩いてきた一夏を抱き上げて膝の上に座らせる。
膝に座った一夏は絵本が楽しみなのか足をパタパタさせている。
(ふっ、可愛いやつめ。)
私は一夏の頭を軽くなでてから絵本を読み始めた。
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「悪さをする鬼め退治してやる!覚悟!」
「桃太郎に続き犬、サル、キジも鬼に攻撃します。犬は噛みつき、サルはひっかき、キジはつつきます。そして桃太郎が最後に攻撃すると鬼はないて許しをこいました。」
「も、桃太郎さんごめんなさい。もう悪さはしないからどうか許してください。皆から奪ったお宝もすべてお返しします。」
「優しい桃太郎はその鬼を許してあげました。そして桃太郎達はお宝をもって鬼ヶ島を後にし、皆にお宝を返してあげました。」
「あぁ、桃太郎さんどうもありがとうございます。」
「みんなは桃太郎に感謝し、それから鬼も悪さをしなくなり平和に暮らしましたとさ・・・おしまい。」
私が読み終えると一夏がパチパチと手を叩く。
「もーかい、もーかい。」
「今読んだばかりだろう?また寝るときに読んでやる。な?」
もう一回という一夏の頭をなでて言い聞かせる。
不満そうだがわかってくれたようだ。
それにしても・・・・
(遅いな・・・)
まだあいつらは来ない。約束の時間はもう三十分は過ぎている。
またパソコンをいじって時間を忘れているのだろう。
(しょうがない・・・迎えに行ってやるか。)
一夏を一人にするのは心配だが少しの時間だし一夏はしっかりとしているから大丈夫だろう。
「一夏。少し留守番を頼む。」
そういって玄関に向かおうとしてリビングの扉を開けると
「「あっ!?」」
二人がいて固まった。二人は見つかってしまった!?という感じだった。
・・・・・玄関にはカギをかけておいたはずだ。
「ちーちゃん!俺はやめようと言ったんだ。でも束がちーちゃんを驚かせようってピッキングし始めて・・・」
「雄くんだって結局止めなかったんじゃん。共犯だよ、きょーはん。」
そうかピッキングして入ってきたのか…
しかし、今はそんなことはどうでもいい・・・・
「聞いてたのか・・・?」(震え声)
「キ、キイテタ!?ナンノコトカナ?ナァ、タバネ?」
「ぷふっ!そうだね~なんのことかわからないよ。」プルプル
聞かれた・・・・・聞かれてた・・・・・
「あ、あぁ・・・・」
顔が熱くなっていき、体もプルプル震える。
(は、恥ずかしいッ‼)
こいつらに聞かれた…死にたい…
「いや・・ほら・・・よかったよ。特に『覚悟!』っていうとこなんか迫力あったなぁ…」
さらに雄二からいらないフォローをされ、より死にたくなった…
「束さんは『も、桃太郎さんごめんなさい。』ってとこかな。ちーちゃんのあんな声初めて聞いたから面白くて・・・・ぷふっ!」プルプル
「こ、こら束!?」
そして笑いをこらえた(全然こらえられていない)束のその言葉を聞いた瞬間私の中の何かが限界を迎えた。
「おま__ら_____さん…」
「「えっ?」」
「お前ら、生きて返さん‼」
「ちょ!?待って!?」
「首を置いてけー‼」
それからはよく覚えていないが気が付くと半殺しになった雄二を片手に私は持っており、廊下の端で傷だらけの震える束の姿が見えた。もちろん私も傷だらけだし、廊下もひどいありさまだった。
★
し、死ぬかと思ったんだよ・・・
ちーちゃんが急に暴れだして逃げ遅れた雄くんがまずやられた。
私だって交戦しようとしたけど今日のちーちゃんは化け物だった…
初めてだよ・・・恐怖を感じたのは・・・・
そして現在はちーちゃんが正気を取り戻したためみんな治療中である。
雄くんはしばらく起きそうにないためソファーに治療をして放置してある。
「その・・・・なんだ・・・よく覚えてないがすまなかった。少々やりすぎた…」
ちーちゃんがバツの悪そうな顔して謝ってきた。
「いや、今回ばかりは束さんが悪かったよ…」
「!?」
今回ばかりは自分の行動に後悔した。そして再発しないように謝る。
そんな私にちーちゃんは驚きを隠せないようだ。
「お、鬼ーー!?桃太郎さん助けてー‼・・・・夢か・・・」
とその時ガバッ!と雄くんが起きた。
「おn・・じゃなくてちーちゃん。ほんとにゴメン。」
そしてきれいなDO☆GE☆ZAをする雄くん。いま本音でかけてたよ・・・
「いや、気にするな・・・私の方こそやりすぎた…。が、今のは許さん!誰が鬼だ!」
「ブヘッ!」
殴られてソファーから雄くんが落ちた。
私は今日の教訓〈ちーちゃんをいじりすぎるな〉を胸に刻み込むのだった・・・
★
ちーちゃんからの制裁から少し時間が経ち落ち着いたので
「で、ちーちゃん。この子が弟の一夏君?」
俺はちーちゃんに質問する。俺の目の前にはどことなくちーちゃんに似ている子がいる。
聞いていた特徴と一致するので間違いないだろうけど一応確認だ。
「そうだ。」
「やっぱりそうか。いや~似てるね。」
「そう?ちーちゃんより可愛げあると思うけど?」
そういって束は一夏君の頬をぷにぷにしている。
どうして君は戦いの火種を作り出すんだい?
俺は恐る恐るちーちゃんの方を見ると
「そうかもしれないな。」
一夏君を愛おしく見つめるちーちゃんは笑っていた。
ちーちゃんにとっては一夏君は唯一の家族らしい。
ちーちゃん達の親は二人を捨てて出て行ってしまったという…
そして今は二人で暮らしているらしい。ちーちゃんは親代わりなのだ。
これは俺がなぜ篠ノ之家にお世話になっているのか聞かれたとき俺の家族について話したら、なら自分もということでちーちゃんが教えてくれた。
(一夏君のために本当に頑張ってんだな。まだ甘えたい年頃だろうに。)
俺は気が付いたらちーちゃんの頭をなでていた。
「なっ!?なにs「急にゴメン。ちーちゃんが頑張ってんのわかったらなでたくなった。」・・・」
ちーちゃんはうつむいて黙ってしまった。耳が赤いから恥ずかしがっているのだろう。
でも嫌がらないところをみるに、やっぱり甘えたい年頃なのだ。
子どもってのはこうあるべきだと思う。
「ちーちゃん。頑張っているのはいいけど頑張りすぎちゃだめだからな。なんかあったら相談してくれ。俺ならいくらでも力貸すからさ。」
「・・・・」
多分このままいくとこの子は一人でため込んでしまうだろうからお節介だがそんなことを言ってしまう。ちーちゃんは小さくうなずいてくれている。
「ジィーー・・・・・・」
後ろから視線というか声を感じる。後ろを向くと束が言葉通りジィーっとこちらを見ていた。
「な、なんだよ?」
「べっつに~?いつまで束さんといっくんほっといてそうしてんのかな~って。」
確かに。ちーちゃんの髪はさらさらでずっとなでていたいがそういうわけにもいかない。
俺はちーちゃんの頭から手を引く。というかいつの間にか一夏君と仲良くなっているし。
うらやましい・・・
「ゴメン、ちーちゃん。いきなりなでちゃって。」
「・・・気にするな。私は少し顔を洗ってくるから一夏を頼む…」
ちーちゃんはうつむいたままそういうとリビングを出ていく。
先生・・・俺もナデポが少しは使えるようになりました。
「けっ!」
感傷に浸っていたら束に後ろから軽く蹴られた。
なんか不機嫌そうだ。
「どうした?私不機嫌です~って顔して。」
「別に・・・ちーちゃんをずいぶんなでてたなぁ~っと思っただけ。」
不機嫌そうに束は言う。もしかして・・・
「嫉妬してんのか?」
「べ、別に違うしっ!?」
やっぱりそうか。仲間はずれにされて寂しかったんだろう。
やっぱ、頭はよくても子供は子供なんだなぁ。
「素直じゃないなぁ~。」
俺は束をなでる。ついでに束が抱っこしている一夏君もなでる。
一夏君は嬉しそうにし、束もなんだかんだ言って何も文句はいわない。
しばらくしてるとちーちゃんが戻ってきたのでナデポをやめて、みんなで遊んだ。
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「おっと、もうこんな時間か・・・」
気が付くと時刻は18時過ぎ。もう帰らないといけない時間だ。
「そうか・・・もうそんな時間か…」
ちーちゃんはどこか寂しそうにいう。
「そうだ!今日は夕飯を家で食べていかないか?迷惑でなければだが・・・」
そして、良いことを思いついたといわんばかりにちーちゃんは言うが、迷惑なんじゃないかと段々声が小さくなっていく。
そんなちーちゃんを見て、俺がもちろんと言おうと思ったら、
「食べる食べる‼私ちーちゃんの料理一度食べてみたかったんだよね。」
束に先を越されてしまった。束の言葉を聞いたあとこちらを少し心配そうにちーちゃんがこちらを見てくる。そんな心配そうな顔をしないで欲しい。
「もちろん俺もいただくよ。」
「そ、そうか!今準備するから待って居ろ!」
パァーっと表情が明るくなり、エプロンをつけ始めた。
こうも素直なちーちゃんは珍しい。今日はラッキーだな。
俺は手伝おうかとも思ったがちーちゃんに『ゆっくりしてろ。お前はけが人なのだから。』と言われてしまい、今は束とソファーで待っている。ちなみに一夏君は俺の膝上。
すると束が近くのクローゼットに近づいていく。
「何する気だ?」
「ちょっとね~」
そういうと束はいきなりクローゼットを勢いよく開けた。
そして俺は次の瞬間絶句した。
なぜなら・・・・
束が
正確に言うとクローゼットの中にあった物が雪崩を起こし束を飲み込んだ。
どこにそんな量が入っていたのだといわんばかりの量だ。
いやまぁ、クローゼットのなかだが・・・許容量をはるかに超えていた。
「だ、大丈夫か束!?」
一夏君を膝からおろし、束のもとに行く。
「プッはッ!?」
束が顔を出した。よかった、無事なようだ。
「どうかしたのか!?」
ちーちゃんも音を聞いたのか慌ててこちらに来た。
「どうしたもこうもないよ‼ちーちゃん‼なにこれ!?なんでこんな物がいっぱいはいっているのさ!?開けたら飲まれたんだけど‼」
束が興奮気味に抗議する。確かになぜこんなにものをいれたのか気になる。
「なぜも何もお前たちが来るから掃除しただけだが?」
ちーちゃんはさも当然のようにそういったが、掃除?
「え~っと、片づけたってこと?」
「そうだ。」
「・・・・」
ちーちゃん・・・これは片付けとも掃除とも言わない…
これはごり押しだよ…
「まぁ、無事だからいいだろう?私は料理に戻るぞ。」
そういってちーちゃんは戻っていく。
えっ!?この物の山は放置ですか?
それから束は一夏君と遊び始めたため、俺は一人で片付けをするのだった…
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「できたぞ。」
ちょうど片付けが終わったところでちーちゃんの料理も出来たようだ。
そちらに向かうと三人ともすでに食べる準備が整っていた。
「遅いよ雄くん。」
「そうだぞ。一夏だってもう座っているのだから早くしろ。」
(いや、誰かさんたちのせいでしょ…)
二人が怖いので文句は心の中にしまい、席に着く。
うむ、野菜炒めか。ちょっと焦げてるけどこれも茶目っ気だな。
《いただきます。》
一夏君はまだいただきますを言えないため三人で挨拶して食べ始める。最近では何も言わなくても束はちゃんと挨拶してくれるようになった。
(ん?この野菜・・・)
食べていると気になることがあった。
それは野菜の切り方がバラバラなのと生焼けの物があることだ。
「ちーちゃん、これちゃんと焼けてないよー。」
束のとったほうにもあるらしい。
「む?そうか?すまない、いつもは冷凍食品ばかりであまり手作りはしないのでな。やはり手料理は難しいな…」
なん・・・だと・・・!?
ちーちゃんの家はあまりお金がないのに冷凍食品ばかりだって!?自分で作った方が安上がりになるのに!?それがわかっていないちーちゃんではあるまい…
そしてさっきの件といい今の野菜炒めが難しい発言といい、まさか・・・
「もしかしてちーちゃんって家事苦手?」
この疑惑が思い浮かんだ。
「む、そんなことないと思うが・・・」
「じゃあ、改めて聞くけど普段する料理は?」
「インスタント麺と冷凍食品だ。」
「やっぱりか・・・」
さっきのを掃除というし、今のラインナップが料理というあたりやっぱりそうだ。
ちーちゃんは家事が苦手だ。それも典型的なタイプ。
「ちーちゃん、落ち着いて聞いてほしい。ちーちゃんが言っているカップ麺とか冷凍食品は料理とはいわないし、クローゼットに物を突っ込むだけでは掃除といわないんだ。」
「なん・・・だと・・・!?」
頼むからそこで驚いてほしくなかった…
さすがの束も呆れている。
「このままではちーちゃんたちが心配だ。だから俺は定期的にここにきて家事を手伝う。具体的に二日に一回ぐらい。いいよね?」
「お、お前がか!?し、しかしだな・・・」
「
「わ、わかった…。よろしく頼む。」
「じゃあ、明日から早速来るから。」
「あ、明日からか!?」
これは絶対に通さなければちーちゃんと一夏君の健康に関わる。
そのため多少強引だが仕方あるまい。
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・
・
それから俺達は野菜炒めを食べ終わり(皆にはちゃんと焼けてたとこあげた)、今は帰ろうというところで
「あれ?あれがない。」
俺はポケットにしまっていたものがないことに気づいた。
「どうした?忘れ物か?」
「うん、たぶんリビングに落としたから探していい?」
「もちろんだ。私も手伝おう。」
「じゃあ、束さんはここで待っているから早く見つけてきて~。」
束を玄関に残し、二人でリビングに戻る。
「どんなものだ?」
「え~っと、少し大きめのUSBメモリみたいなものなんだけど・・・」
どこかなー?多分ここら辺に落ちてると思うんだけど・・・
「これじゃないか?」
ちーちゃんが見つけたようで声をかけてくる。
ちーちゃんの手には外装が白いUSBメモリみたいなものが握られている。
「あっ!それそれ。ありがとう。」
「いや、見つかってよかったな。それよりみたいなものといったがこれはUSBメモリではないのか?」
「あぁ、これはねUSBメモリじゃないんだ。趣味で作ってるものなんだけど今は音が出るかな。」
「音?」
ちーちゃんが気になっているようなので音を出してあげることにした。
「こんな音。」
\
ボタンを押すとメモリから音声が流れた。
「それだけか?」
「残念ながらこれだけ。おっと、束を待たせすぎかな?」
「そうだな、はやく行ってやれ。・・・・また明日な。」
「うん、また明日。」
その後、俺は急いで玄関に戻り束に文句を言われながら帰った。
ちーちゃん可愛いよ、ちーちゃん。
今回はちーちゃんの魅力を出したかった。
そしてさらりとタイトル回収していくスタイル。
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